自閉症や発達障害の子供が車を嫌がったり乗りたがらない理由

   2018/03/18

自閉症や発達障害の子供が車を嫌がったり乗りたがらない理由

自閉症や発達障害の子供には様々なこだわりがあり、特定の車に乗るのを嫌がるというこだわりを持つことも見られます。

特別支援学校では送迎のスクールバスを運行していたり、学童や放課後等デイサービスなどでは自宅や学校への送迎を行っており、特定の車に乗るのを嫌がるとこれらの送迎サービスを受けることが出来ず、保護者が自分で送迎しなくてはいけないということもあります。

また、こだわりなどの理由で乗り降りに時間がかかり、送迎予定が押してしまう場合なども、送迎を断られるといったことも有るようです。

では、自閉症や発達障害の子供は、どのような理由から車に乗るのを嫌がるのか調べてまとめてみました。

関連ページ
自閉症の子供が道順やルートにこだわる理由| 発達障害-自閉症.net

車を乗るのを嫌がる理由

車を嫌がる理由には「車自体が嫌い」「苦手な人が乗っている」「様々なこだわり」など人によって異なりますが、主な理由について調べてみました。

嫌いな人や苦手な人が乗っている

乗る車両に嫌いな人や苦手な人が既に居る場合、車に乗りたがるのを嫌がることがあります。

苦手な人には「怖い人」「しつこい人」「大きな声を出してうるさい子供」「叩いたり蹴ったりする子供」「唾を吐く子供」「動きが激しい子供」「よく泣き出す子」などがあります。中には特定の添乗員さんや運転手さんが苦手で、その人がいると乗りたがらないという事もあります。

このような場合、中に誰も人がいない状態だと乗ることが出来たり、苦手と思われる人を一旦車から降ろしてもらうと同じ車でも乗ることが出来たことがあります。

車に嫌な思い出がある

車に嫌な思い出があると、車を怖がったり、車に乗るのを嫌がったりしてしまうことが有ります。

嫌な思い出と言っても人それぞれで、「クラクションを鳴らされた」「車の中で騒いだので怒られた」「送迎車内でお友達から叩かれた」「声の大きい人が乗っていた」などです。

嫌だと思うようになった出来事も、家族でさえ気が付かないような些細な出来事であったり、とても昔の出来事であったりするので、周囲の人が車を嫌がる理由を特定するのは困難な場合が多いです。

車に乗る気分や乗る予定の日ではない

学校に行きたくない気分の時にはスクールバスに乗るのを嫌がったり、施設に行く日ではないと思っている場合などは施設の送迎車両に乗るのを嫌がるという事もあります。

お母さんの仕事の都合などで急に放課後等デイサービスを利用することになり、学校から送迎車に乗る場合などは、当初予定していたスケジュールが崩れてしまうことから、本人の中で対応ができなくなり混乱したりパニックになってしまう事もあります。

お父さんやお母さんの車で行きたい

学校のスクールバスに乗りたがらない理由としては、学校の送迎バスではなくお父さんやお母さんと一緒に学校に行きたいためという子供を見たことがあります。

その子は、学校のスクールバスに乗るのはとても嫌がる子でしたが、学校に行くのは嫌いでは無いようすで、お父さんやお母さんの車だとスムーズに車に乗って学校に来ることが出来ていました。

なお、帰りは学校のバスに乗らないと家に帰れないという事がわかっているので、早くお家に帰りたいという気持ちから、帰りの乗車はスムーズに行えていました。

車へのこだわり

物事へのこだわりも自閉症や発達障害の大きな特徴です。車自体にこだわりがあると、決まった車にしか乗れないという事もあります。

車へのこだわりには「お父さんやお母さんの車にしか乗らない」「特定の車種」「特定の色」などがあります。

路線バスなどでも「車体の色」「系統や行き先」「運行会社」「時間」などが異なっていると、以前に乗ったバスと違うと思い込み不安になって乗れなくなってしまう事もあります。

臭いや香りが嫌い

車にはエアコンの臭い、芳香剤の臭い、新しい車の臭い、タバコの臭い、人の体臭など様々な臭いがあります。この臭いが嫌いであると車に乗るのを嫌がってしまうことがあります。

自閉症や発達障害の子供の特徴の一つに『感覚過敏』と言うものがあります。これは様々な感覚が非常に敏感になってしまう症状です。この感覚過敏で嗅覚が過敏になると、ちょっとした臭いでも非常に強い臭いとして感じ取ってしまったり、普通の人が気が付かない臭いなどでも反応してしまうことがあります。

また、芳香剤や香水など一般的に良い臭いや香りだといわれているものでも、クサイと感じ取ってしまう事もあるので注意が必要です。

関連ページ
自閉症や発達障害の感覚過敏とは 発達障害-自閉症.net

決まった席に座りたい

自閉症の特徴として決まった席や決まった位置があるというこだわりがあります。位置のこだわりには自分の位置だけでなく、自分から見える物や人の位置などにも決まり事があったりしまう。

位置へのこだわりが有ると、自分が決まった席に座りたいという思いが強く、自分以外の人がその席に座っていると車に乗るのを嫌がったり、その人をどけようとする事があります。

一番になりたい

自閉症などの子供の中には一番でなくては嫌だというこだわりを持っている場合があります。

このようなこだわりがあると、お迎えに着た車に既にお友達などが乗っている場合に「自分が一番最初に乗りたい」というこだわりから車に乗りたがらない事があります。

また、一番最初に降りたいというこだわりを持っている子供おり、送迎車両などで送り順が1番で無いと怒ってしまうという事もあります。

車の乗り降りをやり直す

物事を何度もやり直す特徴を持っている自閉症の子供も見られます。物事を何度もやり直す理由には、動作を行った際になんらかの部分が気に入らず「納得がいかない」と思ってしまうためです。

納得がいかない物事は、人によったりその時の条件でも異なりますが「行動の順番」「タイミング」「音」「見え方」「感覚」「動作の速さ」などがあります。

車の乗車の際にも「ドアの開け方」「車への乗り込み動作」「シートベルトの装着の音」などで納得がいかないと自分が満足するまで何度でも行い、乗車に時間がかかったり、自分の気が済むまで乗り込むことが出来ないといったことに繋がります。

長時間乗るのが嫌い

車が苦手だと、車に乗ることが出来ても長時間乗るのが辛いと感じる子供もいます。他人と乗ることや、車という狭い空間に長時間いるのが苦痛でストレスを感じたりして疲れてしまうことがあります。

トイレが近い子だと乗車時間中はトイレを我慢しなければいけないというストレスや、次にトイレに行けるのはいつなのかという不安を抱えてしまいます。

長時間車に乗る場合には定期的に休憩などを取り、トイレに行く時間や車外に出てリフレッシュなども必要になります。

車酔いがある

自閉症は目が目が回りにくく、車酔いにも強いという話を聞くことがあると思います。これは回転や揺れなどの動きに強いというわけではなく、三半規管の発達が遅れているため、平衡感覚や揺れや回転などの動きを正しく捉えることができないためです。

しかし、全ての自閉症の子供が車酔いの強いわけではなく、車に酔いやすい子供もいます。感覚過敏などで、車の臭いや音を強く感じ取って気分が悪くなったり、車の揺れなども通常より強く受けとってしまう事もあります。

車に酔いやすい子供の場合は、車に乗ると気持ち悪くなるというのを理解しているので、車に乗ることを嫌がることがあります。

車が苦手な子供への対処法

車が苦手な子供には、車に乗る理由や予定を伝えて見通しをつけたり、苦手な車や添乗員を代えるなどの対処法があります。

予定を教える

自閉症や発達障害の子供は未来のことを予想したり、予定に無い物事に対応することが難しく、不安を感じたりパニックになってしまう事があります。そのため車に乗るのが苦手な場合は予め車に乗ることを教えて納得してもらう必要があります。

予定には、「何時に車に乗る」「どのくらいの間車に乗る」「車に乗って何処へ行く」「どの車に乗る」「誰と乗る」など、その子が不安に感じる部分が少しでも解消できるように教えると良いでしょう。

車に乗るのが苦手でも、大好きなお店やお爺ちゃんお婆ちゃんの家に行く、など目的があったり乗る理由がわかると頑張って車に乗り込めるという事もあります。

順番やルートを変える

車に長く乗っていると疲れてしまったり、ストレスを感じてしまう子供の場合には、送迎ルートの変更や順番を前後して、乗る時間を短くする方法もあります。

なお、ルートや道順にこだわる特性をもつ子供もいるので、ルートや順番を変更する際には、予め説明をするなど対処が必要になります。

関連ページ
自閉症の子供が道順やルートにこだわる理由| 発達障害-自閉症.net

車種や人を代える

特定の車種や人が苦手な場合には、車種や乗る人を代えるという方法も有ります。施設であれば送迎車を変更したり、添乗員を変更したりです。

同じ車内に苦手なお友達が居る場合には別の車に乗り代えてもらったり、席を離したりお友達との間に大人が座るなどの対策をすると効果的です。

時間をかけて納得してもらう

車に乗りたがらない子供を無理に乗せても、車内で不安やストレスを抱えたりパニックになってしまう事もあります。場合によっては暴れたりすることで、車の安全な運行の妨げにもなり事故に繋がる事もあります。

説明をしたり、少し時間を置いてクールダウンをすると、気持ちに折り合いを付けて車に乗ることに納得できる場合も有ります。

時間をかけることが可能な場合には、少し時間をかけて本人に納得してもらう方法が一番です。

DVDを見せたり音楽を聴かせる

大好きなアニメや動画などを見せたり音楽を聴かせると、気持ちが安定し不安な事を忘れる事もあります。苦手な車に乗っている際にも、アニメのDVDを見せたり、好きな音楽を聴かせて気を紛らわせたりする方法があります。

今の車にはDVDプレーヤーやテレビモニターを搭載した車種も多く出ており、そのような装備が無くても、多少お金はかかりますが後から取り付ける事も比較的容易になっています。

また、スマートフォンやタブレットなどでYoutubeなどの動画サイトを見せる方法もあります。

長時間動画などを見せていると、車酔いや視力の低下などにも繋がるので、定期的な休憩や子供が落ち着いたら見せるのをやめたり、1話だけなど予めお約束をしておく必要があります。

まとめ

自閉症や発達障害の子供が、車に乗るのを嫌がるのには「こだわり」「感覚の感じ方」「苦手な添乗員やお友達がいる」など様々な理由があります。

車に乗ることが出来ないと移動手段が少なくなるばかりか、家庭外での活動や経験を行う機会が減ることにも繋がります。

子供が車に乗れない場合には、不安やストレスを感じていたり、納得できない事があるというサインでもあります。まずは子供が感じていることへの理由を突き止めて子供の気持ちになり対処や考慮をする必要があります。

車に乗る子が嫌いであったり苦手なお子さんへの対応として、この記事が参考になれば幸いです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket