列に並んだり順番を待つのが苦手

   2018/03/18

列に並んだり順番を待つのが苦手

順番を守るということは日常生活を送る上で重要な社会ルールのひとつになります。

社会の中ではお店で商品を買う際のレジや、バスや電車に乗り込む際などに列に並ぶルールがあり、遊びの中ではお友達と遊具で遊んだり、おもちゃを順番に使う時などに順番を待つ必要があります。

列に並んだり順番を待つことが出来ないと、周囲に迷惑がかかりますし、お友達と遊ぶ際にも自分勝手でわがままだと思われて仲間はずれにされてしまう恐れもあります。

ではなぜ、自閉症や発達障害の子供は列に並んだり順番を待つことが苦手なのでしょうか。

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自閉症や発達障害の子供が列に並んだり待つのが苦手な理由

自閉症や発達障害の子供が列に並んで順番を守ったり、自分の番が来るまで待つのが苦手な理由には、待つことへの理解や見通し、その障害の特性など様々な理由が考えられます

順番や並ぶこと自体が理解できない

発達障害と友に知的障害を持っている場合、順番や並ぶこと自体の意味や理解が出来ないということがあります。

知的障害の程度にもよりますが、状態によっては言われている意味や、求められている行動を理解するのがとても困難な場合があります。

並ぶ、順番を待つ、我慢をするというのは目に見えない概念であるため、理解が難しいことも理由のひとつです。

衝動的に行動してしまう

ADHD(注意欠如・多動性障害)など、衝動性の強い障害を持っている場合には、順番を待たなくてはいけない、列に並ばなくてはいけないと理解をしていることも有りますが、障害の特徴から行動を抑えることができないこともあります。

また、その物事に対して欲求が強いと分かっていても待てずに行動してしまったり、周囲の状況が全く目に入らない、周囲からの声かけも耳に入らない、ということもあります。

周囲の状況が目に入らないと目的のものしか見えなくなってしまい、並んで待っている人の列が有っても全く目に入りません。そのため、そのときの本人の中では並んでいる人は全くいなかったという認識だということもあります。

見通しが持てない

並ぶことの意味や理由が分かっていても、見通しがもてないと不安になったりイライラして並んで待つことが難しい場合があります。

自閉症などの発達障害の場合、これから行うことを想像したり理解することが苦手だという特徴があります。そのため、「並んで」「順番を待って」と言われても、「何のために並ぶのか」「並ぶとどうなるのか」「いつまで待てばよいのか」ということが分からずストレスを感じてしまいます。

1番が良いと思っている

子供の多くは並ぶ際に1番が良いと思っています。なぜなら、「最初に出来る」「待つ時間が無い」「1番えらい・1番強いと思う」と感じるからです。

1番であると、給食やおやつだと真っ先に貰えますし、ゲームや遊びでは自分が最初に行えます。先頭に立って歩く場合などはリーダー気分を味わえるため、多くの子供は一番が大好きです。

1番がえらいと思っている子供の中には、番号が遅くなれば遅いほど『悪い番号』『劣っている』などと考えている子供も見られます。

理解のしやすい位置である

『1番最初』や『1番最後』はあいまいな部分が苦手な発達障害児にとって、理解のしやすい位置でもあります。

数字が苦手な場合には「5番目にならんで」と言われても数えるのが難しかったり、「11番目」などと言われても位置的に理解が出来ないということもあります。

このような発達障害の特徴から最初や最後を好む子供もみられます。

並ぶ位置や順番が分からない

「列に並んで」と声をかけられ、並ぼうとしても並ぶ場所の位置や、並び順が分からずに混乱してしまうということもあります。

自閉症や発達障害であると曖昧な指示が理解できずに不安になってしまう事があります。そのため、並ぶ際には「どこに並んで」「何番目に並んで」など具体的な指示を出すと効果的です。

こだわりなどから

自閉症や発達障害の大きな特徴として『様々なものにこだわる』というものがあります。

こだわりは人や状況によって違いますが、並び順や位置などにこだわりがある場合、自分の決めた順番でないと並ぶ事が出来なかったり、最初や最後でないと納得しないということがあります。

また、物事に対して自分の思い通りにいかないと納得が出来ず、何度もやり直したりしてしまう事もあります。このような場合順番を無視したり列に割り込んだりして、自分が納得するまで何度も繰り返してしまうということがあります。

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時間の感覚の感じ方から

順番を守る意味や、列に並んで待つことが出来る子供の中でも、自分の番が来るのが遅いとイライラしてしまう事もあります。

誰でも長時間並んだり待ったりするのは苦手で、その時間が長ければ長いほど人は不安になったりストレスを溜めてしまいます。

特に、自閉症や発達障害の子供は時間の感覚や概念が乏しい場合が多く、ちょっとした時間でも長く待たされたと感じてしまう事もあります。そのため実際には数分しか待っていなくても、本人の中では何十分も待っているんだと思っている場合もあります。

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列に並んだり順番を待つのが苦手な場合の対応方法

自閉症や発達障害の子供が列に並んだり待ったりすることが難しい理由は、その人の特徴により様々です。しかし、列に並ぶ練習を行ったり、並んで待つことの意味や見通しをつける事で、並ぶことへの意識や理解を促すこともできます。

並ぶ意味や目的を教える

まずは並ぶ意味や目的を教える必要があります。

目的や意味が分からないと、なんで並ばなくてはいけないのかが理解できません。「並ぶとおやつがもらえるよ」「ゲームをするにはお友達の番を待たないといけないよ」と、並んだり待ったりすることで『何が出来る』『どのようになる』ということを教えてあげましょう。

見通しをつける

並んだり待ったりしても「どのくらい待てばよいのか」「あと何人終わったら自分の番か」などが分からないと、不安になったり、ストレスを感じてイライラすることがあります。場合によっては見通しが付かないことでパニックに繋がる場合もあります。

そのため、列に並んだり待ったりする際には、「どの程度時間がかかるのか」「あと何人か」「列はどのくらいの長さか」など、具体的に見通しを付けてあげる必要があります。

私たちでも「しばらくお待ちください」と声をかけられ10分近く待たされると、「忘れられてるのではないか?」と心配になります。しかし、予め「10分ほどお待ちください」と見通しを付けてもらえれば、同じ10分でも安心して待つことが出来ると思います。

このように見通しをつけることは気持ちを落ち着け、安心して並んだり待ったりするためには重要な項目のひとつになります。

並ぶ場所や順番を伝える

並ぶ場所や順番の理解が難しい場合には、並ぶ場所を指示したり、並び順を具体的に教えましょう。

並ぶ場所は口頭での指示が難しい場合には、壁沿いに並んだり、床や地面にテープや線で目印を付けつると効果的です。

並び順も「早いもの順」「背の順」「名前順」「出席番号順」などと指示をすると理解が容易になります。並ぶ順番に困っている様子が見られる場合には「何番目だよ」「○○君の後ろだよ」などと具体的な位置を教えてあげましょう。

気を紛らわす方法を用いる

遊園地のアトラクション待ちや混雑時の飲食店など、長時間並んだり待ったりする場合には、気を紛らわせる事も重要になります。

長時間なにもせずにボーっと待つのは苦痛です。健常者でも長時間待ったりする場合には本を持参したりスマートフォンや携帯ゲーム機などで時間をつぶします。

長時間待つことが予想される場合には、ゲーム機やおもちゃを持たせて気を紛らわすのも必要な方法になります。気を紛らわすものが無い場合には、興味を引くような楽しいお話をしたり、手遊びやしりとりゲームなどを行うのも効果的です。

日常生活でも並ぶことや待つことを取り入れる

日常生活を送る中でも様々な事で列に並んだり待つことの体験をさせてみるのも効果があります。

列に並ぶ場合には、スーパーやコンビニでのレジ待ちや、電車やバスに乗る際に並んでみるなどです。家庭内でも、ご飯をよそう順番や、お風呂に入る順番、兄弟とゲームを行う順番などを決めてみるのも良いでしょう。

特に好きな事に取り組む際の順番待ちは効果があるようで、並ばないとおやつが貰えない、待たないとゲームが出来ないなどの場合はハッキリと目的があるので、並んだり待ったりすることが出来る事が多いです。

経験した中では、すぐにイライラしてしまう子が大好きな回転寿司屋で並ぶ際だけはしっかり待てるといったことや、エレベーターが大好きな子はエレベーターに乗る際だけは列に並べるといったことがあります。

並べたり待てた際には褒めてあげる

並んだり待つのが苦手な子供が、列に並ぶことができたり、ちょっとした時間でも待つことができたら褒めてあげることも重要です。

褒めてもらうことで子供が嬉しいだけでなく、自分の自信に繋がるほか、並んだり待ったりする事が正しいことだと理解することができます。

まとめ

自閉症や発達障害の子供が列に並ぶのが苦手であったり、待つのが難しいのには様々な理由があります。

誰もが並んだり待ったりするのは嫌だと思いますが、円滑に物事を進めていくなかで重要な社会ルールのひとつとなります。

障害を持つ子供は並ぶ事や待つ事への理解が乏しい場合が多いため、多くの経験を重ねることが重要となります。経験を積み重ねて学習をすることで少しずつではありますが、「みんなが並んでいるから僕も並ばなきゃ」「順番をまたなきゃ」と理解が出来るようになると思います。

並ぶことや待つことが苦手なお子さんへの対応方法として、この記事が参考になれば幸いです。

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