特別支援教育の自立活動とは
自立活動とは
自立活動とは特別支援学校・特別支援級・通級で行われる、障害のある児童や生徒に対して自立を目的として行われる授業です。
文部科学省の特別支援学校小学部・中学部学習指導要領では「個々の児童又は生徒が自立を目指し,障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識,技能,態度及び習慣を養い,もって心身の調和的発達の基盤を培う。」と定めています。
自立活動の基本方針としては「障害の重度・重複化、多様化への対応」「一人一人に応じた指導の充実」「自立と社会参加に向けた職業教育の充実」「交流及び共同学習の推進」を目的としています。
自立活動の内容
自立活動の内容は以下のように定められています。
- 健康の保持
- 生活のリズムや生活習慣の形成に関すること。
- 病気の状態の理解と生活管理に関すること。
- 身体各部の状態の理解と養護に関すること。
- 健康状態の維持・改善に関すること。
- 心理的な安定
- 情緒の安定に関すること。
- 状況の理解と変化への対応に関すること。
- 障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する意欲に関すること。
- 人間関係の形成
- 他者とのかかわりの基礎に関すること。
- 他者の意図や感情の理解に関すること。
- 自己の理解と行動の調整に関すること。
- 集団への参加の基礎に関すること。
- 環境の把握
- 保有する感覚の活用に関すること。
- 感覚や認知の特性への対応に関すること。
- 感覚の補助及び代行手段の活用に関すること。
- 感覚を総合的に活用した周囲の状況の把握に関すること。
- 認知や行動の手掛かりとなる概念の形成に関すること。
- 身体の動き
- 姿勢と運動・動作の基本的技能に関すること。
- 姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用に関すること。
- 日常生活に必要な基本動作に関すること。
- 身体の移動能力に関すること。
- 作業に必要な動作と円滑な遂行に関すること。
- コミュニケーション
- コミュニケーションの基礎的能力に関すること。
- 言語の受容と表出に関すること。
- 言語の形成と活用に関すること。
- コミュニケーション手段の選択と活用に関すること。
- 状況に応じたコミュニケーションに関すること。
個別指導計画書の作成
自立活動を行うにあたっては、個々の児童や生徒の個別指導計画書を作成する必要が有ります。
個別指導計画書を作ることで、指導の目的と内容を明確にし指導を行えるようになります。
実態の把握
個別指導計画書を作成するにはまず、個々の児童や生徒の実態を把握する必要が有ります。実態を把握するには保護者や本人と面談を行ったり、他の療育機関や医療機関など第三者機関との連携も必要になります。
把握する内容には障害の種類や特性、知能・学力、身体機能、病気の有無、生活習慣、必要な器具や用具、対人関係、家族や地域の状況、生育暦など幅広い分野に及びます。
目標の設定
対象児童の実態を把握した後は個別指導の目標を設定する必要が有ります。
目標は本人と保護者や他の教職員の意見などを取り入れ、実態に基づいて設定します。基本的に他の授業や活動では達成するのが難しく、自立活動で行う内容に沿ったものとします。
目標は学期毎や半年毎に達成を目的とした短期的な目標と、1年間または卒業時などに達成を目的とした長期的な目標を設定します。長期的な目標には進学・卒業・就職などを視野に入れる必要が有ります。
個別活動の指導内容の設定
個別活動の目標を設定が完了した後は、目標を達成するために必要な指導内容を設定する必要が有ります。指導内容の設定には自立活動の項目と関連付け、具体的に必要とされる内容を検討します。
内容の検討には「対象児童が興味を持って行えること」「苦手である分野や部分を改善・克服できる内容であること」「発達している部分を延ばすと共に、遅れている部分も補えること」「自分から活動を行えるように環境を整えたり、場合によっては周囲の人に支援を求められるようにできること」なども考慮する必要が有ります。
指導計画の評価と見直し
個別指導を行っていく中で定期的に内容を見直し、評価と改善を行うことが重要になります。
学期毎などに定期的に内容を見直して、現段階で何処まで実現できたかを評価し、遅れが目立つ部分は重点的に行い、延びている部分はさらにステップアップを行うなど、今後の指導の計画を作り直す事も必要になります。
自立活動を行うにあたって
自立活動を行う際には作成した個別指導計画書の内容に沿ったものを行います。
内容は子供それぞれ違うため、障害の種類や特性に合わせ指導方法などに注意する必要が有ります。
実際に個別指導を行う際には他の教科や分野の授業と連携を取り、学校全体で教職員間の協力体制を作ることが必要です。
場合によっては理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士などの各種専門家や、医師等との連携や助言を受ける事も大切になります。
自立活動を行う授業時間数は定められていませんが、個々の児童や生徒に応じて適切に定めるものとされています。