自閉症や発達障害の睡眠問題や睡眠障害

   2018/03/18

自閉症や発達障害の睡眠問題や睡眠障害

自閉症や発達障害の子供の多くに睡眠障害や睡眠時の問題を抱えています。
資料にもよりますが広汎性発達障害の子供で30%~90%、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の子供には25%から50%の子供に睡眠に関する問題が見られるとしています。

睡眠障害を持っていると本人だけでなく、家族も寝ることが出来ずストレスを感じたり、疲労が蓄積されていってしまいます。

自閉症などの発達障害の子供はどの様な理由から睡眠への問題を抱えてしまうのかしらべてみました。

睡眠障害とは

睡眠障害とは睡眠時における様々な障害の総称で、安定した睡眠をとることが難しかったり、なかなか眠りに付くことが難しい症状が見られます。原因には身体的な問題、ストレスや不安などの精神的な問題、他の病気などによる問題などがあります。

睡眠障害の状態による分類には、眠りに入るのに時間がかかって寝付けない『入眠障害』、睡眠途中に目が覚めてしまう『中途覚醒』、明け方など朝早くに目覚めてしまう『早期覚醒』、しっかり寝ているのにぐっすりと眠った感じが無い『熟睡障害』があります。

症状からの分類にはストレスや病気などにより眠れなくなる『不眠症』、しっかり睡眠時間を取っているのにもかかわらず日中などに眠くなる『過眠症』、いびきや睡眠時無呼吸症候群などによる『睡眠呼吸障害』、睡眠のリズムが生活環境とずれてしまう『概日リズム睡眠障害』、睡眠時に不随意な動きや意識をもってしまう『睡眠時随伴症』などがあります。

自閉症や発達障害の子供に見られる睡眠障害には、寝つきが悪く夜遅くまで起きている、夜中や早朝に目が覚める、睡眠時間が不規則、日中に眠くなるなどが多いです。

これらの症状が生活に影響を及ぼすほどになると二次障害となってしまうことがあります。

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自閉症スペクトラムや発達障害と二次障害| 発達障害-自閉症.net

自閉症や発達障害の子供の睡眠障害の理由

自閉症や発達障害の子供が睡眠に関する問題を抱えてしまうのには、その障害の特性などから多くの理由が考えられます。

日中に体を動かしていない

日中に運動などで体を動かすことをしないと、体が疲れないため眠りに入るのが遅くなったり、すぐに目覚めてしまうことに繋がります。

睡眠とは心身の疲労を回復させるために行われる生理現象です。そのため、良い睡眠をとるためには適度に体を動かすことが必要になります。

適度に体を動かすことでストレス発散にもつながり、精神面でも良い眠りへと繋げることが出来ます。

ストレスや不安のため

ストレスや不安を抱えていると、眠りに入るのに時間がかかったり、眠りが浅くなり夜中に起きてしまうということもあります。

不安なことがあると布団に入っても嫌なことが頭の中に思い出されて寝付けなくなったり、ストレスで悪い夢などを見て起きてしまう事もあります。

自閉症や発達障害の子供はその特徴から多くの不安やストレスを抱えてしまうことが多く、フラッシュバックやタイムスリップ現象などで昔の嫌な記憶が急に思い出されてしまうということもあります。

楽しいことがあるため

楽しいことやワクワクすることがあると、興奮して寝ることが出来なくなる場合もあります。ありがちなのは旅行や遠足の前日などです。

また、自分の中で楽しいことがあると、布団の中に入っても一人でゲームやアニメの話をしたり、自分の想像の中の話をして盛り上がってしまうということもあります。

お腹がすいてしまう

睡眠中にお腹が空くことで目覚めてしまうことがあります。

小学校高学年にもなると成長期となりどれだけ食べてもお腹がすいたり、食べても直ぐにお腹が空いてしまうことがあります。

特に男の子の場合はその傾向が強く、空腹で夜中に目が覚めて冷蔵庫の中を漁っていたり、お菓子などを食べていたと言うこともありました。

また、自閉症や発達障害の子供は満腹中枢の異常などから満腹感を得ることが難しいこともあり、沢山食べても空腹を感じたり、すぐに空腹を感じて食べたくなるということがあります。

感覚過敏のため

自閉症や発達障害の子供は様々な感覚が過剰に敏感になる『感覚過敏』という特徴を持っている事があります。

聴覚が敏感となる聴覚過敏の特徴を持っていると音に敏感になり、苦手な音が増えたり、小さな音でもうるさいと感じることがあります。

実際に聴覚過敏を持っている子供の場合、ドアの開け閉めの音や家族がトイレを使う音で直ぐに目覚めてしまったり、道路の車の往来の音や早朝の新聞配達の音で目覚めてしまうということもあります。

視覚などが過敏であるとちょっとした光などで眩しいと感じて目が覚めてしまうこともあります。寝る際には遮光カーテンを使用したり、雨戸をしめるなどして外部からの光を入れないことも効果があります。

触覚が過敏であると、布団の触り心地や掛け布団の重み、枕の感触などで不快を感じてしまうこともあります。また、夏などの暑い時期や冬などの寒い時期などによっても感覚の感じ方が変わるので注意が必要になります。

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自閉症や発達障害の感覚過敏とは| 発達障害-自閉症.net

尿意やおねしょのため

睡眠中に尿意を感じたり、紙パンツにおねしょをしその不快感で目覚めてしまうこともあります。

自閉症や発達障害の子供は排尿の感覚を掴むのが難しく、トイレに失敗してしまうことがあります。また、服薬している薬の副作用で利尿効果があったり、喉が渇いて水を沢山飲んだりして夜間の尿意に繋がることがあります。

薬の副作用のため

自閉症や発達障害を持つ子供は気持ちを落ち着かせる薬や、てんかんを抑える薬など様々な種類の薬を服薬していることがあります。

服薬している薬の中には、眠気を引き起こすものもあります。日中の服薬後に寝てしまうと睡眠のリズムが狂ってしまい、結果として夜に寝ることが出来なくなったり眠りが浅くなるということもあります。

てんかん発作のため

自閉症や発達障害を持つ子供にはてんかん発作の症状を持つ子供も多くいます。てんかんの発作はその人により様々ですが、中には睡眠時におきるものもあります。

睡眠に関する発作には、睡眠中に起こるもの、入眠時に起こるもの、早朝など目覚める直前に起こるものが有ります。

またその症状も痙攣や硬直を伴うものから、指先やまぶたが軽くピクピクする程度のものまで様々です。

てんかん発作が起こると単純に目が覚めてしまうだけでなく、脳や身体には大きなダメージや疲労を伴うため、睡眠をとっていても疲れが取れないということに繋がります。

また、てんかん発作が起こると体のエネルギーを大きく消費するため、発作後には寝てしまうということも見られます。

睡眠障害となると

私たち健常者でも睡眠不足になると、疲れが取れないばかりか、日中の眠さや体のだるさ、集中力の低下、イライラなどのストレス、頭痛や目の疲れなど様々なものが表れます。自閉症や発達障害となるとこれらの状態の他にも、様々な症状が引き起こされます。

日中に眠くなってしまう

夜間にまとまった睡眠が取れないと日中に眠くなってしまいます。

幼稚園や保育園であればお昼寝の時間がありますが、学校に通っている場合にはそうはいきません。日中に眠くなってしまうと勉強に集中が出来なくなったり、授業中に寝てしまい注意を受けるだけでなく、学習する機会を失ってしまうことにも繋がります。

気持ちが不安定になる

日中に眠くなってしまうと、イライラとストレスを感じたり、気持ちが不安定になってしまう事があります。

ストレスからパニックに繋がったり、他人にあたって危害を加えたり、物を壊してしまうような行動に繋がることもあるので注意が必要になります。

眠くて気持ちが不安定になると、様々なことに誘っても嫌がったり、参加できなくなってしまう事もあります。

てんかん発作を誘発しやすくなる

てんかん発作を持っている子は、睡眠時間が不足することや、生活リズムが狂ってしまうことで、てんかん発作を引き起こすきっかけにもなります。

睡眠不足が直ちにてんかんを誘発するわけでは有りませんが、睡眠不足が続いたり、体の疲れが取れない場合などは注意が必要になります。

睡眠障害への対処法

睡眠障害や睡眠問題の対処法はその人の障害の特徴などにより様々ですが、代表的な対応方法を紹介します。

睡眠の妨げとなっている理由を探す

子供の睡眠の妨げとなっている理由を探し解決することで、睡眠障害を緩和する方法です。これは一番単純ではありますが、一番難しい方法でもあります。

聴覚の過敏がある、どの様なことにストレスや不安を感じやすい、今日は学校で嫌なことが有ったなど、子供の特性や特徴、その日の生活の様子などから理由を推測することも重要です。

規則正しい生活を送る

毎日規則正しい生活を送ることで、生活リズムを整えておく必要があります。特に自閉症や発達障害の人は一日の流れをこだわったりすることも多いため、そのような負担を減らす意味でも効果があります。

睡眠障害に対しての規則正しい生活を送る上では特に、布団に入る時間と起きる時間は必ず守る必要があります。

適度に運動をする

既に書いた内容ではありますが、毎日適度に運動をすることで、ストレスの発散と体が疲れ良い睡眠をとることが出来ます。

運動が難しい場合には体のマッサージやちょっとしたストレッチなどでも効果があります。

私の見ている自閉症の子供の中にも「夜寝ないので、たくさん運動させてください」と保護者からの要望を受ける事も多くあります。

なお、疲れすぎても目が冴えてしまうことがあるので、程よい運動を心がけるようにしましょう。

寝やすい環境を作る

子供が寝やすい環境を作ることも重要です。

特に様々な感覚過敏を持っている場合には、周囲の音、光の加減、室温や湿度、布団の重さや肌触り、パジャマの着心地などに注意をしてあげましょう。

子供が暗い環境を怖がる場合には適度な明るさにしたり、寝るまで親が付き添ってあげる方法もあります。

睡眠薬を使う

睡眠薬を使う方法は最後の手段にもなりますが、極端な睡眠障害で本人の健康や家族への負担があまりにも大きい場合は、専門機関に相談することで睡眠薬を処方されることもあります。

私は医療関係者ではないため、詳しい内容を書くことは出来ませんが、実際に睡眠障害を持つ自閉症の子供で、睡眠薬を服薬している子供もいます。

薬を使用する際には必ず専門家や医師への相談をする必要があります。

親の休息時間を作る

睡眠障害の子供がいると、親は全く寝ることが出来ないという悩み事も耳にする事が多いです。

親も睡眠時間が減ってしまうと体の不調となるばかりか、ストレスが溜まり子供に対してイライラしてしまうこともあります。そのような事にならないように、親も短時間でも良いので休憩を取る必要があります。

子供が幼稚園や保育園や学校に行っている間などに、短時間でも仮眠を取ると体がすっきりします。母子通園を行っている療育センターなどでも、そのような保護者に対しての休憩室を備えている場所も増えているので利用する方法もあります。

まとめ

自閉症や発達障害の子供の多くに、睡眠障害や睡眠に関する問題が見られ、子供をささえる家族にも睡眠不足やストレスなどを抱えている状況があります。

自閉症や発達障害の子供が睡眠障害を抱えてしまうのには、その障害の特徴や受け取る感覚などのストレスなど様々なものに及びます。

睡眠障害をすぐに治すという事は困難ですが、まずは睡眠障害の原因となっていることを見つけ、子供に対して寝やすい環境を整えてあげることが重要になります。

また、保護者も無理をせず、自分の休息時間を取ることも必要になります。

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