発達障害の子がはさみを上手に使えない理由とはさみの練習方法

 

発達障害の子がはさみを上手に使えない理由とはさみの練習方法

自閉症などの発達障害の子の中には、はさみを上手に使うことが難しい子供も見られます。

はさみの使い方でも、「持つのが難しい」「はさみでチョキンと切るのが難しい」「はさみを開くのが難しい」「まっすぐに切れない」「曲線を切れない」「止めることができない」など子供によりさまざまな状態が見られます。

発達に遅れの有る子供は、指先が不器用であったり、両手を同時に動かすことが難しかったり、場合によっては動かし方自体をイメージする事ができないためはさみを使えないということもあります。

はさみを使うのが難しい場合は、どのような点でつまづいているのかと、その対処方法や訓練方法などをまとめてみました。

はさみを使うのが難しい理由

発達に遅れのある子供がはさみを使うのが難しい理由には、その特徴や特性などからさまざまな理由が考えられます。

はさみを持つのが難しい

はさみは日常的にに使う道具の中でも、持つのが難しいものになります。
鉛筆やスプーンなどは握っても持てますが、はさみは人差し指と親指が別々の場所に位置するので、手のひら全体を使い握って持つことができないほか、親指と中指(場合によっては人差し指)を指穴に通して持たなくてはいけません。

このときに指先の力が弱いと、はさみを指先で支えることができず安定して持つことができません。また、指先の感覚過敏などがあると、指で支えたり、指を指穴に通すのが難しいこともあります。

協調した動きが難しい

はさみは中指と親指を使った開閉の動作のほか、はさみを持っていない手で切る紙などの対象物を押さえたり、移動させたりという動作を同時に行います。

この際に発達性協調運動障害などのように、複数の動きを同時に行うのが難しい場合や、不器用で細かい動きができないと、はさみを上手に使うのが難しくなります。

はさみで切ることだけに集中してしまい、対象物への意識が薄れることで、切り取り線などにあわせて切ることができないこともあります。

はさみの動きの理解が難しい

はさみは握って切った後に開くという動作を繰り返して切ることができます。

子供の日常的な生活の中で、指先で物を持って握るという行為は多いのですが、それを開くという動作は余り行いません。そのために、開くという動きの理解が難しいということがあります。

また、はさみを握って切り、開いて次の動作に進むという動きの連続をイメージできないと、はさみをどのように扱ってよいのかが分からないこともあります。

子供の中にははさみを開閉をせずに、開いた状態ではさみを動かし、カッターのようにシャーっと切ってしまう子もいます。単純に切るだけなら便利なやり方でもありますが、切りすぎてしまったり、前方に人が居ると危険なこともあるので、やはり正しいはさみの使い方を覚えてもらいたいです。

細かい動きが難しい

はさみは指先で開閉を行ったり、曲線を切るときには手首を動かし曲線にはさみを沿わせて切るという、細かい動きが必要になることもあります。指先や手首の微妙な動きの調整や、指先の力の加減が難しいと、はさみを上手に扱うのが難しくなります。

指先の力の調整が難しい子は、はさみを強く握るので「チョキチョキ」ではなく、「ジョキン!ジョキン!」と力強く切るかたちになると思います。このような場合、切るのと止めなくてはいけない部分で止めることができなかったり、勢いあまって余計に切りすぎてしまうということもあります。

手首の細かい動きが難しいと、はさみで曲線を切るときには、線にあわせてはさみや対象物を動かすことができず、ジグザグになったり線からはみ出て切ってしまうということがあります。

はさみを上手に使えない場合の対処方法

はさみを上手に使えない場合には、その子が苦手としている面を見つけ出し、その部分を練習したり補ってあげる事が必要になります。

はさみのお手本を見せる

はさみの使い方や動かし方のイメージが持てない子には、大人が切るお手本を見せたり、手を添えて一緒に持ってあげる方法も効果的です。

また親子で同じはさみを持てるように、子供用と大人用の指穴が付いているはさみなどを利用するのもよいでしょう。

補助はさみを使う

はさみを持つのが難しい場合には、子供の手の大きさにあったサイズや、素材や指穴の形などが持ちやすいものを選んであげましょう。

はさみの指穴に指を通すのが難しい場合や指先の力が弱い場合には、握るだけで切ることのできるはさみCastaなどをお勧めします。

はさみを握って切ることができても開くことが難しいという場合には、はさみを開く補助をするバネ付きのもので練習を行うとよいでしょう。

小さいものから切る練習を行う

はさみの最初の練習としては切りやすい紐や細かい紙など、1回の開閉で切れるもので練習しましょう。

1回の開閉だけで切ることができるので、たくさん練習ができて成功体験を積み重ねることができるほか、はさみで切るというイメージを掴むことにも繋がります。

1回の開閉で切ることが完璧になったら、徐々に対象の紙を大きくし、2回、3回と連続したはさみの開閉方法を練習しましょう。

補助線に沿って切る

はさみで真っ直ぐに切ることが難しい場合には、紙に補助線や切り取り線を書き、それに沿って切ってもらいましょう。

最初は直線での練習を行い、慣れてきたら曲線やジグザグ線などの練習も取り入れていき、最後には四角や丸などの図形を切り抜く練習なども行っていくとよいです。

途中で止める練習

補助線や切り取り線に沿って切ることができるようになったら、切るのを途中で止めるという練習にも挑戦してみましょう。

途中で止める練習を行う際には、力強く「ジョキン!ジョキン!」と切るやり方だと、止めることができずに切りきってしまうので、適度な力加減やゆっくりとしたはさみの開閉を行うということも理解してもらいましょう。

指先の力加減や感覚の問題でゆっくりと切ることが難しい場合には、指先を使う遊びや訓練などを同時に行い、指先の巧緻性(器用さ)も高めていきましょう。

両手の協調性を高める

はさみで紙を切る場合には、はさみを持つ手の開閉の動きと、紙を持ったり送ったりという、複数の動きを同時に行うことがあります。

はさみを上手にチョキチョキと開閉する事ができても、紙を切る際には曲がってしまったり線からはみ出て切ってしまうという場合には、両手を同時に動かすということが難しい場合があります。

このような際には日常的に遊びや訓練の中で、両手を使ったり、全身を同時に使うような動作を取り入れていきましょう。

具体例としては体操やダンス、縄跳び、ジャングルジム、サッカー、キャッチボールなどの運動や、工作、粘土遊びなどがあります。訓練として行うと子供も嫌になってしまうので、遊びやゲームの中で上手に協調性を高める動きを取り入れて生きましょう。

使い方のマナーや危険への理解

はさみの使い方には物を切るだけでなく、渡し方のマナーや危険認識なども理解する必要があります。

マナーや危険などが理解できる子の場合には「人に手渡す際は自分に刃を向ける」「人には刃先を向けない」「必要のない場合には使用しない」「はさみを持ったままむやみに立ち歩かない」「切らないときは刃先を閉じる」「使ったら直ぐに片付ける」などのルールを教えてあげましょう。

まとめ

はさみを上手に使うのが難しい子は、その特徴や特性などから様々な理由が考えられます。まずは、子供の様子をよく観察し、どの部分を苦手としているか確認する必要があります。

苦手とする部分が見つかったら、その部分を伸ばす練習や訓練などを行っていきましょう。
また、通常のはさみを扱うのが難しい場合には、使いやすいサイズや形状のはさみを使って補うという方法もあります。

はさみはその形状から扱うのが比較的難しい道具ですが、使えるようになると今後の生活に役立たせる事ができます。はさみの練習は子供の発達段階などを鑑みて、無理をせず長い目で取り組んでいくようにしましょう。

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