修学旅行や宿泊体験など校外活動がにがて

 

修学旅行や宿泊体験など校外活動がにがて

学校では泊まりで行く修学旅行、学校施設に宿泊する宿泊体験などを訓練をかねて行うことがあります。

大半の子供は修学旅行や宿泊を楽しみにすると思いますが、中にはその障害の特性から、宿泊する事を嫌がる子もいます。

では宿泊苦手な子供はどのような原因で泊まるのを嫌がるのか調べてみました。

子供が宿泊を嫌がる理由

子供が学校行事での宿泊を嫌がるのには、その障害の特性などから様々な原因が考えられます。その中でも主な理由を紹介します。

見通しが付かない

自閉症などの発達障害の有る子供は未来の事を想像したり、これから起こることを予想するということが苦手です。

そのため、普段とちがう宿泊や修学旅行は見通しが付かず、「何が起こるのか」「何をすればよいのか」「何処へ行くのか」など感じ、強い不安やストレスを感じます。

子供によってはそれらの不安からパニックに繋がる事もあります。

普段と行動が違うため

宿泊や就学旅行は行動の流れが普段の授業日と全く違うものになります。変化に弱いのも発達障害を持つ人に見られる大きな特徴で、通常と違う行動に対処が出来ず混乱してしまいます。

自閉症のなどの人の場合には『同一性の保持』という大きな特徴があります。これは時に「こだわり」と言われることもあります。

同一性の保持とは特定の物や状態に対して必要以上に固執し、その状態を常に一定に保とうとする行動です。同一性の保持の対象になるものには、物の位置や並び順、物事の順序や行動の順番、服装や食べ物など、その人ごとに違います。

同一性を保持にはその日のスケジュールや、行動などが対象となる事もあり、このような場合には普段と行動パターンが違うとそれを保持しようと抵抗をしたり不機嫌になったりする事があります。

同一性を保持しようとするのには「感覚などの受け取り方」「一定だと安心」「いつもと違うと対処方法がわからない」などの理由があると考えられています。

乗りもの酔いになりやすい

子供の中には乗り物酔いなどで、普段とは違う車やバス、電車に乗るのが苦手だという子もおり、乗り物に乗るというだけで不安を感じてしまうことがあります。

特に学齢期の子どもは脳の発達段階の関係で、目からの情報や乗り物の揺れなどの刺激を強く受けて乗り物酔いになりやすい年代でもあります。

乗り物酔いは心理的な影響も強く「乗り物酔いになったらどうしよう」「乗り物が苦手で嫌だなあ」という気持ちをもっていると影響を受けることもあります。

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自閉症や発達障害の子供が車を嫌がったり乗りたがらない理由| 発達障害-自閉症.net

感覚過敏から

自閉症などの発達障害の子どもの場合、障害に伴う特性などから乗り物が苦手になってしまう事があります。発達障害の子どもの多くが感覚が極度に敏感になる感覚過敏や、逆に鈍くなる感覚鈍磨という特徴を持っている事があります。

聴覚が敏感になる聴覚過敏だと、音が大きく聴こえてうるさいと感じたり、特定の音を苦手とする事があります。

車ではエンジン音やクラクションの音やバックをする際の音などが苦手だという子どもも見られます。電車が好きな子どもでも駅の改札の「ピンポーン」という音が苦手だったり、電車がホームに滑り込んでくる際の「ゴーッ」という音が嫌いだという場合もあります。

嗅覚が過敏になると新しい車の接着剤などの臭いや芳香剤の香りなどで気分が悪くなるということもあり、三半規管などに影響があると、乗り物の揺れや振動を強く感じて車酔いに繋がってしまう場合もあります。

親や家族と離れる不安

年齢の小さい子供の多くは親兄弟など家族と離れることを不安に感じる事が多いです。発達に遅れのある子どもでもそれは同じで、発達が遅いぶん年齢が高い子どもでも親と離れて宿泊する事を不安に感じる事があります。

また、家ではトイレや着替えなど身の回りのことを親がやってくれるので、多く甘えてしまっているという事も多いですが、親と離れて数日間生活をするとなると、普段やってもらっていることを受けられなくなり不安となるほか、いざ自分で何をして良いのか分からないということもあります。

寝る布団や枕の違いが心配

宿泊の際には普段自宅で使っている布団や枕とは別のものを使ったり、自宅や学校とは違うトイレを使用することになります。

我々、健常な大人でも自宅の布団と違うと寝れないということも多く、宿泊時は枕を持参するという人もいるほどです。

発達障害の子どもは睡眠障害の特徴を持っている人もおり、寝具などの違いから普段の生活のリズムが狂ってしまうと寝ることが出来なくなるため、不安を感じてしまう事があります。

身体に障害を持っている子供は特殊な寝具や体に負担がかからない沈みのマットを使っていたり、体を支えるためにタオルやクッション使って寝る事もあります。これらの設備や道具が普段と少しでも違うと寝るのが難しくなるため不安を感じたり外泊を嫌がるといった事もあります。

トイレが心配

トイレも子どもにとっては心配事の一つです。
普段使っているトイレと違うだけで不安を感じるのはもちろんのこと、移動中はどのタイミングでトイレに行けるか分からないということがあります。普段定時排泄を促す必要の有る子供は、通常の時間間隔で行くのが難しく、感覚が短すぎて出なかったり逆に長時間我慢できず失敗してしまう場合があります。

排尿や排泄の失敗が無い子供でも、外出時はタイミングを逃がしたり、様々な不安やストレスから失敗して漏らすといった事もあります。

また、皆と一緒の行動だと排便をするのが恥ずかしいと感じて、トイレを我慢してしまって体調を崩すこともあるので注意が必要です。

お風呂が心配

お風呂に関しても普段と違うと不安を感じる事があるようです。お風呂も自宅なら親と一緒に入ることが多く、親に体を洗ってもらったり、体を拭いてもらいますが、親の居ない環境だと一人で出来るか心配だということがあります。

年齢によっては思春期や二次性徴の関係から、自分の裸を他人に見られたくないと感じたり、体つきをお友達と比べられたくないと思う事もあります。

子供が宿泊を嫌がる場合の対処方法

宿泊やお泊りが苦手な子供の対処方法は様々ですが、基本的にはどこで何をやるかを説明して見通しを付けてもらうことと、苦手や不安を感じる部分を練習し自信をつけてもらうことになります。

事前に見通しをつける

見通しが付かない事は特に不安や恐怖を感じ、ストレスとなりパニックなどに繋がる場合もあるので見通しを付けてあげることが重要になります。

見通しをつけるにはスケジュールで行動の流れを教えたり、旅行のしおりなどで具体的な内容を確認してもらいましょう。

見通しには「いつ」「どこで」「だれと」「何をする」「何が起こる」「何をすればよい」といった実際の流れから、不安を感じた場合にはどの様な行動を取ればよいのかという対処方法も教えてあげましょう。

昨年の様子などを見せる

修学旅行や学校の宿泊体験などでは、前年の様子の写真や動画などを見せることで、より深い見通しをつける事も出来ます。

写真も実際の行動に合わせて時系列で見せて流れが把握できるものにしましょう。

乗り物の内部、トイレや部屋の様子など、個々の部分を気にしている子供には、気になる場所の様子を写真や動画などで見せると安心に繋がります。また、不安になった場合や困った場合には別の部屋がある事や一人になれるスペースがある事など代替や対処方法を見せると不安を取り除くことができます。

子供の不安や苦手をあらかじめ確認する

子供が不安を感じることや苦手であることを事前に確認しておくのも重要です。

感覚過敏から音や光や人ごみが苦手であったり、単純に薄暗い場所や威圧感のある建物、場所見知りから初めて行く場所、過去に有った出来事を思い出すような場所や物が怖かったりと子供はそれぞれ特徴や特性が違うので、不安やストレスを感じたり苦手と思うことは様々です。

不安なことや苦手な事を知っておき、不安などの原因を取り除くことで落ち着いた行動が取れます。

また、不安を感じてしまったり、パニックになったときでも理由や原因がわかりやすくなり対処の方法もスムーズになるでしょう。

安心グッズを持たせる

持っていて不安な気持ちを紛らわせる物や、何らかの安心グッズがある場合にはそれらを持たせる方法もあります。

物への感覚遊びが好きな子供の場合には、触り心地の良い布や、伸ばしたり折り曲げたりして楽しめるシリコンやゴムなどのツールが有ると良いでしょう。

音などが苦手な子供の場合にはイヤーマフや耳栓を持たせたり、視覚の刺激が強い子供にはサングラスやアイマスクなどを用意し、本人が辛いと感じたら付けてもらうようにしましょう。

持っていると安心するぬいぐるみや、大好きな絵本なども不安やストレスを感じたら使うお守り代わりとして持っているだけでも子供にとっては大きな安心材料になります。

また、乗り物酔いが不安な子供にはあらかじめ酔い止めを飲んでもらい、薬の効果と共に「酔い止めを飲んだから大丈夫」という安心感がある事で精神的な理由からの車酔いが軽減される効果があります。

乗り物の座る位置などの配慮

乗り物に座る位置などの配慮も重要な事項の一つです。

乗り物に酔いやすい子供は景色の良く見える前方や窓際に座らせるといった一般的なものから、個々の子供の特徴を考慮した座席配置が必要になります。

例えば、大きい音や声が苦手な子供は周囲に大きな声を出すお友達から離したり、エンジンやスピーカーなどから離れた位置にして音への対処をします。

苦手なお友達が居る場合にはその子から離れた席にしたり、近くに仲の良いお友達や大人を配置するようにしましょう。

また、乗り物が走行中に立ち歩いてしまう子供の場合は通路から離れた席や大人の隣に座らせるといった対処や、周囲の人を叩いたり噛み付いたりと他害を行ってしまう子供は周囲の座席を空けるといった安全対策としても座席の位置は重要になります。

保護者と連絡できるようにしておく

宿泊などで親元を離れる際は、保護者といつでも連絡を取れるようにしておくのも重要です。お母さんといつでも連絡が取れることや、いざとなったら迎えに来てもらえるということを知るだけでも子供は安心できる場合があります。

また、急なパニックや体調不良などに見舞われても、保護者と素早い連絡を取ることで、スムーズに対処出来ます。

学校の方針によっては、障害の重い子供や重篤なてんかん発作などを起こす可能性がある子供の場合、宿泊先の近くに保護者も泊まるという対処をとる事もあります。

シュミレーションや練習を行う

見通しをつける事が出来たら実際内容に近づけた練習やシュミレーションを行ってみることも重要です。

電車に乗ってお泊りにいく場合には、切符を買う練習や、最寄の駅への見学を行ったり、短い区間だけ実際に電車に乗ってみるという方法があります。

ホテルやお店で料理を食べる場合には、似た雰囲気やメニューのあるファミレスやファーストフード店に行って注文をするなどを行いましょう。

お泊りをする場合には自宅とは環境で寝る練習として、学校で昼寝や短時間の睡眠をとってみる、お風呂では銭湯や入浴施設を体験するなどが良いでしょう。

実際に特別支援学校などでは修学旅行に向けて何年か前から、校外学習を兼ねて電車に乗る練習、お店で商品を選んで購入したり飲食店で食べる練習、実際に宿泊する施設まで行ってみる練習などを行っている場所が多いです。

現在ではインターネットを活用しホームページを見たり、Googleマップやストリートビューなどを用いることで実際に行く場所などを確認しイメージをする事もできます。

まとめ

子供が修学旅行や宿泊などを嫌がる理由には、なんらかの不安やストレスがあることが原因です。

まずは、子供の特性や子供の気持ちとなり、不安やストレスの原因を見つけて、一緒に対処する事が重要です。

修学旅行やお泊りが苦手な子でも、行ってしまえば案外楽しんで帰ってくるものです。宿泊などではその時しか出来ない訓練や体験も多いと思いますが、ひとまずそれは置いておいて、子供が少しでも多く楽しんで良い思い出が作れるようにしてあげましょう。

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