自閉症のこだわり

   2017/05/07

自閉症のこだわり

自閉症の特徴には「対人相互関係の障害(社会性獲得の困難)」「意思伝達の障害(コミュニケーション能力の困難)」「反復的で常同的な様式と興味と行動の制約(興味の幅がせまく特定の物事にこだわる)」というものが有ります。

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この中で、「反復的で常同的な様式と興味と行動の制約」の項目が、こだわりや常同行動などの特徴として知られています。

自閉症の多くの人に何らかのこだわりと見られる行動があるとされ、実際に関わった自閉症の子供にも、様々なこだわりと考えられる行動が多く見られました。

そのこだわり行動も人により様々なで、1つだけの行動から、何個もの動作が組み合わさってパターン化し一連の流れになっているこだわり行動なども見かけました。

こだわりは時として困りごとの一つとしても見られ、こだわりが強すぎて他人に迷惑をかけてしまったり、次の行動に移ることが出来ない等、日常生活に支障をきたすと『問題行動』に捉えられてしまうことが有ります。

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自閉症の問題行動の種類| 発達障害-自閉症.net

では自閉症みられるこだわりの行動とはどのようなものなのでしょうか。また、こだわりの理由や対処法などを調べてまとめてみました。

物事にこだわる理由

物事にこだわる理由には、不安や感覚などの理由から様々なことが考えられます。こだわりの原因として考えらる事をまとめてみました。


変化や予想できない事が苦手

自閉症の子供は、予想できない事や予定に無いことなどへの対処が苦手で、変化や新しい物事へ恐怖心を抱く事が有ります。

このような状態の変化や予想できない事があると、今まで経験した行動や、成功した時と同じような状況を作りたいと思い、こだわりともいえる行動をとる事が有ります。

常同行動として行っている

自閉症の特徴の一つに、同じ事を何度も繰り返す常同行動というものがあります。代表的な常同行動には「手をひらひらと振る」「体を前後に動かす」などがあります。

常同行動を行う理由には「感覚遊びとして」「気持ちを落ち着かせる為」「何かを要求している」など様々な理由が考えられていますが、場合によっては常同行動がこだわりの行動として見られる事があります。

なお、こだわりから常同行動をとっているのか、常同行動をするからこだわりと取られるのかは判断が難しくなります。

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納得が行かない

自閉症の人が同じ行動を繰り返したり、物事にこだわる理由に「納得がいかない」という場合もあります。

納得がいかない理由には人によったりその時の条件でも異なりますが、「行動の順番やタイミング」「動作の速さ」「位置」「見え方」「感覚」など様々なものがあるようです。

これらのものが何か欠けていたり、思っていた動作や行動と違った場合に、納得するまで何度も行ってしまう事があります。

印象や思い出に残る出来事があった

こだわりが始まるきっかけは人により様々ですが、初めて見たものや、印象や思い出に残った物事が関連している事が多いです。「良い事があった」「楽しい思いをした」「褒められた」など良い印象の記憶が残ると、再び良い思いを経験したいと同じ行動や動作を繰り返す事が有ります。

また、一見何かと関連していないようでも、本人の中では記憶の出来事と関連している事もあります。

感覚や刺激を得るため

自閉症や発達障害の子供は通常よりも感覚が敏感である『感覚過敏』や、感覚が鈍い『感覚鈍麻』という特徴を持っている事が有ります。

感覚が過敏であるとその感覚を軽減したり、嫌な感覚から逃れようとして物事にこだわったりします。

同じ食べ物を食べたがる場合は『味覚』や『口や舌』や『臭い・香り』などの感覚から、特定の音から逃げる場合やテレビなどの音源を消してしまう場合は『耳の聴覚過敏』、決まった服しか着ない場合は『身体の感覚過敏』からなどが考えられます。

私達からしたら美味しい食べ物や、心地よい音楽、着心地の良い服でも、感覚過敏を持った子供からすれば『土や粘土を食べる感じ』『黒板を爪で引っ掻いた音』『チクチクと痛く前身が締め付けられる』と感じているかも知れません。

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自閉症の感覚過敏とは| 発達障害-自閉症.net

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自我の芽生えから

自我の芽生えからのこだわりは、健常児でも小さい頃に見られる特徴の一つでもあり、成長している証でも有ります。

自我の芽生えや体の発達により出来る事が増え、自分の意思で「やりたいこと」を考えて行動することが出来るようになります。見方によってこのこだわりは、ワガママとして捕らえられてしまう事もあるので注意が必要です。

成長に伴い様々な動作が出来そうになると「成功するまでやりたい」という気持ちや、成功したら嬉しくなり「何度も行いたい」という行動などが、自我の芽生えで見られる代表的なこだわりになります。

このことから自閉症や発達障害の子供でも、自我が芽生え自分でやりたい、理解や納得ができるまで行いたい、という行動がこだわりに繋がっているとも考えられます。

自我からのこだわりの場合は自分でやりたいという気持ちから、親や周囲の人が目的の行動を先に行ってしまうと、怒ったりパニックになったりする事が見られます。

こだわりの種類

自閉症の子供がこだわることは様々な種類や分野があります。

主なものでは『時間や日にちに関すること』『位置に関すること』『行動の流れや予定』『見た目』『感覚』『動きや動作』などが有ります。

時間や日にちに関することでは、何曜日には何をすると決めていたり、この時間にはこれをしなくてはいけないというこだわりなどが有ります。

位置に関することでは、人の立ち位置、物の位置、見える景色などが有ります。物の位置が違っているともどしたり、本人の中でそこに居るべきではない人などが居ると何処かへ追いやろうとする事も有ります。

行動の流れや予定では、一日の流れがや行動を行う順番が決まっていたり、予定が変更しても変更前の行動を取ろうとしたりする事があります。

見た目にかんするこだわりでは、色や形、物の量、物の位置などがあります。物を並べて楽しんだり、紐や水などが動く様子を見ているのも見た目のこだわりともいえます。

感覚のこだわりは多く見られ、食べ物の偏食、決まった服しか着ない、特定の音を聴きたがるなどがあります。

動きや動作に関しては、行動の速度、動作の位置や向き、行動の大きさなどがあります。

こだわりの対処方法

自閉症の子供がこだわる物事や理由はひとにより様々で、ピタッと止めさせるといった確実な対処方法は難しいと感じますが、一般的なこだわりへの対処方法や今までの経験のなかで効果的だった方法がいくつかあるので紹介します。

不安やストレスを取り除く

不安やストレスからこだわり行動を行っている場合には、その原因となる事を特定し、不安やストレスを無くしたり軽減させる方法が有ります。

不安やストレスの原因は様々で特定することは困難な場合が多いですが、好きなものや落ち着けることなどを提供してリラックスさせ不安やストレスを軽減させる方法も効果が有ります。

行動のリズムをずらす

こだわっている物事やルーチンの流れを、少しずつずらしたりして行く方法があります。最初は普段と行動の流れが違うと余計にこだわったり怒ったりする事もあります。しかし、徐々に毎回行うことで、ストレスや不安への耐性が増えたり、こだわりへの許容範囲も広くすることが出来るようになります。

ただし、急に変化をつけすぎてしまうと、パニックになったり混乱してしまうので、本人の許容できる範囲内で行うことが重要です。

回数を決める

同じ事を何度も何度も繰り返してしまう場合には、あらかじめ動作を行える回数や時間を決めておく方法があります。こだわりの行動をとる前に、本人と回数や時間などを決めておき、説明して納得を得てもらう必要があります。

見通しをつける

予定が分からない場合や見通しが付かず、不安からこだわりの行動が出ることがあります。このような場合には今後の予定や起こる出来事などを説明することで、不安が取り除けてこだわり行動が軽減する事もあります。

自閉症の子供は予想をする事が苦手で、急な物事の対処にも非常にストレスを感じます。普段と違う予定の場合や、不意な出来事が発生する可能性が有る場合には予め予定などを説明して理解してもらい、本人の中で対応できるという安心と自信をつけてもらう必要があります。

本人が止めるまで行わせる

こだわり行動を何度も繰り返す場合には、本人が納得したり飽きたりするまで行わせるという方法もあります。こだわりは他人が見ると意味の無い行動と感じてしまいますが、本人の中では必要な行動だという事が多いです。

本人が「やらなくては!」と思っている行動を無理に止めてしまうと、気持ちの整理が付かなかったり、不安やストレスを残したまま、パニックや自傷など別の問題行動に繋がってしまうことがあります。

本人が止めるまで行わせることによって、本人の中での不安や問題を自分自身で解決させることが出来ます。

また、感覚や遊びとして行っているこだわりは、一時的なものである事が多いです。一時的と言っても子供によって様々ですが、数日間で消えてしまうものや、場合によっては1年近く続くものも有ります。

このようなこだわりは本人が飽きてしまうと、いつのまにか自然に消えてしまい「あのときのこだわりは何だったの?」と後々感じるほどです。遊びなどのこだわりと強引に止めてしまうと、より強い感覚や動作を求めてさらにこだわりの行動が大変になる事もあるので注意が必要です。

代替品を用意する

こだわりを無理に止めても本人のストレスになったり、別の問題行動として表れることも有ります。そのため、こだわりを無理に止めるのではなく、代替品を用意したりこだわり、行動を行って良い場所を提供するという方法も有ります。

テレビの上など何処でも高い場所に登ってしまう子には、安定した椅子を用意し「この椅子なら登っても良い」という方法に変えたり、服やリュックのベルトなど布や紐類を口に入れるのが好きな子には、紐を縫い付けたハンドタオルを持たせるといった方法を取ったこともあります。

こだわりを長所として生かす

物事へのこだわりでも、社会的に役立つこだわりは、本人への得意分野として長所にする事ができます。

自閉症の子供に多いこだわりの中では、自動車や電車に詳しく細かい型番や路線や駅の場所まで知っている、地名や国旗に詳しい、人名に詳しい、電話番号や誕生日などに詳しい、決まったものを集めているなどです。

電車などに詳しい場合には駅名などから地名につなげたり、電話番号や誕生日などに詳しい場合には数字から計算などへと繋げるとこだわりを生かして興味の分野や幅を広げることが出来ます。

サヴァン症候群や特殊能力がある自閉症や発達障害の人は、これらのこだわりが長所として生かされているのだと思います。

まとめ

こだわりは自閉症児や発達障害児の安心を得るための行動でもあり、場合によっては「なんでこんな行動を続けなくてはいけないんだ」と、本人にとっても耐え難い行動でもあります。

こだわりを無理に止めさせると、パニックなどから他害行為や自傷行為などの二次障害へと繋がったり、本人へのストレスや不安へと繋がります。

自閉症の子供のこだわりは短いと数日間、長いと何年に及ぶものもあります。場合によっては一度見られなくなったこだわりが再度表れる事もあります。しかし、様々なことを経験したり学習して成長することで、こだわりは完全に無くなったり他のものに移ります。

日常生活に問題が出ないようなこだわりや、他人に迷惑をかけるものでなければ長い目で見守ってあげる事も必要です。

こだわりで本人や周囲の人が困っている場合には、こだわりに代る安心材料を用意したり、物事への見通しを本人が納得できる形で提供する事が重要になります。

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