自閉症や発達障害の子供が椅子に座れない理由と対処法

   2018/04/18

自閉症や発達障害の子供が椅子に座れない理由と対処法

自閉症や発達障害の子供が椅子に椅子に座れず、立ち歩いたり走りまわったりしてしまう事があります。

幼稚園や学校で落ち着いて椅子に座れないと、授業に参加出来ない問題児と見られてしまう事もあります。また、問題児として見られるばかりか、授業中に落ち着けずに立ち歩いてしまうと、本人の学習する重要な機会を逃してしまうことにもなります。

では、なぜ自閉症や発達障害の子供は椅子に座っているのが難しいのでしょうか。様々な理由やその対処方法を調べてまとめてみました。

なお、椅子に座れず立ち歩いてしまうからといって、自閉症や発達障害だという事は無く、しっかり長時間でも椅子に座っていられる子もいます。逆に健常児でも何らかの理由で椅子に座れない事もあります。その際はこのページの内容が多少なりとも参考になると思います。

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椅子に座れない理由

自閉症や発達障害の子供たちが落ち着いて椅子に座れない理由には、「嫌なことから逃げたい」「体の筋肉の弱さ」「感覚の過敏」などの理由が考えられます。

嫌なことから逃げるため

自閉症や発達障害の子供は感覚過敏などから、健常な子供よりも苦手なことや不安を感じることが多くあります。学校などでは知能の面などから、授業の内容が理解できなかったり、勉強が難しく感じて嫌になる事も多く有ります。

嫌な事や不安を感じた場合、健常の人であれば言葉で「不安である」「これが嫌だ」など訴えたり、自分で対処をする方法を考えることができます。

しかし、自閉症などの子供の場合、意思表示などの適切なコミュニケーションが困難である事が多く、自分でその場に有った対処方法などをとる事が苦手であるため、混乱したりパニックになって立ち歩いたり逃げ出したりしてしまうことがあります。

また、椅子に座ると作業や授業をさせられるという考えから、椅子に座ること自体が嫌な事になってしまっている場合もあります。

体幹機能が弱いため

体幹とは体を支えるための機能で、一般的には主に胴体に位置する筋肉を指す事が多いです。体幹機能が弱いと姿勢の維持が難しくなったり、体を動かす際に安定せず動作がぎこちなくなったりします。

自閉症や発達障害の子供は全身の筋肉の発達が遅れている事が多く、体幹機能も弱い傾向に有ります。

体幹機能が弱いと、着座をした際に同じ姿勢をとり続けるのが難しい為、ソワソワと動いたり、頻繁に体の位置を変えたり、立ち上がったりしてしまうことがあります。

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自閉症や発達障害の姿勢保持と姿勢の悪さ| 発達障害-自閉症.net

集中が出来ない

自閉症や発達障害の人には周囲のことが気になってしまい、集中するのが難しい事があります。特にADHD(注意欠陥・多動性障害)などでは、不注意や集中力の欠如などの特徴が見られる事があります。

集中が出来ない理由には、感覚過敏などから感覚的に苦手な音や物が目に入ってしまう、複数の情報が一度に受け取ってしまい混乱してしまう、興味を示すものに注意が向かってしまう、視界に入る動くものを気にしてしまう、考えが別のこと(今日の晩御飯や、遊びたいことなど)に向かってしまうなどがあります。

また、仲の良いお友達や気になる子遊びたくなってしまい、話しかけたり近寄ってしまったりする事もあります。

苦手な人が居る


同じ教室内や環境などに苦手なお友達や嫌いな先生などがいると、不安になってしまい落ち着けずその場から逃げるために立ち歩いてしまうことがあります。

私達も人間なので同じ教室や職場などに苦手な人や嫌いな人がいた経験が有ると思います。私達は苦手な人や嫌いな人が居ても、適度な距離をとったり、必要の無いコミュニケーションは行わない、相手の気に触るようなことをしないなど、適切な対処を行うことが出来ます。

しかし、自閉症や発達障害の子供達はその場に有ったコミュニケーションを取ったり、適切な対処方法の取り方がわからず、その場から離れようとしてしまうことがあります。

テーブルや椅子が体に合わない

着席するテーブルや椅子のサイズが体に合わなかったり、座った感触が苦手で有ると椅子に座るのが苦痛となり、落ち着けず着座を続けることが難しくなります。

自閉症などの発達障害の子供は体の筋肉の発達が弱かったり、様々な感覚過敏から椅子や机の座った感覚や体に当たる部位の感覚が苦手である事があります。

座った感覚が苦手な場合も落ち着かなくなってしまうので、違う材質の椅子を使用したり、クッションやカバーなどをかけて感覚を和らげてあげる必要があります。

足が正しく床に付かない際も、体が支えられなくなったり、足がぶらぶらしてしまったりして落ち着かなくなる事も有ります。

座っている理由がわからない


自閉症や発達障害の子供は現在の状況や今後の状況を考えたり予測したりすることが苦手です。そのため、漠然と「座っていなさい」と言われても「いつまで座ればよいのか」「なんのために座るのか」「座って何をすればよいのか」などがわからず、混乱して不安になってしまう事があります。

私達でも「座ってお待ちください」と言われて10分以上そのままだと、「相手に忘れられているのではないか?」と不安になったり、場合によっては待たされてイライラとストレスを溜めてしまうとおもいます。

人が多いところが苦手

聴覚の過敏や視覚の過敏などから、人の多い場所が苦手だという場合が有ります。聴覚が過敏であると音や話し声が大きく聞こえてうるさいと感じたり、複数の音や声が同時に聞こえて混乱する場合があります。

視覚が過敏であると光などをまぶしく感じるほか、沢山の人が動いてる様子が全て目に飛び込んでしまい、これも混乱したり落ち着かなくなってしまいます。

視覚や聴覚の過敏を持っていると、1つの部屋に多くのお友達が居る学校や幼稚園などの教室の環境は非常に辛い場所となっている可能性があります。そのため結果として落ち着けず立ち歩いてしまったり、嫌な環境から逃げようとして席から離れてしまうという事が考えられます。

また、似たような例として、学校などで「おはようございます」「さようなら」「いただきます」「ごちそうさま」などみんなで行う挨拶や掛け声が苦手で、挨拶の時間前になると落ち着かなくなったりパニックになってしまう子供を見たことがあります。

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自閉症や発達障害の感覚過敏とは| 発達障害-自閉症.net

注意欠陥・多動性障害である

注意欠陥・多動性障害(ADHD)とは「多動性」「不注意」「衝動性」の症状を特徴とする行動障害です。

注意欠陥・多動性障害には「多動性・衝動性優勢型」「混合型」「不注意優勢型」の3つに分類され、「多動性・衝動性優勢型」の特徴が見られると、じっと座ることが苦手であったり、突発的に動き出したりしてしまうことがあります。

注意欠陥・多動性障害は自閉症や発達障害の子供に見られる事もあり、近年では注意欠陥・多動性障害に見られる特徴は自閉症スペクトラムの広汎性発達障害の一部として扱おうという考え方も出ています。

また注意欠陥・多動性障害は過去に「注意欠如・多動症」と呼ばれたり、多動の面だけを捉えた部分で「多動症候群(過活動症候群)」と呼ばれた事もあります。

多動の特徴を持っている子の中には食事時の着座も難しく、一口食べるとそのあたりを走り回り、暫くするとま椅子に座って一口食べてまた走りまわる・・・といった行動をとる子供もいます。

椅子に座れない場合の対処法


自閉症や発達障害の子どもがじっと椅子に座るのが難しい場合には、何らかの理由や原因があると考えられます。その際の代表的な対処法を調べてまとめてみました。

集中できる環境を作る

子供が落ち着いて椅子に座れるようにするために一番大事なことは、本人が集中して着座できる環境を作ることです。

気になってしまう物や人などがある場合には、遠ざけたり見えない位置に移動しましょう。
音や光が気になってしまう場合には、イヤーマフをつけたりサングラスなどを使う方法もあります。周囲が気になってしまう場合には個室で行ったり、机に衝立やパーティションをつけるなどの対策で落ち着けるようになります。

座る目的や座る時間などを教える

座って勉強や作業を行う際には、座る目的や、いつまで座っているのかを教えて理解してもらう必要があります。目的や時間がわからないと不安で混乱してしまいますが、理解ができると見通しをつけることができます。

座るのが苦手な子の場合には、5分ずつや10分ずつなど短い時間設定で座る時間をつくり、徐々にその時間を長くしてくと効果的です。

手順などを伝える

座って勉強や作業を行う際は、行う作業や勉強の手順を教えて理解してもらうのも重要です。座るのが苦手に見える子でも、実際は座るのが嫌なのではなく、何を行っているのかがわからず立ち歩いてしまう場合もあります。

また、勉強や作業がわからず困っている際には適度な手助けやヒントを与え、嫌になって途中で投げ出さないように助けてあげるのも必要です。

体幹を鍛える


体幹が弱い場合には体幹を鍛えることで、正しい姿勢で椅子にも安定して座れるようになります。

体幹を鍛えるには方法にはバランスボールやトランポリンなどで全身の体を使って運動をしたり、ラジオ体操や体幹トレーニングなどでも効果があります。また公園のブランコやジャングルジムやアスレチックなども、遊びながら体幹や全身の筋肉を動かして鍛える事が出来るので効果的です。

座りやすい椅子や机を使う

椅子や机が体に合っていない場合には、本人に合った椅子や机を使用する必要があります。椅子や机は高さや幅などのサイズの他に、足が床に届くかどうか、感覚過敏の場合には体に触れる面の感触なども子供の確認してもらいましょう。

また、座りやすいように姿勢保持をサポートするクッションや、体重を分散するクッションなどもあるので、それらの補助具を使う事も効果があります。

レポシリーズ

体幹や筋力が弱い子供に対しては、腰周りや背中を支える『レポ』という座位保持椅子もあります。

こちらは有限会社でく工房さんが製作しているもので、『しっかりと骨盤が支えられること、背中はベルトの張り調整にすることで背面からも支えられること、サイズの調整ができ、その調整が簡単なこと、軽いこと、カバーの洗濯ができること』などをコンセプトに作られています。

有限会社でく工房『レポシリーズ』
レポシリーズは成長段階や用途別に数種類の製品を製作されています。

なお、でく工房さんはレポシリーズ以外にも様々な座位保持装置や訓練道具や市販品の改良などを製造製作されています。
有限会社でく工房さん

実際に座ってみた感想はこちらになります。

関連ページ
でく工房さんの座位保持椅子「レポ」シリーズに座ってみました| 発達障害-自閉症.net

苦手な場所や人から離す

何かが苦手でその場を離れようとしている場合には、苦手な物や苦手な人から離したり、見えない位置に移動するのも重要です。教室などの座席の配置でも、苦手な子を後方にして視界に入らないように考慮したりしましょう。

気分転換などを行う


長時間座っていると健常な大人でも疲れてしまいます。そのため、子供が座っていられる限度の時間になったら、リフレッシュさせる為に小休止や、簡単なストレッチなどを取らせると効果があります。

学校などでは立って答えてもらったり、前に出てきて発表をしてもらうのでも気分転換の効果が見られる場合もあります。

椅子に座って好きなことをする


すぐに立ち歩いてしまい落ち着かない子供でも、何か一つぐらいは好きな事や集中できる事を持っていると思います。そんな好きなことを行う際に少しでも着座をさせることができれば、椅子に座ることへの慣れや訓練になります。

例えばゲームを行う際には着座させる、テレビやアニメを見る際には着座させるなどです。座るのが嫌でも交換条件として「ゲームをやるなら椅子に座って」などにすると、子供もしぶしぶでも納得してくれると思います。

まとめ

自閉症や発達障害の子供が落ち着いて椅子に座れない理由には様々なものがあります。まずは子供の気持ちや置かれている状況を考え椅子に座っていられない理由を見つけて、いっしょに対処法を考えてあげることが重要になります。

椅子に座って落ち着けないのは子供が困っている証拠でもあります。学校の授業中などに立ち歩いてしまう場合には、何か原因の理由となる心当たりや、本人や学校に負担とならない対処法などを学校の先生と相談をするとよいでしょう。

なお、長時間椅子にじっと座っているということは、健常者の大人でも苦痛であります。そのため、子どもが座れないからといって無理して座らせるのではなく、本人に負担となることなく、出来る範囲で少しずつ練習していくのが良いでしょう。

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