痛みに鈍感 – 自閉症と発達障害の特徴・特性
痛みに鈍感
自閉症や発達障害の子供は痛み・寒さ・暑さなど様々な感覚に鈍感である事があります。
痛みに鈍感で有ると、本人が怪我をしていても気が付かないなど、様々な問題点が表れる事があります。
痛みに鈍感となる理由
自閉症の子供が痛みに鈍感である大きな理由として、自閉症の特徴である『感覚鈍麻』が関連する場合が有ります。感覚鈍麻とは感覚の感じ方が鈍くなり、鈍感となる事を言います。
鈍感となる感覚は人によりそれぞれで、1つの感覚が鈍くなったり、複数の感覚が鈍くなる事があります。また、手は痛みに強くても足は痛みに弱いなど、体の部位や感じる感覚(押される力、抓られる、刺される、熱など)によっても感じ取りやすかったり、感じ取りにくいなどの違いが見られる事があります。
なお、自閉症の人の全てに現れる特性ではなく、逆に感覚が敏感となる『感覚過敏』の特徴を持つ人も居ます。
自閉症の人が『感覚鈍麻』や『感覚過敏』になる理由として、自閉症の原因と考えられている「先天的な脳機能の障害」が関連していると考えられています。
痛みに鈍感であるとどのような事が起こるか
痛みに対して鈍感であるとどの様な不具合が生じるか、代表的な項目をまとめてみました。
怪我や病気に気付きにくい
痛みに鈍感であると、怪我や病気になった場合に、本人が気が付かず症状が重くなってしまったり、手遅れになってしまう事も有ります。
痛みに鈍感だと言っても痛みに強いわけではありませんし、体の作りが人よりも頑丈と言うわけではありません。怪我や病気になると少なからず体にダメージを負っています。
痛みに対して鈍い子の場合には、保護者や周囲の人が怪我をしていないか、体調が悪そうにしていないかを確認してあげる必要も有ります。
感覚を求めてしまう
痛みを感じにくい場合には普段の生活で外部からの刺激が少ない為、刺激を得る為に自分の体に刺激を与えたりする事があります。
刺激の与え方は人によりそれぞれですが、常同行動や感覚遊びとして「頭や顔を叩く」「手や足を叩く」「壁や床に頭や顔を打ち付ける」などの行動をとる事が有ります。
場合によっては「高いところに登って飛び降りる」「腕や手を強く噛む」「爪を剥いたり剥がす」という行動に出て、事故や怪我に繋がる恐れも有ります。
このような自傷にも見える刺激遊びは、周囲の人からするととても痛そうに見えることがありますが、本人としては心地よい感覚で楽しく思っていることも有ります。
しかし、痛みなどの感覚が鈍いと自分で強さの加減が出来ず、通常の感覚遊びや刺激遊びでも「血が出るまで行ったり」「痣になるほど強く行う」事もあります。そのような場合に止めようとすると反発したり、反応をみて楽しんでしまい余計に強い行動に出ることが有ります。「ダメ」「止めなさい」「痛いよ」言ってもエスカレートしてしまう事もあるので注意が必要です。
その場合の対処法としては反応をせずに無視をしたり、急に全く別のこと「おやつ何が食べたい?」「あそこにアンパンマンが居るよ」などと声をかけ、意識を別の事に向かせるのも効果があります。
また、自傷行為に代る刺激を与えてあげるのも効果的です。怪我にならない程度に、頭を「トントン」と叩いて刺激を与えたり、くすぐりやマッサージなどの刺激でも落ち着けることがあります。
他害や他傷にも影響が
痛みに鈍感な場合はお友達との関係にも影響が出てしまうことがあります。
痛みに鈍感であると痛みがわからないため力加減も出来ず、お友達を強く叩いたり引っ張ってしまうことがあります。
強くしすぎてしまうだけならまだしも、相手に怪我をさせてしまうことにも繋がりかねません。
力加減を教えるのは難しいですが、力いっぱい叩いたり引っ張ったりするのではなく、トントンと声をかけながらやさしく叩くように促すのが効果的です。
痛みに対する表現方法がわからない
痛みに鈍感な場合、痛みを感じにくいため、痛みの表現方法が分からないという事も有ります。
自閉症の人の大きな特徴に『コミュニケーション能力の困難』と言うものがあります。そのため、痛みに関しても言葉で表現するのが難しい事があり、痛いと思っていても周囲の人にそれを教えることが出来ないという事も考えられます。
特に小さい子供の場合はコミュニケーションや表現方法の理解に乏しいため、痛みを感じていても他人に教えることが出来ないでいるかも知れません。
まとめ
痛みに対して鈍感な場合は、自閉症の特徴の一つである『感覚鈍麻』が影響している場合や、痛みを適切に伝えることが出来ないという可能性が考えられます。
また、痛みを感じにくいと病気や怪我の発見が遅くなってしまったり、お友達などへ強く叩いたりしてしまうことが有ります。
痛みに鈍感だからと言って、痛みなどの刺激に対して強いわけではなく、体にはダメージが出てしまいます。
痛みを感じにくい子だとわかったら、親や周囲の人達がその特性を考慮して、適切な対応や指導を行うことが重要に成ります。
痛みは感覚なので教えたりするのは難しいですが、経験を積むことで加減させることを覚えさせたり、危険認識や注意力を高めることで補える部分も出てくると思います。