ウォルフ・ヒルシュホーン症候群とは
ウォルフ・ヒルシュホーン症候群とは
ウォルフ・ヒルシュホーン症候群(Wolf-Hirschhorn Syndrome)とは、4番染色体短腕の一部が欠損したり、本来の場所ではない部分に移動することで発生する先天性の遺伝子疾患です。
「ウルフ・ヒルシュホーン症候群」「4pモノソミー」「4p-症候群」と呼ばれる事が有ります。
1961年にアメリカ人のハーバートL.クーパーとカート・ハーシュホーンにより発見され、その後ドイツ人のウルリッヒ・ウルフとその同僚であるヒルシュホーンがドイツの科学雑誌に掲載したことで世界的に注目を集めました。
ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の原因
ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の原因は4番染色体短腕の欠失によるもので、欠損部分に位置している遺伝子が存在しない事が原因とされています。
殆どの場合は4番染色体短腕の単純な欠損ですが、少数として4番染色体の転座(染色体が何らかの影響により切断され、同じ染色体や他の染色体に結合している状態)や、4番染色体が環状となる事が原因となります。
直接の原因となる遺伝子自体の特定はされていませんが、ウォルフヒルシュホーン症候群ではヒストンメチル化(塩基性タンパク質であるヒストンをメチル化する働き)の異常の症状があることから、4番染色体上にある「Wolf-Hirschhorn syndrome candidate 1遺伝子(WHSC1)」が原因の一つではないかと考えられています。
ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の発生率
ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の発生率は、難病医学研究財団難病情報センターによると、50000人に一人程度で、日本での患者数は1000人以下と推定しています。
また、重度の場合は出産前に死亡することが多く、出産した場合にも2000g以下の低体重となります。
ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の特徴
ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の特徴には主に以下のものが見られます。
- 特徴的な顔
- 臓器等の異常や奇形
- 脳の構造異常
- 聴覚障害
- 先天性心疾患
- 免疫不全
- 骨格異常
- 成長障害
- 痙攣や癲癇
- 精神運動発達遅滞
特徴的な顔
特徴的な顔には「頭部や顔面の非対称」「小頭と小さなアゴ」「唇裂口蓋裂」「幅広い鼻」「目と目の離隔」「弓状で高い眉毛」「短い人中」などが有ります。
臓器等の異常や奇形
奇形や異常が発生しやすい臓器には「心臓」「肺」「肝臓」「消化管」「大動脈」「横隔膜」「性腺」「尿路」などが有ります。
脳の構造異常
臓器等の異常や奇形と同様に脳の構造にも異常などが発生します。
この脳の構造異常などにより精神発達遅滞や知的障害も引き起こされます。
成長障害
成長障害が出産前の子宮内から発生し、成長の障害が著しい場合には死産となります。出産した際にも2000g以下の低体重となり、出産後も成長は通常よりも遅くなります。
また、骨格の異常や筋力の低下、下半身の発達不良から、身体障害となる事も有ります。
免疫不全
免疫不全には免疫グロブリンA(IgA)が少なくなるIgA欠損症、原発性免疫不全症候群などが見られます。
痙攣や癲癇
ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の患者はほぼ全てに脳波の異常や癲癇の脳波が見られ、かなりの高い割合で痙攣発作が引き起こります。
なお癲癇は難治性てんかんとなります。
精神運動発達遅滞
脳の構造異常などから精神や運動機能の発達に遅滞が発生し、知的障害となる場合が有ります。知能指数は全体的に低めで20から30と重度の知的障害に分類されます。
ウォルフ・ヒルシュホーン症候の寿命
ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の寿命は短命で、成人まで生存することはごく稀であるとされています。