ゲームや遊びで勝ち負けにこだわる
ゲームや遊びで勝ち負けにこだわる
自閉症や発達障害の特徴として勝ち負けにこだわると言うものがあります。これは、勝敗のハッキリする遊びやゲームになると、自分が勝たないと納得が出来ず、負けた際には泣いてしまったり、場合によっては酷いかんしゃくやパニックになる事もあります。
中には負けることを嫌がるため、勝敗の有るゲームや遊びに参加をすることを嫌がったり、負けそうになると勝負を放棄したり自分の都合の良いようにルールを変えてしまう場合もあります。
勝ち負けにこだわりすぎると遊びやゲームを楽しめないばかりか、身勝手でわがままだと思われお友達からも嫌われてしまうことにも繋がりかねません。
ではなぜ、自閉症などの発達障害の子供は勝ち負けにこだわってしまうのでしょうか。
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勝ち負けにこだわる理由
自閉症や発達障害の子供が勝ち負けにこだわる理由には、様々なものが考えられますが、その中でも特に多いことについて調べてみました。
負けた際のイメージが出来ない
自閉症や発達障害の子供は予測をしたり、物事をイメージする事が苦手であることが多い傾向にあります。そのため、自分で予想ができない事やイメージができない事に対して強い不安や恐怖心を持っています。
勝負事に関しては、自分が勝つのが当然だと思い込んでいるため、勝つということへの理解は容易ですが、負けるということに関しては自分の考えと間逆で予想に無いため、イメージする事が難しいようです。
自分が予想をしていない負けるという出来事に不意に遭遇すると、対応が出来ずに気持ちが不安定になったり、場合によってはパニックになる事もあります。
負けた際の対応方法が分からない
勝負で負けを嫌がる場合は、負けるということがイメージできなかったり、負けた際にどのように対処すればよいのかが分からないと言う事もあります。
また、負けてしまった際の悔しい感情をどのように処理すればよいのかわからないため、気持ちの切り替えが出来ずにパニックに繋がる事もあります。
負けは失敗だと思っている
自閉症や発達障害の子供の中には『負け』イコール『失敗』と思い込んでいる場合もあります。その様な場合、負けてしまうことで自分は駄目なんだと自己嫌悪に陥ったり、場合によっては勝負事を嫌がるようになってしまいます。
勝つことに関して「一番」「偉い」「強い」「皆から羨ましがられる」などと思っていると、逆に負けた際には「駄目なこと」「恥ずかしい」「弱い」「遅い」「皆より立場が下」などと感じてしまい、負けるということは悪い事だと感じてしまう事もあります。
また、曖昧な結果への理解が難しい事から、1番勝ちでない2番や3番などでも負けだと思っている事もあります。
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勝つこと事態が目的となっている
ゲームや遊びであれば、その行為を行い楽しむことが目的で、勝ち負けや順位は後から付いてくるものです。しかし、勝つこと事態が目的となっていると、ゲームや遊びを楽しむのではなく、勝ちたいという気持ちが強くなりすぎて『勝たなくてはいけない』と思い込んでしまう事もあります。
このような場合は今の勝負が勝ちたいという気持ちになってしまうため、負けた際に「次は頑張ろう」と諭されても、本人は今勝たなくてはいけないと思っているため、次回に繋げる事が難しくなってしまいます。
勝ち負けへにこだわる場合の対処方法
勝ち負けにこだわってしまう場合には、予めルールを確認して納得してもらったり、負けた際のイメージや対処方法を教えておく方法があります。
事前にルールを説明する
勝敗の有るゲームや遊びを行う前には、どのような事を行うのかルールを説明し納得してもらう必要があります。
ルールを説明する中では勝ち負けがあること、勝つ人がいるということは負ける人がいるということ、どのような条件で『勝ち』と『負け』が決まるのかも説明し理解をする必要があります。
負けても泣いたり怒ったりしない、勝っても相手を貶さない、負けそうだと思っても邪魔をしたり途中で諦めない等をルールとして決めてしまうのも良いでしょう。自閉症や発達障害の子供は、理解が出来たルールに関してはしっかりと守ることが出来る傾向にあるので効果が有ると思います。
複数の人で行う場合には『勝ち』と『負け』意外にも2番勝ちや3番勝ちなどがあることも伝えましょう。ゲームなどでは2番や3番に勝っても良いという事や、早く勝ち抜けをして次に繋げると言う事も説明すると良いでしょう。
回数を重ねて行う場合には、3勝2敗だから勝ち越し、合計で5回勝ったなどトータルでの勝敗を考えさせるのも方法の一つです。
負けた際にどうなるかを説明する
勝負を行う前には負けた際にどのようになるかを説明しましょう。説明を受け納得することで負けた際のイメージを持つ事ができ、不安を取り除くことが出来ます。
負けてしまった際にはどのように対処をすればよいのかを理解させることも必要です。負けても、怒ったり、落ち込んだり、不安にならなくても良いことや、負けを認めても失敗や悪いことではないことなどを教えましょう。
負けてしまった場合に「もう1回やろう」と再度挑戦し、次の勝負で挽回できるということを説明するのも効果的です。
負けて悔しかったことを説明させる
負けて泣いてしまったり怒ってしまう場合には、本人の口から説明させることも重要になります。自分の悔しい思いを誰かに伝え、相手がその気持ちを受け止めてあげることで本人も『わかってくれた』と気持ちを落ち着けることが出来ます。
本人が適切に自分の気持ちを言葉にする事が難しい場合には、周囲の大人が「悔しかったのだね」など気持ちを汲んで言葉がけをしてあげましょう。
落ち着いた際には「負けた相手は同じ事を思っているんだよ」と教え、自分が勝った際に負けた相手がどのように思っているかを気付く事ができます。
負けて悔しいという気持ちは、次に繋げるために必要な感情でもあります。今回負けて悔しかったという思いを自分でコントロールできるようになると、『次は負けないぞ!』という気持ちになり、次回の勝負への良い影響にもなります。
相手が居ることを意識させる
ゲームを楽しむためには一緒に行っている相手が居ることを意識させることも重要です。ゲームは相手が居てこそ出来る遊びです。
ゲームに集中してしまうと自分のことしか見えておらず、ゲームの進行状況、相手がゲームを行っている様子、自分の現在の優劣や順位などもわからず、気が付くと負けていてパニックになるという事もあります。
ゲームに集中しすぎて周囲が見えていない場合には、間に大人が入り「今は誰々君の番だね」「今の誰々さんの方法は良かったね」など声をかけ、一緒にゲームを行っているお友達に気づかせてあげましょう。
相手や一緒に行う仲間を意識させるには、相手との勝ち負けを競うゲームではなく、協力して目的を達成させるゲームや遊びを行う方法も良いでしょう。
負けを経験させることも重要
自分の思い通りに勝てないと泣いたりパニックになったりしてしまうと思いますが、勝てない場合もあること、自分の思い通りにならないことなどを経験することも重要になります。
幼稚園・学校・社会と成長するに連れて順位が付いたり、勝ち負けが決まってしまう経験をする事が多くなります。そのときに対応が出来なくなってしまうと、本人が一番辛い思いをします。
そのため、ちょっとした遊びやゲームの中で負ける事や、1番になれないことなども経験し、気持ちの切り替え方法や、負けた際の対処法などを学んでいくことが必要になります。
負けを学ぶことで今回は負けてしまったが次回頑張ろうという気持ちを持たせたり、1番じゃなくても2番や3番でも良いということを理解できるようになります。
親子間の遊びやゲームでは親が手を抜いてワザと負けてあげる事が多いと思います。ワザと負ける事は悪くは有りませんが、毎回負けてあげてしまうと勝ち癖がついてしまい『自分が勝つのは当然だ』と理解してしまい、いざ負けた際にショックが大きくなるので注意が必要です。
親が手を抜いて勝負をする際にも適度に勝ち負けを経験させる事が重要になります。
最後に
自閉症や発達障害の子供が勝ち負けにこだわるのには、その障害の特徴から負けへのイメージができない事や、対処法がわからないなどの理由があります。もちろんこのページに書いた意外にもその子供によって様々な理由があると思います。
大切なのは、子供がどのような理由から勝ち負けにこだわるのかを慎重に見極め、それぞれの子供の成長段階や理解度に合わせた対処方法を取ることが重要になります。
このページに記載した内容が何らかの参考になれば幸いです。