自閉症が好きな色と嫌いな色

   2018/03/18

自閉症が好きな色と嫌いな色

自閉症の人はその特徴などから、様々なものにこだわったり、逆に嫌がるということがあります。それは物や人であったり、場所や時間や動作など多岐に渡ります。

そんな中で色についても好む色があったり、嫌う色が有ったりします。一般的には自閉症児は黄色を嫌がるという話を聞いたことがあるかと思います。

では、実際に自閉症の人はどのような色を好んだり、嫌ったりするのか様々な理由から調べてまとめてみました。

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自閉症が好む色や嫌う色の研究

自閉症児が緑色を好み、黄色を嫌がるという話を耳にした事が有るかと思いますが、これは2016年12月に京都大学の霊長類研究所教授である正高信男氏と、マリン・グランドジョージ レンヌ第一大学の研究チームが発表した研究『自閉症児は黄色が苦手、そのかわり緑色を好む -発達障害による特異な色彩感覚-』が元になっています。

この研究では自閉症児に多く見られる知覚過敏(感覚過敏)の色彩感覚に着目し、その特徴からどのような色彩の好みがあるか赤色・青色・黄色・緑色・茶色・ピンクの6種類の好感度を調査したものになります。

研究内容はフランスのレンヌに住んでいる4歳から17歳の色覚障害を持たない自閉症の男児29人と、健常児である同年齢の男児38名との色の好みを比較したものになります。

結果としてどちらのグループも赤と青が同程度好まれましたが、自閉症児は黄色やピンクなどの明るい色を嫌う傾向が見られ、逆に緑色や茶色が好まれるというものになりました。

この研究では対象は男児のみで、それぞれの子供の発達状態や特性などは細かく調べてはいないようですが、自閉症の子供は好む色にある程度の傾向が見られうという結果になっています。

1984年の研究『発達障害児の描画における色彩使用の傾向(PDF)』においてはそれぞれの障害において次の順で絵画において使用した色が多かったと報告しています。

  • 精神発達遅滞幼児:赤、青、紫、橙、黒、黄、茶、黄緑、水色、桃色
  • 自閉傾向幼児:赤、黄、青、黄緑、緑、桃色、橙、水色、紫、こげ茶
  • ダウン症児:黒、橙、赤、黄色、紫、茶色、黄緑色、黄土色、緑、青
  • 緒障害幼児:赤、緑、黒、水色、青、紫、橙、黄緑、黄色、茶色
  • 情緒学級児:黒、赤、青、緑、黄色、橙、紫、水色、肌色、こげ茶

2014年の日本福祉大学の研究『自閉症者の描画における色彩傾向(PDF)』においては、成人男性の通所支援施設利用者と入所支援施設利用者の作画における色の使用傾向を調べており、次のような結果になっています。

色の使用頻度は青、緑、赤、水色、茶色、黒の順に多くなり、入所施設利用者は生活の範囲が狭く色彩情報の外部刺激が少ない理由から使用する色が青、緑、赤の3色に極端に集中するとしています。

自閉症の子供が黄色を嫌がる理由

全ての自閉症の子供が黄色を嫌がるというわけでは有りませんが、京都大学の研究結果を元に自閉症の子供が黄色を嫌がる理由をしらべてみました。

なお、黄色は明るく目立つ色ということで『ピカチュウ』『くまのプーさん』『スポンジボブ』『ミニオンズ』など子供の人気キャラクターの色としても使われることがあります。これらのキャラクターを好きな自閉症の子供も多く見られるため、必ずしも全ての子供が黄色を嫌がる事は無く、逆に黄色を好む子供も多く見られます。

明るい色であるため

黄色は白色の次に輝度(明るさの度数)が高い色です。そのため、視覚への刺激も強く視力の感覚過敏(視覚過敏)をもっている場合には、とても眩しく感じてしまったり、目が疲労をおこしやすくなります。

また黄色は他の色よりも明るいため、前に出てくるように感じる進出色であったり、大きく広がって見える膨張色でもあります。また興奮などをイメージさせる色であるため、黄色の持つ刺激は他の色よりも強いものになります。

ピンクも黄色同様に明るい色であるため、視覚過敏があると刺激が多く疲れる色のひとつとなります。

逆に緑や茶色などは比較的暗い色であることと、自然界に多く存在する色でもあります。

緑は草や葉っぱなどに見られ、安心感や安定感や調和などを表す色になります。茶色も木や土など自然のものに多く見られ、落ち着きや温もりなどを感じさせる色となります。

警戒色であるため

黄色は黒とあわせることで警戒色や警告色として使われることがあります。これは黒と黄色をあわせると目立つコントラストとなることや、スズメバチやアシナガバチなどの蜂類やライオンやトラなど毒を持っていたり凶暴な動物が黄色と黒を主体にした色をしているため、人間も本能的に警戒をしたり恐怖を感じることがあります。

また、警戒色は目立つため、踏み切り、立ち入り禁止テープ、警告の看板などに日常的にも使用されるので、無意識のうちに気持ちが注意や危険などを感じ取っていることも考えられます。

曖昧な意味を持つ色であるため

黄色は日常的に見かける信号でも使われる色です。赤は『止まれ』、青は『進め(進んでも良い)』と、はっきり分かりますが、黄色は一般的に『注意』として言われることが多いです。

自閉症や発達障害を持つ子供の場合、信号のルール上で進んでいいのか止まっていいのかが分かりにくい『注意』は意味が曖昧で分かりにくいため、好まないということも考えられます。

(※本来の交通規則上は黄色も『止まれ』で、安全に止まれない場合に限り進行可能の意味を持っています)

こだわりのため

自閉症や発達障害の子供は様々な物事にたいして強いこだわりを持つことがあり、色に関してもこだわる事があります。色に関してこだわりを持つと、その色の服しか着なくなったり、物を選ぶ際にもまず色を見て選ぶということがあります。

色にこだわる理由は人により様々ですが、単純にその色が好きな事や、その色の服を着ていたときに良い事があった、好きなアニメやヒーローに影響された、家族やお友達の真似などがあります。

私が経験した中では、自閉症が好まないという黄色を好む男の子、赤色を好む男の子、青色を好む女の子、ピンクを好む女の子を見た事があります。

その際に赤色を好む男の子は戦隊ヒーローからの影響から「赤はリーダーで男の子の色だ」と好んでいました。逆にその子は「ピンクは女の子の色だから嫌い」とピンクは絶対に身につけませんでした。ピンクが好きな女の子は「可愛い色だから」とピンクを好んでいました。

食べ物に関しても色によるこだわりが見られることもあり、「白いものしか食べない」という子供の話も数人聞いたことがあります。その子たちはご飯は白米だけでおかずをご飯に乗せたりおかずの色が移ってしまうと食べるのを嫌がり、他には食パンの耳意外、豆腐、シチューのルー部分、牛乳などを好んでいました。

また、野菜嫌いから緑色をした食べ物は全く受け付けないという子供もいます。

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自閉症に見られる特徴として、物を並べるのが好きと言うものがあります。この特徴で色鉛筆やクレヨン、色つきのミニカーなどのおもちゃを並べる際には、本人の中での並べ順がありその順番が色であるということもあります。

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物を規則的に並べる| 発達障害-自閉症.net

なお、色によるこだわりは他のこだわりと同様に別の色に変わったり、いつの間にかこだわり自体が消えている事もあります。

視覚の感じ方の違いによるため

自閉症や発達障害の人は感覚が非常に敏感になる『感覚過敏』や、逆に感覚が鈍感となる『感覚鈍磨』という特徴を持つ事があります。

その中でも視覚過敏になると日光や蛍光灯を眩しいと感じて目が開けられなくなったり、きらびやかな物やカラフルなものを見ると刺激を強く感じて疲れてしまうことがあります。

既に前の項目で書きましたが、視覚過敏を持つと黄色やピンクなど明るい色に対して刺激が強すぎると感じてしまうことがあります。

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逆に視覚鈍磨となるとコントラスト(色の対比)の強い映像や、動きの激しい映像などを好む事があります。これは日常的に視覚からの刺激が少ないため、刺激を求めてこのような映像や動きなどを欲しがる事があります。

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自閉症に見られる横目で物を見たり、目の前で手のひらや紐をヒラヒラして楽しむのも目からの刺激を求めるために行っていることも多いです。

また、感覚の受け取り方の違いから実際の色と見えている色が違うということも考えられます。

画家であるフィンセント・ファン・ゴッホは色覚異常(色盲)で有ったとされ、「ひまわり」「夜のカフェテラス」「黄色い家」など独特の黄色の色使いをしていたのも、ゴッホは実際に風景の黄色が強く見えていたという説があります。

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精神的や心理的な面から

何らかのストレスや疲労などにより精神的に問題があったり、心理面に異常が有ると特定の色を好んだり嫌がったりする事があります。

実際に接した自閉症の子供の中で、一時期家庭内に問題があった際に、塗り絵などを行っても黒一色や赤一色などで塗りつぶしてしまうという事がありました。後に家庭が落ち着くとその子の気持ちも立ち直ったようで、様々な色を使うようになりました。

色の利用方法

自閉症や発達障害の子供は色についても様々なこだわりや好みがあります。この特徴を利用することで本人の行動や生活に役立てることも出来ます。

目印やマークに使う

好きな色がある場合にはそれを本人のマークやイメージカラーに利用することもできます。

赤が好きな子供の場合には赤は自分の物であるとイメージできるようになると、自分の持ち物の管理や整理整頓に繋げる事もできます。整理をする場合には片付ける場所やかける場所に目印として好きな色のシールなどを貼ると分かりやすく効果もあります。

また、本人が興味を引きやすい色を使い、カレンダーに予定表を書き込んだり、忘れ物をしないようにメモに書くなどにも使うことができます。

嫌いな色や苦手な色を遠ざける

視覚過敏などで特定の色を嫌がる場合や、特定の色の物などに注意が向いたり気が散ってしまう場合には、その色を視界に入らない場所に遠ざける必要もあります。

嫌がる色を目にしなくなれば本人の負担やストレスを軽減することができます。注意が向いてしまう色を遠ざけることで、勉強や作業に集中できるようになり本人の為にもなります。

まとめ

自閉症や発達障害の子供が特定の色を好んだり嫌がったりするのには様々な理由があります。

一般的に黄色を嫌がる事が多いといわれていますが、これは明るい色で刺激が強いことや、本能的に危険を感じているという理由が考えられます。

色の好き嫌いがある場合には、嫌いな色を遠ざけ、逆に好きな色を使うことで本人の生活が行いやすくなる事もあります。

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