発達障害と利き手の関係と利き手が定まらない理由について

 

発達障害と利き手(右利き、左利き、両手利き)の関係と利き手が定まらない理由について

自閉症などの発達障害の子は利き手が定まっていなかったり、その特性から手先をあまり使わず利き手がどちらかわからないということがあります。

また、発達障害の子と利き手の関連なども耳にすることがあります。

では実際に発達障害と利き手は何か関連があるのか紹介します。

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利き手とは

まず最初に利き手についてですが、利き手とは、物を持つ、文字を書く、物を投げるなどの手を使う動作を行う際に、優先的に使用される手を言います。

右手が優先であれば『右利き』、左手が優先であれば『左利き』、両方が同じように使える『両利き』の、場合によって使い分ける『クロスドミナンス』があります。

右利きと左利きの割合については調査方法によって差があるようですが、日本ではおおむね90%近くが右利きで、10%程度が左利きであるようです。

詳細:国立国会図書館レファレンス協同データベース(右利きの人と左利きの人の割合を知りたい。世界および日本における割合もわかるとよい。)

クロスドミナンス

クロスドミナンス(cross-dominance)とは、用途によって左右の手を使い分ける事を言います。

例としてはフォークやスプーンを持つときは右手、文字を書く際は左手、ボールを投げる際は右手など、行う内容により自分の意思で左右を使い分けます。

注意としては両方の手が常に同じように使える『両利き』ではないと言うことです。

なおクロスドミナンスだからといって発達障害だというわけではなく、健常者にもクロスドミナンスの特徴を持つ人は多くいます。

クロスドミナンスになる理由としては、先天的に左利きだった人が右利きに矯正して行く際や、左利きの人が生活の中で右手を使わざるを得ない部分(自動販売機、駅の改札、ドアの開閉、家電の操作など)で意図的に使い分けている場合が多いようです。

また、小さいころからスポーツなどを行っていると、利き手とは逆側の動作をするためクロスドミナンスになることもあります。例としては野球の『右投げ左打ち』などです。

利き手の決まる時期

子供の利き手が決まる時期については多くの報告や意見があります。

お母さんのおなかの中にいる胎児の頃から利き手の指をしゃぶっているという報告や、乳幼児期には左右の手をいろいろと使い体と知能が発達してきた4歳ごとに決まるというもの、遺伝子の影響によるものなど様々です。

このことから年齢の低いうちは右手を使っているから「右利き」、左手が多いから「左利き」、両方使っているから「両利き」だと決め付けず、しばらく成長を見守り本人がどちらの手を優先的に使い始めるかを待ってあげる必要もあります。

発達障害の子は利き手が定まらないことがある

発達障害の子と利き手の関連についてですが、発達障害の子の中にはある程度の年齢になっても利き手が定まらない事もあります。

利き手が定まらないと物を持つ際に、さっきは右手、今度は左手とどちらの手も使ったり、目的の物に近いほうの手を伸ばして物を取る事があります。

また、お箸を使うときは右手、鉛筆を持つときは左手など持つものや行うことによって使い分けている事もあります。

発達障害の子が利き手が定まらない理由

発達障害の子の利き手が定まらない理由にはいくつかの理由が考えられます。

左右の手の分化の問題

発達障害であると左右の手の分化が進まず、利き手が定まらないということが考えられます。

左右の分化が進まないのには、左右への意識や理解が少ないこと、体の部位・ボディイメージ・固有感覚の鈍麻などから右手・左手の認識が難しい事などが考えられます。

年齢の小さいうちは、手に取りたいものを見つけると取り合えず近いほうの手を伸ばして手に取ります。それを何度も繰り返しているうちに自分の利き手(使いやすい手)が定まる事が多いようです。

発達障害の特性などから左右の手の分化が進まないと、年齢が高くなっても左右の手に違いや意識が出てこないので両方の手を使い続ける事があります。

感覚過敏の問題から

自閉症や発達障害の子の多くに感覚が非常に敏感になる『感覚過敏』という特徴を持っています。

聴覚が過敏となると特定の音を嫌がる、ちょっとした音でもうるさく感じる事があります。視覚の過敏があると蛍光灯を眩しいと感じたり、蛍光ペンの色が明るすぎて読み取れない事があります。

物を触ったりつかんだりする際の感覚が非常に敏感となる『触覚過敏』の特徴を持つと、ベタベタしたものやチクチクするものなど、特定の物を持つのを嫌がることがあります。

『触覚過敏』も手のひら全体であると物を掴んだり持ったりすることを嫌がり、指先に見られると物を摘んだり細かい作業を嫌います。

この『触覚過敏』が片方の手や手の一部分に見られると、特定の手で物を触らなくなる為、利き手が定まらなくなる事があります。

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こだわりから

強いこだわりを持つのも自閉症などの発達障害の子に見られる大きな特徴です。

発達障害のこだわりには様々な物があり、子供によっては物の位置、自分の体の動きなどにルールを作っている場合があります。このようなこだわりを持つ場合には、「この物を触るときは左手」など使うてを決めている事があります。

過去の出来事からこだわる事もあり、以前コップを右手で持ったら滑って落としてしまったが、左手で持ったら落とさなかったという成功体験を元に「コップは左手で持つもの」と決め付けてしまう事もあります。

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左利きや両利きは発達障害なのか?

うわさとして「左利きや両利きは発達障害になりやすい」「左利きは知能が高い」「左利きは芸術センスがある」などを耳にすることがあります。

しかしこれらの話に対して幾つかの研究や報告はあるようですが、確定的なものは出てきておらず気にする必要がありません。

ただ上記の『発達障害の子が利き手が定まらない理由』のように、発達障害があると利き手が定まりにくい事があるため、結果的に両利きや利き手が決まっていない子の場合に発達障害である可能性が高いとされてしまいます。

両利きは学習面で問題が出やすいとも言われます。これは、利き手が定まっていないことにより指先の巧緻性の発達などの部分から、文字の書き取りが上手にできなかったり、工作や作業などが不得意であるという事が理由であると考えられます。

利き手が定まっていないと

利き手が定まらないことで、発達障害の苦手な部分が助長されてしまうことがあります。

発達障害の子は指先の巧緻性(器用さ)や協調性の能力が弱い傾向にあります。

細かい動きを行うためには何度も指先を動かすことで、感覚、動かし方、微調整、指の位置などを学んでいきます。

しかし、利き手が定まらず毎回別の手を使って作業を行っていても、なかなか指の動きが身につかず不器用なままとなってしまいます。

物を持ったり抑えたりするような力を入れる動きも同様で、毎回別の手を使っていると、力の入れ加減、体重のかけ方、握り方などを習得するのに時間がかかってしまいます。

発達障害の子の利き手の矯正

社会の中では駅の改札、自動販売機のコイン投入口、ドアの開閉、家電製品のボタンなど右利きを対象とした作りになっているものも多く、左利きの人は不便を感じることも多いと思います。

そのため以前は左利きであると、右利き優先の社会生活で不便を感じる事が多いから矯正をさせる事が多かったようですが、現在では無理に矯正をする必要も無いといわれることが多くなりました。

発達障害の子は利き手の矯正よりも先に学ぶべきことや優先すべきことが多くあります。唯でさえ日常生活において苦手な面が多い子が、そこで利き手の矯正をさせられると今まで学んできたことや体の動きへの理解がゼロになり、新たに習得しなおさなければなりません。

また、利き手の矯正は体の動きばかりか、情報の取得やその処理など頭の中での考え方にも影響が出るので場合によっては混乱し、子供へ強いストレスをかけてしまう可能性が高くなります。

発達障害の子における利き手の矯正については、子供の特性や状況、発達段階などを考慮し、各専門家からアドバイスを受けた上で行うことが重要になります。

まとめ

発達障害の子は左利きが多いという話や、利き手が定まらないと発達障害になるという噂を耳にすることがあります。実際には何も根拠が無いようなので、特に気にする必要はありません。

大切なのは子供本人の特性や発達の状況を理解し、その子にとってベストな利き手への意識や、手の使い方を教えて支援してあげる事になります。

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