自閉症や発達障害と視覚優位と聴覚優位

   2018/03/18

自閉症や発達障害と視覚優位と聴覚優位

自閉症などの発達障害の子どもは、言葉や文章よりも、目で見た絵柄や図形などの方が、優先的に頭に入りやすく、理解がしやすいという特徴があります。

これは『視覚優位』と呼ばれ、逆に耳から聞こえる音や言葉の情報の方が理解しやすい場合を『聴覚優位』と呼びます。聴覚優位であると、文字や図形などを正しく認識するのが難しいという場合もあります。

何かを想像するときに映像やイメージで想像できる場合は『視覚優位』、言葉や分で特徴などを想像できる場合は『聴覚(言語)優位』ともいえます。

たとえば、豪邸を想像したときに、大きさがこれぐらいで、屋根の色は何色で、窓がいくつあってなど映像をイメージできる場合は視覚優位、言葉で「3階建てで、広さは幅が50メートル」など言葉がイメージできる場合は聴覚(言語)優位ということになります。

では実際に自閉症や発達障害と視覚優位には、どのような関係があるのか調べてみました。

視覚優位とは

視覚優位とは上記にも記載したように、聴覚からの情報よりも目から見える視覚の情報の方が理解しやすいという特徴になります。

自閉症や発達障害の人の多数は『視覚優位』と言われています。しかし、『視覚優位』は障害を持つ人だけでなく、健常者でも多いと考えています。

視覚から入る情報には「対象物」「背景」「形」「色」「大きさ」「距離」など、一目見てたくさんの情報が入ります。逆に、目で見た様子を言葉で全て表すのはとても大変です。実際に人間は80%から90%近い情報を視覚から取得しているとも言われています。

たとえば、お店でりんごが売られている様子を詳細に言葉で表すには「1個100円の赤いりんごが、台に置かれたカゴの中に並んでいる」というように、とても説明くさくなってしまいます。しかし、視覚で見れば一瞬でこの言葉以上の情報が入ってきます。

また、言葉では説明しきれない状態や周囲の風景なども目では確認することができます。

このように一瞬で多くの状態を受け取るには、視覚からの情報が優位といえます。

自閉症や発達障害に視覚優位が多いとされる理由

自閉症や発達障害の人は視覚優位が多いといわれています。実際にどの程度多いのか分かる資料は見つかりませんでしたが、以下に記す自閉症や発達障害の特徴から視覚優位が多いのだと言われているのだと思います。

聴覚過敏である

自閉症や発達障害の人は、感覚がとても敏感になる『感覚過敏』という特徴を持っていることがあります。その中でも、聴覚が敏感になると『聴覚過敏』と呼ばれます。

聴覚過敏になるとちょっとした声や音でもとても大きく聞こえてウルサイと感じたり、普通の人では気にしないような音でも感じ取ってしまう事があります。

聴覚過敏になると、普通の話し声でもうるさいと思い、耳を押さえてしまうことがあります。聴覚過敏になると耳からの情報が入りすぎるために、自分自身の中で処理をすることが出来なくなります。

関連ページ
自閉症や発達障害の感覚過敏とは| 発達障害-自閉症.net

聴覚鈍磨である

感覚過敏とは逆に、感覚が鈍感になってしまう『感覚鈍磨』という特徴もあります。聴覚が鈍感になった場合には『聴覚鈍磨』と呼ばれます。

聴覚が鈍感になってしまうと、音や声が聞こえにくかったり、特定の音が全く聞こえないということもあります。そのため、耳からの情報が入りにくくなってしまいます。

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自閉症や発達障害の感覚鈍麻とは| 発達障害-自閉症.net

音や大声でパニックになる

聴覚過敏を持つ場合、予期しない突発的な音や大きな声などで、混乱してパニックになる事があります。また、てんかん発作を持っている場合には、音などで発作に繋がることもあります。

言葉や文字の理解が乏しい

自閉症や発達障害の大きな特徴に『コミュニケーション能力(対人関係)の困難』と言うものがあります。

自分から言葉での意思表示やコミュニケーションを行う事が難しいことや、言葉自体の理解が困難というものがあります。また、言葉だけでなく、文字の理解も乏しい事が多いです。

そのため、言葉や文字での指示ではなく、実際に目で見た物や状況の方が理解がしやすく指示も通りやすくなります。

また、基本的に言葉は目に見えないため、理解をしたり記憶するのが難しい場合もあります。

ディスレクシアである

学習障害のひとつであるディスレクシア(識字障害・識字障害・難読症)であると文字の読み書きが困難になる場合があります。

ディスレクシアには『文字が認識できない』『単語のつながりが理解できない』『文字の形がぼやける』『逆さ文字や鏡文字になる』など人により様々な症状が見られます。

ディスレクシアの障害を持っていると上記の様々な理由から文字や言葉の理解が出来ないということもあります。

長い言葉は理解しにくい

言葉を理解していても、長い言葉を話されると理解が出来ないということがあります。

文字の場合は何度か見直すことが出来ますが、言葉や音の場合は基本的に一度しか聞くことが出来ません。さらに言葉だと話された一連の内容を一度記憶してから理解をしなくてはいけません。

自閉症や発達障害の人の場合長い言葉や文章を記憶するのは難しい事が多く、途中までしか覚えることが出来ない場合や、一部の単語しか覚えることが出来なかったり、言葉の前後関係が逆になってしまうこともあります。

想像力が乏しい

自閉症や発達障害の人は想像力が乏しく、予想をするのが苦手な場合があります。

言葉や文字で情報を受け取っても言葉や音は見えないので、その状態や状況を想像するのが難しく、結果として言葉や文字での理解が困難になる事があります。

呼ばれても気がつかない

子どもの名前を呼んでも気がつかなかったり、振り向いてくれないということもあります。
これは本当に聞こえていないのか、聞こえていても答えるのが面倒なのかは分かりませんが、名前を呼んでも反応を示さないという子どももいます。

このような子どもでも、視界に入る位置で目の前で呼ぶと反応をするので、目に見えないと自分が呼ばれているのだと分からないこともあります。

このように呼ばれても視界に入らないと気が付かないという特徴から、目に見えないと理解が出来ないと思われる事も考えられます。

聴覚優位とされる理由

上記では視覚優位と考えられる理由を書きましたが、状況などによっては聴覚からの情報取得が効果的な場合もあります。

視覚過敏

視覚がとても敏感である『視覚過敏』であると、目からの情報が多く入ってしまい、それを自分の中で処理が出来なくなることがあります。

視覚過敏の人の場合、きらびやかなで人や目に付くものが多いショッピングセンターやスーパーが苦手で目をつぶってしまったり、日の光や蛍光灯がまぶしいと感じることがあります。

視覚が極端に過敏であると、目からの情報を正しく取り入れることが困難になってしまうことがあります。

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自閉症と耳をふさぐ行為| 発達障害-自閉症.net

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音が苦手(聴覚過敏) | 発達障害-自閉症.net

単語や個数の理解

『名前』『単語』『個数』など細かい単位の場合、目で見るより言葉や文字で示されたほうが理解しやすい事があります。

たとえば出席を取る際に名簿や座席表から特定の名前を探す場合や、一覧表の中から特定の文字や数を見つける場合、沢山詰まれたりんごを実際に数えるより言葉で「30個」などと教わる場合などです。

顔や表情などが分からない場合

発達障害の場合、人が分からなかったり、顔の区別が難しい事があります。そのような場合には言葉で人の区別や判断を行うことがあります。

人の表情を読み取りにくい子の場合、怒っているという表情が分からず「大きな声を上げているから怒っているんだ」と理解していた子どもを見た事があります。

関連ページ
自閉症や発達障害は人の表情や感情を読み取るのが苦手| 発達障害-自閉症.net

細かいものが気になってしまう

自閉症や発達障害の場合、その状況を目にしても全体を見渡して理解するとが難しく、細かい点に注意が向いてしまうことがあります。

りんごを売っているお店を見ても、りんごの傷に注意が向いたり、りんごを入れているカゴの汚れに目が行ってしまい、りんごの個数や値段などが全く目に入らないと言うこともあります。

視覚優位の注意点

自閉症や発達障害の子どもでも、知的障害のないアスペルガー症候群やADHD(注意欠陥・多動性障害)などの子どもの場合は会話が上手で文字の読み書きも得意という事もあります。しかし、人は基本的に視覚優位であるため、会話や文字書きが出来るからと言って聴覚優位であるとは限りません。

また、分かりやすいだろうと視覚と聴覚で同時に説明をしても、目で見た情報を優先してしまい、言葉で話した注意事項などを聞き漏らしてしまうこともあるので注意が必要です。

視覚優位の例

今まで私が見た中で視覚優位だと思った子どもの例がいくつかあります。

一人目は文字の読み書きは出来ませんが、ひらがなで書かれたお友達の名前を形として覚えている子どもです。始まりの会で出席を取ってもらう際に名札を手渡すと、名前は読めないのですが、間違えずにその子どもの近くまで行ってタッチをしてくれます。

二人目は予定が分からないと不安になってしまう子で、言葉でその日のスケジュールを教えても理解が乏しいのですが、絵カードや写真付きの予定表を見せると直ぐに理解し納得して落ち着くことが出来ました。

三人目は国旗や企業のロゴマークが好きで、文字では覚えられないのに、国旗やロゴなどの図形や記号であると直ぐに覚えることが出来る子どもです。さらに、「文字で国名や企業名を書いて」と問題を出しても国旗やロゴマークを描いて答えてくれます。

最後は特殊な例ですが、日本に来ている外国人の発達障害の子どもです。非英語圏の外国人のため、日本語はおろか英語も全く理解をしていないのですが、行動をする前にお手本を見せたり、実物や写真を見せたりすると理解をして一生に行動することが出来ています。

まとめ

視覚優位とは、目から入った情報の方が、耳から入る情報よりも優先的に処理され理解がしやすいということになります。逆に聴覚優位や言語優位になると耳から入った情報や文字などの情報の方が優先的に処理されます。

人は基本的に目で見た視覚からの情報を多く取り入れているため、自閉症や発達障害に限らす視覚優位である事が多いです。しかし、自閉症や発達障害を抱えている人は様々な理由から視覚からの情報が有効で有ったり、逆に聴覚からの情報が有効である事もあります。

大事なのは子供が視覚からの情報が有効なのか、聴覚からの情報が有効なのか、または両方示したほうが効果があるのかを見極め、子供本人が一番理解のしやすい方法を取ってあげることが需要になります。

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