自閉症や発達障害の人は他人との距離感が近い

   2017/08/05

自閉症や発達障害の人は他人との距離感が近い

自閉症や発達障害の子どもは他人との距離を取るのが難しく、近づきすぎて嫌がられてしまったり、逆に距離を取りすぎて人と関わることできない事があります。

知らない人にいきなり抱きついて相手を困らせてしまったり、嫌がるお友達に迫りすぎてしまったり、相手が興味無い話を一方的にしてしまったりと言う話もよく耳にします。

また、小さいうちは他人に近寄っても相手は笑って許してくれますが、ある程度の年齢になってしまうと相手を驚かせたり不快にさせてしまいます。特に、ある程度年齢になった男の人の場合は女性に近づきすぎてしまうと、悪気は無くても良い行動ではありません。

では、自閉症や発達障害の子どもはなぜ人と適切な距離を取るのが難しいのでしょうか。様々な理由を調べてまとめてみました。

人の適切な距離感

人と人の適切な距離感というのは、その人ごとや条件により違うため、どのくらいが適切であるというのは難しいのですが、ひとつの目安として『パーソナルスペース』と言うものがあります。

パーソナルスペースとは、他人に近寄られると不快と感じる距離のことです。パーソナルスペースは自分に親しい人ほど距離が近くなり、女性よりも男性のほうが距離が広いといわれています。

パーソナルスペースには実際に触れ合うことが許される家族や恋人の距離である『密接距離』、親しい人と会話をしたり握手など軽いスキンシップがとれる『個体距離』、それほど親しくない人と会話ができる『社会距離』、複数の相手と会話したり見渡したりできる『公共距離』に分かれます。

実際の距離としては『密接距離』が0cmから45cm程度、『個体距離』が45cmから120cm程度、
『社会距離』が1.2mから3.5m程度、『社会距離』が3.5mから7m前後とされています。

パーソナルスペースではそれぞれの距離に対し、親しさが違う人物が近づくと不快に思ったり嫌悪感を抱いたりしてしまいます。また、相手を尊敬している場合などは「近寄りがたい」という気持ちから逆に距離を取ってしまうこともあります。

自閉症や発達障害に見られる距離感の問題行動

自閉症や発達障害の子どもが相手に近づきすぎてしまう代表的な行動には「急に近づく」「過剰なボディタッチや抱きつき」「自分の思いを一方的に相手に押し付ける」「相手の嫌がる表情が理解できない」「自分の好きな話は相手も好きだと思い込む」などが見られます。

体を触りに行く行動では「体を触る」「抱きつく」「髪の毛をなでる」「服などを引っ張る」などが見られます。

会話に関しては「急に話しかける」「自分の好きなことを一方的に話す」「しつこく話し続ける」などが見られます。

それ以外の距離感に関する行動には「急に近づく」「知らない人でも近寄る」「ずーっと隣に寄り添う」「後を追い続ける」などがあります。

小さいころは誰とでも親しく出来て、人見知りが無いと思われていた子どもでも、実は距離感を取ることが出来なかったという事も成長してから発覚する場合もあります。

また、距離感の問題として、人や物にぶつかってしまうというものもあります。

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自閉症や発達障害の人が人や物にぶつかりやすい理由| 発達障害-自閉症.net

自閉症や発達障害は人との距離感がつかめないのか

では実際にどのような理由から自閉症や発達障害の人は、相手との距離感をつかむことが出来なかったり、適切な距離を保つのが難しいのでしょうか。


相手の目を見ないため

自閉症や発達障害の人は相手の目を見なかったり、相手の目を見ることが苦手だということがあります。相手の目を見ないのには「目を合わせるのが怖い」「緊張してしまう」などの理由が多いようです。

相手の目を見ずに目線を外してしまうと、相手の表情や思っていることなど感じ取りにくくなってしまい、結果的に相手と適切な距離感を作ることが出来なくなります。

関連ページ
自閉症や発達障害は視線や目が合わない| 発達障害-自閉症.net

人の表情や気持ちを読むのが苦手なため

人の表情や気持ちを感じ取るのも自閉症の人は苦手とされています。自閉症には「社会関係獲得の困難」という大きな特徴があります。これは、相手の表情や行動などから、相手の気持ちやそのときの状況を判断するのが難しいというものになります。

また、「こうしたら相手はどう思う」などの物事の想像や、未来のことを考えることも苦手である事が多いです。

そのため、人に近寄りすぎてしまい、相手が嫌がるような表情や行動を取っても、それを理解することが出来なかったり、近寄りすぎると相手がどう思うか想像して行動することが難しくなります。

場の雰囲気や空気を読むのが苦手

社会には場の雰囲気や空気と言うものがあります。たとえば、公共施設では静かにする、結婚式や誕生日パーティーでは暗い話を避け明るく盛り上げるなどです。

健常者であれば、そのような場の雰囲気やルール・マナーを理解したり状況を感じ取り、その場に合わせた行動をとることができます。

しかし、自閉症の人や発達障害の人はそのような場の状況を感じ取ったり、ルールやマナーを理解するのが難しく感じる人がいます。さらに、その場の状況などを理解できても、自分の気持ちの方が勝ってしまい、自分の行動を優先してしまうため、結果として場の雰囲気や空気を読むのが出来ないと思われてしまいます。

先生に怒られてしまい気持ちが沈んでいる子がおり、今はそっとしておいたほうが良いようなときは安易に話しかけたりせず見守ったりすると思います。しかし、自分の話しかけたいという気持ちが勝ってしまうと、そのような状況でも近寄って話しかけてしまうのです。

急に近寄りすぎてしまうため

それほど親しくない人に近づく場合、健常者では段階を踏んで近づいていくと思います。社会人であれば挨拶から入って、天気の話や最近のニュースなど無難な会話を弾ませてから相手に近づいて行くことが多いでしょう。

しかし、この段階を踏んでいくことが難しい発達障害の子どもなどは、あの子・あの人と「遊びたい」「仲良くなりたい」という気持ちだけでいきなり近寄りすぎてしまうことがあります。

相手の反応が面白いため

自閉症の人は他人とコミュニケーションを取るのが難しい特徴があります。そのため、近くに寄りすぎて注意を受けたり、嫌がっている様子など、相手の反応を見て楽しんでしまうという事もあります。

このような場合は「近いよ」「離れて」など注意をする言葉自体も、相手からの反応だと受け取って喜んでしまいます。

相手との関係がわからないため

人のパーソナルスペースでは、相手との信頼関係が強ければ強いほど距離が近くなり、逆に信頼関係や親しさが無いと距離が離れます。このため相手との関係がわからないと適切な距離を取ることが難しくなってしまいます。

相手との関係も「Aさんは仲の良いBさんにあれだけ近づいているから私もあの距離で」と思ったり、Bさんと喧嘩をしたり不快にさせてしまい関係が悪化したのが理解できず、以前と同じ距離でBさんに迫ってしまったりと様々な状況が影響します。

パーソナルスペース自体が狭い

自閉スペクトラム症の人は健常者と比べてパーソナルスペース自体が狭いという研究結果があります。

東京大学:「自閉症者は対人距離を短く取る:自閉スペクトラム症の人と自閉スペクトラム症でない人のパーソナルスペース(コミュニケーション空間)の比較(PDF)」

この研究では12歳から19歳の自閉スペクトラム症の人と、自閉症ではない健常者それぞれ16名に対し、研究者が近寄って行った際に不快と感じる地点を教えるという実験を行いました。その結果、自閉スペクトラム症の人は健常者に比べて不快に感じる地点が近い事が判明しました。

また、アイコンタクトを使った場合の調査も行い、研究者がアイコンタクトを取ると自閉スペクトラム症の人もアイコンタクトが無い状態よりも遠い距離で対人関係をとり、自閉スペクトラム症の人もアイコンタクトを意識しているという結果になりました。

この研究結果から自閉症の人は健常者よりもパーソナルスペースが狭いため、健常者が不快だと思う距離でも自分は適した距離だと感じてしまうため、結果的に人に近寄りすぎてしまっている事になります。

幼いとき時のスキンシップ方法をとってしまうため

赤ちゃんのころや幼いころは会話でのコミュニケーションが難しいため、抱きしめたり、頭をなでたり、手をつないだりというスキンシップを行っていたと思います。

本来ならこのようなスキンシップは年齢とともに、会話でのコミュニケーションになったり、相手に直接触れないスキンシップになります。

しかし、自閉症や発達障害の子どもたちは、コミュニケーションの発達が遅れていたり、言葉での会話などが難しいため、体が成長しても幼い時のスキンシップを取ってしまうため距離が近くなってしまうことがあります。

適切なコミュニケーション方法が無いため

発達障害の中でも特に自閉症の人は、適切なコミュニケーションを行うのが困難です。困難な理由には言葉を話す事ができなかったり、話せても適切な会話をするのが難しいためです。

会話ができれば相手ある程度距離が離れていてもコミュニケーションが取れます。しかし、言葉でのコミュニケーションが困難であると、相手の手を引っ張ったり肩を叩いたりと、直接相手に触れる方法でのコミュニケーションをとらざるを得なくなってしまいます。

物事に夢中になってしまうため

物事に夢中になってしまうと周囲の様子がわからず、自分の興味のあることに集中してしまい、相手に近づきすぎてしまうということもあります。

自分の好きな事などを相手に一方的に話してしまう特徴を持つ子供の場合、この傾向が見られます。

ソーシャルスキルが低いため

ソーシャルスキルとは社会生活技能とも言い、人が社会生活をする中で他人と関わったり、共に生活するために必要な能力です。

ソーシャルスキルには「意思の決定」「対人関係」「自己主張」「共感性」「問題解決」「創造力」「感情コントロール」など日常生活に必要な様々な技能が含まれます。

これらの能力が低いと自閉症や発達障害が苦手とされる「場の雰囲気の理解」「自分の行動や発言を相手がどのように受け取るかの想像」「自分の意思の伝達」に影響が出てしまいます。

ソーシャルスキルが低い場合には苦手な分野で『ソーシャルスキルトレーニング』を行う事で、他人との適切な関わり方を築いたり、社会により適応する事が出来るようになります。

適切な距離感への対処方法

人との適切な距離感は、相手との関係やその場の状況により様々です。そのため、適切な距離感を覚えるのはたくさんの経験をつまないと難しいと思いますが、代表的な対処方法などには以下の方法があります。

相手と一定の距離を保つ

相手に近づきすぎてしまう場合には、相手とコレだけの距離を取ろうとルールを作る方法があります。

しかし、「お友達とはこれぐらい距離を離して遊ぼうね」などと具体的に声を掛けてしまうと、どのような状況でもその距離を離さないといけないと思い込んでしまったり、こだわりとなってしまうので注意をする必要があります。

距離を保つ場合には、そのときの状況や相手などをいくつかのパターンにまとめ、このパターンのときは50cmぐらい、このパターンのときは1mぐらい、この状況の時には近づくのを我慢するなど決めておくと子どもも理解がしやすいと思います。

一般的には、人と話すときはまっすぐ手を伸ばしてあたらない距離を取るように指導することが多いようです。手を伸ばす行為は自分の手を使って確認できる事もあり、感覚としてわかりにくい何センチや何メートルよりも子どもが分かりやすいでしょう。

近寄る前にことわりを入れる

急に相手に近づいたり話しかけたりしてしまう場合には、行動に移す前に一言ことわりを入れる方法もあります。一緒に遊びたいときには「遊ぼう」「遊んでもいいですか」、話しかけたいときには「話しかけても良いですか」などです。

ことわりを入れることで相手も急に迫られることが無くなり、驚いたり嫌がられることも少なくなるでしょう。もし断られた場合には「我慢をする」「あきらめる」「別の行動をとる」などの対処方法も教えるとより効果があります。

代替方法をとる

相手に急に抱きついたり触ったりしてしまう場合には、代替方法として「肩を叩く」「握手をする」など代替手段をとる方法もあります。

実際に女の子に直ぐに触ってしまい嫌がられていた男の子に、代替手段として「握手させてください」という断りを入れることと、許可をもらえれば握手をするという方法を覚えてもらったら、女の子から嫌われること無く本人の欲求も解消できたという事があります。

相手の気持ちに気づかせる

相手の気持ちにを考えて気づかせるということも重要です。相手が嫌がるような近寄り方をしていた場合には、「こんなに近づいたらどう思う?」「こんな話しかけられ方したら驚かない?」など実際にその状況を作り、本人に気づいてもらうという方法もあります。

客観的に見たほうがわかる場合には、お父さんとお母さんなどでその状況を作って本人に見てもらったり、動画などで撮影した様子を見てもらうと理解がしやすい場合もあります。

まとめ

自閉症や発達障害の子どもが、相手と近すぎたり遠すぎたりと適切な距離を取れないのには、感覚的に相手との距離がわからない場合、コミュニケーション能力の問題など様々な理由があります。

相手との距離感は他人と正しいコミュニケーションをとる為でも重要な項目でもあり、適切な距離感を取れないと対人関係が難しくなったり、相手から嫌われてしまうようなことにもつながります。

まずは子どもがどの分野が苦手で、相手との適切な距離が取れないかを確認し、その部分を理解したりフォローしてあげる必要があります。

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