跳躍性眼球運動(衝動性眼球運動)とは

 

跳躍性眼球運動(衝動性眼球運動)とは

跳躍性眼球運動とは『衝動性眼球運動』『サッカード眼球運動』とも呼ばれ、見ていた点から別の点へと跳躍するように素早く眼球を動かす運動のことを言います。眼球の動きには右から左や上から下などの平面の動きと、遠くから近くや近くから遠くなど奥行きの動きも含まれます。

また、眼球を素早く移動した後に新たな位置で眼球を維持し続けることも含まれます。

学習障害などの発達障害の子供の中には跳躍性眼球運動が上手に行えないため、様々な面で困難にあっている事もあります。

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跳躍性眼球運動と発達障害の関連

2015年5月に大阪大学大学院の研究グループは、跳躍性眼球運動の異常から発達障害を見極める手法を発見したと発表しました。

大阪大学:『眼球運動のわずかな異常から発達障害を早期に診断できる手法を開発

この発表ではADHD(注意欠陥多動性障)の子供は跳躍性眼球運動を制御する脳機能に異常が有ることがわかり、この特徴を用いることで発達障害を早期に診断できるとしています。

統計としては発達障害と跳躍性眼球運動の関連は調べられていないようですが、この研究の結果のように眼球運動の問題と発達障害は密接に係わっている可能性が高いといえます。

跳躍性眼球運動の問題点

跳躍性眼球運動の機能が鈍いと発達障害で見られる様々な問題点に係わることがあります。


黒板の書き写しが出来ない

発達障害の子供には授業で黒板の内容をノートに書き写すのが苦手であるということが多く、理由のひとつに『跳躍性眼球運動』が関連していることがあります。

黒板の書き写すには黒板に書かれた内容を読んで理解した後に、手元のノートに書き写す必要があります。この際に遠くの黒板から手元のノートへの視線の移動がスムーズでないと、ノートを見るまでに時間がかかったり、ノートを見ても書き出す位置を確認し書はじめるまでに時間が必要となります。

ノートを書き終わっても、再度黒板を見る際にも視線の移動に時間がかかったり、黒板に書かれた文字の見る位置を見つけるまでに時間を要します。

なお、黒板の書き写しが出来ない理由には『複数のことを同時に行うのが難しい』『ノートに文字を書く速度が遅い』『黒板の文字を読んで理解するのが苦手』など様々な原因が関連している場合もあるので、子供が何を苦手としているのが見極める必要があります。

文章や本が読めない

目の移動がスムーズに行われないと、文章や本を読む事が困難になったり、時間がかかったりすることもあります。

文章や本を読むには、文字を目で追って内容を理解する必要があります。そのため、文章に沿った縦や横への目の動きが重要となります。

段落や改行、別のページに移動する際にも視線を動かします。視線を一度文字から離し、次の文章を読む際に視線の移動がスムーズに行われないと、読み出す位置を探すのに時間がかかったり、文字や行を飛ばして読んでしまう事もあります。

絵や図形が描けない

絵や図形を書く際にもスムーズに目の移動が行われないと、正しい絵や図形を描く事が困難になります。

絵などを書く際には、書き出しの位置と描き終わりの位置を意識して線を引いたり色を塗ったりします。この際に視線を上手に動かすことが出来ないと、目的の位置が分からず線が曲がってしまったり、色がはみ出したりすることがあります。

また、用紙の全体の大きさに対して絵や図形を描いている位置やサイズ感覚なども意識が難しくなり、サイズ感やバランスの狂ったおかしな絵になってしまう事もあります。

人を見つけられない

人ごみの中で人を見つける際や、離れた位置から人に呼ばれても、なかなか見つけることが出来なかったりします。

人を見分けるためには顔や容姿、身長、衣服、持ち物などから判断します。人が多いところであると、人から人へと次々に視線を移して目的の人物を探す必要があります。さらに、人が歩いている場所になると、対象がどんどん移動していくので、視線の移動がより困難になってしまいます。

また、人から急に呼ばれても相手の顔に視線を移し、相手の顔を認識するまでに時間がかかることもあり、相手から急に呼ばれてもとっさに誰だかわからないという事もあります。

運動やスポーツが苦手

運動が苦手な場合にも跳躍性眼球運動が関連してる場合もあります。

球技では飛んでくる球をキャッチや打ち返したり、逆に自分からボールを相手や味方に対して投げたりする必要があります。このように球技などでは飛んでくる球やボールを目で見て確認して行動を取ったり、味方へのパスやゴールに目掛けての投球など、目標物を見てそこにボールを送る必要が発生します。

集団競技では動きながら相手や味方の位置などを確認し、自分で適切な行動をする必要があり、これも目の動きと視界からの認識が重要になります。

運動やスポーツが苦手な理由も『体の動かし方が鈍い』『距離感が掴めない』など様々ありますが、跳躍性眼球運動による眼球の動きが影響していることもあります。

跳躍性眼球運動のトレーニング方法

跳躍性眼球運動のトレーニング方法には、目の動きを鍛える分野と、目で見た情報を適切に脳で処理させる分野があり、総称として『ビジョントレーニング』と呼ばれています。

ビジョントレーニング

ビジョントレーニングとは眼の機能を向上させる目的で行われるもので、眼球運動のコントロール、両目の連携、動体視力、立体や奥行きの認知など幅広い分野にわたっています。
近年ではスポーツ選手のトレーニングや、学習障害や運動が苦手な子供の療育としても用いられています。

ビジョントレーニングには鍛える部分に関して様々な方法がありますが、跳躍性眼球運動に効果があると思われる方法は以下のものが代表的です。

文字探し

文字探しとは用紙などにランダムにひらがなや数字を書き、指定された文字を探し出したり、数字を1から順に探していくトレーニングになります。

参考としては以下のサイトに詳細が載っています。
わかさ生活:『跳躍性眼球運動のトレーニング

佐賀県教育センター:『読み書き等のつまずきに対する「見る力」を高めるトレーニングの活用

遠近トレーニング

遠近トレーニングは遠くのものと近くのものを交互に見る、とてもシンプルなトレーニングです。

このトレーニングは眼のレンズの働きを行う水晶体の厚さを調節している毛様体筋と呼ばれる筋肉を鍛えたり、疲労をして凝り固まった毛様体筋をほぐす効果もあります。

毛様体筋は近くを見る際に緊張し収縮することで水晶体のピントを合わせます。逆に遠くを見る際には筋肉が緩まり水晶体を薄くしてピントを調整しています。

この毛様体筋を鍛えることで、遠くのものから近くのものへと視線を移すことがスムーズになります。

アプリや動画を利用する

スマートフォンやIpadなどのタブレット用に、様々なビジョントレーニングに対応したアプリもリリースされています。

スマートフォンやIpadなどを持っている場合にはそれらのアプリを利用するのも良いでしょう。アプリだとちょっとした時間に何処でも出来るので便利にトレーニングすることができます。

YouTubeなどの動画サイトでも数多くのビジョントレーニング用動画が公開されています。こちらもインターネットに繋がったパソコンやタブレットがあれば自由に見ることが出来るので便利です。なお、スマートフォンでは画面が小さく動画も見難くなってしまうのであまりお勧めは出来ません。

YouTubeでは『ビジョントレーニング』『跳躍性眼球運動』などで検索すると多くの関連した動画を見ることが出来ます。

まとめ

眼の動きに関する困難を抱えている子供は、見たことや見たことを適切に処理することが難しい場合があります。

特に眼の視点を次々を動かす跳躍性眼球運動に問題があると、日常生活、勉強、運動など様々な面で苦労やストレスを抱えています。

文字が書けなかったり運動ができなかったりする場合、知能や学習面、身体面が原因と考え勝ちですが、視力の問題という面にも目を傾ける必要もあります。まずは子供が困っている理由を考え、子供の気持ちと立場になって対処方法を考えてあげる必要があります。

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