子供が身だしなみを整えたり、きれいな身なりが出来ない
子供が身だしなみを整えたり、きれいな身なりが出来ない
社会生活をおくる際に様々な人と接するなかで、正しい服装や身だしなみは周囲の人と良好な関係を築く上でも重要な事です。
ボロボロの服や汚れた格好、臭いにおいを発していては、相手も不快に思ったり、近寄ったりするのも嫌になってしまいます。また、だらしない身なり、季節感にあっていない服装や、極端に奇抜な格好などをしていては、周囲の人から注目されてしまいます。
では発達が遅れた子供はどの様な理由から身だしなみを整えたり、きれいな身なりをするのが難しいでしょうか。
身だしなみを整えたり、きれいな身なりが出来ない理由
発達に遅れを持つ子供が身だしなみを整えたり、身なりを意識するのが難しい理由には、その障害の特徴などから様々な理由が考えられます。
他人への関心が無い
自閉症や発達障害の子供は、他人への関心が無い特徴を持つ場合があります。
他人への関心が無いと、他人からどのように見られているかという意識が出来ないため、身だしなみへの理解がとても難しいものになります。
また、他人の格好や様子なども気にしないため、その場に有った格好や服装を意識したり、他人の様子を参考にするといった事も難しくなります。
羞恥心がない
羞恥心が無い事で正しい身だしなみへの理解ができないと言うこともあります。羞恥心とは『恥じらい』とも呼ばれ、自分の格好や行動を相手に見られることで、「恥ずかしい」「屈辱的」などと思う気持ちです。
自閉症や発達障害の人は、他人への関心が無いという特徴があります。他人に対しての関心が持てないと、自分の状況が他人から見られて恥ずかしいという気持ちもわきません。そのため、「恥ずかしい格好だよ」と周囲から言われても理解がでません。
そのため「恥ずかしいよ」「変な格好だよ」と言われてもピンと来ない事があります。このような子供のこの場合は上記の様な抽象的な注意よりも「シャツをズボンに入れます」「口の周りを拭きます」など具体的な指示の方が理解出来る事が多いです。
想像するのが苦手
自閉症や発達障害の人は様々な場面を想像したり思い浮かべるのも苦手です。
自分が着たい服やズボンなどを意識し実際に選択出来る事は多いですが、それを着た際に周囲からはどのように見えるかまでを想像することが出来る子は極端に少ないと感じます。
そのため、奇抜な格好や変な身だしなみをした際に、相手が「どのように思うか」や「どのように感じるか」を想像することが困難なため、周りから見ると変な格好や奇抜な服装をしてしまう事があります。
場に合った格好が理解できない
その場の状況や空気といった様子を感じ取ることも、自閉症や発達障害の人は難しい場合があります。
その場の状況というのは、目的、場所、周囲の人、相手の気持ち、時間帯などの様々な条件により変わります。
健常者であれば、周囲の人の様子、相手の表情、動作などから相手の気持ちやその場の雰囲気を読み、その場にふさわしい格好や動作をとることができます。しかし、自閉症や発達障害の人はこのような暗黙のルールや様子を読み取るのが出来ず、その場に有った格好や態度を取ることが困難となります。
自分の体の位置が分からない
自閉症や発達障害の人は、想像したり何かをイメージするのが苦手で、自分の体も見える位置しか意識できない事があります。また、自分の体の位置や動きの理解(ボディイメージ)が難しいため、手足がどのような位置にあるのか、体がどのように動いているのかすら分からない場合もあります。
そのために、自分の背中やお尻や顔など実際に見ることが難しい部分に関して、下着が出ていたり汚れがあっても意識できず、結果として身だしなみが悪くなってしまいます。
自分の体の位置が分からない子供は、動作がぎこちな無い、動きが不安定、不器用などの特徴が見られたり、運動が苦手だという事もあります。
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自閉症が不器用であったり体を動かす運動が苦手な理由| 発達障害-自閉症.net
紐を結んだりボタンを付けるのが難しい
服にはチャック、ボタン、紐、ベルトなどを締めたり留めないと正しく着ることができないものも多いです。
発達に遅れがある子どもは指先が過敏で細かいものを触るのを嫌がったり、不器用でボタンを留めたり紐を縛ったりするのが難しいという事もあります。
このような場合、ズボンからシャツが出ていても正しくしまうことができないため、結果としてシャツが出たままとなりだらしが無い格好と見られてしまうことがあります。
紐やベルトやボタン方式のズボンなどを正しく履くのが難しい場合には、ゴム紐の入ったズボンを選択するのも方法の一つです。なお、ゴム紐のズボンはサイズが小さい子供向けのは比較的種類がありますが、大人向けのは少なくなるため徐々にベルトやボタンなどの練習を行って通常のズボンでも履けるようにする必要があります。
感覚過敏のため
様々な感覚が極度に敏感になることを『感覚過敏』といいます。
感覚過敏は人により様々ですが、場合によってはシャワーや体を洗うこと自体が『痛い』と感じたり、『嫌な感覚』となってしまいお風呂に入ることを嫌がってしまうことがあります。
体を洗うことが苦手になると、体が汚れたままになってしまうほか、体臭などから周囲の人に不快感を与えてしまう原因にもなります。
また、服のタグや縫い目や素材などによっても痛みやかゆみなどを感じたり、明るい服だと眩しく感じる、ビニールの様な素材だと「シャカシャカ」とした発する音が聴覚として不快と感じ、着る事の出来る服が限られてしまいます。
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自閉症や発達障害の感覚過敏とは| 発達障害-自閉症.net
感覚鈍磨のため
感覚鈍磨とは感覚過敏の逆の症状で、様々な感覚が極度に鈍くなってしまう状態です。
嗅覚が鈍感になってしまうと、自分の体臭や衣服の匂いなどが感じ取りにくくなってしまい、他人が不快に感じる臭いが理解できない事もあります。臭いに敏感になると、過度に香水や消臭スプレーなどを使ってしまい、逆の意味で周囲の人に不快な香りを撒き散らしてしまう事もあるので注意が必要です。
熱さや寒さの感覚が鈍くなってしまうと、寒くても半そで半ズボンであったり、厚くてもコートなどを着てしまい、その場にあった服装に調節する事が難しくなります。
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自閉症や発達障害の感覚鈍麻とは| 発達障害-自閉症.net
こだわりのため
衣服へのこだわりは自閉症や発達障害の子供によく見られる特徴です。
衣服へのこだわりは上記の『感覚過敏』『感覚鈍磨』によるものや、好きな色や模様で選んでしまう場合、自分の汗や柔軟剤のにおい、場所や時間などの理由で『学校に行くときはこの服装』『お買い物に行くときはこの格好』等とこだわっている場合などがあります。
衣服へのこだわりから、夏でも長袖や上着を着ている、冬でも薄着や半そで半ズボンなど、季節感にあった服装が出来ないという事も多いです。
衣服へのこだわりが出来てしまうと『毎日同じ服でないと着ない』『夏で汗をかいていても厚着をしてしまう』等から、衣服を洗うことが出来なかったり、汗で汚れやにおいが発生してしまう事もあります。
服を脱いでしまう
自閉症や発達障害の人は様々な理由から服を脱いでしまう事もあります。
服を脱いでしまう場合には、暑さを感じた場合、服が汚れたり濡れた場合、イライラや不安などのストレスを感じた場合、パニックになってしまった場合などです。
それぞれの状態で服を脱いでしまう理由は様々ですが、服を脱ぐ必要が無い状況や場所で脱いでしまうと周囲からは変に思われてしまいます。
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自閉症は水濡れを嫌ったり衣服が濡れると着替えてしまう| 発達障害-自閉症.net
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様々な癖など
自閉症や発達障害の子供は癖として様々な行動を取ることがあります。その癖が周囲からいていてもそれほど気にならないことなら良いですが、周りから見ると変に思われたり不快に感じられることもあります。
比較的多く見られる癖として「爪を噛む」「鼻をほじってしまう」「口に手を入れる」「襟元や服のすそをくわえる」「自分の腋などの臭いをかぐ」「ズボンやパンツの中に手を入れる」「陰部を触る」などです。
このような癖は人前で行ってしまうと、周囲の人は良く感じません。このような癖が見られる場合には止めるように声をかけたり、別の代替手段や方法を行わせましょう
また、常同行動として癖の様な様々な行動を取ることがあります。常同行動には気持ちを安らげたり、本人が落ち着こうとして行っている場合があるので、このような場合には無理に止めさせるとパニックや別の問題行動になる恐れがるので注意が必要です。
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自閉症や発達障害の服や爪を噛む噛み癖とは| 発達障害-自閉症.net
発達障害の特徴などから
発達障害の子供は様々な上記で記載した以外にも様々な特徴を持っている場合があります。
例えば口の筋肉の発達が遅かったり、嚥下の機能が弱い子の場合、口からよだれが垂れてしまう事も多く、これも何も知らない相手から見ると汚いと思われてしまいます。
また、排泄が定着しておらず紙パンツの使用などで、臭いなどを発してしまうと言う事もあります。
このような場合には子供それぞれの苦手としている部分や遅れている部分の機能を強化するトレーニングを行う必要があります。
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障害児や障害者がよだれや唾を垂らす理由と対策・対応| 発達障害-自閉症.net
正しい身だしなみを行うための方法
きれいな身だしなみや服装を覚えるのは難しく課題も人によって様々ですが、練習方法には以下の方法が代表的なものになります。
鏡を見る
「口が汚れているよ」「シャツやパンツが出ているよ」などいくら声をかけても、自分の状況が想像するのが難しいので、どの様に見えるのか子供本人は理解が出来ません。
そのような場合には全身の映る姿見の鏡などを使い、実際に状態を見てもらうと本人も理解がしやすくなります。身だしなみが悪い場合にはそのつど声をかけ、鏡で見てもらう事で何が悪いのか分かるようになり、そのうち声をかけるだけでどの部分が良くないのかが理解できるようになります。
女の子の場合はある程度の年代になると姉妹やお友達の影響から、お洒落への意識が強まる事が多くなります。そのため、鏡などで自分の状況を見てもらうと、髪をとかしたり下着をしまったり出来る子も多いと感じます。
姿見の鏡は大きいのでぶつかったりすると割れてしまう恐れがある場合には、飛散防止のシートを貼り付けたり、フイルムミラーを使った鏡などを購入すると良いでしょう。
ルールを作る
身だしなみや身なりや格好というのは、理解するのがなかなか難しい概念でもあります。正しい身だしなみを理解するのが難しい場合には、ルールとして決めてしまうという方法があります。
例えば食べ物を食べたら汚れているいないにかかわらず「口を拭く」、トイレから出たら下着を見る、出かける前には親に声をかけ身だしなみチェックをしてもらうなどです。
自閉症や発達障害の子供は決まった行動だと安心するという特徴があり、それを利用して行動の流れの中にそのルールを取り込んでしまうと身だしなみに対しても行動しやすくなります。
絵カードを使う
身だしなみを整えるのが難しい子供のために、身だしなみについての絵カードを使うという方法があります。
自閉症や発達障害の子供は言葉で言われるよりも、目から入る情報の方が理解がしやすい特徴があり、その様な場合には絵カードがとても有効なツールになります。
絵カードはその子が苦手とする身だしなみ項目を用意し、スケジュール表や実際に身だしなみを行う場所などに貼ると良いでしょう。
具体的には洗面所に「歯磨き」「顔を洗う」「寝癖を整える」というカードを置いたり、トイレに「手を洗う」「手を拭く」「下着をしまう」などのカードを用意するなどです。
適したカードが無い場合には身だしなみが出来ていないときに写真を撮り、その写真を使う方法もあります。
まとめ
自閉症や発達障害の人が身だしなみや身なりに注意ができないのは、他人への意識や、こだわりなど様々な理由があります。
まずは子供の特徴や苦手な部分を理解し、必要とされることを無理なく練習していくことが必要になります。
身だしなみを整えるのは他人と接するための基本的なマナーですが、無理にオシャレをする必要な無く、その場にあった清潔感の有る格好を心がけるようにしましょう。身だしなみは難しい概念ではありますが、子供が社会に出た際に必要なスキルの一つとなるので、少しずつ理解を増やせるようにしてあげましょう。