自閉症と場所見知り

   2017/04/23

自閉症と場所見知り

自閉症の子供は場所見知りをする事が有ります。初めて行く場所に中々入れなかったり、特定の場所が苦手だったり・・・。

想定していない場所へ連れて行かれると、自分自身で対処ができず不安になったり混乱やパニックになってしまうのが原因です。

子供が場所見知りをしてしまう理由にもさまざまが考えられます。その理由や対処法など自閉症児の場所見知りに関する事柄をまとめてみました。

なお、場所見知りをしたり、このページに記載している内容に当てはまるからといって自閉症や発達障害であるとは限りません。逆に全く場所見知りをしない自閉症の子供も多く見られます。場所見知りは活動範囲が狭い小さな子供や発達段階にある子供には誰でも見られる特徴でも有ります。

場所見知りとは

場所見知りとは初めて行く場所や知らない場所に対して、不安を感じてしまうことです。

場所見知りになると「その場所へ入ることができなくなる」「泣いてしまう」「その場から動けなくなってしまう」「逃げてしまう」「パニックになってしまう」などの行動が見られることが有ります。

学校に通う自閉症や発達障害の子供だと、何ヶ月も先の修学旅行や校外学習に対して不安になったり行きたくないという気持ちから、場所見知りになる場合も有ります。

場所見知りをする原因

場所見知りをしてしまう原因にはいくつかが考えられます。

初めての場所なので不安を感じたり緊張する

大人でもそうですが、初めて行く場所に対して人は少なからず緊張したり不安な気持ちになります。

自閉症の子供の場合だと、「これから何処へ行くのか」「何をするのか」「ここはどんな場所なのか」「ここで何をすればいいのか」「ここは安全なのか」「あの建物は何か」・・・と不安になる理由は沢山考えられます。

ましてや自閉症の場合だと場所へのこだわりもある為、新しい場所を受け入れるというのはとても苦手で難しい行動の一つです。

音や人の声がうるさい

自閉症や発達障害の人の場合、音を敏感に感じ取ってしまう「聴覚過敏」という特徴を持つ場合が有ります。

聴覚過敏であると、人の声や物音が大きく聞こえてしまったり、本来なら聞き取らなくてもよい雑音や人の話し声なども耳に入ってしまい、混乱したり煩く感じてしまう場合が有ります。

実際に話し声や音が聞こえる場所は勿論、静かな場所でも人が多かったり子供がいたりすると「ここはうるさそうだ」と感じて、場所を嫌がったりすることが有ります。

華やかでまぶしい

上記の聴覚過敏と似ていますが自閉症や発達障害の子供の場合、目から入る感覚も過敏である「視覚過敏」という特徴を持つ場合が有ります。

視覚過敏であると、人や車など動くもの視覚が行ってしまったり、照明やディスプレイなどの光を敏感に感じて疲れるため、この場所は苦手だと思ってしまうことがあります。

人の数に圧倒される

自閉症の子供は人が多いところが基本的に苦手です。
人が多い場所が苦手な理由には「ウルサイ」「落ち着かない」「人が多くて怖い」「混乱する」等が考えられます。

また、多くの人が行きかう繁華街や駅やショッピングモールなどは苦手であるという子供も多くいます。

筆者である私も昔から人の多い場所が苦手で、都会の駅やデパートに行くと頭が痛くなったり気持ち悪くなる事が多く有りました。

建物や雰囲気に圧倒される

子供は大きな建物や場の雰囲気に圧倒されて、場所見知りをしてしまうという事も有ります。
子供が苦手な場所には「威圧感のある建物」「荘厳な建物」「カラフルな建物」「広い場所や建物」「狭い場所や建物」「暗い場所」「明るい場所」など様々です。

健常の大人でもそうですが、暗い、狭い、圧迫感を感じる、天井が低い、薄気味悪い場所などは通常苦手です。

特に神社やお寺などは、敷地内に沢山の木々が生い茂り薄暗く、建物は宗教施設であるため荘厳で威圧感があるので入りたがらない事が多く見られます。

苦手な場所や物などを連想する

過去に嫌な思いや怖い思いをした場所や建物などを連想してしまうと、全く別の場所であっても嫌がってしまうことが有ります。

発達障害の子供は理屈よりも感覚などで物事を覚えていることが多く、以前んで泣いてしまった場所に似ている、注射を打った建物(病院)に似ているなどから苦手な場所を連想してしまうことも有ります。

病院や学校、ビルや商業施設などはどの建物も比較的よく似た作りになっているので、別の建物であっても嫌がってしまうことが有ります。

その他の理由

その他の理由として自閉症特有のこだわりから、新しい場所に入れず場所見知りをしてしまうということが有ります。

今までに聞いた話だと「警備員さんがいた」「特定の車が止まっていた」「子供が居た」「犬が居た」「バイクが停まっていた」「建物が工事をしていた」「公園に行ったら既に別の子が居た」「先生に似てる人がいた」などで、場所見知りをしてしまったという事例も聞いたことが有ります。

関連ページ
自閉症のこだわり| 発達障害-自閉症.net

場所見知りを克服するには

場所見知りをすぐに克服するのはとても難しく、時間をかけながら少しずつ色々な場所に慣れさせる必要が有ります。

場所見知りを克服させる方法にはいくつかが考えられます。

新しい場所の説明や目的を教えて納得させる

自閉症や発達障害の子供は新しい行動が苦手で、今後の行動の予定や見通しをつけるのが困難です。

そのため、新しい場所に行く場合には「場所の様子」「行く理由や目的」「行くとどうなる」「どのくらいの間その場所に居る」など本人が納得できるように説明をして見通しをつけてあげるのが重要です。

新しい場所に少しずつ慣れさせる

場所見知りをしてしまう場合には、その場所に少しずつ慣れさせるのも効果的です。最初はその場所の前を通り過ぎるということから始めて、徐々にその場所や建物に近づいていきます。

私が見たことある子供で、最初は特定のスーパーにお買い物に行けず車の中で待っていましたが、「車から降りる」「駐車場を歩く」「ドアの近くまで行く」「ドアから店内を覗く」という順番で半年ぐらいかけてそのお店でお買い物ができるようになった子供も居ます。

好きなものや安心する物を持たせる

何らかの安心グッズなどが有る子供の場合には、安心できるものを持たせることで落ち着き苦手な場所にいける事も有ります。
音が苦手な子供の場合にはイヤーマフをつけたり、ポータブルプレーヤーなどで好きな音楽を利かせるのも効果が有ります。

また落ち着かない場合には握ったりすることのできるハンカチやハンドタオルなどであったり、指先で遊ぶのが好きな子供の場合には輪ゴムや少量の粘土などでも気が紛れて落ち着ける事も有ります。

ご褒美を与える

場所に慣れさせたりお買い物に連れて行く場合には、ご褒美を与えるというのも効果的です。

ご褒美にはお買い物に一緒に行けたら好きなお菓子やジュースを買う、帰りに好きな公園に寄って遊ぶ、大好きなご飯やおやつを食べに行くのも良いでしょう。

ただし、ご褒美をあげすぎるとそれ自体が目的になってしまう事もあるので、場所に慣れたら徐々にご褒美を無くして行く必要も有ります。

お友達と一緒に行く

親と新しい場所に行くのは嫌がりますが、学校の行事などでお友達と行く場合は大丈夫という事もよく有ります。

「仲のよいお友達と一緒だから怖くない」という気持ちや、「あの子が行くのなら僕も行ってみるか」という気持ちが沸くのだと思います。

または「学校の行事や授業だから嫌だけど行くか・・・」という気持ちも有るのかも知れません。

無理やり連れて行く

最後は少し強引な方法になりますが、苦手な場所に無理やり連れて行くという方法も有ります。

食わず嫌いでは有りませんが、イメージだけで苦手な場所と思い込んでいる事も有ります。その場合、苦手な場所に連れて行ってしまうと、行ったら行ったで何事も無く行動できる場合も有ります。

ただし、無理やり連れて行かれた子供がパニックになったり、暫くしても落ち着けない場合にはその場所から離れて落ち着かせる必要が有ります。

まとめ

場所見知りをしてしまうのも様々な理由が考えられます。
自閉症などの発達障害の場合、特性やこだわりなど人により様々なため、その子に応じた対処法を取るのが有効です。

社会に出ると様々な場所にも出かけなくてはならなくなるので、場所見知りは克服しなければならない事柄の一つです。

基本的に苦手な事を克服するのには時間がかかりますが、子供の成長や行動に合わせて少しずつ場所に慣れさせる必要が有ります。

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