自閉症や発達障害の服や爪を噛む噛み癖とは
自閉症や発達障害の服や爪を噛む噛み癖とは
自閉症や発達障害の人の癖として、服の襟周りや袖を噛んだり、爪を噛む噛み癖が見られる事があります。また、鉛筆や消しゴムなどの文房具や、場合にってはその辺に落ちている棒などを噛んでしまうことがあります。
もちろん噛み癖が有るからといって、自閉症や発達障害ということではなく、逆に障害を持っていてもまったく噛み癖が見られない人もいます。噛み癖は年齢の小さい子供には良く見られる行動のひとつでもあります。
では、自閉症や発達障害に見られる噛み癖とはどのようなものなのでしょうか。
自閉症や発達障害に見られる噛み癖
自閉症や発達障害に見られる噛み癖には、やることが無く手持ちぶたさである際に見られたり、逆に何かを噛まなきゃと噛むのに必死になっているとき、不安や落ち着きが無いときが見られます。
良く噛むものとしては、『自分の爪』『服の襟』『服の袖』『鉛筆』『消しゴム』『クレヨン』『椅子』『木の棒』『お箸』『車のシートベルト』『車のシート』『マット』『スポンジ』『本』『紐』などが見られます。
爪などを噛んでしまう子の場合は、常に爪を噛んでいたり、少しでも伸びると噛んでしまう事も多く「ここ数年爪きりをしたことがない」という場合もあります。
ものを噛んでしまう理由
自閉症や発達障害の子供が噛み癖として物を噛んでしまうのには様々な理由があります。
不安やストレス
不安を感じたりイライラしてストレスを感じた場合にも、物を噛んでしまう行動に出ることがあります。
不安を感じた際に、気持ちを落ち着かせたり気を紛らわせたりするために噛んだり、イライラした際にストレスを発散させるために噛んだりなどです。
特に自閉症や発達障害の子供は、不安を感じると落ち着かせようと、好きな感覚を得ようとしたり、好きな行動を取ろうとしたりします。爪や服などをかむのが好きで癖になっている場合には、このように気持ちが不安定のときに噛み癖が出やすくなります。
感覚遊びのため
自閉症や発達障害の子供には『感覚鈍磨』という特徴が見られることがあります。
感覚鈍磨とは感覚が鈍くなってしまうことで、痛みを感じない、暑さや寒さが分からないといったことも感覚鈍磨が影響しているといわれています。
また、感覚鈍磨によることで日常的な生活で受ける刺激が少ないということもあります。その場合子供たちは様々な方法で自分から感覚刺激を受けようとします。
代表的な感覚遊びには、手をパチパチと叩いたり、グルグルと回ってみたり、自分を叩いてみたり、触り心地の良いものを触ったりなどです。この感覚遊びの一環として様々な物を噛む噛み癖が見られることがあります。
口は感覚が敏感な部位であるとされ、小さい子供は物を口に入れて様々な情報を判断することがあります。そのため、噛んだり口に入れたり唇に触れることで様々な感覚を情報として取り入れています。
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噛む感覚が楽しいため
これも上記の『感覚遊びのため』に含まれる行為ですが、噛む感覚を楽しんでいるということもあります。
人は食べ門でも歯ごたえが有るとおいしいと感じることがあります。これは食べ物を噛んだ際の歯ごたえという刺激を楽しんでいるためです。
噛み癖でも、適度な弾力のあるゴムや、強く噛むとグッと歯の入る感覚が得られる鉛筆や木の棒、パチンと噛み切ることの出来る爪などはこの噛んだ際の心地よい感覚の刺激を得ているのだと思います。
自傷行為
自傷行為とは自分の体を何らかの方法で傷つけてしまう行動です。代表的な自傷行為には『手や足を噛む』『頭や顔を叩く』『頭や顔を床や地面に叩きつける』『髪の毛をむしる』などがあります。
爪をかんでしまったり、指のささくれや、皮膚の硬い部分などを噛む行動も、自分の体を傷つけているため自傷行為に含まれます。
自傷行為を行う理由も様々で、不安などから自分を落ち着かせるため、パニックのため、刺激を得るための感覚遊びとして行うなどがあります。
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自傷行為の原因と対処法| 発達障害-自閉症.net
空腹のため
中には空腹を紛らわすために物を噛む行為を行っていた子供もいます。
その子は中学校2年の食べ盛りの時期で、運動も沢山行っていたのでお腹が空いてしまうようで、おやつを沢山食べても食べたりないという様子を見せており、空腹を紛らわすためにスポンジやゴムなどを噛んでいる事が多く見られました。
また、その子は遊びの一環での噛み付きや、自傷行為や他害行為で噛むことも見られたので、感覚遊びや空腹から来るイライラも噛み癖の原因になっているように思えました。
そこでその子のおやつにはスルメやキュウリなど噛み応えのあり、比較的長持ちするおやつを提供することで、空腹と感覚の両方を満足できるように工夫しています。
暇や手持ちぶたさのため
やることがなく暇になった場合、自閉症や発達障害の子供は時間を上手につぶすことを自分で見つけるのが難しいです。
健常な子供で有れば、ゲーム、テレビ、本、スマホなどを持ち出して自分で時間をつぶしたり、お友達や兄弟のところへ一緒に遊びに行ったり、母親のところへ声をかけに行ったりすることが出来ます。
しかし、障害を持つ子供の場合それらの行動を自分から取るのが難しいため、とりあえず自分の好きな事や出来る事ということで感覚遊びとして、周囲にある物をかんでしまうということがあります。
噛み癖が有る子でも、やることを教えたり、次から次へと課題を与えると、暇な時間がなくなるので、噛み癖が出ないということも良く見られます。
噛み癖のデメリット
噛み癖があると様々なデメリットが発生します。
公共の場や他の人がいる場所で物を噛んでいると、周囲の人に不快感を与えたり、変な人だと思われたりすることがあります。
爪をかんでしまう場合には口や指先が不衛生になってしまうだけでなく、爪を深く噛み過ぎたことでそこからばい菌が入り化膿したりすることもあります。
服をかんでしまう場合には服がよだれで汚れてカピカピになってしまったり、生地に傷や穴が開いて直ぐに服が駄目になってしまいます。
鉛筆や消しゴムなどをかんでしまうと直ぐにボロボロになってしまい、そのつど買い替えなどが必要になります。
噛む事で刺激を得ている場合には、噛み癖が自分の腕などをかんでしまう自傷行為に繋がったり、噛む対象が他人になって他害行為へと繋がる恐れもあります。
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噛み癖への対処法
噛み癖を直すことは本人の不安やストレスなど気持ちの問題や、落ち着ける感覚遊びとして行っていることが多く、直ぐに直すということは難しいですが様々な工夫により対処を行うことができます。
代替手段を用いる
物を噛んでしまう場合には代替の手段を用いる方法が効果があります。
今は育児用品や療育グッズなどで、多くの噛み癖に対応した商品が出ています。乳幼児用の歯がためグッズや、シリコンで出来た噛めるネックレスやブレスレットなどです。
口の中に物を入れておくと落ち着く場合には、ガムや歯ごたえのあるグミを噛ませる、スルメや硬いおせんべいなどを食べさせると落ち着くという子供もいます。
また、噛むという行為でなくても、噛む事に変わる刺激を得ると落ち着いていられるということもあります。その場合には指先で遊べるハンドスピナーやシリコン製のボールなどでも効果があります。
落ち着ける環境を作る
ストレスや不安を感じている場合には、その原因を取り除き本人が落ち着いて過ごせる環境を作ることが大切になります。
また原因を取り除くことが難しい場合でも、不安を感じた場合に周囲の人にサインを出す方法を教えたり、不安なことへの対処法を教えるだけでも効果が有る場合があります。
まとめ
自閉症は発達障害の人が爪や服などを噛んでしまう噛み癖には、様々な理由から行っていることが多いです。
ストレスや不安を感じている場合には本人が落ち着ける環境を用意し、噛み癖が生活に影響をしている場合には別の代替手段を用意すると代替方法で納得出来る事もあります。
まずは本人がどのような理由で物を噛んでしまうのかを見極め、本人の気持ちになって対処してあげることが重要になります。