『かたろーぐ』:カタログを使って楽しむコミュニケーションゲームの紹介

   2018/10/08

『かたろーぐ』:カタログを使って楽しむコミュニケーションゲームの紹介

今回、『かたろーぐ』製作者である、だんらんゲームズのかわぐち様から、『かたろーぐ』をご提供いただいたので紹介させていただきます。

Twitterのアカウント : かわぐち(「かたろーぐ」製作)@guchi_fukui
『かたろーぐ』のサイト : ちゃがちゃがゲームズ かたろーぐ 

かわぐち様は当サイトの『ゲームや遊びで勝ち負けにこだわる』という記事に興味を持っていただき、ご連絡と『かたろーぐ』の提供を申し出てくださりました。

『かたろーぐ』とは

『かたろーぐ』はカタログを用いて好きな物のランキングを作り、相手に当ててもらうシンプルなゲームです。

お題にするものはカタログだけでなく、絵本や図鑑、実物のお菓子やぬいぐるみなど、テーブル上に置いて順位をつける事が出来るものなら何でも使えます。

基本的なルールとしては、出題者がカタログの中から好きな物に順位を付け、大理石のマーカーを置きます。それと同時に大理石にマークされた模様と同じカードを伏せて順番に並べ、ヒントとして4番目のカードだけマークが見えるように置きます。

回答者はそのヒントを元に出題者がランキングしたカタログ内の1番のアイテムを当て、1つ当てるごとにハート型のトークンをもらえます。1番が当たったら2番から7番まで当てていき、最後にハート型のトークンを一番集めた人が勝ちというルールです。

回答が当たった場合には「なぜそのアイテムを〇番目に選んだのか」を出題者が回答者に答えるので、コミュニケーションを取るだけでなく出題者の気持ちや嗜好などを知ることもできます。

『かたろーぐ』の遊び方としては、基本的なルールを使って1対1で行うだけでなく、回答者が多い場合は問題を当てる事で貰えるトークンをいくつ集めることが出来たかで楽しむ方法があります。

カップルや夫婦などの場合には、2人でそれぞれカードが見えないようにランキングを作ってならべ、1番から順番にカードを公開して行き、お互いの気持ちのシンクロ率を楽しむゲーム(しんくろーぐ)も行えます。(かたろーぐのマニュアルより)

『かたろーぐ』の中身

提供いただいた『かたろーぐ』はこのような箱に入っています。
半分見えないですが箱を止めてあるテープのデザインが「語朗倶」になっています。

外装の中には可愛いポーチがあり、この中にゲームに使う道具一式が入っています。小さいポーチなのでズボンのポケットにも入るサイズで、気軽に持ち運びする事ができます。

ポーチの中のゲームに使う道具一式です。
サンプルのカタログ、ランキング用のカード7枚2組、マーカー用大理石、得点用のハートのトークン。
写真に取り忘れてしまいましたが、基本的なゲームを行うためのマニュアルも入っています。

基本的なゲームを行うときは、このようにカタログにマーカーとなる大理石を自分の好きなランキング順に置き、手元のカードもランキング順に並べます。
並べ終わったらランキングで4番目にあたる真ん中のカードを表にし、それをヒントに1番から当てていきます。

カタログはどんなものでも使えるので、発達障害の子供が好きな事が多い国旗などを使ったり。

おもちゃのカタログなどでも行えます。

療育ツールとしての『かたろーぐ』

『かたろーぐ』は実際に多くの療育現場で利用されています。
参考:発達障害を持つ子供たちの療育にボードゲーム[かたろーぐ]を活用された方の声

私の方では、まだ子供達と実際に『かたろーぐ』を行えていないのですが、ゲームのルールやマニュアルなどを読んでみて思ったことを書いてみます。なお、『かたろーぐ』について勝手に解釈している部分もあるので、その点はご容赦ください。
※記事公開後、子供たちと『かたろーぐ』を行った部分を追記しました。

ルールが単純

『かたろーぐ』はカタログや複数の物に順位をつけ、それを相手が当てるといった単純なゲームです。

シンプルにゲームを行うだけなら、好きな物を選択するという能力だけで行えるので、発達障害の子供だけでなく低年齢の子供も楽しめるでしょう。

また、言葉が出なかったり言葉でのコミュニケーションが難しい子供でも、指差しだけで楽しめると思います。

参加人数が自由

『かたろーぐ』は出題者と回答者がいれば行えるゲームです。出題者は1人でも、回答者の人数は自由なため、1対1のゲームからグループでのゲームまで楽しめます。

大人数が苦手な子供の場合には、仲の良いお友達や大人と1対1で落ち着いて行えますし、グループで行えば沢山のお友達とコミュニケーションを取ることが出来ると思います。

グループで行う際はそれぞれが勝手に回答をするのではなく、意見をまとめてグループとしての回答を出すようなルールにすると、自分と違う考えがあることを理解したり、人の意見を受け入れるという学習にも繋がると思います。

明確な勝敗がつかない

発達障害を持つ子供の中には負ける事を嫌がったり、負けると怒ったり癇癪を起こしてしまうといった場合もあります。しかし、『かたろーぐ』は勝敗を決めるゲームではないので、そのような子でも落ち着いて楽しめると思います。

そもそも『かたろーぐ』の製作意図として「負けてくやしい思いをする人がでてこない、やればやるほどみんなが暖かくなるゲーム」とあるように、『かたろーぐ』では明確な勝敗がないので、勝ち負けにこだわってしまう子でも嫌な思いをする事無く楽しめると思います。

関連ページ
ゲームや遊びで勝ち負けにこだわる| 発達障害-自閉症.net

ゲームの時間が短い

5分程度と短い時間で遊べるので、ちょっとした時間や療育のひとコマとして行いやすいと思います。

ゲーム中に、回答側の子供が出題をやりたいと言い出しても5分なら我慢しやすい時間ですし、短時間次のゲームに移れるので様々なテーマのカタログで楽しめるでしょう。

考える能力が付く

『かたろーぐ』はカタログの中のものを全て当てるわけではなく、出題者が選択した7つを選びます。

さらに、7つのうち真ん中の順位に相当する4番の答えがオープンとなっているため、上位(1~3番)の物は4番以上の魅力や出題者が好む要素があると考えますし、下位の物は4番のものに比べたら魅力がないものだろうと推測する必要があります。

また、選ばれなかった物からも、こういう傾向のものは好きではないのだろうと考えることも出来ます。

コミュニケーションがとれる

『かたろーぐ』は答えが出たら出題者が「何故それを〇番に選んだのか」と皆に教える事も遊びの一つとなっているため、自分から好きな事や興味の有る事を相手に伝えることが出来るだけでなく、そこから会話が盛り上がることが期待されます。

回答者側も答えが外れてしまっても「こういう考えからコレが〇番だと思った」など、自分の推測した理由などを話しやすいと思います。

ゲームの対象物が無限大

『かたろーぐ』はどんなものでもカタログとして使って遊べることが出来るので、対象となるアイテムは無限に広がります。紙状のカタログを使うだけでなく、実物のおもちゃやお菓子などを並べて楽しむことも可能です。

どんなものでもゲームとして使えるのは自閉症などの発達障害を持つ子に対し、興味を引き出すのに効果的です。

自閉症など特定の物にこだわりや興味を持つ子は、その興味を他人と共有することが出来ません。しかし、このゲームではその特定の物をカタログ化するだけで、ゲームとして他人と共有することが出来ます。

例えば『エアコンや換気扇のファン』『信号機の種類』『ドアの種類』『エレベーターの機種』など、一般人から見れば非常にマニアックともいえるものに強い興味を持つ子供がいます。彼らは、好きな物に対して強い興味や知識を持っていますが、残念ながらその内容をお友達と共有することは出来ません。

しかし、写真などを撮って印刷し、『かたろーぐ』のカタログとして使うことで、お友達に対して何故これが1番好きなのかなどと言った話題を一時的とは言え共有して楽しむことが出来るでしょう。逆にお友達からは何故あの子がファンや信号機などに興味を持っているか知るきっかけにもなると思います。

『かたろーぐ』を使ってみて

実際に私が子供たちと『かたろーぐ』を使ってみた際の様子を書いてみます。

今回『かたろーぐ』を利用したのは、私の勤務する放課後等デイサービス利用の自閉症や学習障害の子供たちです。

理解の能力面とコミュニケーションの面から『かたろーぐ』本来の使い方は少し難しいようなので、かなり簡単なルールに変更して行いました。

ルールの変更点

  1. カタログから選ぶアイテムは3つ。
  2. 大理石のマーカーは丸「○」と四角「□」とそれ以外1つの、合計3種類を使用。

選ぶアイテムが3つなのは、子供達が好きなものを7つも選ぶのが難しいのと、頑張って7つ選んでも、最初に選んだものを忘れてしまったり、選んだ理由を覚えていることが難しかったからです。

大理石のマーカーを丸と四角ともう1種にした理由は、丸と四角以外が子供たちにとってなじみの無い図形であること。そして、丸と四角以外のマーカーは似たような形のものがいくつかあり、子供達が図形のマッチングとしても難しい様子だったことからです。

マーカーの使用方法も、1番好きなものと3番目に好きなものを丸か四角にし、それ以外の1種は形として覚えなくても良いように、ヒントとしてめくる2番目用のマーカーとしました。

『かたろーぐ』を使った子供の様子

今回の『かたろーぐ』ではお友達の好きなアイテム3種類から、2番目をヒントとして先に開示することで、残りの2つで「一番好きな物はどっちだ?」と二択形式となり、選ぶ側も単純に楽しむことが出来ました。

2~3人でワイワイと楽しんでいると、最初は興味が無かった子も途中から興味深そうに近寄ってきたり、「僕はこれが好き!」と話題に飛び入りし、自分やお友達の好きなもので盛り上がる様子が見られました。

そのうちに、それぞれの子供がカタログから自分の好きな物を選ぶ遊びになってしまったものの、普段はそれほど自ら気持ちや言葉を伝えない子供が、自分の好きな物を選ぶことでお友達とコミュニケーションを取り楽しむ事ができていました。

『かたろーぐ』本来の相手の気持ちや相手の考えを理解するという部分までたどり着くのは、今回ゲームを行った子供たちでは正直難しかったのですが、『かたろーぐ』を通じてお友達同士で様々なコミュニケーションを取れていたのは良かったですし、こちらも貴重な体験になりました。

最後に

今回は『かたろーぐ』の紹介と、療育としてのメリットや、実際に行ってみた様子を書きました。

実際に子供達と『かたろーぐ』を行うと、マニュアルではわからなかった楽しみ方や、子供ならではの遊び方も出てくると思うので、今から行うのが楽しみです。
使った際にはこのサイトでも感想を書いてみます。

※記事公開後、子供たちと『かたろーぐ』を行った部分を追記しました。

今回はかわぐち様からご提供いただいた『かたろーぐ』を簡単に説明させていただきました。『かたろーぐ』の購入方法や詳しい遊び方などの情報は、公式サイトや、かわぐち様のTwitterでもご確認ください。

Twitterのアカウント : かわぐち(「かたろーぐ」製作)@guchi_fukui
『かたろーぐ』のサイト : ちゃがちゃがゲームズ かたろーぐ 

かわぐち様このたびは『かたろーぐ』のご提供、ありがとうございました。

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