自閉症と逆向きバイバイ・逆さバイバイ

   2017/05/07

自閉症と逆向きバイバイ・逆さバイバイ

自閉症の子供の特徴の一つに手の甲を相手に向けてバイバイする「逆さバイバイ」「逆向きバイバイ」「逆バイバイ」と言うものが有ります。
自閉症の子供が必ず行うというわけでも無く、逆さバイバイを行うから自閉症というわけでもありませんが、自閉症の子供が行う代表的な特徴になります。

ではなぜ自閉症の子供は「逆さバイバイ」「逆向きバイバイ」を行うのでしょうか。様々な観点から調べてまとめてみました。

バイバイとは

まずバイバイとは、英語で「さようなら」を意味するBye Byeからきています。
現在の日本でも比較的多く使われる挨拶で、「バイバイ」の言葉と一緒に相手に手を振るのが一般的です。

バイバイのジェスチャーは日常生活でも多く見かける動作の一つで、両親や兄弟や親族、ママ友などとの交流で目にすることから、健常児の場合は生後10ヶ月頃から1歳半前後でバイバイと手を振る事が出来るようになるといわれています。

通常のバイバイだと相手に手のひらを向けて行いますが、逆さバイバイの場合は手の甲を相手に向けて(手のひらを自分側に向けて)手を振る動作になります。

自閉症の子供が逆さバイバイを行う理由

自閉症の子供が逆さ向きのバイバイを行う理由として、自閉症の特徴などからいくつかを考えることが出来ます。

手の感覚が鈍い

自閉症などの発達障害の子供は体の感覚が鈍い事が有ります。
そのために手のひらの向きを相手側に向けるのが難しかったり、本人としては相手に向けているつもりであることも考えられます。

この場合は指先の感覚も鈍い事が多く上手に動かすのが難しいため、指が閉じた状態や、逆に指が大きく広く開いた状態など、自然な感覚で指が開いていないことが多く見られます。

関連ページ
自閉症の感覚鈍麻とは| 発達障害-自閉症.net

相手の真似が難しい

バイバイも最初は相手が行っている様子を見て、真似をする事で覚えます。
しかし、上記項目のように体の感覚などが鈍いと、相手の仕草の真似をしているようでも上手に行えないことが有ります。

東田直樹氏の著書『自閉症の僕が跳びはねる理由』では、「手のひらを自分に向けてバイバイするのはなぜですか?」との質問に「自分の体が良くわからず、相手のバイバイを真似するのが難しい。ある日鏡をみて初めてバイバイの際に手のひらが自分の方向を向いていることに気が付いた」と書いています。

相手の真似をしているため

上記の内容とは逆になりますが、通常のバイバイは相手側に手のひらを向けて行います。その為、バイバイをされる側は相手の手のひらが見えている状態となります。

この「手のひらが見えている」と言う部分を強く意識して真似をしている場合、自分も手のひらが見えている状態が正しいと思い、自分の見える側に手のひらを向けてバイバイをしている事も考えられます。

手のひらを見るのが好き

自閉症の子供の特徴には手をひらひらとさせて楽しむことが有ります。

手をひらひらさせるのが好きな理由には、「感覚遊び」「常同行動」「動きを眺める」「気持ちを落ち着かせる」などが有ります。

その為、バイバイを促されて手を振っている様でも、本人としてはバイバイをしているわけではなく手のひらを眺めて動きなどを楽しんでいる場合も有ります。

関連ページ
自閉症は手をひらひらさせる- 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net

手のひらが自分に向いているのが自然なため

一般的に生活している場合、手のひらは自分の向きを向いていることがほとんどです。
その為、小さい子供などの場合は手のひらを自分に向けることが体の動きとして自然であるので、無意識に手のひらを自分に向けている事も考えられます。

挨拶として理解をしていない

バイバイを挨拶やコミュニケーションとして理解していない場合には、相手に促されてなんとなく似たような行動を取っている事も有ります。

自閉症の子供はコミュニケーションをとることが苦手であるという特徴も有ります。その場合にはバイバイの仕草自体に意味が有ると理解するのが難しく、相手に手のひらを向けることに意味を理解していない事が考えられます。

逆向きバイバイの研究資料

逆さバイバイについて「逆向きバイバイの普通バイバイへの発達」という興味深い研究資料も有ります。
リンク逆向きバイバイの普通バイバイへの発達(PDFファイル)

この資料からは以下に示す事が読み取れます。

逆さバイバイを行う子供

逆さバイバイは自閉症児だけでなく、知的障害児にも見られる特徴であること。
つまり、逆さバイバイを行うのは自閉症特有の傾向ではなく、知能の発達が未熟であることが大きな理由の一つと考えられます。

逆さバイバイを行う年齢

逆さバイバイを行い始めた発達年齢(実年齢ではなく知的水準としての年齢)は平均1歳半であること。
これは健常児が生後10ヶ月から1歳半ぐらいまでにバイバイが出来るようになるのと、非常に近いと考えられます。

通常のバイバイが出来るようになった例

逆さバイバイを行っていた子供のうち、通常のバイバイが出来るようになった子供は52人中35人の約67%という結果が出ています。

通常バイバイが出来るようになった発達年齢は平均で2歳2ヶ月と、健常児よりは1年ほど遅れていると考えられます。

また、逆さバイバイから通常のバイバイに移るまでには、様々な手のむきや動きなどを経て数ヶ月から1年程度かかるようです。

バイバイの種類

バイバイには逆向き以外にも、『手を腕から上下に振る』『手招きのように手首から上下に振る』『腕から左右にねじるように振る』『手を握ったグーの状態で振る』『ドアノブを握りる様に手をすぼめて振る』『手刀のように振る』『脇付近にを当て汽車のように振る』『手をたらして振る』など様々なパターンが見られたようです。

まとめ

逆向きバイバイは自閉症や知的障害児の特徴の一つでも有ります。
しかし、知能が発達していない健常の子供にも見られる行動です。

逆向きバイバイを行うからといって、障害や知能に遅れが有るとは限りません。
逆向きバイバイ以外にも気になる行動や特徴などが見られた場合や、特に気になる場合には専門の機関や病院で検査などを行うことが必要となります。

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