自閉症や発達障害は表情や感情を読み取れない
自閉症や発達障害は表情や感情を読み取れない
自閉症や発達障害の人の表情を読み取るのが出来なかったり苦手である事が多いです。そのため表情をや感情を正しく読み取ることが出来ず、会話の中で相手の気持ちや状況を感じ取ることが難しくなり、空気が読めないと思われたり、相手を怒らせるような返答をしてしまうことがあります。
また、場合によっては人の顔の見分けが付かず、なかなか人の顔をおぼえられないということもあります。
では、なぜ自閉症や発達障害の人は顔の表情を読み取るのが苦手なのでしょうか。
人の表情や感情を読み取るのが苦手な理由
自閉症や発達障害の人が人の表情から相手の気持ちや感情を読み取ることが出来ないのは様々な理由があります。
会話の際に目を合わせない
自閉症や発達障害の人の特徴に『目を合わせない』と言うものがあります。
これはもちろん全ての人に当てはまるわけではありませんが、比較的多い特徴として知られています。
会話の際に目を合わせない理由には様々ありますが、『目を合わせるのが怖い』『目を合わせてよい相手かわからない』『視線を合わせるのが苦手』などが考えられます。
このような理由から会話の際に相手と目を合わせることが出来ないため、相手の顔を見ることが出来ず、結果として表情を読み取ることが出来なくなってしまいます。
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細かい部分に注意が向く
自閉症や発達生害の人は全体を見るというのが難しく、細かい部分に注目が行ってしまうことが多いです。細かい部分とは、話の際に動いている口だけであったり、顔にホクロがあればホクロが気になってしまうというようなことです。
そのために、大まかに顔全体を見ることが出来ず、表情から相手の感情を読み取るのが難しくなってしまいます。
1987年にWeeks SJ氏とHobson RP氏が発表した論文では、知的障害児と自閉症児に「年齢・表情・帽子」がそれぞれ異なる顔写真を表情で分類されたところ、知的障害児は表情で分類できたにも関わらず、自閉症児は帽子での分類を優先させたという報告があります。
なお、細かい部分に注意が行くのは視覚からの情報だけでなく、会話の内容にも当てはまります。そのため、長い言葉で話すと一部の言葉や単語しか受け取る事ができない事もあります。
会話でやり取りする際は短い言葉で的確に話すと、自閉症や発達障害の人も理解がしやすくなります。
顔以外の部分の注意が向く
上記の『細かい部分に注意が向く』と似ていますが、相手と会話をしている際に顔以外の部分に注意が向いてしまうということもあります。
たとえば注意が向いてしまう点には、綺麗なピアスやネックレス、衣服の汚れやほつれ、ボタンやファスナー、ひらひらしたフリルやぶらぶら動く紐などです。
相手の衣類や装飾品以外にも、周囲の人の声や電話の着信音、会話している人の背後の様子など、場合によっては今現在とは全く関係無くやりたいゲームやアニメのことなどに気が行ってしまい、会話や相手の表情に意識が向かないと言う事もあります。
そのため、相手の表情はおろか会話の内容も覚えておらず、結果的に感情が読み取れないことになってしまいます。
顔を見ながら会話が出来ない
自閉症や発達障害の人は2つの事を同時に処理することが困難です。たとえば、話している内容をメモに取る、リズムに合わせて踊るなどです。
このような特徴から、人の顔を見ながら話をするという事も、とても難しい場合があります。特に自閉症の場合は「コミュニケーション能力の困難」という大きな特徴があり、言葉で話すこと自体や、場面に合わせた適切な言葉を選んで話すという事が大変な事でもあります。
相手の話を一生懸命理解し、それに対して適切な返事を答えようとする場合には、相手の顔を見ることが出来なくなってしまいます。そのため、会話は理解できてもそのときの相手の表情を見ることができないため、表情からの感情を読み取るのが難しいという事もあります。
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表情と言葉の一致が難しい
会話の際に表情を見て言葉を理解しても、視覚から得た表情の情報と、聴覚から得た言葉の情報を一致させるのが難しいという事もあります。
視覚優位という特徴もあり、耳から入った情報よりも目から入った情報を優先して処理してしまうと言う事もあります。視覚優位だと、相手が言った言葉が耳に入らなかったり、聞いていても目で見た情報を優先してしまうので、相手の言葉に反した行動を取ってしまうこともあります。
全体の状況の理解が難しい
健常者であれば相手と会話などをする場合、表情、言葉の内容、場面、雰囲気、印象、前後関係などの情報を統合して相手の気持ちや感情を理解します。
自閉症や発達障害の場合、これらの見えない情報を理解したり、処理することが苦手です。また、言葉の裏の意味や皮肉などを受け取ることが出来ないので、結果として相手の表情から感情を読み取るのが出来ないと思われることもあります。
表情の捉え方が違う
自閉症や発達生害の人は表情の捉え方が健常者と違うということがあります。
たとえば表情が読み取れないので、目を細めているときは悲しいとき、大きな声を出しているときは怒っている時だなど、自分独自のルールで表情を決めてる事もあります。
このような場合、絵カードなどを見せると、絵カードは分かりやすく明確に顔のパーツを掻き分けているため、笑っているカードを見せても目を細めているから悲しいときだと思ったり、同じく笑っているカードでも口を大きく開けているから怒っているんだと理解していることもあります。
また、嬉しい出来事があって大きな声で喜んでいる人を見ても、大きな声を出しているのだから怒っているのだろうと思ってしまうこともあるようです。
感情を捉えるのが難しい
感情とは言葉や物事に対して抱く気持ちで、『喜怒哀楽』に代表されるような喜び・怒り・哀しみ(悲しみ)・楽しみの他、愛しみ・憎しみ・恐怖・驚きなどがあります。
自閉症や発達障害の人は感情に乏しい事や感情への理解が難しい事もあり、これらの感情をそれぞれ捉えたり、感情にも複数の種類があるということを理解するのが困難なことがあります。
『自閉症児・者における表情の表出と他者と自己の表情の理解(大分大学大学院教育学研究科)』『年長自閉症児の表情認知・表出に関する実験的研究(九州大学教育学部)』などいくつかの研究によると、感情の中でも「喜び」「怒り」よりも「悲しい」の正解率が低かったと報告しており、自閉症児は悲しい感情を読み取ることが苦手な傾向にあると考えられます。
以前関わった事のある成人の発達障害者の人の例で、「Aさんは直ぐ大きな声を出すけど理由が分からない」と話していたことがありました。その事を詳しく聞くと、Aさんは発達生害の方がやってはいけないことをしたので注意の意味で怒っていたそうですが、発達生害の方は怒りという感情を受け取ることが出来ないので、Aさんが大きな声を出しているという事実しか受け止めることが出来ていませんでした。
まとめ
自閉症や発達障害の人が、相手の表情を読み取ったり感情を理解するのが難しい理由にはいろいろなものがあります。
その人の特長により相手の表情を読み取るのが難しい理由は様々ですが、表情カードを用いたり、親が実際にいろいろな表情を見せることで理解促したりすることで徐々に表情の理解も深まっていくと思います。
会話の際に相手の相手の表情から気持ちを理解し、適した会話や対応をするのはコミュニケーションの基本となります。社会にでて沢山の人と関わる上でも、気持ちを読み取るスキルは必要になるので、少しでも表情と感情に対する理解を深めてあげる必要があります。