発達障害の子は転んだりつまづきやすい
発達障害の子は転んだりつまづきやすい
自閉症などの発達障害の子は、その特性から転んでしまったり転倒しやすいという場合があります。
歩いていてもちょっとした段差で転んでしまったり、場合によっては何も無いところで躓いてしまうことも。
これはスムーズに動かすのが難しい、バランス感覚が鈍いなど、発達障害の特徴から起こることがあります。
では、発達障害のこがなぜ転びやすくなるのかを紹介します。
発達障害の子が転びやすい理由
発達障害の子はその様々な特性から転んでしまったり、転びやすくなります。
全身の筋肉や体幹が弱い
自閉症や発達障害の子供は筋肉の発達が遅れていたり、体幹が弱い場合が見られます。
筋肉や体幹機能の発達が遅れていたり弱い場合には、体を支えることや姿勢を保持することが難しく、体のバランスが崩れ転びやすくなってしまいます。
バランス感覚が悪い
自閉症に良く見られる特徴として感覚が過敏となる「感覚過敏」や「感覚鈍麻」の影響によりバランス感覚が悪いという事もあります。
バランス感覚は平衡感覚や前庭感覚とも呼ばれる事も有り、自分の体の向き、傾き、動き、動いている速度や方向などを感じ取っています。
バランス感覚が良いと転びにくくなる他、体がスムーズに動かせるようになります。
逆にバランス感覚が悪いと目が回りやすくなる、転びやすくなる、ふらつくなどの症状が出る他ほか、姿勢の保持や動きの制御などが難しくなる事があります。
バランスに関係する部分が感覚過敏などで非常に敏感になると、ちょっとした揺れなどでも大きい動きと感じ取って怖くなったりします。
逆に感覚鈍麻などで鈍感になると、揺れや回転などの動きを感じ取りにくくなります。自閉症の子供が目が回りにくいという特徴も、このバランス感覚に関連した器官の発達が遅れているためと言われています。
関連ページ
自閉症の子供は目が回らない 発達障害-自閉症.net
関連ページ
自閉症や発達障害の感覚鈍麻とは 発達障害-自閉症.net
関連ページ
自閉症や発達障害の感覚過敏とは 発達障害-自閉症.net
体をスムーズに動かせない
自閉症などの子供は様々な理由から体をスムーズに動かすことが難しい場合もあります。
体をスムーズに動かせない理由には「筋肉の発達の遅れ」「体幹機能の低下」「手足の動きが理解できない」「複数の部位を同時に動かせない」「固有感覚の問題」などの理由があります。
自閉症の人は様々な感覚の感じ方が健常者と違うほか、物事をイメージするのが苦手であるため、体の部位が自分の体のどの位置にあるのか、体の部位がどのように動くのかが理解できない事もあります。
自閉症者で多くの本を出版している東田直樹さんは著書『自閉症の僕が跳びはねる理由』の中で、「手や足の動きがぎこちないのはどうしてですか?」という問いに対して「手足がどうなっているのかわからない。どうやったら自分の思い通りに動くのかもわからない」という旨を記しています。
また「発達性協調運動障害」という障害もあります。これは体の複数の部位を同時に動かすことが困難な障害で、縄跳びのように「手を回して縄を動かしながら、足で縄を跳ぶ」ような動作が非常に難しくなります。
軽度だと不器用や運動オンチと見られる程度ですが、重度になると服のボタンをかけたり靴の紐を結ぶ事も困難となります。発達性協調運動障害は自閉症や発達障害の子供の多くに見られる障害でもあります。
固有感覚とは筋肉の力の入れ加減や、関節の曲げ具合などを感じ取る感覚です。固有感覚の感じ方や処理の仕方に問題があると、適切な力の加減や、関節の曲げ伸ばしなどの調整に支障が出ることがあります。
体制を立て直せない
健常な人の場合、転びそうになったりすると、体の重心を移動させバランスを整えたり、足を一歩前に出して体制を整える事ができます。しかし、自閉症の子供は体の発達や感覚の問題などから、とっさに転倒への対応が難しく体制を立て直せないため転びやすくなります。
そのため、転んだ際にも体を守ろうとする反応が出来ず、手が出なかったり、体をひねるという動作がとれずに顔や頭から転んで怪我をしてしまうことも有ります。
偏平足である
自閉症の子供は土踏まずが無く足の裏が平らである「偏平足」の子供も比較的多く見られます。
偏平足は足の裏の靭帯などの筋肉の発達が弱いと発生します。自閉症や発達障害の子供は筋肉の発達が遅いことがあり、足の筋肉の発達が弱いと偏平足になる事があります。
また、偏平足は状態にもよりますが、外反母趾やX脚やO脚の原因になる事もあります。また、長時間立ったり歩いたりすると体重の分散などが出来ず、足の指やふくらはぎや太ももなどに疲れや痛みが出る事も有ります。
靴が合っていない
子供の足に靴が合っていないと、バランス良く歩くのが難しくなり転びやすくなってしまいます。靴が合っていない理由には「靴が大きい・小さい」「紐やマジックテープがしっかり止められない」「底が厚い・薄い」「硬い・柔らかい」など様々な部分が関連します。
自閉症の子の場合にはこだわりから同じ靴しか履けず、自分の足に合った靴を使うのが困難だという場合があります。また、感覚過敏などから靴を強く止めるのを嫌がったり、逆に必要以上に強く止めたがるという事もあります。
子供の足が偏平足や外反母趾である事も多く、その場合には足に合った補装具の靴などを作って履く必要もあります。なお、補装具を作る際には療育センターの療法士や医師からの診断を受ける必要があります。
補装具を作る際には国からの補装具費支給制度があり、原則1割負担で上限額も決まっているので補助を受けて作ることが出来ます。補装具費支給制度場合には居住している市区町村の窓口に申請を行う必要があります。
つま先立ちや踵歩きをしている
自閉症の人に見られる歩き方の特徴に「つま先歩き」をするというものがあります。
これは感覚過敏により足の裏の刺激が苦手で不快を感じるため、それを避けようとしてつま先立ちになるものです。逆につま先の感覚が心地よいと感じてしまうと「常同行動」や「感覚遊び」として行ってしまう事もあります。
つま先立ちだと重心が前方にかかるので、前かがみの状態となり、歩いたり走ったりすると転びやすくなってしまいます。
慢性的につま先立ちを行っていると、筋肉が緊張して足に負担がかかったり、筋肉が硬直してつま先立ちしか出来なくなってしまう事もあります。
一般的にはつま先立ちをする子供が多いですが、中には踵(かかと)に重心をかけて、踵歩きをする子供も数も見られることがあります。
関連ページ
つま先立ちとつま先歩きをする 発達障害-自閉症.net
空間や距離の認識が難しい
自閉症の特徴として様々な感覚が鈍くなってしまう「感覚鈍麻」と言うものがあります。これにより、視覚などからの情報が正しく処理が出来ないと、歩いている際に障害物との方向や距離感をつかむことが出来なくなり、転んだり物にぶつかってしまうことが有ります。
また、距離感を感じ取るのが難しくなると、物を上手につかめなくなったりする事もあります。
関連ページ
自閉症と空間認識・空間認知能力 発達障害-自閉症.net
突発的に動いてしまう
発達障害の一つに注意欠陥・多動性障害(ADHD)と呼ばれる障害があります。これは「多動性」「不注意」「衝動性」の症状を特徴とする行動障害です。
注意欠陥・多動性障害には「多動性・衝動性優勢型」「混合型」「不注意優勢型」の3つに分類され、「多動性・衝動性優勢型」の特徴が見られると、物事を考える前に体が突発的に動き出したりしてしまうことがあります。
注意欠陥・多動性障害は自閉症や発達障害の子供に見られる事もあり、近年では注意欠陥・多動性障害に見られる特徴は自閉症スペクトラムの広汎性発達障害の一部として扱おうという考え方も出ています。
また注意欠陥・多動性障害でなくても、一般的な子供の特性として、興味がある物を見つけると突発的に動いてしまうことがあります。子供の交通事故で「飛び出し」が多い理由も突発的に道に飛び出してしまうためです。
注意力に乏しい
自閉症や発達障害の子供は様々な経験不足から注意力や危険認識力が乏しい場合が有ります。
経験があれば、坂道などの傾斜、段差のある場所、砂利道などではバランスを崩しやすいことや転びやすいことを予め注意することが出来ます。しかし、それらの経験がないと注意をする事ができずに結果として転んでしまうことがあります。
また、自分の目的の物や気になる物が有るとそれにしか意識が向きません。そのため、自分の足元や進行方向への注意が散漫となり転んでしまうこともあります。
関連ページ
子どもは危険認識や危険認知力が無い 発達障害-自閉症.net
段差や障害物が分からない
視力が弱かったり視野が狭い子や、身体に障害が歩くのが難しい子などは、足元の段差に気が付かなかったり、何が障害物か理解できない事もあります。
足元の状態を認識できないと段差や障害物に気が付かず転ぶことに繋がります。
逆に、室内などでは床の色が変わっている部分を段差だと認識してしまったり、影になり色が変わっていると障害物があると思い込んでしまうことも有ります。
また坂などの傾斜も認識するのが難しく、気が付かず普通に歩こうとして転んでしまうこともあります。
まとめ
発達障害の子供はその特性から、転んでしまったり躓きやすくなることがあります。
少しかわいそうでもありますが、子ども自身も転んで痛い思いをすることで、自ら学んでいく部分もあります。
転びやすい子供に対しては、どの部分の特性から転びやすくなるのかを確認し、適切な支援や対処を行ってあげましょう。