自閉症や発達障害が兄弟・姉妹・双子に発生する確率

   2018/03/24

自閉症や発達障害が兄弟・姉妹や双子に発生する確率

兄弟や姉妹に自閉症などの発達障害の子供がいると「次の子も自閉症や発達障害になるのでは?」と心配される事も多いと思います。
実際に「兄が自閉症だからもしかしたら下の子も・・・」などと言う話を聞く事も有ります。

自閉症は先天的な脳機能や中枢神経の異常が原因と言われてますが、その脳機能や中枢神経に異常をきたす要因は、なんらかの遺伝子によるものだと考えられ研究が進められています。もし遺伝子が原因であるとすると、場合によっては遺伝により親子間や兄弟間で自閉症や発達障害が発生する確率は高くなると考えられます。

では実際にどれぐらいの割合で兄弟・姉妹間に障害が発生するのでしょうか。

兄弟や姉妹に自閉症や発達障害がいると確立が増える?

実際に兄弟や姉妹に自閉症や発達障害者がいると、兄弟内に自閉症の子供が生まれる確立が高くなる傾向が有るようです。

記載されている文献や資料により様々ですが、兄弟に自閉症がいる場合それ以降の子供に自閉症が発生する確率は、健常児のみの兄弟より数パーセントから2倍近く高くなると言われています。

これは必ずしも兄弟姉妹間に自閉症の子供が生まれてしまうということはありませんが、私の経験でも兄弟姉妹間に自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害の子供が2人以上いる家庭を何パターンも見てきたので、この傾向はある程度事実と感じています。

兄弟や姉妹間での障害の発生パターンは様々で、兄や姉が発達障害でも他の兄弟は健常児であったり、逆に下の子供に障害が出てしまう事も有ります。
なお、自閉症は女児よりも男児の方が発生率が3倍から4倍近く高い為、兄弟や姉妹の仲でも男の子の兄弟に自閉症や発達障害の子供が見られる事が多いです。

両親が高齢である場合

両親が高齢である場合には遺伝や兄弟などにあまり関係無く、自閉症やダウン症などの発達障害となってしまう可能性が高くなります。そのため、兄弟でも両親が高齢となってから生まれた子供には障害が発生しやすくなる可能性が有ります。

「マウントサイナイ医科大学の研究」と「ロリンスカ研究所による研究」による両親が高齢である場合の自閉症の子供が生まれる確立について調べたの興味深い研究結果が有ります。

マウントサイナイ医科大学の発表

2006年にアメリカのマウントサイナイ医科大学が発表した調査結果では、父親が29歳以下の際に生まれた子供に対し、父親が40歳以上の際に生まれた子供は自閉症となる確立が6倍近く高くなるとしています。

カロリンスカ研究所による発表

2015年にスウェーデンのカロリンスカ研究所が発表した調査結果では、20歳代の父親から生まれた子供より50歳代の父親から生まれた子供は、自閉症の確立が66%高くなっています。また、20歳代の母親から生まれた子供より40歳代の母親から生まれた子供は、自閉症の確立が15%高くなっています。

これらの結果から両親が高齢となった際に出産された子供は、自閉症などの発達障害となりやすくなり、結果として障害を抱えてしまう子供の確立が多くなります。

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双子や多胎児における自閉症

双子の片方が自閉症などの発達障害だと、もう片方の子供もその障害を持つ傾向が高いといわれています。では実際にどの程度のものなのでしょうか。

双子とは

まず、双子とは双生児とも呼ばれ、同じ母親の胎内で同時期に発育して生まれた2人の子供を指します。戸籍上は生まれた順番に兄または姉となりますが、かつての日本では後から生まれたほうが先に受精した子供と考えられ兄や姉とされていました。

双子の種類

双子には一卵性と二卵性があります。

一卵性双生児とは1つの卵子に1つの精子が受精し受精卵となりますが、何らかの影響でその受精卵が2つに分裂して、それぞれが成長して双子となります。

二卵性双生児とは、何らかの影響で卵子が2つ排卵され、それぞれの卵子にそれぞれ別の精子が受精し2つの受精卵がそのまま成長して双子になります。

双子の生まれる確立

双子の生まれる確立は80分の1から100分の1程度の確立と言われています。
厚生労働省の平成22年の資料によると昭和50年には単産約190万人に対し双子は約2万人でしたが、平成21年には単産約105万人に対し双子は約2万4千人となっています。

双子が自閉症となる確率

双子のうち両方の子供が自閉症となる確率を調べた論文には、1995年にイギリスで発表されたものと、2011年にアメリカのスタンフォード大学で発表されたものが有ります。

1995年のイギリスの論文

1995年に発表されたイギリスの論文によると、一卵性の双子(Monozygotic:MZ)だと92%の確立で両方の子供に自閉症と見られる症状が見られ、二卵性の双子(Dizygotic:DZ)だと10%の確立で両方の子供が自閉症になると報告されています。
参考論文:MRC Child Psychiatry Unit, Institute of Psychiatry, London. Autism as a strongly genetic disorder: evidence from a British twin study.http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7792363

2011年のアメリカのスタンフォード大学の論文

2011年に発表されたアメリカのスタンフォード大学の論文では、1987年から2004年の間に生まれた自閉症スペクトラム障害を持つ双子を調査対象としています。

厳密に自閉症であると調査した場合、男子の一卵性双生児40組で両方の子供が自閉症である確立は約58%、二卵性双生児31組では約21%となっています。
女児では一卵性双生児7組で両方の子供が自閉症である確立は約60%、二卵性双生児31組では約27%となっています。

自閉症スペクトラムとしての特性で調査した場合は、男子の一卵性双生児45組で両方の子供が自閉症スペクトラムである確立は約77%、二卵性双生児45組では約31%となっています。
女児では一卵性双生児9組で両方の子供が自閉症である確立は約50%、二卵性双生児13組では約36%となっています。
参考論文:Genetic heritability and shared environmental factors among twin pairs with autism.http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21727249

多胎児における自閉症などの発達障害

双子や三つ子などの多胎児は、早産であったり低体重で出産されることが多く、場合によっては出産時に死亡してしまう事も有ります。
早産や低体重であると、発育の遅れや身体の様々な機能に奇形や障害を持つ可能性が高くなります。そのため、多胎児の場合は発達障害や身体障害などの障害を持って生まれやすくなってしまいます。

なお、多胎児(たたいじ)とは、同じ母親の胎内で同時期に発育して生まれた複数の子供を指し、多生児(たせいじ)とも呼ばれています。多胎児には双子も含まれ、三つ子や四つ子なども多胎児になります。

多胎児と早産の関係

1990年代に日本で行われた多胎妊娠調査では、双子が平均35.1週間(早産率42.2%)、三つ子が32.7週間(早産率85.0%)、4つ子が29.3週間(早産率88.9%)、五つ子が25.0週間(早産率100%)と報告されており、双子以上の多胎児は何れも早産になる傾向が見られています。

なお、早産とは適正な出産期間である妊娠37週から41週の期間よりも早い、妊娠22週から36週の間に生まれてしまう子供を言います。なお、妊娠22週以前の出産を「流産」、42週以上の出産は「過期産」と呼ばれています。

排卵誘発剤と障害児

また、排卵誘発剤を使用すると障害児が生まれやすくなるという、話も耳にしたことが有ります。しかし、排卵誘発剤を使用した為に障害児が生まれるという公式な情報は無いようです。

排卵誘発剤を使用すると、卵胞(卵子を含んだ細胞の集まり)が同時に多数発育するため、多胎児妊娠がおきやすくなります。多胎児で出産すると上記に記載したように早産などで結果的に障害児が生まれやすくなるということから、このような話が広まっていると考えられます。

まとめ

今現在の研究等では自閉症や発達障害は遺伝かどうかは特定されていません。
しかし、障害を持つ子供がいる場合、兄弟・姉妹間の発生率は高まる傾向が有ります。双子においては明らかに障害が発生する確率が高くなっていますが、必ずしも自閉症や発達障害は遺伝するわけではありません。

また自閉症や発達障害の原因は遺伝以外の要因もあると考えられており、必要以上に遺伝などを心配する必要はありません。

必要な事は生まれた子供に対する愛情や、兄弟へのケアなどが最も重要となります。

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