障害者が詐欺や悪徳商法などの金銭トラブルの被害に遭う理由

 

障害者が詐欺や悪徳商法などの金銭トラブルの被害に遭う理由

近年は認知症を患った高齢者や、自閉症などの発達障害者、知的障害者、精神障害者などを狙った事件が多く発生しています。消費者庁の平成28年度版の『消費者白書』によると、障害者に関する消費問題の相談件数は直近のピークとして2013年に21,354件、2015年では19,457件発生していると報告しています。

このように障害を持った人が詐欺や悪徳商法事が多くなっており、未然にトラブルを防ぐことが重要となってきています。しかし、障害を抱える人は様々な理由から、トラブルを防ぐことが困難で、詐欺に会ったり、金銭トラブルに巻き込まれてしまう事が多く有ります。

では、どのような理由から障害者が詐欺被害を受けたり、金銭トラブルに巻き込まれてしまうのでしょうか。様々な理由を調べてまとめてみました。

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障害者が詐欺被害や金銭トラブルに会いやすい理由

様々なハンディキャップを抱え、社会的弱者とも言える障害者ですが、様々な理由から詐欺被害に巻き込まれたり、悪徳商法による金銭トラブルを抱えてしまいます。本人が対処するのは非常に難しいともいえますが、周囲の人が理由を知り、状況に応じた見守りを行うことで、被害を軽減したり早期発見に繋げる事もできます。


被害を教えることが出来ない

自閉症や発達障害や知的障害の人は、金銭被害にあっても周囲の人に適切にそれを教えることが出来ない事が多いです。また、被害者になっているという事に全く気がついていないという場合もあります。

被害にあったことを相談しない

詐欺や金銭トラブルの被害を受けていることに気が付いても、被害にあったことを他人に相談しない人もいます。

他人に相談しない理由には「詐欺や金銭被害にあったことを認めたがらない」「被害にあったことを人に言うのが恥ずかしい」などがあります。周囲の人が何度か注意をしても再び被害に会ってしまい、その事を隠してしまうという事例もあります。

また、金銭などを取られていても、その人(加害者)に会いたいと理由で、被害を他言しないということもあります。

他人への警戒心が少ない

障害を持つ人は他人への警戒心が少ないということも多く見られます。これは、本人の周囲の人である家族・学校の先生・施設職員などが、基本的に支援者であるためです。

支援者は基本的に本人の為になる事や、本人のをフォローすることをします。そのため、障害者本人も自分周囲にいる人は、自分の為に良い事をしてくれる人だと無意識のうちに認識している事があります。

また、詐欺師や悪徳販売業者は優しい言葉で近づき、商品の契約や契約後もお金が取れる状況なら親身になって接する様子を見せます。そのため詐欺師などを良い人だと思い込んでしまい、あの人の為なら手助けしてあげようと、必要のない契約をしたり商品を購入してしまうこともあります。

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断ることが出来ない

障害を持つ人は他人とのコミュニケーションが苦手な人が多く、特に契約など改まった場面では緊張してしまう事があります。そのため、相手からしつこく勧誘や購入などを求められると「いりません」「嫌です」と断ることが出来ずに、流れに押されて受け入れてしまいます。

特に怒られているような強い口調で言われたり、早口で捲くし立てるような話や、高圧的な態度で話しかけられると、逆らえずに相手の言うとおりに動いてしまうということもあります。

また、自閉症などの発達障害の人は『コミュニケーション能力の困難』という特徴から、場面や状況にあった適切な会話が難しく、相手に誘導されて断ることが出来ず「はい」と答えてしまうことも多い特徴があります。

社会経験が少ない

社会経験が多いと不審な販売員などが自宅を訪れて、高額商品を売ろうとしたり、儲け話などを持ち込んでも「これは怪しい」と思い断ることが出来ます。

しかし、障害を持つ人たちはそのような社会経験が少ないため、不審な販売員などが訪れても怪しい・危険だと気づくことが出来ない事も多いです。

周囲から孤立している

家族や親族との関係がそれほど多くない場合や、近隣住民など地域の関係が少なく孤立をしている場合、本人が被害に会って困っている際に相談が出来ないほか、被害の発覚が遅れてしまうということもあります。

定期的に親族や近隣住民などの訪問があると、相談する機会や被害を発見する機会が増えますが、人との関係が少ないとそれらの機会も減ってしまいます。

また、人と話す事が少なくなると寂しさから人恋しくなり、訪れた詐欺師や悪徳販売員と話がしたくなって被害に会うという事もあります。

何度も被害に会ってしまう

詐欺師や悪質業者は、一度被害に会った人は騙しやすい人だと判断し、何度も訪れたり別の業者に情報を渡すこともあるようです。

また、家の外壁の塗装、リフォーム状況、有料テレビのアンテナ、業者の出入りなどを見て、様々なものを契約しやすい家庭だと標的にすることもあります。

見栄を張ってしまう

詐欺師や悪徳業者から様々な商品の説明をされ、それに対し難しい質問をされた場合に「分からない」「理解できない」と言うのを恥ずかしいと思い、見栄を張って「はい」などと言って契約してしまうこともあります。

また、わからない事に見栄を張ってしまうタイプの場合、親族や周囲の人に金銭被害に有った事を注意されると、被害に有った事を否定したり隠してしまうこともあるので注意が必要となります。

自分に必要なものか分からない

訪問販売などで「これは便利ですよ」などと持ち掛けられても、実際にそれが自分に必要な物なのか、いま買うべきものなのかが理解できないと言う事があります。

相手から「あると便利ですよ」「必要ですよ」「持つことが義務となりました」などと勧められてしまうと、その場で必要か否かの判断が出来ず購入してしまいます。

また、物の価値としての理解も難しく、どこでも売っているような安物や粗悪品を高級品だと騙されて買わされる場合も有ります。

障害者が詐欺や金銭被害に会わないための対応

障害を持った人が詐欺や金銭被害に会わないためには、本人が理解を深めるほか、周囲の人が手助けをしてあげる必要があります。

本人の理解力を高める

詐欺や悪徳商法の被害者とならないように、どのような商法が悪徳なのか、どのような場合にだまされているのかを理解できるように説明などを行います。

詐欺などに騙されてしまった場合には、どのような事でだまされたのか、どの程度のお金を取られてしまったのかなど実際の状況を説明し理解してもらう必要があります。

障害者やその支援者向けのガイドブックとして、消費者庁では『障害者の消費者トラブル 見守りガイドブック』というパンフレットを、全国社会福祉協議会では『高齢者・障害者を悪質商法の被害からまもるために』というパンフレットを公開しているので参考にするのも良いでしょう。

誰かに相談できる体制を作る

障害を持った人が自分で判断することはとても難しいものになります。そのため、物品の購入などの際に判断が出来ない場合には相談できる人を作ったり、購入や契約をする際には信頼できる人を間に挟むという方法も良いでしょう。

周囲の人が見守る

本人の生活を見守ったり日常の支援の中で、詐欺や金銭トラブルを防ぐことも重要になります。家の中に生活に必要のない商品が増えていたり、見慣れない来客者が頻繁に出入りしているなど、本人の生活に変化が見られる場合には注意が必要になります。

見守りは家族や近所の人だけでなく、ケアマネージャーやホームヘルパーなど本人宅の訪問を多く行う人たちからも連携を取ると良いでしょう。

被害にあってしまった場合

残念ながら被害にあってしまった場合には、被害に会った事実を受け止め、様々な対処を行う必要があります。

被害者との信頼関係を作る

被害を受けてしまった障害者は、詐欺師や悪質業者を信頼している場合があります。詐欺師や悪質業者は優しい言葉で近寄り、被害者の気に入るような行動をとり、頻繁に訪問して仲の良い話し相手になっている事があるからです。

まずは、親身に話を聞いて相談に乗り、詐欺師や悪徳業者よりも信用される関係を作ることが重要になります。

また、被害者とのやり取りをする人は中心人物を決めて行うと良いでしょう。いろいろな人が入れ替わり立ち代り被害者に近寄ると、被害者本人も混乱してしまったり負担となってしまいます。

被害に有った事を受け止める

被害に会った場合には、まずその事実を冷静に受け取る必要があります。

その際に「何でだまされてしまったの」「どうして相談しなかったの」など本人を攻めるような態度で接してしまうと、本人もそれ以上の事を言うのが嫌になってしまいます。

まずは、被害者の気持ちになり親身に接してあげ、「何を買った」「お金を取られた」「どのような契約をした」など冷静に事実のみを聞き出す事が重要になります。

聞き出した情報は『被害にあった時期』『相手の企業や担当者と連絡先』『購入した商品やサービス』『被害に会ったときの状況』『本人の自覚や意識や気持ち』などを整理し、契約書や請求書などと一緒にまとめておきましょう。この情報が後に行政や専門家に相談するときに役立ちます。

専門家や専門機関相談をする

詐欺や悪質業者に騙され、金銭トラブルとなったことを被害者本人と支援者が把握した後は、専門機関や専門家への相談やアドバイスを受けましょう。

なお、専門家や専門機関に相談する場合は最初に本人に、専門機関や専門家へ相談をする了解を得る必要があります。

専門機関には障害者総合支援法の権利擁護に基づくものと、消費者として苦情や相談を受け付けるもの、法的なトラブル相談があります。

障害者総合支援法の権利擁護に関しては『地域市区町村障害福祉の窓口』『社会福祉協議会』『地域包括支援センター』などがあります。

消費者としての相談では『消費生活センター』『国民生活センター』『経済産業省消費者相談室』などがあります。

法的なトラブル相談に関しては『弁護士会』『法律相談センター』『司法書士総合相談センター一』などがあります。

返品や契約の解除

購入してしまった商品や契約したサービスを解除したい場合にはいくつかの方法があります。

クーリング・オフ

『訪問販売』『電話勧誘販売』『連鎖販売取引(マルチ商法)』『特定継続的役務提供(エステ、語学教室、学習塾、家庭教師、結婚相談サービス、パソコン教室)』などの場合にはクーリング・オフ制度を使用することが出来ます。

クーリングオフとは訪問販売や勧誘等で自らの意思が定まらないまま商品の購入やサービスの契約を行った際に、頭を冷やし再考する期間を作るために用いられた制度です。

契約したサービス内容にもよりますが、基本的に契約日(書面受領日)から8日間は無条件で申し込みの撤回や契約の解除が出来る法制度です。

事実を伝えなかったりウソの内容で契約した場合

商品やサービスを販売した事業者が、重要な事実を伝えなかったり、ウソを言ったことで消費者が契約してしまった場合には、クーリング・オフ期間に関係なく契約を取り消すことが出来ます。

事業者がウソや脅しなどで、クーリング・オフを妨害した場合にもクーリング・オフ期間が過ぎても契約を取り消すことが出来ます。

クーリング・オフ期間が過ぎた場合

クーリング・オフ期間が過ぎてしまっても、契約内容に問題があった場合や、障害者を騙すような行為で契約をしてしまった場合には、消費者センターなどに相談することで、解約の斡旋を行ってくれることもあります。

これは消費者センターの判断による業務となるため、まずは消費者センターへの相談が必要になります。

まとめ

障害を持った人は詐欺や悪徳商法など金銭トラブルに巻き込まれる事が多い傾向にあります。特に知的障害を持っている場合には、適切な判断を下せなかったり、商品やサービスを騙されて契約してしまうことがあります。

まずは被害に会わないように、家族や支援者が日ごろから信頼関係が育める環境を作り、日常生活の中での変化などに気をつけて見守ってあげる必要があります。

被害にあってしまった場合には、本人の気持ちになり親身に相談にのって解決をはかってあげる事が重要になります。場合によっては専門機関や専門家への相談をすることも必要です。

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