自閉症の構造化とルーチン化の具体例

   2018/03/22

自閉症の構造化とルーチン化の具体例

自閉症児の療育方法の一つで耳にする「構造化」。文字から見ると何かを作り上げるのかな?と感じると思います。

では実際に自閉症児の療育で行われる「構造化」とはどのようなものでしょうか。
構造化の目的やメリット、具体的な構造化の方法などについて調べてまとめてみました。

構造化とは

構造化とは様々な要素を関連させて相互に組み上げる状態を言います。
自閉症者や発達障害者に対する構造化とは、時間の流れや物の順番や位置などを整理し、それぞれを関連付けて理解を容易にする合理的な配慮の事になります。

日常生活でも、信号機や標識による車や歩行者の誘導、駅構内での案内標識や案内図、家電の取扱説明書などがとても良く構造化されています。

これ以外にも構造化は、仕事の進め方、物事の考え方、問題解決方法、建設や製造時の手法など様々な面で利用されています。このような構造化はビジネス関連の書籍の「仕事術」のような本を見るととても参考になると思います。

構造化をする目的

自閉症や発達障害の人達は、自分で見通しを立てて行動するのに苦労し、多くのことを順序だてて行うのが苦手です。また、部屋などの空間にいても何をすればいいのか、何処にいればよいのかが分からない事もあります。

言葉で作業や活動の流れを話しても、同時に多くのことを理解できなかったり、順番がバラバラになってしまいます。私達も一度に沢山の順序を言われると、聞き取れないばかりか混乱してしまうことも多いでしょう。

例えば学校で使う「時間割表」も、何曜日の何時間目にはどの授業を行うというのが一目でわかるので、これも構造化の一つになります。

自閉症や発達障害の人に行う構造化には情報の記憶・整理・理解の面から「空間の構造化」「時間の構造化」「作業や学習に対する構造化」を視覚的に理解できるよう配慮を行います。

構造化を実施し、今するべき事や次に行うことなどが分かりやすくなると、本人の中でも迷いや混乱が無くなり、パニックなどに繋がる事も少なくなると思います。結果的に構造化とはパニックや混乱を未然に防ぐ方法の一つでも有ります。

また、構造化を行っていく中で、毎日行わなければならないことなどをルーチン化して、習慣として身につけるのも構造化の一つです。

自閉症の人への構造化プログラムとしてTEACCHと言うものが有ります。
これは1960年代にアメリカで考案された方法で、自閉症を持った人とが個々の生活環境を本人がすごし易い状態に設計していく方法になります。TEACCHは自閉症の人達が社会に合わせるのではなく、周囲の人達が自閉症の人の特性を理解して生活の質を上げていこうという目的が有ります。

構造化の方法や具体例

一般的に自閉症の構造化というと、作業エリアを個別のパーティションで仕切って、絵カードや写真を使って行うなどが頭に浮かぶと思います。これで上手に物事を運べるようになる人もいますが、この方法では上手くいかず余計に混乱してしまう人もいます。
構造化といっても方法は対象の人により様々で、その人の苦手な部分補えるようにする必要が有ります。そのため基本的に構造化は人それぞれ違った方法になります。

構造化は主に視覚を利用して物事や時間の流れなどの理解を支援を行います。
基本的には「いつ」「どこで」「なにを」「どれぐらい」「どのように」が分かるようにし、「おわり」のタイミングを明確に伝えられるようにします。場合によっては「次に何を行う」という動作につなげます。つまりこれから行うことに対して見通しをつけるのが重要になります。

見通しが付かないと「いつ終わるのか」「いつまでやるのか」「次は何をやるのか」と不安になってしまいますが。見通しが付くようになるとその不安もなくなり、結果的に作業や学習の集中に繋がっていきます。

場所の構造化

基本的に活動に応じて居場所をそれぞれ別にする必要が有ります。作業や学習なら机のある部屋、食事をする場合は食堂やキッチンの部屋、遊ぶならプレイルームや体育館などです。一つ一つの行動に対して場所を当てはめていく事に意味が有り、行動の切り替えの意識にもなります。

また、活動する部屋の床などを色分けしたり、線を引くなどすることで、活動を行う境界をハッキリさせると効果的です。

スペースが無い場合などにはそれぞれの活動に色を設定し、その活動ごと対応した色のシートなどを引いてその上で活動する事でも代用出来ます。

意識の集中の構造化

周囲の物事が気になり、気が散って集中できない場合には、パーティションなどで区切って個人の空間を作り、気になるものが目に入らないようにする方法が一般的です。音が気になってしまう人の場合には個室を使用すると良いでしょう。
また、指導者と本人の1対1の関係をで行うのも効果が有ります。

時間の構造化

時間の流れの理解が難しい場合には、スケジュールの作成や、物事を行う順番カードの提示、アナログ時計を用いて針がどこに移動するまで行うなどで時間や間隔を伝える方法が有ります。

スケジュールにも「時間割表形式」「タイムテーブル方式」「絵カードを並べる方法」などがあります。「文字だけ」「絵カードや写真」「実物を見せる」など本人の一番わかりやすい方法を使う必要が有ります。

スケジュールの期間も「1週間分」「翌日まで」「今日1日」「この先数個分」「今と次の行動のみ」など、本人が理解し安心して見通しが立てられる期間のものを利用します。

順序の構造化

順序の理解が難しい場合には、時間割表やタイムテーブルなどを利用するのが効果的です。活動で行うものなどを決まった順序で並べておいて、並べた順に行うといった方法も有ります。

回数の構造化

物事を何度も行う場合には、枠を10個用意し1回行うごとに色を塗る、ボールを10個用意して1回行うごとに別の入れ物に移動させるなどして、全部塗り終わったりボールが移動したら終わりといった方法で伝える方法が有ります。

ルーチン

ルーチンとは決まった作業工程や手順や習慣をさす言葉です。ルーティンと表記される場合も有り、ルーチンワークなどの単語でも良く耳にすると思います。

生活や行動、毎日行う作業などをルーチン化することで、予測を持った行動をとる事ができ、落ち着いた生活パターンを作ることが出来ます。

日常生活におけるルーチンには『朝目覚めたら布団をたたみ着替えて顔を洗う』『食べた後は食器を片付け歯を磨く』などがあります。作業などでは『カゴから野菜を3こ取り出し、袋に入れて縛りダンボールに入れる』などです。

ルーチン化するには、毎回同じ手順で行う必要があり、それが慣れてくると習慣として身につき、生活の中で行うことで見通しを持って落ち着いてすごせるようになります。

日常生活における行動のルーチン化は、状況が変わってもそれぞれの生活の場で共通して行える為、社会人として地域社会へ出て行っても使えるように取り組む必要が有ります。

まとめ

構造化とは日常における様々なことを関連付け、視覚的に分かりやすくすることです。
構造化を行うことで、見通しを付けることができ本人が進んで生活や活動を行いやすくなります。

構造化の方法も人により様々で、本人が苦手としているところや難しいと感じているところを見つけ出し、構造化という方法で分かりやすくしてあげる事になります。

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