発達に遅れのある子どもは、敬語で喋ったり身近な人にも丁寧語で話す

 

発達に遅れのある子どもは、敬語で喋ったり身近な人にも丁寧語で話す

自閉症やアスペルガー症候群など発達障害を持つ子供は独特な喋り方をする事があります。

例えば言葉の抑揚が通常と違ったり、アクセントが無い喋り方だったり、接続詞が無いなどがあります。話し方にも、質問風に喋べる、極端な早口、同じ事を何度も繰り返すなどの特徴が見られることがあります。

そのような特徴の中の一つに、常日頃から敬語を話したり、家族や友達など親しい人にたいして敬語や丁寧語を使って喋ったり、難しい言葉使いや大人びた表現で話す子供が見られます。

敬語や丁寧語で話すことは悪いことではないのですが、親に話すときでも敬語で話したり、仲の良い友達と遊んでいるときでも丁寧語を使ったりして、周りから見るとちょっと不思議な感じがするときがあります。

ではそのような言葉に特徴をもつ子供は、どの様な理由から敬語や丁寧語を使うのか調べてまとめてみました。

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敬語や丁寧語を使う理由

発達に遅れのある子どもが敬語や丁寧語を使う理由には、その障害の特徴などから様々な理由が考えられます。

状況に合わせた言葉遣いを変えるのが苦手

発達に遅れを持つ子供はいわゆる「その場の空気を読む」事が苦手です。場の空気には、場所、状況、心情、人の立場や人間関係など様々なものが含まれます。

人との会話を行う上で場の空気を読む際にもっとも重要なのは、相手との関係や立場を適切に理解する事です。発達に遅れのある子どもは人の距離感や立場の違いを理解するのが苦手です。

さらに相手への距離感をつかめても、言葉での理解や会話自体に困難を抱えているため、相手によって話し方を変えて適切な言葉遣いを使うことも難しいのです。

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特定の人としか会話をしないため

通常の発達で言葉を身につけた子供は、家族や周囲の人たちの言葉を聞いて覚えたり、一緒に係わる中で言葉を覚えます。そのため、話す相手の立場の違いや距離感も同時に学びます。

言葉に遅れのある子どもの場合は、言語聴覚士など言語の専門家や学校の先生などある程度決まった人物から一対一で学ぶことが多いと思います。そのため人の違いや距離感などを同時に理解するのが難しくなります。

遊びでも他人への興味の有無やコミュニケーションの問題などから、子供同士ではなく先生や親を介して遊ぶことも多いため、会話でのコミュニケーション相手が特定の大人になってしまうと言う事もあります。

丁寧な言葉を学習するため

言葉を学ぶ際に、先生となる人は丁寧な言葉遣いで教えます。例えば飲み物が飲みたいときには「水をください」「ジュースが欲しいです」などです。

これらの言葉は確かに正しく綺麗な言葉ですが、とても丁寧な言い方になります。他人に対して言う場合には適した言葉なのですが、親や兄弟など家族間では堅苦しい言い方になってしまいます。

また、学習で使用する教科書(国語だけではなく他の教科書の記述方法も)も基本的には丁寧な『ですます調』の文章で書かれているため、文章として視覚から入る情報の面でも丁寧な言葉遣いを意識する事が多くなります。

言葉を学ぶ時期が遅くなるため

言葉を理解したり言葉が話せるようになる時期も健常児よりも遅れます。

通常の発達をした子供は学校に入学する前に日常的な会話はマスターし基礎的な話し方を獲得していますが、発達に遅れがある子供の場合学校に入ってから言葉を学んだり理解するため、学校の先生から習う敬語ばった言葉遣いをするようになる事も理由の一つと考えられます。

敬語や丁寧語を使う相手の線引きの理解が難しい

発達に遅れのある子どもの場合、人間関係や言葉など目に見えないものは理解をするのが困難です。そのために誰に対しては敬語で、誰に対してはタメぐち、などの理解が難しくなります。

具体的に「家族は敬語でなくてよい」「友達は敬語でなくてよい」「年下には敬語でなくてよい」「先生には敬語」「年上には敬語」などルール化しておくと理解がしやすくなります。ルール化も言葉だけではなく図表などにして視覚から情報が入るようにすると良いでしょう。

なお、社会に出た際には「年上の同級生」「年下の上司」「年上の部下」「社内の同期」などイレギュラーなパターンも存在するので、このような場合もルール化しておくと混乱が少なくなります。

決めてしまったことを戻すのが難しい

物事へのこだわりの特徴から発達に遅れのある子どもは、一度決めてしまった物事を途中で変更したり元に戻すことが難しい特徴があります。

言葉に関しても一度敬語で話すと決めてしまうと(本人が明確に決めていなくても敬語で話す事が定着した際も)、変更するのが難しくなります。

学校で友達を作る際にも最初に敬語で話していたので、途中からそれを変えることが出来ずに最後まで友達に対しても敬語で会話しているということもあります。

友達の呼び名に関しても最初に「なになにさん」とさん付けで呼んでしまったために、仲が良くなり相手が呼び捨てで呼ぶような間柄でも相手に対しては『さん付け』で呼び続けるということも見られます。

恋愛に関しても同様で、最初に接した際に敬語で会話したために付き合うようになっても敬語で話したり、結婚しても敬語からタメぐちに出来ないといったパターンも見られます。

我々でも、今まで長年敬語で話していた人から「これからはタメぐちで話して良いよ」と急に言われても、最初は今までの慣れや違和感から難しいと感じると思います。

会話での失敗を恐れる

発達に遅れのある子どもは失敗や怒られる事に対し、恐れていたり極端に怖がる事があります。これは今までの経験や生活の中、その発達の遅れや特性などから成功して褒められるよりも、多くの失敗を経験しているからだとされています。

会話に対しても言葉の成長が遅れている子供の場合、幾度と無く注意や指摘を受け、嫌な思いをしていると思います。そのため無理に難しい会話に挑戦して注意を受けるより、無難で言いやすい敬語を使っている事もあります。

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敬語が使いやすい

日常的に敬語を使う子供の言葉は『ですます調』の言い切り型が多いように感じています。敬語は受け答えとしてはある程度パターンが決まっているため、とっさに使いやすいのではと考えています。

健常者であれば会話は特に苦労も無く相手の言葉にたいして自分の考えなどを返答していると思います。しかし、発達に遅れのある子どもは会話をするのにも、「相手の言葉を聞く」「言った事を理解する」「状況を整理する」「自分の返答を考える」「返答を話す」という動作を1つ1つ考えながら行っており、それぞれの動作に何秒も時間がかかることがあります。

また適切な返答をするにも今まで経験したことや覚えていることの様々なパターンを思い出し、その場に合ったと感じた言葉を選び出して返答しています。健常な子供であれば今まで経験してきた事柄と状況を合わせて会話として理解していますが、発達に遅れのある子どもの場合、状況や事柄とそれに付随する言葉は全く別のものとして覚えている事があります。

パターンで言葉を覚えている場合、ですます調の単純な敬語だと受け答えも簡単に行えます。例えば「お菓子は好きですか?」と質問されたら「好きです」という内容だけで会話が成立します。

お話が得意な子供なら、「好きだよ。特に甘いチョコは大好物」「お菓子は大好き。今日もおやつにグミを食べたよ」など自分の感想や気持ちなどを言うことができますが、自分の気持ちや思いをとっさに言葉に出せないと単純な受け答えになり、結果として堅苦しい敬語になってしまい、パターンの決まった言い切り形の『ですます調』になるのではと思います。

大人の話し方を真似をしている


中には大人の真似をして覚えた敬語を日常的に使っている子供も見られます。
とあるお子さんはお母さんがスーパーのレジのパートさんをやっており、その影響のようで「かしこまりました」「少々お待ちください」「恐れ入ります」「ありがとうございました」「またお越しください」などお店で耳にする言葉を話していたパターンがあります。

別の子は電車が好きで、駅員さんや車掌さんのアナウンスを真似て「何々にご注意ください」「何々で少々遅れております」「大変申し訳ございません」「ご配慮お願いいたします」などの言葉を使っているという事もありました。

発達に遅れのある子でも興味を示すものには、言葉や会話でもすぐに覚えてしまい自分の言葉として使っている場合もあります。アニメの台詞やCMなどをの会話を一字一句覚えてしまうというお子さんも多いと重います。なお、難しい言葉を覚えることはできても、正しい意味までは理解していないと言う事もあります。

まとめ

発達に遅れのある子どもはその特性などから、身近な人や日常的に敬語や丁寧語を使って話すことがあります。

敬語や丁寧語で話すことは悪いことではないので、無理に治す必要は無く、まずは本人が自分から会話を行っていることを認めて伸ばしてあげる事が重要になります。本人としては一生懸命に丁寧な言葉遣いで喋っているので、無理に治そうと注意をすると話すことに対して自信をなくしたり嫌な感じを受けてしまうことがあります。

また、言葉の使い方だけでなく様々な経験を通し、場面の理解や状況判断の能力を高めたり、様々な人と接して人間関係を育むことも重要なポイントになります。

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