自閉症や知的障害者が大声や奇声を出す理由と対策・対応

   2018/04/22

自閉症や知的障害者が大声や奇声を出す理由と対策・対応

自閉症や知的障害者と見られる人が、街中や電車内などで大きな声を出していたり、唸り声や叫び声に近い奇声出している姿を見たことある人も多いかと思います。

理由がわからない周囲のひとからすれば、障害者が大きな声を出している姿は、恐怖であったり不快な気持ちになる事もあるかと思います。

ではなぜ自閉症者や知的障害者などの障害者は大きな声を出したり、奇声を上げたりするのでしょうか?

様々な面から調べてまとめてみました。

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自閉症児や発達障害児が大声や奇声をだしてしまう理由

自閉症児や発達障害児が大きな声を出してしまう理由には、聴覚過敏からや、声を出すことが楽しいからなどの理由があります。

嫌いな音を掻き消そうとして

自閉症や発達障害の子供には音や刺激などの感覚を必要以上に感じてしまう『感覚過敏』という特徴が有ります。この中でも特に音に敏感だと『聴覚過敏』と呼ばれます。

聴覚過敏になると特定の音を嫌がってその場から離れたり、騒がしい場所で耳をふさいでしまうなどの行動をとる事が見られます。また、嫌な音を掻き消そうとして大きな声を出すことも有ります。
顔文字で表すとこんな感じです。「(∩ ゚д゚)アーアーきこえなーい」。

この嫌いな音を掻き消そうとする行為として大声を出すことがあり、その場合には耳を押さえて声を出すことが多いです。また、嫌いな音ではなくても、怒られていたり注意をされている際に自分に都合の悪いことを聞きたくないという意味で大きな声を出す事も有ります。

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声を出すこと自体が楽しい

子供の中には声を出すこと自体が楽しくなり、大きな声を出したりすることが有ります。楽しみ方は人それぞれですが、「声を出す行為」「出した声が自分に聞こえる」「周囲の反応」などを楽しんでいることが多いです。

また、トンネルやホールなどで声が反響する様子を楽しんだり、カラオケなどのマイクで普段よりも大きな声やエコーなどを好む子供もいます。

声の調整が難しい

自閉症や発達障害の中には声が出せても、声の大きさの調整が難しいという場合も有ります。

声の調整が難しい理由は「呼吸量」「嚥下や口腔内や呼吸器官の問題」「口や舌を動かすのが難しい」などその人の特徴によって様々です。この様に口や嚥下に問題があると声の問題だけでなく、よだれが垂れてしまったり、口が開きっぱなしになってしまうなどの問題と関係する事もあります。

声の調整が難しい場合は大きくなるだけでなく、ボソボソっとした小さい声になってしまう事もあります。

発語や会話が出来て声が大きくなってしまうという場合には、会話の専門家や言語聴覚士などに診てもらったり相談すると良いでしょう。

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周囲の反応を楽しんでいる

自閉症の大きな特徴に「コミュニケーションをとる事が困難」というものがあります。これは言葉が出ないばかりでなく、声が出ても場や状況に応じた適切な言葉が出せないという事もあります。

そのため、大きな声で相手に何かを訴えたり、その場の状況とは全く関係ない言葉や声を発してしまう事もあります。

また、大きな声で周囲の人がビックリしたり驚いたりする様子を見て楽しんだり、その行為自体をコミュニケーションとしている場合もあります。

無意識に出てしまう

自閉症や発達障害の人たちは声が無意識に出てしまうことが有ります。特に『楽しい時』『不安やストレスを感じている時』『暇で手持ち無沙汰のとき』『パニックや癇癪のとき』などが多いです。

楽しいときには「好きな言葉」「楽しかった事と結びつく言葉」、不安やストレスを感じている時には「自分が落ち着ける言葉」「安心する言葉」「言いやすい言葉」などを出すことが多い傾向になります。

無意識に出てしまう言葉には常同行動や、感覚遊びの一環で行っている事も有ります。

パニックや癇癪のときは言葉にならず叫び声や奇声など意味の分からない発声をする事が多いです。

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音が聞こえにくい為

聴覚が鈍くなる聴覚鈍麻や難聴などの特徴があると、周囲の音や声が聞き取りにくくなってしまいます。そのため、自分が聞こえやすいように大きな声を出してしまうという事もあります。

耳が遠くなった年配のひとや老人などが、普通の会話でも怒鳴るような大声で話したりするのも年を取ることで聴覚が衰え耳が遠くなり、自分の声が聞こえにくくなる為だといわれています。

音が聞こえないと話す声だけではなく、テレビやCDなどのボリュームも大きくして聞こうとします。なお、聴覚の鈍麻の場合は全体の音が聞こえにくくなる場合のほかに、特定の高さの音や、特定の方向が聞こえにくいという事もあります。

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言葉の発音が難しい

障害を持つ人の中には、知的や精神面だけではなく、身体的な部分での障害を持っている人も多く見られます。

その身体障害の中でも、口の筋肉や舌の筋肉の発達が遅れている、神経や筋肉の麻痺がある、口腔内や歯並びなどに異常がある場合などは、言葉の発声や発音が難しくなる事があります。

そのため、言葉を話そうと思っても、正しい発音や発声量が出来ず、大声や奇声になってしまう事もあります。

自閉症や発達障害の人の声が大きいと思われてしまう理由

自閉症や発達障害の人は周囲から見ると異質な存在であるため、必要以上に大声を出したり奇声を上げていると思われてしまう事も有ります。

周囲からは意味の分からない声のため

自閉症や発達障害の子供の発する言葉は、その場に有った言葉ではなかったり、周囲から見ると意味の分からない言葉、奇声や雄叫びのように聞こえることがあります。

本人からしてみれば何かを要求していたり、コミュニケーションを取ろうとする言葉であっても、周りの人からすると大きな声で叫んでいるだけと捉えられてしまう事も有ります。

例えば子供が大声で「お母さん!」と叫んでも、周囲の人は「お母さんを呼んでいるのだな」と感じます。しかし、障害を持った子がお母さんを呼ぶために「ギャーーー!」と叫んでいると、何事かと思ったりウルサイと感じる人も多いと思います。

意味のある言葉やその場にあった会話なら、多少大きな声で話しても周囲の人はそこまで気にするとは無いですが、耳慣れない言葉や意味のわからない言葉だと、目立つだけでなく実際の音量以上に大きな声に聞こえてしまうことがあります。

所構わずどこでも声を出してしまう

社会や公共の場所では、静かにしなくてはいけない場所やタイミングというものがあります。一般の人はそのような場所では静かにしたり、会話をする際は小声などで行います。

しかし、自閉症や発達障害の場合、そのような場所を意識したり、場の空気や暗黙の了解などを理解するのが難しく、静かにしなくてはいけない場所でも大きな声で喋ってしまったり、声を出してしまうことが有ります。そのため、周囲から目立ってしまったり、大きな声を出していると思われてしまいます。

電車内や病院の待合室などで携帯電話などで喋っている人を時折見かけますが、そのような人が周りから目立ってしまったり、声が普段以上に大きく聞こえたりするのと同じようなものです。

大声の対処法

大声を出してしまう際には、声を出してはいけない場所や時間などを教えたり、声の大きさの目安などを教える方法があります。なお、我慢させるだけではストレスが溜まってしまうので、逆にある程度の声を出してもいい場所やタイミングなども設けてあげる必要があります。

声を出していい場所と駄目な場所を教える

どこでも大声を出してしまう場合には大声を出しては駄目な場所とある程度声を出してよい場所を教えるという方法も有ります。

自宅や建物内などで声を出してしまう場合には「建物内は駄目だけど外に出たら良い」「公園や校庭なら良い」、乗り物に乗る際などは「バス内や電車内は駄目だけど、降りたりホームなら良い」などです。

また、大声を出してよい場所として定期的なお散歩や、カラオケなどに連れて行く事も効果があります。大声を出す子の中には、定期的に行くカラオケ自体が楽しみになり、カラオケに行くというご褒美を作ることで、日常の大きな声を我慢できるようになった事例も有ります。

声を出すことを我慢させる時間を作る

大声を出すことを時間として我慢させる練習も必要となります。学校などでは「始まりの会」や「終わりの会」などは静かにする、自宅では「ご飯の時間」「トイレの中」では静かにするなどです。

我慢をする時間は開始と終わりをハッキリさせることが重要です。自閉症の子供は時間の感覚や概念を理解するのが苦手であるため、「いつまで我慢するのか」という事をはっきりさせてあげないと不安やストレスに繋がり、余計に声を出してしまう事もあります。

我慢をさせる場合に最初は短い時間から行うのが重要に成ります。短い時間を我慢する事が出来るようになったら時間をだんだんと長くしていったり、我慢する短い時間の回数を増やして行きましょう。

小さい声を目安で教える

大声を出している子供は自分がどのくらい大きな声を出しているか、周りがどのくらいウルサイと感じて迷惑しているかが分からないときが有ります。

その際には声の大きさをレベル分けして「今の声はレベル5で大きいよ」と教えたり「レベル2の声で話そうね」などと教える方法があります。

このレベルわけは子供の特徴や理解によって「大きい」と「小さい」の2段階や、間に「ふつう」を入れて3段階、さらに5段階などに分けても良いでしょう。また、レベルは数字だけで分かる子は数字を使ったり、絵やレベルゲージのように見せる方法も有ります。

大声を出さなくても良い方法を教える

大声で何かを訴えたりしている場合は、その訴えが大声でなくても良いという事を教える事も必要になります。声を小さくしても聞こえていることを教えたり、声の代りに相手の肩を手で叩く、相手の手を引くなどの方法がある事を気付かせてあげると良いでしょう。

大声を出す子でも好きなことに取り組んでいる場合や、何かの作業などに集中しているときなどは大きな声を出す事も少ないことが多いです。そのため、好きな物事や集中できることなどを見つけ出したり与えてあげる事も効果が有ります。

大声を出している原因を探る

何かの原因で大声を出している場合には、その原因を探り解決することが必要となります。

大声を出している原因はその子の特徴や障害、場所、環境、意味、目的などにより様々ですが、「何かを訴えているのか」「何かが嫌なのか」「不安やストレスなのか」「声を楽しんでいるのか」など普段の行動や大声を出す環境などから調べていくことが重要です。

大声を出している原因や要因が特定できれば、その対処方法や代替手段などを提供したり、対応を教えて成長するチャンスにもなります。

まとめ

色々な場所やタイミングで大きな声を出してしまうというのは、自閉症や発達障害などの子供を持つ親の大きな悩みの一つだと思います。

大きな声を出してしまうという事にも、たくさんの理由があり声を出している本人も悩んでいるかも知れません。また、障害を持った人にとって声を出すのはコミュニケーションの一環であり、何らかの意思表示であるということを忘れてはいけません。

極端な大声や奇声の場合はまず声を出してしまう原因を考え、解決をしたり代替の手段などを提供することが必要となります。

声で訴えや感情を出せるのは、コミュニケーションを行ううえでとても重要なことです。声で自分の意思表示を行ってるという事を大切にして、声の大きさの調整や我慢するという事を意識させることが重要になります。

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