特別支援学校と特別支援学級の違いと選択判断

   2018/05/20

特別支援学校と特別支援学級を選ぶ判断理由

子供の進学時に特別支援学校と特別支援学級のどちらを選ぶかは、子供の今後の人生を決める大きなポイントになり、保護者も大変悩むことと思います。

どちらの進学先を選ぶかは、子供の障害の程度や、特徴・特性などにより一概には決められませんが、少しでも参考になればと思い、特別支援学校と特別支援学級のメリット(長所)と、デメリット(短所)をまとめてみました。

 

特別支援学校と特別支援学級について

まずは特別支援学校と特別支援学級の意味と概要について説明します。

特別支援学校とは

特別支援学校とは障害児・病弱児・虚弱児に対して、教育と自立を図る事を目的に知識や技術の取得を行う学校です。

学校教育法の第八章「特別支援教育」第七十二条には「特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする。 」と定義されています。

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特別支援学級とは

特別支援学級とは「特別支援クラス」「特学」とも呼ばれ、通常の小学校・中学校・高等学校・中等教育学校に教育上特別な支援を必要とする児童や生徒のために設置される学級です。

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特別支援学校と特別支援学級への進学の判断

子供の障害や発達状況、特徴・特性は人によりそれぞれで、一概にどの程度の障害だからどちらの学校へと言うのは難しいです。一般的な判断の目安としては「日常生活が自立していること」と「授業に参加出来る事」の2つが重要視されています。

日常生活の自立について

日常生活の自立とは、子ども本人が一人でもしくは補助により、主に学校の行動を行えると言う事だと思います。日常生活における行動とは「排泄」「食事」「衛生管理」「衣類の着替え」「意思の伝達」などです。

特別支援学校は大きな目標として「自立を図る事」を目的としています。
その為、日常生活や社会生活が困難な場合には特別支援学校、日常生活が行えるが学力などに遅れが見られる場合は特別支援学級に進学するのが一つの目安になります。

授業に参加できるか

通常の学級や特別支援学級は学力を向上させるために授業を行います。そのためこれらの学級に進学する一つの判断として、授業に参加できるかが重要になります。

授業の参加には勉強についていけるかだけではなく、授業中はある程度の時間落ち着いて席に座っていられるか、集団の行動を取ることが出来るかなどがあります。障害の特性によっては聴覚過敏で教室内の声や音に耐えることが出来ない、クラスメートの人数に圧倒されてしまう、授業中に座っていても授業の内容が耳や目に入らないといった個々の特徴にも考慮する必要があります。

子どもの障害の特性や知能の問題から通常の授業に参加するのが難しいと、本人が学校に通っているにも係わらず何もしていないのと同じになり、成長時期の大事な時間を無駄にしてしまい、結果として子どもの発達のチャンスを潰してしまうことにもなります。

授業に参加できるなら通常クラス、授業に参加できるが躓いてしまう部分が多い場合には特別支援学級、授業に参加が難しく個別の支援が必要な場合には特別支援学校への進学が一つの判断の目安になります。

医療行為の有無

医療行為が必要な場合、バリアフリーや特別な器具や用具を用意する必要がある場合には特別支援学校ではないと対応が難しい事も有ります。

職員の人員に関しても特別支援学校の方が厚く、通常の特別支援学校には看護師や栄養士など専門の職員がおり、生活の補助や緊急時の対応を取ることができる体制となっています。

痰吸引、定期的な点滴、薬物の注射などの医療行為が発生する場合は看護師が必要になり、看護師が居ない支援学級などでは保護者が行ったり、自費で看護師などを用意する必要もあります。

地域の状態や関係者の判断

医療関係者・教育委員会・学校側などが協議をし、適切な支援と教育が行える学校を判断し提案することも有ります。ただし、これには地域差があり、障害児教育に理解がない地域があったり教育委員会や市町村の行政の都合で決められてしまう事もあるのが現状です。

一番良いのは特別支援学校の一般公開日や、学園祭の日などに見学に行き、学校の様子をその目で見るのが良いと思われます。保護者の場合ですと、連絡を行えば通常の授業の日でも見学を受け入れてくれる学校も有ります。

特別支援学校と特別支援学級のメリットとデメリット

では、実際に特別支援学校と特別支援学級を選ぶに当たっての、メリットとデメリットを挙げてみたいと思います。

特別支援学校のメリット

先生が専門家である

特別支援学校の教員は通常の教員免許の他に、特別支援学校教員の免許を持っていなければなりません。特別支援学校教員の免許を取るためには、様々な障害についての基礎的な知識や対処法などを習得し、免許が分野ごと(視覚障害、知的障害、身体障害など)に交付されます。

また、特別支援学校の教員は定期的に障害児教育の研修などにも参加しており、通常の教員よりも障害児に対する多くの知識と技術を持っています。

障害児を教育する環境と体制が整っている

特別支援学校は障害を持つ子供を教育するための環境と体制が整っています。
体制とは専門の先生が居るだけでなく、送迎バスと添乗員の手配、医療行為が行える看護師の配置、専門の療法士の配置、施設のバリアフリー、特別な設備・器具・用具などです。

また特別支援学校では生活単元学習として、遊びや工作などの作業を通して、机上の授業とは違う学習を行っています。生活単元学習ではこれらの遊びや作業を通しての集団活動やルールの理解、日常生活訓練、道具の使い方、体のトレーニングなどを行っています。

クラスが少人数である

特別支援学校の小学部と中学部は通常1クラス6人以内で編成されています。
さらにクラスは担任と副担任の2人以上の先生を配置している事がほとんどで、一人一人に応じたきめ細かい教育や指導が行われています。

特別な器具や用具がそろっている

特別支援学校には通常の学校には無い器具や用具や教育ツールなどがそろっています。
障害の種別や障害の部位などに応じた、細かい訓練や教育が行うことが出来ます。

情報が集まる

特別支援学校には障害者福祉に関する情報が自然と集まってきます。
公的な情報は学校側から伝達が有りますし、保護者間でも様々な情報が多くやり取りされており、「どこどこの施設が良い・悪い」といった、噂話程度の情報でも多く耳にする事が出来ます。

様々な施設と連携している

特別支援学校は、市町村役場、地域の病院、療育センター、放課後等デイサービスなどと連携をとっている事も有ります。
連携をとっていなくても、非公式に情報のやり取りを行い、子供の状態や実態を把握しています。

学校卒業後の進路が選びやすい

特別支援学校には高校卒業後の進路に関する情報も多く入ります。
就職に関しては障害者を雇い入れたい企業からは求人票も届きますし、進路指導の先生などと企業や就労施設への実習に行く事もできます。障害者枠での就職も情報が多く入ることで有利に進めることができます。

特別支援学校では入学当時から高等部を卒業し社会に出ることを見据えた目標を立てており、小学校のうちから就労や施設を利用するための訓練や作業を行っています。

入所や通所を考えている場合でも、それぞれの施設から定員の空き情報なども届きやすくなっています。特に入所施設などは数年後の定員の空き情報も考慮しているため、在学中でも卒業後に利用する施設の目処をつけることが出来ます。

特別支援学校のデメリット

クラスが少人数である

1クラス6名程度の少人数であることはメリットでも有りますが、通常の学校などと違いクラス内で接するお友達が少ないデメリットにもなります。
そのため、コミュニケーションを取るパターンが毎回同じになってしまったり、卒業までクラス替えが無く、子供だけでなく保護者間も毎回同じ顔ぶれになってしまいます

学校交流やクラス交流なども有りますが、回数も少なく毎回決まった環境で過ごすことが多くなります。
お話の出来ない子供が多い場合には、会話をする機会も少なくなってしまいます。

学力を向上させる教育が少ない

これは学校や学級、子供の障害や知能により一概には言えませんが、通常の学校のように「良い上位学校へ行けるように学力を伸ばす」という教育は行われません。

これは特別支援学校の大前提が「自立を図る事」を目的としているためです。
その為学校の教育も「文字の読み書き」「時計や時間」「お金の計算」など、日常生活で使えることを目的にした勉強を中心に行います。

なお、現在では知的には障害の無い子供や軽度の知的障害の子供を対象とした特別支援学校もあり、そこでは学力を向上させる教育も行われています。

特別支援学級のメリット

多くの子供と交流が持てる

特別支援学級の場合、通常は普通学校の中に学級が有ります。
そのために、通常クラスの子供たちと交流を深めたり、教科等によっては一緒に授業を受ける事もできます。

通常クラスの子供たちと授業や休み時間や放課後などに接する事が多くなるため、お友達から多くのことを学ぶことが出来ます。

学力を伸ばす教育が受けられる

特別支援学校は「本人の自立」を目標とした教育や訓練を行いますが、特別支援学級は通常の学級の指導では能力を伸ばすことの難しい子供に対し一人一人の障害に応じ適切な教育を行うことが目的であるため、習得が難しい科目や教科や分野に対して教育を受けることが出来ます。

特別支援学級のデメリット

1クラスの人数が比較的多い

特別支援学級の小学部と中学部は通常1クラス8人以内で編成されています。
決して多い人数ではないですが、特別支援学校の1クラス6人以内よりは多くなっています。
また、特別支援学級の場合副担任が居ることは比較的少なく、担任1人でクラスを受け持っています。

担任の先生が専門家でない

特別支援学級の教員は通常の教員免許のみで行うことができ、特別支援学校の教員のように障害児に対する特別な免許は持っておりません。

障害児に対する知識が無い教員や、悪い言い方をすると余っていた教員が特別支援学級の担任になる事も見られます。

その為、障害児に対する教育や障害ごとの特性などに理解が無く、授業もプリントやドリルを行うだけという場合も見られます。

情報が入らない

特別支援学級では学校全体に関する情報は入っても、障害児や障害者福祉に関する情報は入りにくい現状が有ります。
その為、障害児に関する情報などは、保護者自らが役場や児童相談所などに調べに行かなくてはなりません。

特に放課後等デイサービスなどの施設開所情報や、学校卒業後の進路に関する情報は殆ど入ってこないようです。特別支援学級から特別支援学校へ転入した保護者が「支援学校に移ったら、沢山の情報が耳に入ってビックリした」と話していた事も有ります。

周りと比較されてしまう

特別支援学級の場合、通常の小中学校に設置されている場合がほとんどです。
大多数の子供はいわゆる健常児であるため、自然と周囲から比較をされてしまうことが有ります。

比較されてしまうのは子供間や保護者間で見られる場合や、障害児教育に理解の無い教員からも比較される場合が有ります。

また、子供自身が「周りと比べて劣っている」と感じてしまう場合、自信を喪失したり落ち込んでしまう事も有るので、先生や保護者が意識をしてあげる必要が有ります。

保護者が送迎を行う

特別支援学校では送迎バスを運行していますが、特別支援学級のある通常学校では、生徒の自主登校が基本となっています。しかし、特別支援学級の小学校低学年などの子供の場合、自主登校が難しいため保護者が送り迎えをする事が多くなります。

編入や転校について

特別支援学級から特別支援学校に編入や転校する場合も多く見られます。

特別支援学級から特別支援学校に移動する場合には、病気や障害の進行が進んだ場合、支援学級での対応が困難になった場合などです。

逆に特別支援学校から特別支援級に移ることは比較的少なく、障害の原因である病気や怪我が治ったり障害が軽減された場合に、教育委員会等が認定することで移動できることがあるようです。

なお、支援級から特別支援学級に編入する際には、子どもに学校を変更する理由を説明してあげ不安やパニックを少なくしてあげましょう。また、学校の授業についていけないから特別支援学校に移ると言い方をしてしまうと、子どもの自尊心を傷つけてしまう恐れがあるので注意が必要になります。

特別支援学校への進学について

特別支援学校への進学は特別支援学校の中学部への進学と高等部への進学が有ります。
特別支援学級を持つ高等部は例外を除いて存在しておらず、地域によっては中学部の特別支援学級が無い事も少なくありません。

基本的に高等部から特別支援学校進学に入る生徒が多く、特別支援学校の中学部から進学した子供と同じぐらいの人数が高等部に入学します。
その為、特別支援学校の中学部から進学した生徒は、高等部になると見慣れない生徒が極端に増えることから一時的に落ち着きがなくなり不安定になる事も有ります。

まとめ

特別支援学校、特別支援クラス共にメリット・デメリットは多く有り、何処の学校に通うのかを決める最終判断は親が行うことになります。

子供の障害の程度や、特性・特徴、さらには将来を見据えてあげて、適切な教育・指導・訓練を行える学校を選ぶことが必要になります。

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