子どもは危険認識や危険認知力が無い

 

子どもは危険認識や危険認知力が無い

子どもは遊びの中で危険なことをする事が多く見られます。例えば高い場所に上ったり、急に走り出したり、興味ある物に近づきすぎたり、物を投げたり・・・と。これらが遊びだけで済めばよいのですが、場合によっては自分や相手を怪我させてしまったり、物を壊してしまうことに繋がることがあります。

子どもは危険認識や危険認知力が未熟であるため、周囲の大人が見て危険を思うようなことをする事が多く見られます。その中でも特に自閉症やアスペルガー症候群など各種発達障害などの子どもの場合は、その特性や理解力などから危険に感じる行動を多く取ることがあります。

では子どもはどの様な理由から危険への理解が少ないのか、また発達に遅れのある子どもへの危険認識力を高めるにはどの様な方法があるのか調べてまとめてみました。

危険認識が弱い理由

発達に遅れのある子どもが危険認識力が弱い理由には、その特徴や特性などから以下の項目が考えられます。

衝動的にうごいてしまう

衝動的とは状況や場面を深く考えず、思いついたことや気になった事に対しすぐに行動してしまう特徴です。ADHD(注意欠陥・多動性障害)などの特徴を持っており衝動性が強い場合には、衝動的に行動してしまうことがあります。

衝動性が強いと現在の状況や危険認識などを判断することが弱く、気になった事があると自分を抑えることが出来ずに行動を取ってしまう傾向にあります。

興味のあるものしか見えない

発達に遅れのある子どもの特徴として、一つの物事や興味のある物事があるとそれだけしか目に付かなくなるという特徴もあります。興味のあるものが目に入るとそれ以外の周囲のものは全く見えなくなるので、危険認識や危険なものへの認知力も無くなってしまいます。

このような特徴がある場合、車の走っている道路などでも気にせず気になるものの場所へ駆け出していく、ショッピングモールなど人の多いところでもエレベーターやエスカレーターに走っていくといった行動を取ることがあります。

杉山登志朗氏の「発達障害の子どもたち」という書籍の中に「私たちがロシアの街角を歩いている際にロシア語の看板だらけの中、日本語で書かれた日本レストランの看板を見つけたらどんなに距離があってもそこに向かうのではないだろうか」と発達障害の子どもの見え方のわかりやすい例が書かれていました。実際に私たちでもそのような状況に置かれたら興味のある物しか見えなくなってしまうと思うことでしょうが、発達障害の子供たちは日常生活をおくる中でもこのような見え方をしていると考えておく必要があります。

危険なことがわからない

社会経験や様々な体験が少ない事や、物事への理解力の弱さなどから、危険なことを理解するのが難しいということがあります。

健常な子どもであれば刃物は怪我をする、火やお湯はやけどをする、高いところに登ると落ちる危険性がある、往来の激しい道は交通事故に遭う可能性があるなど、危険なことを実体験から学習したり親や先生などから教わり学習をします。また、刃物を触って指を切ってしまったり、お湯を触ってやけどをするといった経験から身をもって危険を学習し覚えていくこともあります。

しかし、発達に遅れのある子どもの場合は、危険なものが排除された環境で育ったり、周囲の人が必要以上に危険なものを触らせないようにしてしまうため、結果として実体験からの危険への理解をする経験が少なくなるといった事もあります。

危険であることを忘れてしまう

危険である事自体は理解をしていても、活動や行動に夢中になると、危険だということを忘れてしまう事もあります。

発達障害などの子供の場合、複数のことを意識して行動するのが苦手だという特徴があります。行動を行う前には危険だと分かっていても、行っているうちにそれを忘れてしまったり、別のことに興味が向いてしまい事故や怪我に結びつくということもあります。

危険を回避する能力が未熟である

危険を理解している人は、危ない場面や危険なことに繋がる可能性を掴んだ場合、それを回避する事が出来ます。

例えば、正面から車が走ってきた際には脇へ避ける、濡れている階段では手すりにつかまる、熱いものは冷めてから取り扱うなど様々な対処法を理解し実行しています。

一方そのような危険に対する認識や理解が少ない場合や様々な経験が不足している場合、危険である事の理解とその対処方法が分からないため危険だと思わなかったり、危険だと理解してもそれを回避する行動が取れないということもあります。

距離感や空間認識がわからない

距離感や空間認識能力が弱いのも、発達に遅れのある子どもに見られることの多い特徴の一つです。

発達に遅れのある子どもは感覚が非常に敏感になる『感覚過敏』や、感覚がとても鈍感になる『感覚鈍磨』という特徴を持つ事があります。これらの特徴により、「距離感」「方向感覚」「高さや低さ」「大きさや小ささ」「広さや狭さ」などを実際とは違うように受け取ってしまう事があります。

距離感がわからない事で人や物とぶつかってしまったり、物を潜ろうとして目測を誤り頭をぶつける、狭い室内でボールを投げたり棒を振り回す、段差などで躓いたり転ぶといったことにも繋がります。

高いところに登ってしまうといった状況も、周囲の人から見れば高い場所で危険と感じても、子ども本人は危険なほど高い場所に上っているという認識が無いということもあります。

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視野が狭い

子どもは大人よりも身長が低いため見通しが悪いばかりか、視野が狭いことも知られています。大人の視野が水平方向150度、垂直方向で120度あるのに対し、小学校1年生の6歳児ではおおよそ水平方向に90度、垂直方向に70度ぐらいしか無いといわれています。

そのため大人には見えている足元の段差など、子どもには見えていないということもあり、転んだり物にぶつかってしまうという事もあります。また、大人がいくら「○○を見て注意をしなさい」といっても、子どもには全く見えておらず何に対して注意をしなければいけないのか分からないということもあります。

HONDAのホームページや東京都のホームページでは、チャイルドビジョンと呼ばれる子どもの視野を体験するメガネをダウンロード出来るようになっており、それを使うことで実際に子どもの視野を体験することができます。

HONDA「子どもの危険予測
東京都「東京都版チャイルドビジョン

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自分にも出来ると思ってしまう

大人や年上のお友達が行っていることを見て、自分でも出来ると思ってしまい危険な行動を取ってしまうこともあります。

発達に遅れのある子どもは自分を客観的に見たり、自分の他人の違う点などに気付くのが苦手である事も多く、大人や年上のお友達との理解力や体力差や体つきなど大きな差が有るにも係わらず、自分も対象者と同じ事が出来ると思い込んでしまいます。

そのため、対象者が出来るのだから自分にも出来ると思って行動を行ってしまうも、結果としてそれが出来ずに危険な行為に繋がってしまうということもあります。

また、身体の障害を持っていたり体の動きが鈍い子どもなどは、お友達が行えるか自分でも出来ると思い行動をするも、体が付いていかずに転んでしまうという事も多く見られます。

お友達やテレビなどの影響

これはどんな子どもでも一緒ですが、友達やテレビのアニメなどから影響を受けて、危険なことを真似したりしてしまう事があります。

特に危険なことや危ないこと、一般的に悪いことなどに対してカッコいいという憧れを持ってしまうこともあり、危険の認識が有っても危ないことを真似として行う事もあります。

自分の身に起こるとは思っていない

危険な事を理解していても、自分の身に起こるとは思っておらず危険なことを行ってしまう事もあります。

たくさんの経験を積んだ大人であれば「今まで危ないことに巻き込まれることは無かったけれど、今後は巻き込まれる可能性がある」と考えることが出来ます。しかし、子どもなど経験の少ない人は「今まで巻き込まれなかったのだから、今後も有り得ない」と考えてしまうことがあります。

また、発達に遅れのある子どもの場合は、予定に無いことを考えたり理解したりするのが苦手だという特徴もあるため、今後は危険に巻き込まれるといった予想をする事が難しくなります。

危険認識力への対処方法

危険認識力が少ない場合や危険の認知を高める方法には、危険への理解、危険への対処方法、危険に対するルールなどを確認する方法があります。

一緒に危険なことを確認する

子どもは「これは危険」「あれは危ない」と言われても、言葉だけでは理解が難しい事が多いです。そのため危険な場所や場面に遭遇した場合には、大人と一緒にその状況を実際に見ながら危険を確認すると良いでしょう。

特に発達の遅れている子どもの場合は、言葉では状況を捉えたり判断するのが難しいので、実際の現場や場面を見たり、写真や動画などを用いて視覚からの情報も取り入れる事が有効です。

また、危険な場所や場面だけではなく、危険な場所の回避方法や危険と思った際の対処方法も一緒に確認すると、危険認識への理解がより高まります。

危険な経験をして理解する

発達に遅れのある子どもは社会経験の少なさや、想像力の弱さなどから危険だということを予想したり理解をする力が弱い事があります。特に実体験が無い場合は、危険だといわれても何がどのように危険なのかが分かりません。

そのような場合、実際に危険な経験をして理解をするという方法もあります。なお、経験とはいえ実際に事故や怪我を負っては大変なため、安全を十二分に確保する必要があります。

例えば物を投げたり棒を振り回したりしている場合には、実際にその物を子どもに当ててみて硬さや当たった際の痛さなどを経験してもらったり、高いところに登ってしまう場合には下にマットなどを引いて落ちる経験などをさせるといった方法が有ります。

危険な場所や物には目印をつける

危険な場所や危険なものにはバツ印や立ち入り禁止などの目印をつけると、視覚からの情報として受け取ることができ理解がしやすくなります。

目印や注意だけで難しい場合には、ロックやガードをつけたりと物理的に立ち入らせないようにしたり、触ることが出来ないようにする事も必要となります。

危険なことにはルールを決める

危険のことを説明しても理解が難しい場合には、ルールを作りそれを守るようにする方法があります。ルールは複雑にすると難しくなってしまうので、単純な物が良いでしょう。

自閉症などの発達障害の子どもはルールや約束ごとへのこだわりも強く、一度取り入れるとそれを頑なに守るという特徴が見られることが多くそれを利用する方法もあります。

まとめ

危険認識や危険認知力が低いのは障害などの特性の場合や、子どもならではの視野の狭さや経験不足による理解の未熟さが原因となっている事があります。危険認識力を高めるには遊びや学習の中で様々な経験を積むことが重要になります。

子どもの特徴や特性などから危険が付きまとう場合には、周囲の大人がそれを理解し適切な対応や対策を取る必要があります。

また、危険から避けるだけでなく、何が危険かを子どもと一緒に確認する事とともに、危険のことへの対処や対応方法も身につけるように促すことが重要になります。

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