障害児や障害者がよだれや唾を垂らす理由と対策・対応

 

障害児や障害者がよだれや唾を垂らす理由と対策・対応

偏見にはなってしまいますが、重度の知的障害者や重度心身障害者などがよだれを垂らしている事が多いイメージを持っている人は多いと思います。実際に私が関わった重度の自閉症の人や重度の障害者にはよだれを垂らしている人も多々見られました。

ではなぜ障害を持った人は涎をたらしてしまうのでしょうか?

よだれを垂らしてしまう理由や、よだれが垂れてしまう場合の対応方法や対処方法などを調べてまとめてみました。

よだれとは

まず、よだれ(涎)とは、つばき(唾)とも呼ばれ、医学的には唾液(だえき)と表記されます。

よだれは、99%以上が水分で構成される口の中に分泌される分泌液で、消化を助ける、口腔内の粘膜の保護、殺菌や抗菌、虫歯予防などの効果が有ります。

よだれの量は通常の大人で、1日に1リットルから1.5リットル程度分泌されています。

よだれが垂れるデメリット

よだれが垂れていると様々なデメリットが発生します。


見た目が良くない

よだれが垂れていると、見栄えが良くないばかりか『不衛生』『だらしない』『汚らしい』と見られてしまうことが有ります。特に人前や食事の際などは周囲の人に不快感を与えてしまう事もあるので注意が必要です。

臭いがする

よだれが口から出てしまうと、どうしてもよだれの臭いが周囲に広がってしまいます。さらい、癲癇などの薬を飲んでいると、よだれの臭いが強くなる事もあるので注意が必要です。

汚してしまう

よだれが垂れると口元や、衣服などがどうしても汚れてしまいます。また、垂れたよだれを服の袖などで拭ってしまうと、袖までも濡れてグチャグチャになってしまう事があります。

また、よだれが衣服ではなく、床などに垂れるとその場所も汚れてしまいます。たたみや絨毯などでは垂れたよだれが染み込んでいます。寝ている際にもよだれが垂れると布団や枕などを汚してしまうことにも繋がります。

よだれで遊んでしまう

自閉症などの子供の場合、唾を吐いて遊んだり、垂れた唾を指で色々な場所に擦り付けてしまうこと等があります。

関連ページ
自閉症や発達障害児の唾吐きや唾遊び| 発達障害-自閉症.net

障害者や障害児がよだれを垂らしてしまう理由

障害者や障害児がよだれを垂らしてしまう理由には体の機能的な面や、感覚過敏といった特性など様々な原因があります。

口やアゴの筋肉が弱い

重度の知的障害や自閉症などの人だと、筋肉や骨格が弱く発達が遅れている場合が有ります。筋肉の中でも顔や喉などの筋肉が弱いと、口を閉じることや舌を上手に使うことが難しく唾を飲み込むことが出来なくなります。

唾をはじめとした食べ物や飲みもをを飲み込む行為を『嚥下』といいます。嚥下とは口の中の食べ物や飲み物を飲み込む一連の動作や機能のことで、口や喉などの筋肉が弱いと嚥下の機能も弱まってしまいます。

健常の人の場合は特に意識をしなくても口を閉じて唾を飲み込むことが出来ますが、障害を持った人の場合は意識しないと唾を飲み込むことができなかったり、機能的な問題から意識をしても唾を飲み込むことが出来ず、口からよだれとして垂れてしまいます。

また、重い障害を持った人は筋肉や神経などの物理的な問題や、知的な面での問題で言葉を喋ることが出来ない人も多くいます。普段から言葉を喋っていないと、口や舌の使い方、口の閉じ方、息の吸い方や吐き方、唾の飲み込み方など関連する筋肉の発達が遅くなったり衰えてしまうことがあります。

口や嚥下の使い方がわからない

口やアゴなどの筋肉が弱くなくても、筋肉の使い方がわからないという事があります。
自閉症の人には体の動かしかたがぎこちなかったり、同時に複数の動きをするのが困難な『発達性協調運動障害』という障害を持つ場合もあります。

唾を飲み込むには「つばが溜まった」→「口を閉じる」→「舌でつばを飲み込みやすい位置に移動する」→「飲みこむ」という複数の動作や理解が必要になります。

健常者は普段意識をせずに唾を飲み込めますが、あえて意識をすると結構難しいものです。
そのため、口につばが溜まってもどのように口や舌や喉の筋肉をを動かして飲み込めばよいのかわからないという事も考えられます。

口を閉じることが出来ない

口の筋肉が弱いと口が開きっぱなしになってしまい、口を閉じることが出来なくなります。
口が開いていると口内につばが溜まった際に、自然とよだれとして口から流れ出てしまいます。

さらに唾を飲み込むという動作を行う為には、口を閉じるという工程が必要になります。試してみるとわかりますが、口を開けたまま唾を飲み込むというのはかなり無理をしないと難しいと思います。

そのため、いつも口が開いている子供は唾を垂らしてしまうだけでなく、唾を飲み込むこと自体が困難となります。

口の神経が麻痺している

脳性麻痺や半身不随などの障害を持つ場合、体の一部が麻痺をして筋肉が動かなくなる事があります。

この麻痺が口などに影響していると、口の筋肉を正しく動かすのが困難となり、口から涎がたれてしまうことが有ります。

半身麻痺などであると、麻痺をしている側の口から涎がたれてしまうことが多く見られます。

口呼吸をしている

口呼吸をしていると口が開いている時間が自然と長くなる為、口からよだれが垂れてしまう事も多くなります。

口呼吸をしている理由は上記で記したように、口や顎の筋肉が弱いことや、鼻炎などで鼻からの呼吸が困難、歯並びや顎の形の変形など様々です。

口呼吸をするとよだれが垂れるだけでなく、口が乾燥して虫歯や口臭の原因になったり、鼻を通さないので細菌やホコリなどを吸い込みやすくなる恐れも有ります。

よだれの分泌量が多い

てんかんの薬などを飲んでいる場合に副作用として、唾液の分泌量が増えることがあります。また、薬によっては唾液の量が増えるだけでなく、臭いが強くなり口が臭くなる事もあります。

なお、よだれの分泌量が多くなると、虫歯になりにくいという若干のメリットも有り、「うちの子はよだれが多いからか歯科検診では一度も指摘されたことないわ」と話すお母さんにも会った事があります。

感覚過敏である

自閉症や発達障害の人の特徴として、感覚が非常に敏感になる『感覚過敏』と言うものがあります。この感覚過敏により口の中や舌の感覚などが極度に敏感になってしまうと、口の中で食べ物や飲み物に対して不快感を感じることが有ります。

そのため唾などが口に溜まるの飲み込むことが出来ず、よだれとして垂らしてしまったり、唾をその辺に吐いてしまうことがあります。

中には唇の感覚が敏感で唇に物が触れるのが嫌で、口を閉じることが出来ず、結果としてよだれが垂れてしまうという場合も有ります。

関連ページ
自閉症や発達障害の感覚過敏とは| 発達障害-自閉症.net

口を拭えない

これはよだれが垂れてしまった後の対応になりますが、よだれが垂れてしまっても口元を拭えず、垂れっぱなしになってしまう事があります。

口元を拭えない理由には様々ありますが、よだれが垂れたことに理解ができなかったり、垂れた後にどうしてよいのか対応できないなどがあります。

また、よだれが垂れた際に服の襟元や袖などで拭ってしまい、服がグチャグチャになってしまう事もあるので、可能であればハンドタオルやハンカチなどで拭くように指導すると良いでしょう。

よだれが垂れてしまう事への対応や対策

よだれが口から垂れてしまう場合には、垂れたよだれを受ける「よだれかけ」の利用や、ハンカチなどで拭く、口の筋肉の機能改善などがあります。

よだれかけやスタイを利用する

よだれが多く出てしまい、自分で拭き取るのも難しい場合には「よだれかけ(スタイ)」を利用する方法があります。一般的に売られているよだれかけは赤ちゃんや幼児向けのものが多いですが、現在は体格の大きい障害児向けのものが販売されていたり、老人介護用のを利用する方法もあります。

よだれが多く出る場合には何枚か予備のよだれかけを用意しておくことと、ぬれてしまったよだれかけを入れる小さなビニール袋もセットで持っておくと便利です。

ハンカチやハンドタオルを持つ

自分の意思や周囲からの言葉がけで口のよだれを拭える場合には、ハンカチやハンドタオルを持ち、定期的に口元を拭くように促す方法があります。

ハンカチやタオルは使いやすいように首などからかけたり、取り出しやすいポケットなどに入れるようにすると良いです。また、よだれが多く出る場合などは予備のハンカチやタオルも何枚か用意しておく必要があります。

よだれが垂れてしまった場所(机や床など)を拭くという行為もマナー上必要になるので、よだれが垂れてしまった際にはその場所も綺麗にふき取ることを教えましょう。

よだれを吸ったり飲み込むよう促す

よだれが口から垂れてしまう子供でも、周囲から声をかけられると口から垂れかけたよだれを吸ったり、口に溜まった唾を飲み込める子もいます。

「口に溜まったよだれを飲み込むタイミングがわからない」という子もいるので、声かけでの対応から、口によだれが溜まったら飲み込めるように指導していきましょう。

また、ぼーっとしていたり何かに集中していると、口が半開きになってよだれが垂れてしまう子もおおいので、よだれが垂れそうな際には声をかけてあげると良いでしょう。

唾を吐く方法を教える

唾を飲み込むのが難しい場合には、唾を吐き出す方法を教える必要もあります。

唾を吐き出す場合には、何処でも良いわけではなく、ティッシュで拭い取るように出したり、洗面台やトイレなどに行って唾を吐くように教えましょう。

口の筋肉のトレーニングやマッサージを行う

口の筋肉が弱い場合や麻痺している場合には、トレーニングやマッサージを行うとわずかながらも改善する事もあります。なお、口の筋肉や麻痺の症状は人により様々なので、実際にトレーニングやマッサージを行う際には、かかりつけの医師や療育機関の専門職に相談しましょう。

簡単なトレーニングには、口を開けたり閉じたりする、ストローなどを唇で咥えて口を閉じる練習を行う、頬や口内をマッサージして刺激を与えたり筋肉の緊張をほぐすなどの方法があります。

機能訓練を行う

嚥下の機能が劣っている、口が開いている、口や喉の筋肉の動かし方が難しい場合などには、機能訓練で改善する事もあります。

嚥下の機能訓練は人の症状によって様々ですが、専門の医師、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士、歯科医師、歯科衛生士などの専門職が対応します。

まずは身近な医療関係者や地域の療育機関などに相談すると良いでしょう。

まとめ

障害を持った人がよだれを垂らしてしまうのには身体の機能的な面や、感覚過敏など様々な理由があります。

機能訓練や唾を飲み込む練習を行うと、成長につれて唾を飲み込めるようになり、よだれを垂らす事も少なくなります。

また、機能的に訓練などが難しい場合には、よだれが垂れてしまった際の対処法や、よだれかけやスタイなどを使用する方法もあります。

ある程度の年齢になってもよだれが垂れてしまうのが気になる場合には、身近な専門医や療育機関などに相談するのが良いでしょう。

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