体温調整が苦手 – 自閉症と発達障害の特徴・特性

   2019/05/25

体温調整が苦手

発達障害や自閉症の子供は体の体温調整が苦手である場合があり、体温が上がってしまいやすく下がりにくいという特徴があります。
また、服へのこだわりから季節に合った服装を着ることが出来ず、夏でも厚手の服を着ていたり寒い日でも薄手や袖・裾が短い服やズボンを着てしまうことがあります。

体温調節が苦手な理由

自律神経の発達が未熟な為

発達障害の子供は自律神経の発達が未熟である事があります。

自律神経の動きが鈍いと汗をかく機能が正しく働かず、体温が上がっても体温を下げることが出来ないために、体内に熱が篭ってしまいます。

逆に自律神経の以上や過敏などから、汗をかく機能が過剰に反応し、ちょっとの運動で大量の汗をかく子供も見られます。

発汗機能が弱く体温が上がってしまう場合には、単純に水分を取らせても汗をかくことが少ないため、体温が下がらない事もあるので注意が必要です。

なお冷たい飲み物を飲ませることで体の中から体温を下げることは効果があります。

汗がかけない子の場合には、運動後に床に寝転んだり、壁などにくっ付いたりし、自分の体温より低いところに体を当てて体温を下げる行動をとる事があります。

筋力の発達が未熟なため

発達障害の子はその特性から筋肉の発達が遅れていたり、運動が苦手なため筋肉が育ちにくい傾向があります。

筋肉は伸縮により体を動かしたり運動をしたりする働きが主ですが、体の熱を作るという目的もあります。

筋肉の発達が遅れていたり全体の量が少ない発達障害の子は、熱を生成する能力が低いため寒さに対しての体温調整が難しい事があります。

暑さや寒さを感じにくいため

発達障害の子供は様々な感覚が過敏であったり、逆に鈍かったりすることがあります。そのために暑さや寒さの感じ方が健常者と違い、実際の気温よりも暑く・寒く感じたり、逆に気温を感じ難いという場合があります。

自閉症の特徴の一つに、感覚が過敏である『感覚過敏』、感覚が鈍い『感覚鈍麻』と言うものがあります。感覚過敏であるとちょっとした暑さでも非常に暑いと感じたり、温度差などに非常に反応することが有ります。

関連ページ
自閉症や発達障害の感覚過敏とは| 発達障害-自閉症.net

感覚鈍麻であると暑さや寒さに感じにくくなってしまい、気温が高いにも関わらず暑いと感覚的に感じず体自体が熱に対応できずに熱中症になったり、逆に寒いのに感覚ではわからず体が冷え切って風邪を引いてしまう事も有ります。

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自閉症の感覚鈍麻とは| 発達障害-自閉症.net

暑さや寒さを訴えることができないため

発達障害や自閉症の子供が気温や体温の変化を感じ取っていても、自分から適切なタイミングで「暑い」「寒い」と訴えるのはとても難しいことです。そのため本人は「暑い」「寒い」と感じていても、周りの人に教えることが出来ずそのままでいる事があります。

「暑い」「寒い」と感じていても伝えられない理由には、言葉が話せなかったりジェスチャーが使えないといった根本的なコミュニケーションの問題や、言葉を話すことができても適切な意思や思いを伝えられない場合があります。

適切に言葉やジェスチャーで気持ちを表すことができても、「どの程度で伝えるべきなのか?」「暑い寒いといった要望は伝えていいものなのか」という言い出すタイミングがわからない事もあります。

そのため体温調節が難しい子の場合には周囲の大人が気をつけてあげる必要があります。

熱が篭りやすい子供の場合の場合には運動後や高温時に定期的に熱を測ったり、顔や肌が赤くなっていないか確認をすることが必要です。

また、夏場にクーラーを使う際には、定期的に体を触って冷えていないかを確認する必要があります。特に車などに乗って長時間移動する際には、クーラーに直接あたりっぱなしになってしまう事が多いので、風量を調節したり送風口の向きを代えて冷風が直接体に当たらないように配慮してあげましょう。

衣服の調整が出来ないため

発達障害の子供はこだわりなどから衣服の調整が出来ないことがあります。
夏場に長袖や厚い服を着ていても脱ぐことが出来なかったり、袖をまくることが出来ない場合があります。逆に寒い日でも薄着や半そで半ズボンでいることもあります。

衣服の調整が出来ない場合には周りの人が服の着脱を手伝うほか、エアコンなどで室温の調整をする必要があります。

保護具や補装具の使用のため

発達障害など各種障害を持っている子は、体を保護するために保護具を付けていたり、障害となっている部分を補う補装具を使用している場合があります。

癲癇発作での転倒防止や頭を打ち付ける自傷行為が見られる子はヘッドギアで頭を保護していることが多いです。体の筋肉が弱い子の場合には固定帯で筋肉の動きや関節をサポートしています。

保護具や補装具は安全を担保したり行動を行うために常に付けていることになるので、熱が篭りやすく溜まった熱が外に逃げなくなり体温が上がる原因にもなります。

体温調節が出来ないと

体温調節が出来ないと体には様々な影響が出てしまいます。

体温が上がると

体温が上がると身体面や発達障害の特性面からさまざまな影響が出ることがあります。

脱水症状や熱中症

体温が上がってしまうと熱中症を引き起こしたり、脱水症状につながる事があります。
熱が体内に篭りやすい子の場合には、ぼーっとしていたり、顔などが赤くなっている場合には体温を測りましょう。

癲癇発作や熱性痙攣

癲癇を持っている子の場合、急激な体温の上昇が発作の原因となることがあります。

年齢の小さい子の場合には熱性痙攣にも注意が必要です。
熱性痙攣とは主に発達障害の有無を問わず生後半年程度から5歳ぐらいまでに見られる痙攣や意識障害で、年齢の低い子供の脳が体温の上昇に耐えられず引き起こされる病気です。熱性痙攣は体温が38度以上になると引き起こされる可能性が高くなるので気をつけましょう。

意識の低下

熱が上がることでぼーっとしてしまい、反応が鈍くなったり、動作が遅くなる事があります。

ストレス・イライラ・パニック

ストレスを感じやすい子の場合には、暑さ、湿度、汗、などの不快感から、ストレスが溜まりイライラする事があります。
ストレスが溜まりすぎてしまうと、自傷行為や他害行為に繋がることもあり、場合によってはパニックを引き起こすこともあるので注意が必要です。

睡眠不足

睡眠中に体温が篭って暑くなって眠りが浅くなったり、暑さで夜中に目が覚めてしまうという事があります。
また、睡眠中の寝汗の不快感で起きてしまう事もあります。

睡眠不足になると生活リズムが狂い、イライラやストレスが溜まりやすくなったり、転換発作を引き起こす原因にもなるので注意が必要となります。

体温が下がると

体温が下がると体が冷えてしまい、風邪や下痢などの原因に繋がります。また、病気にならなくても体がだるくなったりする事があるので注意が必要です。

気温の低い冬場はもちろんの事、夏場のクーラーや扇風機の当たり過ぎも体に良くありません。また、夏場の暑い場所から急に涼しい部屋に入ったり、その逆に涼しい場所から暑い野外に出る際には、急激な温度差にも気をつける必要が有ります。

体温調整が難しい子への対応方法

体温調整が難しい子に対しては子供の表情や様子を見て、顔の火照りやぼーっとする様子、汗のかき具合などを確認してあげる必要があります。言葉でのやり取りができる子に対しては「暑くない?」「寒くない?」とそのつど声をかけて確認してあげましょう。

中には汗をたくさんかいているのに「暑くない」、明らかに寒い状況なのに「寒くない」と答えるような子もいるので、周囲の人が状況を見て適切な温度管理や衣服の調整をしてあげましょう。

重度の障害を持っている子や車椅子に乗っている子などは筋肉や脂肪が少なく体温の保持が難しかったり、自分で動くことができず暑さや寒さへの対応ができません。そのため特に気温や体温への確認を行いましょう。

温度計を用いる

数字が読める子の場合には温度計を用いる方法も効果的です。
具体的に体感温度で暑い寒いがわからない場合でも、温度計を用いることで数値として暑さや寒さの目安を意識することができます。

発達障害の子はあいまいな値の理解が難しい場合があります。特に気温や温度は目に見えず、自分で感じる感覚しかありません。
しかし、温度や気温といった数値化した値を用いることで、理解がしやすくなります。

温度もルールを作り、20度以上ならコートやジャンバーなどのアウターを脱ぐ、25度以上なら半そでにするなど決めると子供も衣服の調整が行いやすくなります。

ニュースや新聞での天気予報も活用し、事前に明日は気温が25度になるから「Tシャツで」などと伝えておくと、子供も気温や服装への見通しを持つことができると思います。

まとめ

体温の調節が苦手な理由には様々あり、その子に応じて対応を取ることが必要です。また、周りの大人が気温、体温、服装などを確認して調節する事も重要となります。

体温を下げる場合には、日陰で風通しの良い場所やクーラーの効いた場所での休憩、ネッククーラーを巻く、保冷剤を手渡す、冷たい飲み物で体温を下げるのが効果的です。

自閉症の子供たちは水遊びも大好きなので、プールや水風呂に入って遊びながら体温を下げるのも良いでしょう。

体温が上がると熱中症などで体調不良になるほか、癲癇の発作を引き起こすきっかけになるので注意が必要です。

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