発達障害の子が物を無くしやすい理由とその対処方法

 

発達障害の子が物を無くしやすい理由とその対処方法

発達障害の子はその特性からすぐに物を無くしてしまったり、無くしたものを見つけることができないことがあります。

子供の場合には学校から持ってきた宿題が無くなったり、鉛筆や消しゴムが直ぐになくなってしまう事が多いです。場合によっては家の鍵など大事なものをなくしてしまうことも。

また、整理整頓が出来なかったり、片づけを行うのが難しいという特徴もあることから、より物を無くしやすい傾向があります。

では発達障害の子供はなぜ物をなくしすいのか、その理由と対処法を紹介します。

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発達障害の子が物を紛失したりなくしやすい理由

発達障害の子は記憶力や注意力の問題、整理整頓への理解、視界からの認識などの問題から物をなくしやすくなる傾向があります。

置いた場所を忘れてしまう

発達障害の子は興味のない物事を記憶していることを苦手としています。また、ワーキングメモリの能力も低いことが多く、一時的に覚えていることも難しいことがあります。

そのために、物を置いたりどこかにしまっても、その場所を忘れてしまうことで、結果として物を無くしてしまいます。

発達障害の人は、物事の記憶の方法も健常者とは異なる場合があります。

健常者は物事を覚える際に優先度をつけて覚えますが、発達障害の人は優先度の付け方が独特で、自分の好きなことを優先したり、後から入った情報の方が重要だと勘違いすることがあります。

場合によっては先に覚えていた情報を後から入った情報で上書きしてしまい、先の記憶を忘れてしまったり、別の内容として覚えてしまいます。

物事を記憶として覚えていても、別の気になる事が目に入ったりすると、そっちに興味や意識が向いてしまい、記憶を忘れてしまうという場合も多いです。

記憶があいまいである

記憶が曖昧なため、物の場所を覚えていなかったり、何処にあるのかを忘れてしまうこともあります。

上記に記載したように発達障害の人は、情報の受け取り方や記憶の方法が独特です。

そのため、探している物を「この場所に置いた」と本人は覚えていても、その置いた記憶自体が間違っていたり、別の記憶と混同していることがあります。

「この場所に置いた」と一度思い込んでしまうと、その思い込みから逃れられず、他の場所に置いて有るかもという考えが思い浮かばないため、無くした物を探し出すのに時間がかかります。

子供の場合には学校から宿題を持って帰ってきたと思って家で必死に「無い!無い!」と探しても、実際にはカバンに入れておらず、学校の机の中に入れっぱなしだという事も多いです。

注意力が散漫

注意力が散漫だというのも理由のひとつです。注意力が散漫であると物を無くしやすくなったり、無くした物を探すのが難しくなります。

物を無くすだけでなく、ちょっとした失敗などが増え、勉強においても計算間違いや文字間違いなど細かいミスが出てしまいます。

特にADHD(注意欠陥多動性障害)の子の場合、不注意の特性が強い(不注意優勢型)ことがあります。

不注意の特性が強いと「注意力が散漫」「物忘れが多い」「ミスや失敗が多い」「遅刻が多い」「整理整頓が苦手」「集中の継続が苦手」「気が散りやすい」などの特徴が見られやすくなります。

整理整頓や片付けが苦手

整理整頓も発達障害の子は苦手な場合が多く、使ったものを有った場所に戻せなかったり、使ったら使いっぱなしにしてしまう傾向にあります。

整理整頓や片づけができない理由にも「所定の場所を忘れてしまう」「整頓を先延ばしにしてしまう」「片付け自体の意味がわからない」など様々な背景があります。

自閉症の子の場合には物の位置や個数などにこだわる事があります。このような特徴を持っていると、物を有った場所にしっかり戻さないと気がすまなかったり、決まった位置に物がないと不安を感じてパニックになる事もあります。

探し物が有るのに視界に入らない

発達障害の子は物が見えているのにもかかわらず、意識が向いておらず気がつかなかったり、逆に対象物とは全く別のものを見ているという事があります。

これは視覚や視力に問題があるというわけではなく、発達障害の特性から来るものです。

発達障害の子は全体を満遍なく見渡すのが苦手で、狭い範囲にしか注視できなかったり、気になった極一部の物しか意識できない事があります。

細かいものに意識が向きやすいという特徴も有り、物を探していても気になる汚れやゴミなどが目に入ると、それしか見る事ができない場合もあります。

また、視線をスムーズに動かすのも難しいことがあり、すぐ近くに有っても真正面に無いと気がつかない場合も有ります。

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物を無くしたり有る場所を忘れてしまう場合の対処方法

物を無くしてしまったり、置いてある場所を忘れてしまう際にはどのような対処法や支援方法を取ればよいのか紹介します。

物の置き場を決める

基本的な事ですが、物の置き場を決めるのは重要です。

必要な物は置き場所を決めて必ずその位置に戻すようにします。置き場所もわかりやすいようにラベルや写真を付けたり、子供本人が理解しやすい目印を付けると効果があります。

物の置き場所を決めてもなかなか戻すことが出来ないと思いますが、家族が協力し所定の位置に物が置いてない場合には声をかけて必ず戻すようにさせましょう。最初は難しいと思いますが、何度も行っているうちに習慣として身に付くようになります。

物を所定の位置に戻す練習も、いきなりたくさんの物からは始めると混乱してしまうので、重要で無くすことの多い物から行い、ひとつの物を戻せるようになったら次の物を追加しましょう。

カバンやリュックなどで宿題やプリントが何処かへ行ってしまう場合には、決まった仕切りの場所に入れたり、専用のファイルケースなどを用意しそこに入れるようにしましょう。

毎回同じ場所に戻すのが難しい場合には、使い終わったらとりあえず入れるボックスなどを用意して、その中に入れるようにします。そうすることで使ったものはボックスの中に入っているため、物を無くしてしまうことはなくなります。

このボックスは定期的に整頓する時間を用意し、中の物がたまったら所定の位置に戻すようにしましょう。

使った物をすぐに片付ける

物を使ったらすぐに片付ける事を習慣付けるのも重要です。
使ってから時間がたつと何処から持ってきたのか忘れてしまったり、場合によっては自分で持ち出したことすらも覚えていない場合があります。

複数の物を使っている場合には、どんどん物が増えてゴチャゴチャになってしまうので、使い終わったら直ぐにあった場所に戻すようにしましょう。

持ち物自体を減らす

物が多いと乱雑になり整頓が難しく、自分が持っている個数を把握できなくなり、場合によっては子供が物をなくしても「1つ無いけど他のがあるからいいや」と思ってしまうこともあります。

物は少なくして必要最低限にすることで、整理整頓が容易になるだけでなく、物を大切にする気持ちや意識も高まります。

自分の持ち物に名前や目印をつける

学校などで鉛筆や消しゴムをなくしてしまう場合には、自分の持ち物に名前を書いたり、子供がわかりやすいような目印をつける事も重要です。

名前や目印を付けておけば無くなってしまっても、他の人が見つけて本人に返してくれるでしょう。

さらに、子供によっては自分の持ち物の認識や理解が乏しい子もいるので、自分の持ち物だと意識を付けるためにも固有の目印を付ける事は効果があります。

鈴やストラップなどを付ける

お財布、鍵、携帯やスマートフォン、定期券などの場合には、鈴や目立つストラップなどを付けると見つけやすくなります。

鈴の場合には探している際に手などが触れると音が鳴ってわかりやすいほか、落ちた際に音で気が付くので落し物防止の効果があります。

ストラップなどもある程度大きく目立つものをつけて置くことで目印となり、室内でなくした際には探しやすくなります。

私自身も自転車の鍵や家の鍵を見失うことが多いので、実際に小さな鈴をつけて見つけやすくしています。

紐を付ける

お財布、鍵、定期券など重要な物の場合には、紐やなどで鞄と括り付けておく方法もあります。物理的に紐で付けておく事で、鞄を紛失しない限り物を無くすことはなくなります。

結ぶものにも伸縮するストラップや、コイル状の延びるコード、リール式のキーホルダーなど様々なものがあるので、使いやすいタイプを選ぶとよいでしょう。

まとめ

発達障害の子が物を無くしたり紛失しやすいのには、その障害の特性からの様々な理由が考えられます。

物をなくしてしまったり、ある場所を忘れてしまう際には、その子の特性を考慮し対処方法を考えてあげることが必要です。

子供の内なら物をなくしても大事にはなりませんが、社会人となるとそうもいきません。特に会社の書類などを紛失した際には金銭的や社会的問題となる事もあります。

そのため子供のうちからどのような面で物を無くしやすいのか、どのような対処が効果的なのかを見極め適切な支援と学習を行う事が重要です。

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