過去の出来事でパニックを起こす

   2019/02/13

過去の出来事でパニックを起こす

発達に遅れのある子どもは、過度の不安やストレスを感じると、自分で感情をコントロールできずにパニックになる事があります。

パニックには「親や先生に怒られた」「お友達から叩かれた」など嫌な思いをした場合、「送迎のバスが遅れた」「普段とルートが違った」「置いてある物の位置が違った」などいつもと違うことが起こった場合、「授業の内容が変更になった」「不意に予期せぬことが起こった」など予定が変わり見通しが付かなくなった場合などが原因になります。

これらのような場合ですと、パニックの原因が分かるため適切な対処方法を取ることが出来るだけでなく、次回からはパニックへと繋がらないよう対処する事も可能です。

しかし、子供の中には何が原因か分からずいきなりパニックになる事も有ります。その中でも多いのが、何らかの影響で過去のことを思い出し急にパニックになることです。

では、過去の事を思い出してパニックになるとはどの様なことでしょうか。

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過去の出来事でパニックを起こす子どもの例

例としては特定の人物を見つけると急にパニックになって怒ってしまう、いきなり気持ちが不安定になり泣き叫んでしまう、学校で起こった事が理由で家に帰ってからパニックになった等があります。

A君の例

とある子供(仮にA君とします)は特定のお友達を見かけると急にパニックになり怒り出してしまったり、別の特定の人を見かけると急に怯えてパニックになる事が有りました。

A君は人の好き嫌いが激しい子供なのかと思っていましたが、どうもそんな様子ではありません。保護者や学校の先生などから色々な話を聞いていくうちに、A君は人からされた事に対しての記憶力がとても良く、さらに時間の間隔の理解が難しい特徴があることに気が付きました。

A君が特定の人を見てパニックとなり怒る出す理由として、何年も前の過去に特定のお友達から叩かれた事があり、そのお友達を見かけると叩かれた記憶を思い出してしまうだけでなく、その記憶がたった今起こったことのように感じてしまうことで、激しいパニックになっていたのです。

またA君が特定の人をみて怯えるのにも理由がありました。見ると怯えてしまう相手は学校の先生で、過去にふざけていた際に厳しく注意を受けたことで恐怖となり、見かけていると怯えてしまうという事でした。この先生から注意を受けたことも何年も昔に起こった出来事でしたが、先生の顔を見た事が引き金になり、たった今怒られたと感じ取ってしまいパニックになっていました。

B君の例

別の子供(仮にB君とします)では急にパニックになる事があり、その際に「Zちゃん、血が出ちゃったね」と口走るといった出来事がありました。パニックになった際はZちゃんが近くにいた訳では有りませんし、Zちゃんの話題をしていたわけでも有りませんでした。

気になったのでお母さんにその事を確認してみたところ、こちらも何ヶ月も前に学校の工作中にCちゃんがカッターで指を切って出血したのを見てしまい、痛がるCちゃんを見て強いショックを受けてしまったということでした。こちらも過去の出来事でしたが、何らかの事柄が引き金となり、お友達が出血して痛がる様子を思い出してしまいパニックとなったようでした。

Cさんの例

また別の子供(Cさん)の例では学校ではまじめに勉強をし、放課後はデイサービスでニコニコとお友達と楽しそうに過ごしたのにも関わらず、自宅に帰ったらパニックになり大暴れをしてしまったという事がありました。このときはCさんのお母さんから「デイサービスで何かありませんでしたか?」と問い合わせがあったのですが、心当たりが全く無かったので特に気になった出来事はなかったことを伝えました。

翌日Dさんのお母さんに昨晩はどうだったのかを確認したところ、自宅で1時間近くも大暴れし、その後は落ち着いたとお話を受けました。落ち着いた際に理由を聞いたところ「学校でお友達に叩かれて怖かった」と話したそうで、それが原因で暴れてしまったようでした。

今回パニックになったCさんは一見大人しい子供で、学校や放課後等デイサービスでも一生懸命活動に取り組むみんなの見本となるような真面目な子供でした。そんな真面目な性格から外では自分の気持ちを押し殺して頑張っていましたが、自宅に帰って甘えられるお母さんの顔を見た事で自分の感情が噴出してしまいパニックとなったようでした。

パニックになった際にきっかけが分かったり、Cさんのように話す言葉などから理由が分かれば良いのですが、子供の中には状況が説明できなかったり、言葉自体を持っておらずお話が出来ない子供も多くいるため、パニックになった理由の解明が難しい場合があります。

子供が急にパニックを起こす場合は、現在の出来事でパニックになっているのではなく、過去の出来事を急に思い出してパニックになっているのかもと思うことも重要です。

過去の出来事でパニックになる理由

発達に遅れのある子どもが過去の出来事でパニックになる理由には、その特性などから様々な理由が考えられます。

時間の概念の理解

発達に遅れのある子供は、時間の概念や時間の流れを理解していなかったり、時間の間隔がわからないと言う事があります。

健常者であれば時間は「過去」「現在」「未来」が一本の線で繋がっており、それぞれの時間の間隔や、過去には戻れないことなどの時間の概念を理解しています。そのため、記憶にある出来事も現在ではなく昔の事だと分かっていますし、どの程度過去の出来事だったのかも理解をしています。

逆に発達に遅れの有る人の場合は時間に関する理解が難しいばかりか、過去に関する記憶が時間の流れである線とリンクして記憶しておらず、一つの点として記憶している事があります。そのため、一つの出来事の記憶を思い出しても、それが何時の出来事か分からず、あたかも今現在の事だと思ってしまうことがあります。

フラッシュバック

フラッシュバックとはトラウマとなるようなとても精神的に強いショックとなる出来事に遭遇した場合、後に突然その出来事が鮮明に思い出されたりする症状です。心的外傷後ストレス障害(PTSD)や、ストレス障害などに見られることがあります。

特に原因となる出来事と似たような状況に遭遇した場合や、受けた体験を連想させるような出来事に遭遇した際に、それらがきっかけとなってフラッシュバックが引き起こされます。

フラッシュバックの症状は人により様々ですが、記憶が鮮明に思い出されると記憶の出来事が今現実に起こっているかのように感じることもあります。記憶に関しても情景だけでなく、気持ちなどの感情、痛覚、視覚や聴覚など様々な部分で発生する事があります。

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タイムスリップ現象

タイムスリップ現象とは、何らかの原因で過去の出来事を思い出し、それが現在の出来事と感じ取ってしまう現象です。

タイムスリップ現象は発達障害の子供が時間の概念を理解していないため発生する場合や、フラッシュバックなどにより過去の記憶が急に思い出されそれを現在の事だと思い込む場合などがあります。

タイムスリップ現象の期間も人により様々で、数日前のことを思い出したり、中には数ヶ月や数年前のことを今の事かと思い込んでしまう事があります。また、時間の前後関係がバラバラになる事もあります。

周囲の人から見れば、過去の出来事であったり時間の前後関係がめちゃくちゃだとわかりますが、本人からすると時間の流れや前後関係が繋がっている事もあり、対処が難しい場合もあります。過去に起きたことを何時までも細かく言っている場合は、タイムスリップ現象が関連していることもあります。

まとめ

発達に遅れのある子どもは、時間の概念の理解が難しい事、フラッシュバックやタイムスリップ現象などの特徴から過去の事を急に思い出し、それが今のことで有るかのように感じてパニックを起こす場合があります。

また、溜め込んでいたストレスや嫌な気持ちを、自分を出せる家庭内などで吐き出してパニックに繋がる事もあります。

発達に遅れのある子供の場合、良い事の記憶よりも嫌な事の記憶の方が残やすいとも言われています。

パニックは子どもが困ってどうしようもならなくなったサインでもあります。パニックになった場合はまず子どもの気持ちに寄り添ってあげましょう。

そして、過去を含め可能な限り原因を突き止め対処をしたり、子ども本人の気持ちの折り合いをつけてあげるようにする事が重要です。

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