音が苦手(聴覚過敏) – 自閉症と発達障害の特徴・特性

   2025/03/07

音が苦手(聴覚過敏)

概要

自閉症などの発達障害を持った子供は特定の音を嫌がる場合があります。
発達障害の人が人ごみの中で耳を抑えたり、パニックになって泣き出してしまったりと言う事はよくある光景だと思います。
ではなぜ発達障害の人は音が苦手な場合が多いのでしょうが、理由や嫌がる音の種類、対策方法などをまとめてみました。

なお、聴覚過敏だからといって発達障害や自閉症スペクトラム障害と決めつける事は出来ません。
疲れやストレスなどを強く感じると音に対して敏感になったり、病気や聴覚の機能の障害から音が苦手になる事が有ります。

また、聴覚過敏の原因は人により様々で、複数の理由から音が苦手という事も有ります。

 

音を嫌がる理由

音を嫌がる理由には聴覚過敏により「音が大きく聞こえてしまう」「音により何かを連想させる」「音により何かが起こるのではないかという不安」「様々な音が重なり合って聞こえて混乱する」「突発的な音でパニックになる」などがあります。

健常な大人でも「ガラスや黒板を引っかく音」「叫び声」「低い声」等が苦手だというひとは多いと思います。
私も子供の頃は大事なものが捨てられたり壊されてしまうのではという恐怖から「ゴミ収集車」の音が苦手でしたし、軽い難聴を持つ知人は高い音が聞こえると耳鳴りのようになってしまい苦手という人もいます。

  • 音が大きく聞こえてしまう
    我々は音が聞こえると無意識に不要な音を感じないように処理しています。しかし発達障害などの場合は音を処理する機能が正しく働かない事があり、聞こえた音をそのまま情報として脳に伝えてしまい、本来なら意識しなくても良い音まで聞こえてしまうという事が有ります。
  • 音により何かを連想させる
    私の例でも有りましたが、音により何かを連想してしまい、特定の音を嫌がるという事も有ります。
  • 音により何かが起こるのではないかという不安
    耳慣れない音が鳴ると、その音から何かが発生するのではと感じたり、よからぬことが起こっているから音が聞こえると感じてしまうことも有ります。
  • 様々な音が重なり合って聞こえて混乱する
    発達障害などの特性があると、音の取捨選択が出来ず全ての音を情報として受け取ってしまい、一気に様々な音が聞こえて混乱してしまうという事も有ります。
    特に人込みなどに行くとすべての人の話し声が聞こえてしまい、ストレスを感じたり、他の人との会話が出来なくなるという事も有ります。
  • 突発的な音でパニックになる
    予期しない音が急に発生することでパニックになったり、強い不安を感じたりすることが有ります。
    特に犬や猫の鳴き声、赤ちゃんの泣き声、車のクラクションなどは不意に発生する音であるため、苦手と感じる事が多いようです。

 

聴覚過敏だと

聴覚過敏だと、音に対する不快感だけでなく、日常生活や社会生活にも大きな影響を与えます。

例えば、学校や職場などの多くの人がいる集団の場では、自分ではコントロールできない音にさらされる機会が多く、集中力の低下やストレスの原因になることがあります。

聴覚の過敏は周囲に理解されにくいことも多く、「わがまま」や「神経質」と誤解されることも少なくありません。
このような困難に直面した場合には、本人の努力だけでなく、周囲の理解や配慮が不可欠となります。

聴覚過敏によるデメリットや社会的な困難には次のようなものがあります。

  • 集中力の低下: 周囲の音が気になってしまい、勉強や仕事に集中できなくなる。
  • 対人関係の困難: 大人数の会話や騒がしい場所を避けるため、友人や家族とのコミュニケーションが減少する。
  • 社会参加の制限: 人が多い場所や娯楽施設への参加を控えるようになり、外出の機会が減ってしまう。
  • ストレスの蓄積: 音にさらされるたびに強い不安やイライラを感じる。
  • 誤解や偏見: 周囲に理解されず「神経質」や「わがまま」と誤解されることが多い。
  • 職場での孤立: オフィスの雑音が苦痛となり、同僚との共同作業や会話から距離を取ってしまうことがある。
  • 経済的な困難: 働ける環境が限られることで収入が減少し、生活が不安定になる可能性がある。
  • 自己肯定感の低下: 音に敏感であることを「自分の弱さ」と感じ、自己評価が低くなることがある。

これらの困難は、本人のQOL(生活の質)を著しく低下させる要因となります。

嫌がる音の種類

では発達障害の人が嫌がる音にはどのような物があるでしょうか。
代表的なものをまとめてみました。

  • 車やバイクのエンジン音
  • 車やバイクのクラクション
  • エアコンの室外機
  • 犬の鳴き声
  • 子供や赤ちゃんの泣き声
  • 電子音
  • 特定の音や音楽
  • 特定のCM
  • 人ごみなどのざわざわした音
  • ピストル音

同じ音でも「特定の音だけが苦手人」もいれば、「すべての音が耐えがたい人」もいます。また、その日の状況や場面によっても音の感じ方が変わる事が有ります。
周りの人が全く気がつかない程度の音でも、苦痛となり耳を押さえたりしてしまうこともあります。

また、犬を見ると「吠えられるのでは」と思い犬事態を嫌いになってしまったり、電車に警笛を鳴らされるのではと思い電車に乗れなくなってしまうと言ったことに繋がる場合も有ります。

嫌いな音が聞こえると

発達障害の子供は嫌いな音が聞こえると、「泣いてしまう」「パニックになる」「耳を押さえてしまう」「いやな音を掻き消そうと大きな声を出す」「ぼーっとしてしまう」など人により様々な症状が出てしまいます。

本人が音の発生原因を理解している場合には、「テレビやCDデッキの電源を消してしまう」「音の原因のものを投げたり壊してしまう」「原因となるものを隠してしまう」などの行動をしたりします。

赤ちゃんや動物の鳴き声の場合には、その赤ちゃんや動物を叩いたりどこかへ追いやったりする場合も有ります。

人ごみなどのざわざわした音が嫌いな場合には、スーパーやデパートのお店に入りたがらなくなったり、外出や車に乗るのを嫌がる事につながる場合もあります。

関連ページ
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子どもと大人の聴覚過敏の違い

聴覚過敏は子どもと大人で症状の現れ方や対処法に違いがあります。

子どもの場合

  • 学校のチャイムやクラスの騒がしさが苦痛に感じやすい
  • 表現が難しく、周囲に理解されにくい
  • 集団生活への適応が困難に繋がる事が有る

大人の場合

  • 職場の電話音や工事の騒音に苦痛を感じる
  • 自分で環境調整がしやすいが、周囲の理解を得にくい
  • ストレスや過労が引き金になることがある
  • 集合住宅では他の部屋の音にストレスを感じる

子どもの場合は周囲のサポートが特に重要であり、大人は自らのセルフケアが鍵となります。

対策・対応方法

苦手な音に対する対策や対応方法としては以下の事が考えられます。

音から遠ざける

基本的な対策方法としては、苦手な音から離れて音の聞こえない場所まで移動し落ち着かせることが必要です。

嫌がる音の原因が特定できている場合

嫌がる音が決まっている場合には音の原因を止める、音量を下げる、音の発生源を遠ざけるなどが有効です。

チャイムやブザーの場合

玄関のチャイムやお風呂のブザーの場合だと止めたりすることは難しい場合があります。
チャイムやブザーの場合には「時間を知らせてくれるのだよ」「お客さんが来たのだよ」「お風呂が沸いたのだよ」「ご飯が炊けたのだよ」と、具体的にチャイムやブザーの鳴る理由を説明し、音が鳴ることでどうなる・何が起こるかを理解させると音を嫌がることが解消される場合があります。

突発的な音の場合

突発的な音などは対処が難しいため、本人が落ち着けるように音の出る場所から離れるということや、落ち着いた後に「こういう音が出る場合も有るのだよ」と説明することも大事です。

イヤーマフや耳栓の使用

イヤーマフや耳栓をつけると苦手な音が軽減され、落ち着くことができるようになります。
しかし、イヤーマフや耳栓に依存してしまうと音への対処ができなくなってしまうため、安心グッズとして持たせておいて、苦手な音が聞こえた場合につけるようにすると効果的です。

また、耳栓などには聞こえる音の大きさを調整できるタイプもあるので、苦手な音が聞こえた場合には本人に調整させるのもよいでしょう。

値段はしますが「ノイズキャンセリングヘッドホン」という、周囲の騒音をカットしてくれるヘッドホンやイヤホンもあります。
ノイズキャンセリングヘッドホンをポータブル音楽プレイヤーに接続し、無音の再生にしておくと周囲の雑音の低減が望めます。

落ち着く曲を聞かせる

苦手な音が聞こえた場合にはイヤホンやヘッドホンを手渡し、好きな曲を聞かせて落ち着かせることも効果的です。
しかし、これもイヤホンやヘッドホンの音楽に依存してしまう事があるため、必要なとき意外はあまり使用しないほうがよいでしょう。

まとめ

自閉症や発達障害の子供の音への過敏は対応が難しいですが、まずは音の原因を特定してその音から離れたり音を聞こえないようにして落ち着かせるのが大切です。

その後、音の出る原因や理由を説明し「この音は怖くない」ということを理解させるのも重要だと思います。
「音は怖くない」というのを学んでいくには時間がかかると思いますが、少しずつ経験を積み重ねていくことで克服できると思います。

また、音に対して恐怖やストレスが多い場合には、無理に音に慣れさせるよりも音を軽減させるイヤーマフや耳栓などの利用も効果的です。

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