自閉症や発達障害児と企業名やロゴマーク

   2018/03/24

自閉症や発達障害児と企業名やロゴマーク

自閉症スペクトラムの子供や発達障害の子供は、会社や企業のロゴマークや企業名を好む特徴を持つ場合が多く有ります。もちろん全ての発達障害の子供がそのような特徴を持つわけでなく、逆に健常な子供でも企業名やロゴマークなどに強い興味を持つ場合も有ります。

自閉症などの子供の中には、文字の読み書きが出来ないのに企業名だけは読めたり、何十社もの企業名やロゴマークを覚えているという事も有ります。

ではなぜ自閉症や発達障害の子供は企業名やロゴマークを好んだりこだわったりするのでしょうか?

ロゴマークとは

ロゴマークとは企業のイメージやブランドを分かりやすく印象付ける為に図案化したものです。シンボルマークのほかに、ロゴタイプと呼ばれる企業名やブランド名などの文字を使用することが有ります。

ロゴマークには企業名の文字やイニシャルをかたどったもの、ブランドや企業のイメージカラーを用いたもの、会社の社章を簡単にしたものなどが有ります。

ロゴマークの最大の目的は企業やブランドなどを印象に残す為で、名刺やパンフレット広告などその企業に関する様々なものに表示されます。そのため、発達障害児以外の一般の大人でも目にする事が多く、記憶に残りやすいものとなっています。

発達障害や自閉症の子供の好みやすい企業名やロゴマーク

子供により好む企業やロゴマークが違い、好きになる理由なども様々です。実際にどのような種類のものを好みやすいのか、代表的なものを分類してみました。

乗り物関係のロゴマーク

自閉症や発達障害の子供でなくても、子供は乗り物を好む傾向に有ります。そのため、JR各社、東京メトロ、東武鉄道、西武鉄道、などの鉄道や、TOYOTA、HONDA、NISSANなどの車のメーカーのロゴなどは強い興味を持つようです。

また、エレベーターやエスカレーターの企業名やロゴマークに興味を示す子供もいます。

日常的に利用したり目にする企業

スーパー、コンビニエンスストア、ファミレス、ファーストフード、ホームセンターなど日常的に利用したり、近所でよく目にする企業に興味を持つ事も有ります。

日常的に利用している企業だと、何が売っている、何を扱っている、商品には何が有るなど、企業の名前やロゴと実際にどのようなお店かが一致するので理解しやすいようです。

利用は無くても日常的に目にする企業にも興味を持つことが多く、よく利用する道沿いにあるお店、おじいちゃんおばあちゃんの家に行く途中にあるお店など、何度も目にするうちに覚えてしまう事も有ります。

CMや広告で目にするお店

テレビコマーシャルは印象に残りやすいように、覚えやすいフレーズやメロディ、興味を引くような映像と一緒に流れるので我々大人でも覚えやすく記憶に残ります。

CMで目にしたことのある企業だと、CMのフレーズや音楽と一緒に覚える事も有るようで、言葉の話せる子供だとCMの台詞やフレーズも口にしている事が有ります。

金融機関の企業ロゴ

銀行や証券会社やカード会社など金融機関と発達障害の子供は一見接点が無いように見えますが、金融機関のロゴを好む子供もいます。

銀行やATMには系列金融機関や提携金融機関、利用できるクレジットカードやキャッシュカードの一覧が掲載してあります。提携金融機関の表示は、1つのスペースにたくさんの金融機関名とそのロゴがたくさん載っているので、特に強い興味を引いたり記憶に残るようです。

企業名やロゴマークの利用法

ロゴマークを好むという特徴を利用して、日常生活や学習の面においても様々な物事に利用することが出来ます。

安心グッズ

ロゴマークが好きな子供は、ロゴマークを見ていると落ち着いたり安心したりすることが出来ます。そのため、苦手な病院や、長時間並ぶお店に行く際に持たせたり、パニックや癇癪を起こしてしまった際に利用することが出来ます。

図形や文字の練習

企業のロゴマークと企業名に興味を持つということは、ロゴマークという視覚や図形等に認識と、企業名という文字情報に認識を持たせるチャンスとなります。

ロゴマークに興味を持った場合には、図形を書く練習、色の識別と色使いの練習に利用することが出来ます。

企業名に興味を持つと文字への関心を持たせるきっかけになります。
今まで見てきた子供のなかには、自分の名前すらかけなかったのが最初は大人と一緒にペンを持って書く練習から行い、1年後ぐらいには自分で沢山のの企業名を書くことが出来るようになった子供もいます。また、文字自体が書けない子供でも、大人と一緒に書く事で喜んだり、「書けた」という満足感を得る事も出来ます。

なお、企業名から文字を覚えると文字を文字ではなく「形や図形」として認識してしまう事も有ります。文字として認識させるのには色々な方法があると思いますが、私はクロスワードパズルのようにマス目を作り「TOYOTA」と書いたら最初の「T」の文字に「TEPCO」とつなげたり、「0」の文字の下に「ORICO」などと繋げて文字としての関連を意思させる方法を行った事が有ります。最初は難しいようですが、慣れてくると私がとっさに出てこなかったり知らないような企業名をどんどんと繋げて書いていく子供もいました。

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イメージとしてはこんな感じです。

指差しの練習

自閉症の子供は、言葉を発したり意思を他人に伝えるのが出来なかったり苦手です。そのような子供の場合クレーン行動という形で大人の手を取り、「この企業を読んで」というように次々と企業の名前やロゴを指差していきます。

関連ページ
クレーン行動・クレーン現象 – 自閉症と発達障

 
このような場合にはロゴの一覧表などを作り、そのどこかに「よんで(読んで)」「かいて(書いて)」などの項目をもうけ、まずはどちらかの指差しを行わせてから読んであげたり書いてあげたりするようにします。

「読んで」「書いて」だけの単純な指差しですが、自分の意思を相手に伝える第一歩となります。指差しを出来るようになる事で、「トイレ」「お腹空いた」「眠い」など日常生活で必要な行動のオリジナルのロゴを用いた意思表示カードや指差しカードなどを作ると、意思表示の幅もぐっと広げることが出来ます。

分類や種類分けの練習

たくさんの企業を理解するようになると、分類などの練習にも利用できます。
例えば、ロゴの色や形ごとに分ける練習、車メーカー、鉄道、食べ物屋さんなど職種ごとの分類の練習などです。

企業名やロゴマーク好きのデメリット

企業名やロゴマークを好む場合のメリットや効果的な利用法は上記の部分で記載してみました。しかし、メリットがある分デメリットもあり、代表的なデメリットも記載してみます。

興味がロゴマークや企業名に向いてしまう

何かを行おうとした際に、興味や集中が企業名やロゴマークに向いてしまうということが有ります。例えばトイレに行った際には排尿排便よりも便器の「TOTO」や「INAX」のロゴに興味が向いてしまう、勉強をする際に鉛筆の「三菱鉛筆」「トンボ鉛筆」などの企業名や消しゴムの「MONO」などに集中してしまうなどです。

極端に興味が集中しすぎてしまう場合には、企業名やロゴを隠したり削り取ったりする必要も有ります。

雑誌や新聞などをちぎってしまう

雑誌や新聞の広告欄に企業名やロゴマークなどがあると、その部分が欲しくて千切りとってしまうと言う事が有ります。自分の家の物ならまだ良いですが、本屋さんやお店のものまで千切ってしまい、その度に謝ったり買い取ったりしなければならない事も有ります。

お店のパンフレットを取ってきてしまう

色々なお店においてある宣伝用のパンフレットには必ず企業名やロゴマークが入っているので、お店などに行くと必ずパンフレットを取ってきてしまうということが有ります。1枚ならまだしも、何枚も欲しがってしまう事も有ります。

このような場合は「1枚だけ」とお約束をしたり「違うお店のパンフレットを見に行こう」と別のパンフレットに興味を向かせるような声かけが効果的です。

企業名やロゴを見たい場合

企業名やロゴを見たくなった場合に手っ取り早いのは、Googleなどのインターネット検索で「企業 ロゴ」「企業 一覧」などで検索する方法です。

Wikipediaのサイトにも企業の一覧のページがあったり、日本取引所グループのサイトや株・証券取引のサイトなどに上場企業一覧のページが有ったりします。

書籍では「業界地図」「会社四季報」や、デザイン用の「ロゴの本」等が有ります。

まとめ

企業の名前やロゴを好むというのは自閉症や発達障害の子供によく見られる特徴です。

沢山の企業の名前やロゴを覚えるというのは我々健常な大人でも難しいことです。企業名を覚えた事や興味を覚えたことを生かし、次のステップアップや他の行動に繋げてあげることが必要となります。

なお、企業の名称やロゴを好むという特徴は、成長や時間がたつに興味をなくしてしまう事も有ります。しかし、企業やロゴを覚えていたという事実とそれだけの能力があることに間違いはありません。興味が薄れてしまってもまた別の分野でその能力や記憶力を生かして成長につなげてあげると良いでしょう。

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