発達障害の言葉やコミュニケーション能力の障害

 

発達障害の言葉やコミュニケーション能力の障害

自閉症やアスペルガー症候群などの人には『コミュニケーション能力の障害』という大きな特徴があります。

重度の自閉症の子供の場合には言葉や発語自体が見られなかったり、しゃべれても簡単な単語しか出ないこともあります。言語機能が正常で言葉を話せる子でも、会話などのコミュニケーションとなると、適切な会話や返答ができず困難が生じることも多いです。

言葉は人とのコミュニケーションを行う上で重要な要素になり、これらが難しいと適切な対人関係を築く事が難しくなってしまいます。

主な言葉やコミュニケーション能力の障害

言葉やコミュニケーション能力の障害は多岐に渡り、人によっても様々な面で困難が生じます。ここでは主に多く見られる障害や困難を紹介します。

言葉の発達の遅れ

言葉の発達の遅れは発達障害の大きな特徴の一つでもあります。

正常な子供の場合には2歳頃までには発語が見られ、3歳までには2語文を話すのがおおよその目安になります。この目安の年齢までに言葉が出ない場合には、言語発達の遅れがあるとみなされます。

発達障害の子でも言葉の発達は人によりさまざまで、3歳頃まで言葉が無かった子が急に喋りだすようになったり、難語程度の発語の子が幼稚園や小学校に入りお友達と交わる仲で言葉を持つようになったりもします。

また、重度自閉症の子の場合には、大人になっても簡単な言葉しか喋ることができなかったり、場合によっては大人になっても言葉を発することが無い場合もあります。

言葉の遅れには『耳の問題』『発声器官や嚥下の問題』『知的な遅れ』など、発達障害とは別の理由も考えられるので、検診での指摘や言葉の遅れが気になる場合には専門機関に相談に行きましょう。

オウム返しをする

オウム返し(エコラリア)とは、質問などをした場合に受けたその言葉をそのまま同じに発語することです。例えばお母さんが「何が食べたい?」と聞くと、子供も「何が食べたい?」と同じ事を返す状態です。

オウム返しには上記の例のように言われたことをその場で返す『即時エコラリア』と、言われた言葉を後になって返す『遅延エコラリア』があります。

人から話しかけられた際に即時エコラリアを行ってしまう理由には、話しかけられたり質問された意味がわからずにオウム返しになってしまう場合と、適切な言葉や返答が思い浮かばずに同じ言葉を返してしまうためだとされています。

遅延エコラリアには耳に残った言葉などを全く別の場面で言ったりする事で、関係の無い場面でアニメやゲームのキャラクターのセリフを言ったり、何か悪いことをした場面でいつもお母さんから注意されている言葉を話したりする事が見られます。

また、自己刺激や常同行動の一環で、耳にしたフレーズや気に入った言葉を何度も繰り返して喋るといった行動を行うときもあります。

なお、オウム返しを行っているからといって、その言葉や単語の意味を理解しているわけではない場合も多いので注意が必要となります。

関連ページ
言葉のオウム返しとエコラリア | 発達障害-自閉症.net

抽象的な表現の理解が困難

発達障害の人は抽象的な事を考えたり理解するのが苦手であるため、会話の中でも抽象的な表現があると分からない事があります。

抽象的な表現は普段使わない言葉遣いをしたり、自分が経験したことの無い表現方法として使われることあり、発達障害の人からすると言葉とイメージが結びつかず理解が困難となります。

抽象的な意味が分かりにくい時には、内容を具体的にして実際の数や時間、物などに置き換えると理解がしやすくなります。

冗談やジョークの理解が困難

発達障害の人にとっては冗談やジョークも言葉の裏に隠れた意味を理解することができないため、言われたとおりの言葉として受け取ってしまいます。そのため、ジョークや冗談を言われても笑いとして返すことができず『愛想が無い』『場の雰囲気を壊す』『空気が読めない』といったイメージをもたれることがあります。

相手の表情から相手の感情を理解したり、場面などから状況を判断するのが苦手であるため、皮肉を言われた際にもその言葉通りに受け取ってしまい、相手を怒らせたりしてしまうこともあります。

逆に発達障害の人も裏の意味がある言葉を言うことは少ないため、発せられる言葉は本心であることが多く、裏表の無いきれいな心の持ち主だと思われることもあります。

気持ちや感覚や要望を表現できない

発達障害の子供は自分の感覚や感情、気持ちなどを表現するのが苦手です。

他人の気持ちだけでなく自分の気持ちや感情を理解するのも発達障害の子供は苦手です。
心の中に嫌な気持ちが有っても、それが「不安」「恐怖」「怒り」「悔しさ」「悲しみ」のどれなのかがわからず、ただ嫌な気持ちが溜まり、限界になると癇癪やパニックにつながってしまいます。

自分の要望に対しても自分からの表現が困難なことも多く見られます。
例えば、お友達が使っているオモチャが欲しいと思っても、その気持ちを言葉にするのが難しかったり、言葉としては理解することができていても実際に発するのができず、結果としてお友達の物を勝手に取ってしまいトラブルに繋がることもあります。

コミュニケーションが一方通行

アスペルガー症候群などの子供の場合には言葉を理解しており、話すのも上手な子がいますが、会話が一方通行になってしまうこともあります。

会話が一方通行になってしまうのには『自分の興味や関心のあることにしか集中できない』『自分の気持ちを抑えられない』『場面や状況が理解できない』『相手の気持ちを汲み取ることができない』『他人への関心が乏しい』といった発達障害に見られる特徴が原因の場合が多いです。

また、相手の話を聞く、話の内容を理解する、会話に適切な返答をするという一連の行動を行うのも苦手なため、相手の話が耳に入らず理解できていないということも大きな理由のひとつです。

独特な話し方をする

会話の上手な子供でも、話し方が独特であったり、変わった言い回しをする事があります。

多いのが誰にでも敬語を話したりやけに大人びた会話をする、疑問文や疑問系で会話をする、早口、抑揚の無い会話や甲高い声、などです。

独特の話し方をするのには「オウム返しの影響」「文法の理解の困難」「自分と他人の違いの理解の困難」など様々な理由が考えられます。

関連ページ
自閉症の子供は疑問系や疑問文による要求をする | 発達障害-自閉症.net

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自閉症や発達障害者が独特な話し方や言い回しをする理由 | 発達障害-自閉症.net

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発達に遅れのある子どもは、敬語で喋ったり身近な人にも丁寧語で話す | 発達障害-自閉症.net

場の雰囲気や状況を読むのが苦手

近年では空気が読めないと言われる事も多いですが、発達障害の人は場の雰囲気や状況を読むのが苦手で、ついその場に合わない会話をしたり行動をとってしまうことがあります。

場の雰囲気や状況は、その場所、人の立場、人間関係、人との距離感、時間の前後関係など多くの物事が関連し、それらの関連を理解しなくてはいけません。しかし、場の雰囲気を作る要因は具体的に形となって目に見えるものではない事が多く、発達障害の人が理解するのが困難なものになります。

まとめ

言葉やコミュニケーションスキルは人との良好な関係を築くために重要なスキルの一つとなります。言葉やコミュニケーションが苦手な場合には、お友達との遊ぶ経験を増やしたり、SST(ソーシャルスキルトレーニング)などの訓練を行うと経験や対処方法を身につける手助けになります。

言葉の発語が遅れていたり、会話に困難な部分が見られるときには専門機関への受診や、言語聴覚士(ST)などからの訓練を受けましょう。

また、言葉でのコミュニケーションが難しい場合には、マカトンサインなどのサインやジェスチャー、筆談、文字ボード、意思表示カードなど本人の使いやすいものを取り入れることも考慮すると良いでしょう。

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マカトン法とマカトンサインとは | 発達障害-自閉症.net

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