自閉症の赤ちゃんの特徴・症状・兆候
自閉症の赤ちゃんの特徴・症状・兆候
最近よく耳にする発達障害や自閉症。
赤ちゃんの発達が遅れたり、特異的な行動が見られるとつい「この子は自閉症なのでは?」と不安になってしまうと思います。
そこで、このページでは自閉症の赤ちゃんに見られる代表的な特徴や行動などを調べてまとめてみました。
なお、このページに記載されている行動が有るからと言って必ずしも自閉症と言うわけではありません。
自閉症とは
まず、自閉症について簡単に説明します。
自閉症とは広汎性発達障害の一つで、先天的な脳機能の障害が原因で発生すると考えられています。
自閉症は「社会関係構築の困難」「意思伝達などコミュニケーションの困難」「興味や関心の幅が狭く、特定の物事にこだわる」という3つの大きな特徴が有ります。
自閉症という言葉から連想しがちな「心を閉ざしてしまった」「自分の殻に引きこもってしまった」という状態とは全く別の症状となります。
通常の自閉症児は、3歳までに上記3項目の特徴に関連する行動などが見られます。
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自閉症とは | 発達障害-自閉症.net
乳幼児期の問題
自閉症や発達障害の子どもは、赤ちゃんである乳幼児期から様々な問題が見られるとされています。
自閉症や発達障害は生まれながらに持つ障害(場合によっては3歳ごろまでに何らかの原因で発生する障害)です。そのため、障害の診断が下されるまえから自閉症や各種発達障害であります。
具体的にこのページで紹介する赤ちゃんに見られる自閉症や発達障害の特徴のほか、お母さんやお父さんが育てにくいと感じたり、お兄ちゃんやお姉ちゃんのときとは何か違うと思うようです。また、定型発達の子どもが自然に習得する物事が、ある程度の年齢になっても身につかないということも見られます。
正常に発達している子供は、まだ自分から動ける状態でなくても、手渡されたおもちゃや、近くにある布団やベビーベッドの柵などを掴んで遊んだりして指先の感覚や使い方を学んで生きます。しかし、自閉症などの子どもの場合は物に興味を示すのが遅かったり、感覚過敏などから物に掴むのを嫌がってしまうことがあります。このような行動から指先の使い方の向上や感覚の感じ方が遅れてしまいます。
自分が動けるようになると好奇心から興味のあるもので遊んだり触りに行ったりするようになります。自閉症や発達障害の子どもはある程度生長をしても、筋肉や関節の発達の遅れからあまり動かない、物事に興味を示さず自分から行動をしない、パニックなどで泣いたり怒ってばかりいる、寝てばかりいるなどの状態であることが多いです。そのため、自分から様々な事を体験する経験が少なくなってしまい、後の発達に遅れが生じる事もあります。
自閉症の赤ちゃんの主な特徴
自閉症の赤ちゃんに見られる主な特徴を「動きや行動」「コミュニケーション」「こだわりや好み」「言葉」「感覚」「表情」「睡眠」「発達」「その他」の種類に分けてまとめてみました。
動きや行動に関係する特徴
多動
多動とは落ち着きが無く、常に動き回ったり体を動かしている状態を指します。
場合によっては高い場所によじ登ったりする事も見られます。
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自閉症と多動 – 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net
クレーン行動
クレーン行動とは「物を取って欲しい」「何かを動かしてもらいたい」場合に、親や周囲に居る人の手を持って要求をする行動です。自閉症の子供は自分の要求を言葉や指差しなどのジェスチャーで表現することが難しいため、この行動を取るとされています。
相手の手を持って動かす動作が、あたかもクレーンを操作しているかのように見られることから『クレーン行動』と呼ばれています。
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クレーン行動・クレーン現象 – 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net
体を揺らす
座っている時や立っている際に体を前後や左右に揺らす行為です。
自閉症の子供は特定の動きを何度も繰り返し行って楽しむ事や、特定の刺激や感覚を得るためにこのような行動を行うことが有ります。
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体を前後に揺らす- 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net
手のひらをひらひらさせる
手のひらをひらひらさせたり腕を振ったりする行為は上記の体を揺らす行為と同様に、同じ動きを楽しんだり感覚として刺激や感覚をを得るために行います。
また、顔の前で手のひらを振っている場合は、手の動きを見て楽しんだり、手の向こう側の景色が変わる様子などを楽しんでいる場合が有ります。
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自閉症は手をひらひらさせる- 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net
逆さバイバイ
逆さバイバイとは逆向きバイバイなどとも呼ばれ、手のひらを自分に向けて行うバイバイです。
逆さバイバイは自閉症の子供以外にも身体の発達が遅れている場合や、知能の発達がまだ未熟である小さい子供にも見られることが有ります。
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自閉症と逆向きバイバイ・逆さバイバイ | 発達障害-自閉症.net
自傷行為
自傷行為とは自分で自分を傷つけてしまう行動です。
自傷行為は不満や不快感を抱えていたりイライラする場合に出ることが多いです。
赤ちゃんの場合だと倒れこんで床に頭を打ち付ける自傷行為が多く見られます。成長すると自分の手や腕を噛んだり、頭や顔を叩いたりする自傷行為を行う事が有ります。
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自傷行為の原因と対処法- 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net
パニック
自閉症の子供は予想外の事が発生した場合に対応するのが難しく、混乱してしまいパニックになる事が有ります。
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パニックとその対処方法- 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net
癇癪
癇癪(かんしゃく)は、イライラしている場合や好きな行動を制限されてしまう場合に出ることが多く見られます。
場所見知り
初めての場所や苦手の場所に入れず、動けず固まってしまったり、泣き出したりパニックになったりすることが有ります。
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自閉症と場所見知り | 発達障害-自閉症.net
物の扱いが雑
おもちゃなどを使っていても、直ぐに落としたり、放り投げてしまうように物を雑に扱ってしまうことがあります。
これは物に対しての扱いが雑ではなく、手の力が弱かったり、筋肉や間接を動かす機能の発達が遅いために、物をうまく持てず落としてしまったり、力いっぱい腕を動かした際に物が飛んでいってしまうということがあります。
コミュニケーションに関係する特徴
目を合わせない
自閉症の子供は話しかけても目を合わせないことがよく見られます。
目を合わせない理由は「目を合わせるのが怖いから」「他の事に興味が向いているから」「話しかけた人を認識していない」などのためです。
名前を呼んでも反応が無い
名前を呼んでも振り向かなかったり、全く反応が無い場合が有ります。
抱っこを嫌がりのけぞる
抱っこをしても嫌がったりのけぞってしまうのは、感覚が過敏で有るため抱っこをされることに「痛い」「気持ち悪い」「不快」と感じているからだと言われています。
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自閉症の感覚過敏とは| 発達障害-自閉症.net
甘えない
自分から母親を求めたり、甘えたりする行動が見られない事があります。
これは他人に対しての興味が無かったり、母親に対して愛着を感じていないためと考えられています。また、母親のことを人だと思っていなかったり、身を守ってくれる人だと感じていない事もあります。
人と係わらない
自閉症にはコミュニケーションの困難と大きな特徴があるため、人と係わるのが苦手であったり、人に対して興味や関心が無い場合が有ります。
逆に、自閉症でもかかわりを求めたり、誰にでも話しかけたりする人懐っこい子供も見られます。
人見知りをしない
人見知りをせず誰とでも接することができる子供もいます。コミュニケーション能力に問題が無い場合は問題がありませんが、人を個々に認識できていないため誰もが同じ人だと思い込んでいる場合も有ります。
一人で居ても平気
母親や他人に興味が無かったり求めたりすることが無いため、長時間一人で居ても泣いたり不安になったりしない場合も有ります。
人まねをしない
人まねは「動作共鳴」とも呼ばれ赤ちゃんが反射的に行う行動で、親の表情や顔の動きを真似する動作です。健常な赤ちゃんだと生後1ヶ月ぐらいから見られるようになりますが、自閉症の子供だと「動作共鳴」が見られなかったり、現れるまでに時間がかかります。
こだわりや好みに関係する特徴
こだわり
自閉症の大きな特徴としてこだわりが有ります。
こだわりは、玩具など好きな物に対するものから、動き、行動、音、食べ物、色、形、時間、物の位置など様々な範囲にわたります。
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自閉症のこだわり| 発達障害-自閉症.net
光るもの、回るもの、水の流れが好き
自閉症の子供は光るもの、回るもの、水の流れなどを好みます。
光るものは隙間から入る太陽の光、ディスプレイ、クリスマスツリーなどのカラフルなLEDライトなどが有ります。
回るものには扇風機や換気扇やヒーターなどのファン、自転車のタイヤ、玩具の自動車のタイヤなどが有ります。
また、水の流れや、ひも状のもの、ひらひらしたものなどを好む事も多く見られます。
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自閉症は一定の動きや回るもの物が好き – 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net
おもちゃの使い方が独特
自閉症の子供は玩具の使い方が通常と異なり独特な遊び方をする場合が有ります。
良くある例だと玩具の自動車を自動車として遊ぶのではなく、タイヤだけを動かして眺めたり、並べたりして楽しんだりします。
物を並べたがる
物を並べるのも自閉症に見られる代表的な特徴で、比較的小さな玩具や積み木などを横一列に並べたり、縦に積み上げたりします。
並べ方も一見適当に見えても、本人の中では何らかの順序や決まりごとが有る場合が有ります。
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物を規則的に並べる – 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net
言葉に関係する特徴
言葉が出ない
通常子供は1歳前後から喃語(なんご)と呼ばれる「あ~」「う~」などの言葉を発するようになり、1歳半から2歳ぐらいにかけて意味のある単語を話すようになります。
自閉症の場合だと言葉の遅れが見られたり、場合によっては一生意味の有る言葉を話す事が無い場合も有ります。
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言葉の発達と遅れ – 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net
意味のない言葉や声を出す
奇声や雄たけびのような発声や意味の無い言葉を発する事が有ります。
これは単純に言葉の発達が遅れてしまっている場合と、周りの人が聞くと意味のわからない言葉でも、本人からすれば何らかの意味の有る言葉を発している場合が有ります。
感覚に関係する特徴
感覚の異常
自閉症の場合、様々な感覚に対して過剰に反応してしまう感覚過敏という大きな特徴が有ります。そのため、ちょっとした刺激でも痛いと感じたりする場合が有ります。
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自閉症の感覚過敏とは| 発達障害-自閉症.net
感覚過敏とは逆に、感覚が鈍くなってしまう感覚鈍磨という特徴もあります。これは感覚や刺激を感じにくくなってしまい、痛みがわからない、暑さや寒さがわからないという事に繋がります。
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自閉症の感覚鈍磨とは| 発達障害-自閉症.net
感覚の異常は人により様々で、この感覚は敏感だが別の感覚に対しては鈍いということもあります。
感覚の感じ方に異常がでると、「痛みを感じにくいため怪我や病気に気づくのが遅れる」「暑くても汗をかかず熱がこもってしまう」「空腹になっても泣いたり訴えない」「満腹感がわからずいつまでもミルクを飲んだり、離乳食を食べ続ける」「触られると嫌がる」「食べ物の味覚や触覚から好き嫌いができる」などの問題に繋がることがあります。
口に物を入れて感覚を楽しむ
刺激などを感じにくいという特徴が有ることから、刺激に対して敏感な口の中に指や物を入れたり、唇に物を当てて感覚を楽しむという事が有ります。これは通常の赤ちゃんや小さい子供にも見られる特徴でも有ります。
体温がこもりやすい
感覚を感じにくい事や汗をかく機能の動きが弱いために、体温がからだにこもってしまう事が有ります。気温が高い日などに顔などの肌が赤く火照っている場合には、体を冷やすなどの注意が必要となります。
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体温調整が苦手 – 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net
表情に関係する特徴
笑わない
自閉症の赤ちゃんはあやしても笑わない事が有ります。
また、通常の赤ちゃんだと母親が笑いかけると一緒に笑う事が有りますが、自閉症の場合はこのような事も見られません。
表情に乏しい
上記の「笑わない」と似た事柄ですが、笑い以外にも「辛い」「悲しい」などのときも表情に変化が見られず、表情が乏しいように見られることが有ります。
睡眠に関係する特徴
睡眠の異常
自閉症の場合には睡眠に異常がある睡眠障害を持っていることが有ります。
具体的には夜遅くまで起きていてなかなか寝ない、聴覚の過敏でちょっとした物音でも起きてしまう、1日のサイクルがずれていて寝る時間や起きる時間が定まっていないなどが有ります。
また、過眠という睡眠障害のために、長時間の睡眠が必要となったり起きずに寝続けてしまう事も有ります。
よく寝る
上記の睡眠異常とは逆で、よく寝るという特徴も有ります。
これは感覚が鈍いために、オムツの濡れの不快感を感じない、物音にも気が付かないで目覚めることが少ないためです。
また、自閉症や発達障害は疲れやすいという特徴も有ることから、起きずに良く寝てしまうという事も有ります。
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自閉症の感覚鈍麻とは| 発達障害-自閉症.net
発達に関係する特徴
体の動きがぎこちない
体の動きに関連する発達障害に「発達性協調運動障害」と言うものが有ります。
これは体の筋肉や神経や骨、視覚や聴覚などの感覚に異常がないにも関わらず、体の動作に困難が生じる障害です。
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発達性協調運動障害とは | 発達障害-自閉症.net
自閉症などの場合も体を上手に動かせないことが有り、細かい指先などの動きの微細運動が苦手、全身を使った動きの粗大運動が苦手、体の複数の動きを組み合わせた協調運動が苦手などの症状が見られることが有ります。
体の発達が遅い
自閉症や発達障害の子供は体の発達が遅い場合が有ります。
しかし、自閉症や発達障害では体の発達に直接の影響は無いことから、重複した他の障害や病気や成長ホルモンの異常などが原因と考えられます。
全身が柔らかい
自閉症の赤ちゃんは力の入れ加減がわからなかったり、筋肉や関節の発達が遅いため、全身がくにゃくにゃと柔らかい事があります。
このような赤ちゃんはフロッピーインファント(低緊張乳児)と呼ばれる事があり、首の座りが遅かったり、ハイハイや立ち歩きが遅くなる場合があります。
食べ物や飲み物をぼろぼろこぼす
乳幼児の際は飲み物を飲んだり、食べ物を食べたりする際に口の周りからこぼしてしまうことがあり、これは有る程度成長するまでに見られる正常な行動でもあります。
しかし、口の筋肉の発達が遅いために、食べ物を噛む力、舌を器用に使う力、唇とを閉じる力などが弱くなってしまい食べ物をこぼしてしまう事があります。
また、口の中の感覚過敏や味覚過敏により嫌な食べ物を出してしまう、飲み込む力が弱いために口に入れたものがなかなかなくならないという場合も見られます。
その他の特徴
横目で物を見る
自閉症の場合TVなどを横目で見たりする事が有ります。
これは視界から入る感覚を横目で見て楽しんだりしている場合や、目と神経の感覚が弱いためと考えられています。
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自閉症と斜視・横目 | 発達障害-自閉症.net
動くものを目で追わない
目で物を追わないという特徴が見られる場合も有ります。
目で追わないものにはボールなど単純に動くものや、母親や父親など人の動きなどが有ります。
共感性が無い
共感性とは他人との感情を共有することで、通常の赤ちゃんだとお母さんが笑っていると一緒に笑ったり微笑んだりしますが、自閉症の場合子供は無関心で有ったり反応を示さないということが見られます。これは表情から他人の気持ちを汲み取るのが難しいという特徴のために起こります。
まとめ
自閉症の場合1歳半検診で自閉症の疑いが出始め、3歳半検診で自閉症や発達障害などの診断が出ることが殆どのようです。
しかし、中には小学校に上がるまで自閉症と診断されなかったり、場合によっては大人になるまでわからない事も有ります。
このページので記載した自閉症の特徴は何個当てはまったから自閉症であるというものではありません。逆に知能が未熟である赤ちゃんや幼い子供には誰でも見られる傾向でも有ります。
自閉症は発達の段階や子供の特徴により人それぞれであるため、素人である両親は勿論、専門家でも正確な判断は難しくなります。また、自閉症だけではなく他の障害や病気である可能性も有ります。
赤ちゃんの発達や気になる特徴が見られたら、小児医療や精神発達の専門家や地域の発達支援センターや児童相談所などに相談するのが良いでしょう。