発達障害の対人関係や社会性の障害

 

発達障害の対人関係や社会性の障害

アスペルガー症候群や自閉症などの発達障害の大きな特徴のひとつに「対人関係や社会性の障害」(対人相互関係の障害、社会性獲得の困難)というものがあります。

対人関係や社会関係の障害には社会のルールやマナーの理解や実行が難しいといったものから、他人への興味を示さない、相手からのコンタクトも拒否をしてしまうというものまで幅広くあります。

発達障害の子は対人関係の構築が苦手であったり、自分以外の人への意識が少ないため、対人関係や社会性において様々な困難が伴います。

主な対人関係や社会性の障害

対人関係や社会性の障害は多岐に渡り、人によっても様々な面で困難が生じます。ここでは主に多く見られる障害や困難を紹介します。

視線が合わない

視線が合わなかったり、視線を合わせることを嫌がるのも自閉症などの発達障害の特徴のひとつです。お母さんが呼びかけても赤ちゃんのころから視線が合わず、発達障害なのではと気づく保護者もいるようです。

視線が合わないのにも、相手からの呼びかけや視線を認知していない場合や、相手の存在をわかっていても何らかの理由で視線を合わせることができないなど、様々な理由があります。

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表情や身振りを読み取るのができない

人と会話を行う中で、相手の表情や声のトーン、身振りや動作などから相手の気持ちや感情を読み取るのが苦手です。

そのため、相手が丁寧な口調で注意をしていても注意をされていると言うのが気がつかなかったり、相手の言う皮肉などを言葉通り正直に捕らえてしまうことがあります。

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自閉症や発達障害は表情や感情を読み取れない | 発達障害-自閉症.net

人の感情を読み取れない

人の気持ちや感情が読み取れない特徴を持つこともあり、場面や状況を考えて相手の気持ちに立つことが苦手です。そのため、相手の気持ちに寄り添うことができなかったり、その場に会わない発言や行動をとって顰蹙(ひんしゅく)をかってしまいます。

人の気持ちや感情が理解できないということは、相手やグループに合わせるということも難しくなります。人の気持ちが理解できず自分の感情が優先的になってしまうので、自己中心的な行動と取られてトラブルの原因にもなりかねません。

人を怒らせてしまった際にも相手がなぜ怒っているのかが分からないため、反省することができません。場合によっては意味もなく理不尽に怒られてると感じて、反発して火に油を注いでしまうような発言をしてしまう事もあります。

子供などでは相手の気持ちを理解できないために、相手が傷つくような行動をとったり、悪口などを平気で言ってしまうことも多いです。

一方的にしゃべってしまう

アスペルガー症候群など言葉を上手に扱う子供には、会話をする際に好きなことや言いたいことを一方的に喋ってしまう事があります。

通常の会話は相手と行動に行うものですが、このような特徴を持っていると会話の流れや相手の様子などを理解することが難しく、自分の気持ちが優先してしまうため、喋りたいことをスピーチのように気が済むまで話してしまいます。

相手の行動に応じることができない

相手からコミュニケーションを受けても、その内容に応じて適した行動をとる事も苦手です。

例えば相手から話しかけられても、最初に「会話の内容」「場面や状況」「相手の表情や気持ち」などを理解しなければならず、場合によっては話が理解できなかったり内容を忘れてしまうということもあります。

それぞれの状況や会話の内容を理解したとしても、自分の経験から適した返答や行動を導き出すのに時間がかかったり困難を生じます。そして、導き出したものを話したり行動するまでにまた多くの労力を要します。

健常者では上記の事を一瞬で行い相手に適切な反応を返すことができますが、これらが困難な特徴を持っている場合、一つ一つの理解や行動に多くの力と時間を必要となります。

また、苦労して導き出した対応方法が、会話や場面に合ったものではない場合もあり、相手とのコミュニケーションも妙なものになってしうこともあります。

自分以外の視点が理解できない

発達障害の人は、自分以外の人への意識やイメージ力が弱いため、他人からの視点を理解する事が難しくなります。

自分以外の視点を意識する事ができないと、恥ずかしいという概念が育ちにくいため、身なりや服装に無頓着であったり、だらしない格好でも何も感じない事があります。

また、他人の間違いなど細かい点には気づくが、自分のミスなどの失敗が第三者目線でわからないため、自分を棚に上げて人の欠点ばかり注意しているように思われてしまう事もあります。

他人への関心が乏しい

発達障害の大きな特徴のひとつに、『興味の幅が狭く特定のものにこだわる』というものがあります。他人への関心もこれに当てはまり、自分の興味のある話題や遊びなどには自分から参加しますが、関心の無い遊びや雑談などに興味が沸かずまったく参加しないことがあります。

個々の人を認識するのも苦手で、それぞれの人の違いがわからないという事もあります。

健常者なら人の顔を見て人物を見分けることができたり、表情を見てその人の気持ちや課感情を理解することができます。しかし、発達障害の人の中には、顔を見分けたり、表情から気持ちを読み取ることができない場合もあり、これらは他人への関心が乏しい理由としても考えられます。

自閉症などの子供の場合には、人それぞれを認識しておらず、遊んでくれる人や好きなことを提供してくれる人など、自分を中心とした目的で理解している場合も多く見られます。

一人でいる事を好む傾向

他人との接触を好まず、一人でいる事が多いという場合もあります。これは、社会関係の障害から、他人との関係を築く事が難しいために生じる場合と、その子の特徴から他人との接触を好まないという事があります。

発達障害の特徴から社会関係を築く事ができないと、自分からコミュニケーションを取り友人や親しい人を作ることが困難になります。また、相手からコミュニケーションをとってきても、適切な対応や返答ができないため親しくなれません。

適切なコミュニケーションが取れないと、コミュニケーションを無理に行ってストレスを抱えてしまうよりも、一人でいる事のほうが楽だと感じて他人との関係を行わない事があります。

個々の特徴から他人との接触を好まない場合もあります。たとえば感覚過敏などから、人の声が苦手であったり、人が多いとストレスを感じたり、人の動く様子を見ると疲れてしまうという場合などです。

このような特徴の子の場合、段階を踏まずに集団の活動に参加を促しても、つまらなそうにしたり、場合によってはストレスや不安を感じパニックなどにつながることがあります。

人との距離感が難しい

人との距離感を理解するのが難しく、初対面の人にも近づいて触ったり抱きついてしまったり、馴れ馴れしく話しかけてしまうという行動をとることがあります。

特に男女間だとボディタッチをしてしまったり、抱きついてしまったりというトラブルに結びつくことも多いです。

他人との距離感を図ることが難しいため、場所や立場などを理解できず、目上の人に対等なタメぐちで喋ってしまったり、場をわきまえない会話をしてしまい、図々しいと思われトラブルになることもあります。

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自閉症や発達障害の人は他人との距離感が近い | 発達障害-自閉症.net

社会的ルールやマナーの理解が難しい

ルールやマナーを理解したり、それを実行するのも発達障害の子にとっては難しいものになります。ルールやマナーには、挨拶、物の貸し借り、交通ルール、整列や順番を待つこと、物の購入、公共の場での過ごし方など多岐にわたります。

ルールやマナーは形となって目で見ることができず、その場の状況によってそれぞれ違うため、どの場面にどのような決まりごとがあるのかの判断が難しくなります。

また、マナーやルールを理解しても、どの状況でそのルールが適応されるのか、どの場面ではどのマナーを守ったほうが良いのかがわからず、実行に移せないと言うこともあります。

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列に並んだり順番を待つのが苦手 | 発達障害-自閉症.net

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発達障害の子供は物の貸し借りが苦手| 発達障害-自閉症.net

まとめ

発達障害の対人関係や社会性の障害には多くのものがあり、社会に出るうえでは大きなハンデになってしまいます。

対人関係などはSST(ソーシャルスキルトレーニング)などを行ったり、家庭や学校などで人との接し方の経験を積むことで、本人も対処法などを学ぶことができます。

社会性に関しても遊びや様々な体験を通しての経験を積み、少しずつ理解や対応方法を習得できるように促してあげましょう。

また、本人が対応する事ができなくても、周囲の人が気づき理解をして正しい方向へと促してあげることも重要になります。

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