児童発達支援管理責任者の役割と業務・仕事内容
児童発達支援管理責任者の役割と業務・仕事内容
児童発達支援管理責任者(児発管)はサービスの利用者とその保護者のニーズを把握し、それを基に利用計画を作成することが主な役割になります。また、利用計画に沿った療育内容の立案発達支援と評価を行い、他の指導員やスタッフへの指導、など幅広い業務内容が有ります。
児童発達支援管理責任者の要件や研修などについては、以下の関連ページに記載して有ります。
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児童発達支援管理責任者(児発管)とは | 発達障害-自閉症.net
児童発達支援管理責任者の具体的な仕事内容
ここからは、実際に児童発達支援管理責任者が行う仕事や業務の内容と方法を具体的にまとめてみました。この内容は厚生労働省が出している「放課後等デイサービスガイドライン」の児童発達支援管理責任者向けガイドライン部分の内容を抜粋して記載しています。
サービス内容の把握と説明責任
利用者が事業所を利用の際には保護者や利用者に対して、自己負担額、運営規定、重要事項説明書などに記載された内容を説明し書面での同意を得ます。そのため、自サービスの内容は勿論、運営に関する、人員体制、利用者負担額、給付金の算定額、緊急時の対応方法なども詳しく把握しておく必要が有ります。
アセスメント
サービス利用時に子供と保護者に対してアセスメントを行います。アセスメントとは事前評価や情報収集の意味合いを持ち、障害の内容や子供の状況などを確認します。
アセスメントで必要となる主な項目は、「子供の発育状況」「子供の興味関心」「理解度」「家庭環境」「受けてきた支援」「関連する機関」「コミュニケーション能力」「日常生活状況」「社会性」「運動能力」「不適応や問題行動」などです。
子供によっては、服薬状況、癲癇発作の有無などの確認し、緊急時の対応方法を確認する必要が有ります
サービスを利用に当たってのニーズや課題を把握するのもアセスメントで重要な項目で、利用者や保護者から出たニーズをまとめて次の計画書の作成に入ります。
サービス等利用計画書の作成
アセスメントで確認した情報や、相談支援事業所が作成した支援計画書を元に、自サービスを利用するうえでの計画書を作成します。
計画書は保護者や本人から出た課題や目標を踏まえ、総合的な支援目標と支援内容、達成時期などを盛り込みます。支援内容には個別で行う課題と集団で行う課題を組み合わせると良いでしょう。
利用の日数や周期などから、平日に行えること、休日に行えること、夏休みや冬休みなど長期休暇に行えることなども設定する必要が有ります。長期休みに関しては余暇の過ごし方としても内容を盛り込みます。
サービス等利用計画書の作成は児童発達支援管理責任者だけで行うのではなく、管理者や他のスタッフの意見も取り入れるのが望ましいです。
活動内容の立案
サービス提供時間において、利用者一人一人のニーズに合わせ活動内容を立案する必要が有ります。立案した活動内容はタイムテーブル化することで、利用者が見通しを持って自発的に活動できるよう促すことが期待できます。
活動内容は利用者の障害や特性、生活環境などを考慮し、発達支援を行う時間が十分確保できる様にします。内容を組み立てる際には他の指導員の意見も取り入れ、チームとして作り上げます。
なお、活動内容のタイムテーブル化にとらわれ過ぎると、活動の内容が固定化してしまいます。利用者の活動が限られてしまわないよう、様々な活動内容を組み合わせる必要があります。
適切な支援の提供
自分が携る各サービスの目的を理解し、適切な支援の提供を行います。他の従業者に支援の理解を求めるのも業務ひとつになります。
支援の開始前にはミーティングなどで、「その日の利用者」「支援内容」「役割分担」などを説明し確認します。支援終了後にも話し合いを行い、支援内容、支援の中で気がついた点や問題点を指導員間で共有し支援記録として残す必要が有ります。ミーティングを円滑に行う為に、他の指導員との意思の疎通を図る事も重要です。
支援の最中には、その日の利用者の状況、指導員の状況、設備の様子にも注意をして常に状況を把握する必要が有ります。
モニタリング
サービス等利用計画書を作成後は概ね6ヶ月に1度の割合で、モニタリングを行います。モニタリングとは監視や観察の意味で、当初計画した目標に対しどれほど達成されているかを評価します。利用者の達成度合いだけでなく、提供した支援の内容なども正しかったかなども評価する必要が有ります。
利用者本人や家族などに大きな変化があった場合は、6ヶ月を待たずその都度モニタリングを実施し、どのような状況に置かれているかを確認する事も重要になります。
モニタリングを踏まえてのサービス等利用計画書の変更
モニタリングを行った結果、サービス計画の見直しが必要と判断した場合は、サービス計画の見直しを行います。見直しの際には、支援内容が適切であったか、設定目標は適していたか、それとも別の問題により計画がずれてしまったのかを判断し計画を変更または修正します。
また、サービスの利用の終了が望ましいと施設と利用者側が判断した際には利用終了の処理を行い、関係する機関や、この後に利用するサービスや機関などに内容を引き継ぎます。
支援内容や業務改善
事業所の運営規定や運営方針を把握し、事業所の業務の改善などを積極的に行う必要が有ります。
児童発達支援管理責任者本人と施設スタッフへの知識と技術の向上
サービスを適切に提供する為に児童発達支援管理責任は、サービスの役割、利用者の発達状況、特性、障害の内容、法令等の制度、関連機関、地域状況などを理解しておく必要が有ります。
施設スタッフへは適時、技術的な指導や助言などを行い、知識や技能の向上を促します。場合によっては施設管理者と連携し、講習会や勉強会などの実施します。
児童発達支援管理責任者本人も、積極的に自治体や事業所外で行われる研修や勉強会に参加することが望ましいです。
関係機関との連携
支援計画書を作成した相談支援事業所をはじめ、学校、保育園、幼稚園、自治体、児童発達支援センター、児童相談所、他のサービス事業など利用者に関連した機関との連携が必要になります。
関係機関との連携には支援計画書に基づいた、「サービス担当者会議」や、地域の様々な部会や協議会などに参加し連携や情報交換を行います。
学校との連携は学校とサービス事業所の分担を明確にすることや、学校での支援方法がそれぞれの場所で違った内容で行われないように確認します。また、学校の年間行事や学校送迎の際の取り決めなども確認する必要が有ります。
他の児童発達支援や放課後等デイサービス事業所を利用している場合には、それらの事業所と支援内容の確認をする事も重要です。
保護者との連携
自宅での様子や、サービスから帰宅後の様子など、保護者との連絡を密にして利用者の状況を把握しておく事も必要です。
サービス中には行えない支援や、家庭内で行ったほうが良い支援などが有る場合には、保護者に助言を行う事も有ります。
保護者からの相談支援
保護者が悩みなどを抱えている場合には、保護者からの相談に応じて助言などを行う事も必要です。保護者は自分の子供のことしか分かりませんが、児童発達支援管理責任者は多くの子供の発達支援に係ることから、様々な面でのアドバイスが行えると思います。
具体的な解決策が出なくても保護者は他人に悩みを打ち明けることが出来た、というだけでも安心できることが有ります。相談を受けた際には親身になって悩みを聞いてあげることが重要になります。
苦情解決
サービスにおいて利用者や保護者から苦情などを受けた場合には、速やかに処理を行います。通常の事業所では苦情対応窓口が担当が設置されていると思いますが、そこで話がまとまらない際には、第三者機関や都道府県や政令指定都市などの担当窓口を紹介する必要も有ります。
緊急時の対応
サービス提供時に事故や怪我や急病などが生じた際にのために、緊急時対応マニュアルを作成し従業員に周知徹底しておく必要が有ります。実際に事故等が発生した場合には緊急事対応マニュアルに添って行動ができるよう、日ごろから訓練を行っておきます。
特に癲癇発作の場合には程度により、見守り、服薬、救急搬送、保護者への連絡などがそれぞれあると思いますので、利用者一人一人の対応方法を他の指導員と共に確認します。
医療ケアが必要な場合にはその対応方法や、服薬、救急車を呼ぶ目安、搬送先の病院なども確認しておきましょう。
災害時も同様で、地震対応マニュアルや火災対応マニュアルの作成、地域の避難場所の確認などを行っておきます。半年に1回程度の避難訓練も行い、避難経路の確認、防災用品の準備と点検なども行います。
虐待の防止
施設内での虐待を防止する為に、虐待防止研修の実施や、虐待防止チェックリストなどを作成して虐待防止の意識を高める必要が有ります。児童発達支援管理責任者本人も都道府県などが開催する虐待防止研修などに参加し、授業者へその内容を周知するのも望ましいです。
虐待防止には厚生労働省が通知している「障害者福祉施設・事業所における障害者虐待の防止と対応の手引き(施設・事業所従事者向けマニュアル)」を見るようにしましょう。
施設の従業者が虐待をしているのを発見した場合には「障害者虐待防止法第16条」の通報義務に基づき、市区町村に通報する必要が有ります。上記16条では通報者が不利益を被らないように「通報者の保護」についても規定されています。
また、家庭や他の施設などで虐待を受けているのを発見した場合には都道府県や市区町村の福祉事務所や児童相談所に通告する必要が有ります。
身体拘束の実施と管理
身体拘束とは利用者を押さえつけて行動を制限したり、自分の意思で外部に出られない部屋に隔離することを言い、緊急でやむを得ない場合を除き禁止されています。やむを得ず拘束する場合には、本人または周囲の人が怪我や事故に繋がる恐れがある場合です。
やむを得ず身体拘束を行う可能性が有る場合には事前に、代替手段の検討、どのような場合にどの方法で拘束を行うかを事業所の組織として検討する必要が有ります。
身体拘束を行う際には事前に保護者または利用者本人に事情を説明し同意を得る必要が有ります。身体拘束を行った際には状況や拘束の方法、拘束していた時間などを記録し、保護者に報告する必要があります。
衛生管理
感染症の予防のため、常に清潔を心がけるようにします。利用者や従業者の「手洗い」「うがい」「消毒」「換気」「タオル等のこまめな交換」などを心がけます。
感染症や食中毒が発生した場合に対しマニュアルを作成し、それに添って対応ができるように従業者に周知をします。マニュアルは保健所や都道府県が配布しているマニュアルを応用すると良いと思います。
支援中の安全確保
サービス提供中に起こり得る事故や怪我などを防止する為に、日ごろから施設や備品の安全性を点検する必要が有ります。補修が必要な際には適切な補修を行ったり、新しいものに交換などを行います。
事故が発生してしまった場合や、事故となりうる事態となった場合は詳細に記録し、事故事例やヒヤリハット事例として従業者内で情報共有をします。
法令厳守
児童発達支援や放課後等デイサービス等の福祉事業は、国の法令に基づいて都道府県または政令指定都市から指定を受けて行う事業です。そのため、児童福祉法、障害者総合支援法、障害者差別解消法などは勿論、関連する個人情報保護法、消防法など様々な法令を厳守し、施設や従業員にも意識付ける必要が有ります。
機密の保持
業務上知りえた施設に関する情報や、利用者の個人情報の秘密保持を従業者に周知徹底します。改正される個人情報保護法では、個人情報を保持する企業全てが対象となるため、意図的に個人情報を漏洩した場合には法律により罰せられます。
また、関係機関や他の事業所等に利用者等の情報を提供する際には、本人または保護者に同意を得る必要が有ります。ホームページやブログ、広報誌などに利用者の顔写真などを掲載する場合にも同様に同意を得る必要が有ります。
まとめ
児童発達支援管理責任者はこのような様々な役割と、行わなければならない仕事内容が有ります。勿論ここに記載した内容は基本的なことだけで、実際に利用者を支援する中での問題や各事業所の特色などでさらに多くの業務内容が有ると思います。事業所によっては請求業務、送迎、各種マニュアルや書類の作成なども行うでしょう。
このように児童発達支援管理責任者はとても大変ですが、施設内では一番子供に寄り添って支援を行える立場で、多くのやりがいもあります。
このページで記載した業務内容はそれぞれ大切ですが、子供を支援する中では子供の立場に立って、安全で楽しい活動を提供してあげることが最も重要になります。