自閉症スペクトラムや発達障害と二次障害

   2019/04/08

自閉症スペクトラムや発達障害と二次障害

自閉症や発達障害を持つ子供に発生しやすい二次障害。多くの発達障害児は何らかの二次障害を抱えているといわれています。
では二次障害とはどのようなものなのか、このページで詳しくまとめてみました。

自閉症や発達障害の二次障害とは

二次障害とは、本来の症状である自閉症や発達障害などの症状とは別に、二次的な問題・行動・症状が発生してしまうことです。二次障害は本来の症状に付随して発生する場合や、全く別の問題から発生することが有ります。

基本的には本来の障害である発達障害が直接の原因ではなく、周囲からの影響により後天的な二次障害へと発展します。

二次障害には外部や周囲へ問題行動の出てしまうタイプと、本人の内面に問題の出てしまうタイプが有ります。前者の二次障害には「家庭内暴力」「暴言」「非行」など。後者の二次障害には「うつ病」「引きこもり」「対人恐怖症」「不安障害」等が有ります。

また、本来の発達障害と共に全く別の症状や疾患が生じる場合と、発達障害本来の特性やこだわりが著しく強くなり発生する二次障害も有ります。前者には「うつ病」「統合失調症」等が有り、後者には「衝動性」「パニック」「偏食」「睡眠障害」等が有ります。

知能に問題は無く目立った特長が見られない軽度の発達障害の子供の場合、二次障害の症状がでてから初めて発達障害だったと気づかれる事も有ります。

二次障害の発生する原因

二次障害の発生する原因には本人が抱えている不安や問題に対し、周囲の人が理解することができず対応やサポートが得られない為に「自分は駄目だ」「自分には出来ない」と思い込んで、心身への問題が出てしまうことです。周囲から「あいつは変わり者」「わがまま」「ふざけている」などのレッテルを貼られてしまったり、本来一番の理解者である家族から理解を得られなかったりするのも大きな原因になります。

学校などで発達障害に理解を得られないと、「他の子はできるのになんで貴方はできないの?」「何度教えたら分かるの?」などと何度も怒られたり注意を受けるうちにだんだんと気持ちが落ち込んでしまい二次障害へと繋がることが多く見られています。そのため二次障害は主に発達障害の中でも知能に遅れが無い、アスペルガー症候群や高機能自閉症、学習障害などの子供に多く見られる傾向が有ります。

自閉症の特徴として「社会性の困難」「コミュニケーションの困難」と言うものがあり、他人との摩擦や折り合いの困難、他人への恐怖、社会での生き辛さなどから心身に支障をきたして二次障害を発症する事も有ります。

「自分は駄目だ」と思い込んでしまうと「うつ病」などの精神疾患になりやすく、「自分は頑張っているのに周囲が理解してくれない」と思うようになると「非行」や「暴力行為」などに繋がることが有ります。

主な二次障害の代表的な原因には「イジメ」「虐待」「自己否定」「不安」「成功体験の少なさ」「周囲からの理解を得られない」「学習のつまづき」「コミュニケーションの困難」「対人関係」「不適切な指導や教育」「無理な要求」「周囲からの必要以上の期待」「家庭内の問題」「育児放棄(ネグレクト)」などが有ります。

主な二次障害の種類

個々では様々ある自閉症や発達障害に見られる二次障害についてまとめてみました。

うつ病(鬱病、欝病)

うつ病とは、気分障害の1つに分類される障害で、「抑うつ」「意欲や興味の低下」「思考力低下」「不安や悲しみを感じる」「食欲の低下」「睡眠障害」などの症状が見られます。日本では代表的な精神障害や精神疾患です。「鬱病」「欝病」などと漢字で表記されることも有ります。

双極性障害(躁うつ)

双極性障害とは、躁状態(そう状態)と、鬱状態(うつ状態)を繰り返す気分障害です。「躁うつ病」「双極性感情障害」「双極症」とも呼ばれています。

不安障害

不安障害とは、過剰なまでに恐怖を感じたり、物事に対して心配になってしまう障害です。症状には「不安感」「恐怖感」「イライラ」「緊張」など精神的症状のほか、「不眠」「下痢」「頭痛」「動機」「発汗」などの身体的症状が見られることが有ります。

パニック障害

パニック障害とは、予期しないパニック発作が繰り返して発生する障害です。パニック障害は不安障害の分類の一つとでも有ります。症状には「パニック発作」「心拍数や呼吸回数の増加」「動悸」「息切れ」「めまい」等が有ります。

強迫性障害

強迫性障害とは、何かの行為や思考を自分の意思に反して何度も繰り返してしまう障害で、「強迫神経症」と呼ばれる事も有ります。強迫性障害には同じ行為を繰り返してしまう「強迫行為」と、同じ思考を繰り返してしまう「強迫観念」が有ります。強迫性障害の症状には、汚れが気になる「潔癖症」、家の戸締りを何度も確認してしまう「確認強迫」など様々なものが有ります。

パーソナリティ障害

パーソナリティ障害とは、一般的な大多数の人とは違う行動や思考を持ち、その違いが極端に偏ってしまい社会生活をおくる上で本人が困ったり、周囲の人に影響が出てしまう障害です。パーソナリティ障害は「人格障害」と呼ばれていた事も有ります。

反社会性パーソナリティ障害

反社会性パーソナリティ障害とは、法律や規則やルールなどを軽視し規則を守れない、嘘をついたり、自分のいいように人を騙すなどの特徴が見られる障害です。反社会性パーソナリティ障害の患者は子供の頃に「行為障害」の症状が見られます。

行為障害(素行症)

行為障害(素行症)とは、攻撃的や反抗的であったり反社会的な行動をとってしまい、これらの行為が年齢相応の規範や規則を逸脱してしまう障害です。主な症状には「攻撃性」「物の破壊や放火」「嘘などをつく」「窃盗などを行う」「ルールや規則の違反」等が有ります。行為障害は「素行症」と呼ばれる事も有ります。

反抗挑戦性障害(反抗挑発症)

反抗挑戦性障害とは、幼児期において怒りにより6ヶ月以上「反抗」「挑戦的」「不服従」などの状態が見られる精神障害です。反抗挑戦性障害は「反抗挑発症」と呼ばれる事も有ります。

愛着障害

愛着障害とは、通常幼児期に両親などから得られる愛着が、虐待や育児放棄などで得る事が出来ない場合に発生する障害です。愛着障害の症状には「相手に対する思いやりの欠如」「人間関係形成の困難」「衝動的行動」「反抗的行動」「破壊的行動」等が見られます。

アダルトチルドレン

アダルトチルドレンとは、親からの虐待や育児放棄、家族問題を抱えた家庭での成長などにより、心にトラウマを持ってしまった障害です。アダルトチルドレンの症状には、「人間への依存」「虐待」「暴力行為」「自傷行為」「様々な神経障害」「様々なストレス性障害」等が見られます。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)

PTSDとは、非常に強い精神的な衝撃を受けることで、心的外傷(トラウマ)を負ってしまう状態です。PTSDには事故や災害などの急性なことが原因の場合と、児童虐待などにより繰り返し受ける心理的外傷が原因の場合が有ります。症状には「不安」「不眠」「フラッシュバック」「ショックやパニック」「PTSDの原因となった物事への極端な回避」等が見られます。
PTSDは「心的外傷後ストレス障害」とも呼ばれます。

フラッシュバック

フラッシュバックとは、過去に受けた強い心的外傷(トラウマ)が、後になり突然鮮明に思い出されたり、夢などに現れる状態です。PTSDの主な症状でも有ります。

関連ページ
フラッシュバックやタイムスリップ現象- 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net

社会不安障害(対人恐怖症)

社会不安障害とは、対人場面において過度な緊張や不安を感じ、動悸や息切れや吐き気などの身体症状が発生し、非常に苦痛を感じたり社交的な場所を避けてしまう障害です。以前は「あがり症」「対人恐怖症」などとも呼ばれていました。社会不安障害は社交時に「会話にうまく入れない」「緊張して人と話せない」「場に合ってないのでは」「他人から攻撃されるのでは」などの不安やストレスを感じることが原因とされます。

睡眠障害

ストレスや不安などの心理的要因や身体的な不調などから、長期にわたって正常な睡眠をとる事が出来ない障害です。睡眠障害の代表的な症状には「不眠症」「過眠症」「睡眠時無呼吸症候群」「悪夢」「夜泣き」「夢遊病」「夜尿症」等が有ります。

関連ページ
自閉症や発達障害の睡眠問題や睡眠障害 | 発達障害-自閉症.net

摂食障害

摂食障害とは、食事に関して重度な問題が発生する障害です。摂食障害の症状には「拒食症」「過食症」「特定の食べ物のみを食べる」「偏食」等が有ります。

心身症

心身症とは、不安・緊張・ストレスなど精神に関する問題から、頭痛や腹痛や下痢など身体的な疾患が発生する障害です。心身症の症状には「過敏性腸症候群」「胃潰瘍」「神経性胃炎」「狭心症」「不整脈」「偏頭痛」「生理不順」「気管支喘息」「蕁麻疹(じんましん)」「円形脱毛症」などが有ります。

場面緘黙症

場面緘黙症とは、親しい友人や家庭内など安心していられる場面では会話ができるのに、幼稚園や学校や職場など不安を感じる特定の場面で全く話すことが出来なくなる障害です。主に幼児期に発生する症状です。

統合失調症

統合失調症とは、幻聴や幻覚や妄想などが発生し思考が混乱してしまう精神疾患で、それらの影響により他人との交流や社会生活において困難を生じる障害です。以前は「精神分裂病」と呼ばれていました。

自傷行為

自傷行為とは、自らの意思で自分を傷つける行為です。自傷行為には、「ストレス」などから自分を噛んだり叩いたり壁に頭を打ち付けたりするほか、孤独感やパーソナリティ障害などの精神疾患からリストカットなどを行う事も有ります。

関連ページ
自傷行為の原因と対処法- 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net

他害行為・他障行為

他害行為・他障行為とは他人に対して危害を与えてしまうことです。他害行為・他障行為は「ストレスや不満」「八つ当たり」「相手への意思表示」などのほか、「行為障害」など精神疾患から起こる場合も有ります。

関連ページ
他害・他傷・暴力行為の原因と対処法- 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net

不登校

不登校とは学校に登校が出来ない状態で「登校拒否」とも呼ばれています。不登校は「学業の不振」「学校や教師への不満」「イジメ」「友人関係の問題」「うつ病、パニック障害、統合失調症などの精神疾患」「発達障害」「知的障害」などが原因となります。

文部科学省では不登校を「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童・生徒が登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるために、年間30日以上欠席した者のうち病気や経済的な理由による者を除いた者」と定義しています。

家庭内暴力

家庭内暴力とは、20歳未満の子供が同居する親や祖父母や兄弟にたいして断続的に暴力を振るう状態です。家庭内暴力には「相手に怪我を負わせる」「暴言を吐く」「家具や壁などの家を破壊する」等が有ります。

引きこもり

引きこもりとは、自宅や自室に篭り外部に出てこない状態です。引きこもりは特定の精神疾患や障害ではありませんが、「広汎性発達障害」「不安障害」「適応障害」「パーソナリティ障害」「統合失調症」などの精神障害と関連が深いと考えられています。

厚生労働省では「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態。時々は買い物などで外出することもあるという場合もひきこもりに含める」と定義しています。

チック

チックとは精神的な問題から、突発的に本人の意思とは関係なく身体の一部が動いてしまう障害です。チックには手足が動いたり顔の一部が動いてしまうなどの「運動チック」と、不意に言葉や声が出たり悪い言葉を発してしまうなどの「音声チック」が有ります。

適応障害

適応障害とは、特定の出来事や状況が強い苦痛となり、それが原因で気持ちや行動などに症状が現れる障害です。ストレスにより不安や抑うつ気分になり、他人との接触を避けたり、仕事や勉強や日常生活などに支障をきたす事もあります。

世界保健機構の診断ガイドラインでは「ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」と定義されています。

依存症

依存症とは精神に作用する物質の摂取や、快感や高揚感を得る行為を繰り返し行ったために、それらの刺激を得ないと身体的・精神的に問題が生じてしまう状態です。

主な依存症には「薬物依存(薬物中毒)」「タバコ依存(ニコチン中毒)」「アルコール依存(アルコール中毒)」「ギャンブル依存」「テレビ中毒」「ゲーム依存」「ネット依存」「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)依存」「性依存症」等が有ります。

二次障害を予防するには

二次障害を予防には色々な方法がありますが代表的な「理解者を作る」「規則正しい生活」「ストレスや不安の軽減」「経験を通し様々なことを学ぶ」「医者や専門家との相談」の5項目について説明します。

理解者を作る

二次障害に予防には障害者本人の状況や特性などをよく知る理解者が必要になります。この場合最適な理解者は両親になると思いますが、家庭内の状況がよくない場合などは学校の先生や支援者の手助けが必要になります。

理解者は本人が困っている場合には適切に声をかけて導いたり、生活環境の改善や調整などを行い、子供の安全と安心を確保し、不得意な分野のフォローが必要となります理解者を得る事で、不安や困ったことを相談したり汲み取ってくれストレスを溜め込むことが少なくなります。

規則正しい生活

何より大事なことは規則正しい生活をおくり、心身共にストレスを溜め込まないことです。ストレスを溜め込むことで体に疲れが出るほか、精神的にも大きな問題が発生し様々な精神疾患に繋がる恐れが有ります。

規則正しい生活をおくり適度の運動や余暇を過ごすことで、ストレスを溜め込まず落ち着いて毎日を過ごすことが出来ます。

ストレスや不安の軽減

二次障害とはストレスや不安によるものが大きいので、二次障害と思われる症状がでたら休息や休養を取らせる必要が有ります。

ストレスや不安の軽減方法には直接の原因を取り除いたり解決させるほか、ストレスの少ない環境を用意したり、自分からクールダウンが出来る場所などを用意すると効果的です。

経験を通し様々なことを学ぶ

発達障害の子供は様々な物事への経験が乏しいという問題が有ります。日常生活や学校生活をおくる中で様々な物事に挑戦したり、色々なことを学ぶことで二次障害のみならず今後の生活をおくっていく上で必要な事を習得することが出来ます。

様々なことを学ぶと困難に直面した際の対応方法を身につけストレス耐性が出来たり、自分に出来ること出来ないことの判断が出来るようになり、悩んだり困ったりする事も少なくなると思います。

特に二次障害を予防するという意味では、他人とのコミュニケーションスキルやソーシャルスキルも重要な学習項目の一つになります。

医者や専門家との相談

二次障害と見られる症状が現れた場合には、速やかに医者や専門家に相談する必要が有ります。症状が軽度の場合に適切な対応が取れると、二次障害まで発展せずに予防することが出来ます。

まとめ

二次障害は本人の抱える不安やストレスが原因で発生し、その種類や症状も多岐にわたります。二次障害を予防するには原因となるストレスや不安を軽減させることと、理解者の支援が重要になります。

また二次障害の対応をするだけでなく、本体の障害である発達障害にも向き合い、適切な治療やケアをする事が重要になります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket