自閉症や発達障害者の就労や就職について

   2018/03/21

自閉症や発達障害者の就労や就職について

自閉症や発達障害など障害を持った子供を持った親として一番の心配事は、学校卒業後の就労についてだと思います。

就労と言ってもどのようなものが有るのか?何をすればいいのか?分からないと思います。

そこで、就労に関連する福祉施設の種類や企業への一般就労、就労にむけて習得すべき必要な物事について調べてまとめてみました。

就労施設の種類

作業所や就労移行支援など過去から現在の法律になかで作られてきた、福祉系就労施設について調べてまとめてみました。
なお、国などの支援を受け就労継続支援などで働くことを「福祉的就労」を言います。

授産施設・授産所

授産施設・授産所とは生活保護法を元に作られた、保護施設として障害者を雇用する事業所でした。2006年の障害者自立支援法施行後は障害者自立支援法で定められた障害福祉サービスへと移行しました。

授産施設には身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法に基づいた法定授産施設とそれ以外の小規模授産施設の2種類が在りました。

作業所

作業所とは障害を持った人に対し日中の活動の場を与える目的で作られた福祉施設で、小規模作業所とも呼ばれていました。2006年の障害者自立支援法の施行に伴い、作業所は地域活動支援センターⅢ型に移行ました。

作業所では軽度な作業の提供、就業への訓練、余暇の過ごし方の提供、交流の場としての目的が有りました。

なお、現在でも古くから障害者支援に係わっていた人などは、就労継続支援施設にたいして作業所と呼ぶ事も有ります。

地域活動支援センター

地域活動支援センターとは障害者自立支援法の元での福祉施設で、障害などで働くことが難しい障害者の日中活動を提供する場となっています。

地域活動支援センターには、精神保健福祉士などの専門職員を配置して捜索活動や生産活動を行う『I型』、入浴や食事の提供や機能訓練やレクリエーションなどを行う『Ⅱ型』、障害者自立支援法以前の作業所と同様の『Ⅲ型』の3種類が存在します。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターとは障害者に対する専門的な職業リハビリテーションを行う施設として、全国47都道府県に設置され、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構により運営されています。

地域障害者職業センターでは公共職業安定所(ハローワーク)と密接な連携を持ち、希望する職業の評価やその職業に向けた訓練、作業体験や就業準備の訓練、職場へジョブコーチの派遣、障害者を雇用する事業主に対する相談や援助を行っています。

就労継続支援A型

就労継続支援A型とは障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスで、雇用契約を締結して就労の機会の提供や、就労に必要な知識や技能の向上に向けた訓練を行います。
基本的には通常の雇用契約に基づく就労が可能な障害者が対象となります。

主に一般企業に一度は就職したものの退職をしてしまった障害者、就労移行支援事業を使用したものの企業の雇用に結びつかなかった障害者、特別支援学校卒業時に就職活動を行ったものの企業から雇用を受けられなかった人が対象となります。

就労継続支援A型は、雇用契約を結び、最低賃金以上の給料を受けられるという特徴が有ります。平成27年度の厚生労働省の資料によると、就労継続支援A型利用者の平均月給は67,795円で、時給換算では769円となっています。

就労継続支援B型

就労継続支援B型とは障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスで、雇用契約に基づいた就労が困難である障害者を対象にしたサービスです。

主に年齢や体力の面で一般企業への雇用が困難となった障害者、50歳以上や障害基礎年金1級を受給している障害者、就労面での課題や問題があり一般的な雇用契約の締結が困難な障害者を対象にしています。

就労継続支援B型は、雇用契約を締結せず、授産活動や作業を行い賃金を受けるという特徴があります。平成27年度の厚生労働省の資料によると、就労継続支援B型利用者の平均月給は15,033円で、時給換算では193円となっています。

就労移行支援事業

就労移行支援事業とは、原則18歳以上65歳未満の就労を希望している障害者に対して、職場体験や実習などを行い、就労に必要な知識や能力の訓練を行ったり、就労に対しての相談支援などを行う通所の事業所です。基本的に利用できる期間は2年間となっています。

対象は身体障害、知的障害、精神障害など手帳を持つ障害者のほか、発達障害者や指定された難病など医師や自治体の診断が出た人でも利用することが出来ます。

支援内容はその事業所や対象者によって異なりますが、基本的には基礎体力の向上、集中力や持続力の向上、適正や課題の把握、マナーや挨拶や身なりの習得、職場見学や実習、求職活動、トライアル雇用の斡旋などを行います。

就職後に半年ほどのフォローを行う事もあります。

就労移行支援(養成施設)

就労移行支援(養成施設)とは、就労移行支援事業の中でも視覚障害者に対し「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」に基づいて、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師養成のための職業訓練を行う事業所です。

一般就労

一般就労とは障害者または難病等を持った人が、一般の企業に就職することを言います。

現在は障害者雇用率制度として、身体障害者および知的障害者について、一般の労働者と同じ水準での労働が可能となる機会を国が企業や会社などに課しています。障害者雇用率は企業の形態として若干の差は有りますが、約2.0%となっています。

障害者雇用率制度により、現在では障害を持っていても民間企業に入社できる可能性も多くなっています。また、労働者が100人を超える企業において障害者雇用率を達成できないと障害者雇用納付金の納付が義務付けられているので、企業としても障害者の雇用を行いたいという思いがあります。

平成27年度の厚生労働省の資料によると、全国社員50名以上の企業での障害者雇用総数は約45.3万人。ハローワークでの障害者紹介就職件数は約9万件となっています。ハローワークでは「障害者雇用枠」として障害者向けの就職雇用枠が別途用意されています。

就労に必要とされる能力や物事

特別支援学校の高等部で就労に向けて頑張っている子供で重要とされていることは、自主通勤能力、コミュニケーション能力、作業への理解や集中力、身なりや清潔感などです。

自主通勤能力

法律(障害者総合支援法)の元で運営される就労サービスは送迎加算が付くので、事業所が自宅までの送迎を行う場所が殆どです。しかし、一般企業への就労の場合には職場まで自分で通勤しなくてはいけません。

職場が家から近い場所なら徒歩や自転車通勤も可能ですが、電車やバスなどの公共機関を利用して通勤する場合は、電車やバスの利用方法だけでなく、事故などで遅延した場合に対処する能力などが必要となります。

通勤時に体調不良や事故などに巻き込まれた場合には、家族や職場に携帯電話やスマートフォンのアプリなどで連絡を入れることが出来なくてはいけません。

一般の高等学校などでは自分で通学していると思いますが、特別支援学校では通学バスでの送迎や保護者の送迎も多いと思います。就職を目指す場合には在学中から自主通学の練習を行っておくのも良いでしょう。

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コミュニケーション能力

コミュニケーション能力は就職のためだけではなく、社会に出た際に必要となる能力です。就労においては社員間やお客さんへの挨拶、業務情報や作業内容の情報共有、作業の「報告・連絡・相談」に必須となります。

特に「出来ました・終わりました」「わかりません」「何をすればよいのですか?」の受け答えが出来ないと就労は難しいと保護者や学校の先生から耳にする事が多いです。

作業への理解や集中力

就労や就職を行うに当たっては、作業の理解が無くてはいけません。何を作っているのか、何をサービスするのかが分からないと作業を行う目的や意味がなくなってしまいます。また、作業を理解することでやりがいや目標を得ることができ、本人のやる気も向上します。

集中力においては一定の時間就労を行うという意味で重要視されます。机上の作業の場合は椅子に座っていられるというのも条件になる事があるようで、多動の特徴を持つ人は椅子に座り作業を行うという訓練を行っている人もいます。

身なりや清潔感

就労の中でも食品の製造を行う場合や、接客など一般のお客さんと係わる場合は身なりや清潔感の習得が必要になります。身なりと言ってもおしゃれな格好をするわけではなく、「ボタンを閉める」「季節感に有った服装をする」「下着を出さない」「靴のかかとを踏まない」程度のことですが、感覚過敏や衣服へのこだわりが有る場合は対応が難しい場合も有ります。

清潔感で特に言われるのが、唾やよだれの処理、鼻くそをほじる、ズボンや下着の中に手を入れるなどです。

これは見た目が良くないばかりか、衛生上も好ましくありません。唾やよだれが垂れてしまう場合には自分で拭くことが出来るようになると好ましいです。鼻をほじったりズボンや下着に手を入れてしまう場合には、鼻はティッシュを使って触る、人前では行わないなどの対応を取る必要が有ります。

自閉症や発達障害の人が向いている職業

自閉症の人や発達障害の人が向いている職業には「芸術家」「プログラマー」「工場での流れ作業やライン工」「スーパーでの品出し」「清掃作業」などと言われていますが、どの職業も単純に作業を行えばよいというだけでは有りません。

芸術家は自分でアイデアが出せないと作品は作れませんし、プログラマーなどはプログラム言語の理解や作るシステムの仕様の理解、流れ作業やライン工は一定の速度での正確な作業の必要性、品出しでは似たような商品を探し出し綺麗に並べる、清掃作業では細かいゴミまで綺麗に取り除くなどの能力や理解が必要となります。

自閉症や発達障害の特徴が人それぞれのように、向いている職業も千差万別です。障害を持った人に向いている職業と言うのは存在しないと言っても過言では有りません。

就労施設では実際に就職するまでに何回かの実習を行うことが殆どです。この実習で本人に合っているのか、続けることが出来そうなのかを見極めるのも重要となります。

まとめ

自閉症や発達障害を持った人の就労や就職と言っても、一般企業から福祉施設まで数多く有ります。

大事なことは一人一人の障害や特徴などを考え、性格や長所短所、フォローが必要とされる部分などを考えてそれに適した職業や、理解を得る事のできる職場を選ぶことです。

足りない部分については支援学校での実習や、就労支援を行うサービスなどで訓練し、実際の就職までに少しでも出来ることを増やすと良いでしょう。

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