自閉症と空間認識・空間認知能力

   2017/09/18

自閉症と空間認識・空間認知能力

自閉症や発達障害の子供は空間認識能力(空間認知能力)が劣っている場合が見られます。しかし、全ての子供に空間認識能力が無いわけではなく、逆に空間を把握する事が得意な子供も見られます。

一般的に自閉症の子供は言語能力よりも空間認識能力のほうが優れているとされています。

空間認知認識能力(空間認知能力)とは

空間認識能力とは空間認知能力とも呼ばれ、三次元の空間において人や物の位置や関係を把握する能力です。

空間においての位置や関係には「方向」「姿勢」「距離」「感覚」「高さ」「大きさ」「広さ」など様々な要素が有ります。

空間認識能力がある事で、キャッチボールやサッカーなどのスポーツを行うことや、地図や図面から実際の地形や建物を理解することがで出来るようになります。

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空間認識能力が劣っていると

我々が普段生活する中で空間を認識する行動は無意識に行っていると思います。
しかし、空間を認知する能力が劣っていると、様々な面で影響が出たり、不得意な行動が増えてしまいます。

物にぶつかる

空間認識の能力が低いと、立ち上がる際や歩く際にも、家具や壁などにぶつかってしまうことが有ります。

特に子供の場合ですと、衝動的に動き出してしまう、身体の感覚や動作が鈍い、危険認識が低いという理由もあり、物などにぶつかって怪我や痣を作ってしまう事が多くなります。

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躓いたり転んだりしてしまう

空間の認識が乏しいとちょっとした場所でも躓いたり転んだりしてしまいます。
特に下りの階段などでは、階段の角度、段の高さや幅などを把握するのが難しいようです。

運動やスポーツが苦手

運動やスポーツが苦手な場合も「運動オンチ」「体の動きがぎこちない」「筋力が劣っている」というだけでなく、この空間認識の能力が低い場合も有ります。

陸上競技ではゴールまでの距離、球技ではボールとの距離やボールの速さや弾んだボールの予測、チームプレーが必要な競技では敵味方との距離や位置など、様々な面において空間の認識能力が必要となります。

鉄棒や跳び箱などの単純な運動が出来ない場合でも、鉄棒での回転運動の理解、跳び箱の踏み切り位置や高さの感覚などを把握する事が難しいために、不得意だと場合も有ります。

迷子になる

空間認知能力が劣ってしまうと、自分の場所がわからない、方向が分からないなどから迷子になる事が見られます。

自分の進むべき方向や来た方向が分からないと、所謂「方向音痴」になります。また、空間の認識が不得意だと、地図や案内図を見ても目的地が分からないばかりか、自分が居る位置を地図や案内図から把握できずに混乱してしまいます。

漢字などの文字がかけない

漢字は沢山の偏や部首が組み合わされ、複雑な構造をした文字です。空間の認識や図形の認識能力が劣っている場合に、偏や部首の位置や向きを間違えてしなうなどで、正しく漢字が書けなかったりすることが有ります。

立体を把握できない

空間認識能力が無いと、物を立体として理解する事が出来ず平面として考えてしまい、奥行き、高さ、向きなどを把握するのが難しくなってしまいます。

物を立体として理解できない場合、ブロックや立体パズルなどを行った際、パーツの向きを変える・回転させるなどの発想が思い浮かばない事も有ります。

空間認知能力を高める方法

空間認知能力を高める方法には視覚を中心とした感覚を鍛える、各種感覚から得た情報を頭で処理をする、体を鍛えたり動かしたりする方法が有ります。

物事の想像力を働かせる

空間認知能力が低い大きな理由に、物や空間を3次元の立体で考えることが難しいという事が有ります。

平面として受け取った情報を、頭の中で実際の距離感や大きさを考えながら立体にするということは非常に高度なことです。

その為、本の読み聞かせや絵を描くなどの中で、少しずつ物事への想像力を膨らませる練習を行うと良いでしょう。

右脳のトレーニングを行う

一般的に視覚を中心とした各種感覚や運動機能などは右脳で処理を行っています。そのため右脳を鍛えるとされる各種「右脳トレーニング」なども効果が見られます。

右脳のトレーニングには各種書籍や、現在ではスマートフォンやタブレット向けの右脳トレーニングのゲームも数多く出ています。この中で子供にあったものを選んで行うと良いでしょう。

図形や絵を描く

図形や絵を描くことで平面においての位置関係や、平面で立体などの空間を意識させることが出来ます。

最初は単純な図形から書き始め、「大きい・小さい」「長い・短い」「太い・細い」「高い・低い」「前・後ろ」「右・左」などの関係を意識させます。

ゲームを行う

子供はゲームが大好きです。そこでゲームを使って空間の認識をトレーニングする方法が有ります。
スマートフォンやタブレットでは様々な空間認知を鍛えるゲームが出ています。

ブロックを配置して様々な建物や形を作っていくゲーム、マインクラフト(Minecraft)も発達障害の子供や空間認識の苦手な子供に効果があると言われています。

体を鍛える

体を鍛えることで体の様々な感覚も発達します。日常生活における空間の認識は、視覚だけでなく手や足の動きの中でも必要になります。
また、体を鍛えることで正しい姿勢を保持できるようになり、自分の場所から対象物の位置への距離感なども性格に把握できるようになります。

アスレチックや公園の遊具で遊ぶ

アスレチックや公園の遊具で遊ぶことは、様々な遊具との距離感や、遊具の動きを体感することで空間認識能力を高めることが出来ます。

ジャングルジムなどではバーを掴むための距離感や足を置く位置、滑り台では高さや角度や滑り降りる早さ、ブランコでは振り子の運動などを体感することできます。

また、体を動かすことで実際の日常生活における、空間の位置関係などを体感することが出来ます。

自閉症や発達障害の特徴としての空間認識

自閉症や発達障害の子供の中には、空間認識能力がとても優れている子も見られます。

絵が得意な子供の場合、背景や奥行きを上手に描いたり、人物や建物の前後関係を上手く表現する事が出来ます。また、風景の中に人が居る絵を描く場合、普通なら人物から描きはじめるのが多いと思いますが、空間認識や図形認識能力が高い子供の場合、風景の一部分や、用紙の端から描き始める事が有ります。

エレベータやエスカレータが好きな子の場合、初めて訪れたショッピングモールなどでもいつの間にかエレベータやエスカレータの場所を見つけて覚えてしまったりすることが有ります。
これは空間の認知能力以外にも、案内図や案内板に書かれた文字や記号を見つけたり、今まで訪れた事のある建物の知識から自分で「この辺に有りそうだ」と推測しているのだと思います。

また、空間認識能力とは少し違うかも知れませんが、初めての建物に入ると隅から隅まで確認して回る子供もいます。これは単純に初めて来た場所が安全なのか確認をする意味や、好奇心から探検している場合もあると考えられます。
中には1度訪れた建物の配置を完全に覚えるだけで無く、どこにどのポスターが貼ってあった、階段は何段だったなどの細かい事柄まで覚えてしまう子供も居ます。

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