体調不良や体の不調を教えることが出来ない

   2018/07/16

体調不良や体の不調を教えることが出来ない

発達に遅れのある子供の中には、体の不調を他人に教えることができないという事があります。

体の不調を伝えることが出来ないと、自分の体調が悪くても無理をしてしまったり、場合によっては怪我や病気が大事になってしまう場合があります。また、人によっては体調の不調自体を感じ取ることが出来ずにいるため、不調自体を伝えることが無いということもあります。

では実際にどの様な理由から発達に遅れの有る子供は、自分の体調不良を伝えることが出来ないのでしょうか。

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体の不調を教えることができない理由

発達に遅れのある子どもが体の不調を伝えることが出来ない理由には、感覚の受け取りかた、判断に時間がかかる、コミュニケーションの問題など様々なものが考えられます。

感覚鈍磨のため

発達に遅れのある人には、感覚がとても敏感になる『感覚過敏』という特徴や、逆に感覚が非常に鈍くなる『感覚鈍磨』という特徴を持っている人が多くみられます。

この中でも『感覚鈍磨』の特徴を持っていると、様々な感覚の受け取り方が鈍くなってしまい、病気や怪我で体に痛みや不調がある場合でも自分自身がわからないということがあります。

『感覚鈍磨』になると怪我をして出血や腫れなどがあっても全く気が付かず周囲の人から指摘されて気が付いたり、風邪などの病気で高熱や頭痛や腹痛などが発生していてもわからない場合があります。

また、疲労などに関しても疲れていることが気が付かず、そのままのペースで行動してしまい過労やストレスにより動けなくなったり倒れたりしてしまうこともあるので注意が必要です。

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どの程度の不調で伝えればよいのかわからない

体調の悪さを感じていても、どの程度の体調不良の場合に相手に伝えればよいのかわからず、多少の不調では我慢してしまうこともあります。

健常の人であれば現在の自分の状況や過去の経験などから、適切に判断をして相手に体調不良を伝えることができます。しかし発達に遅れのある子の場合は、色々な状況や判断条件を踏まえて考えるのが難しいということがあります。

また、発達に遅れのある子どもは今後の予定などを考えて事前に行動する事も苦手です。「明日は大事な約束があるから」「今週はテストがあるから」など重要な予定が有る場合には事前に大事をとる事も必要ですが、今後の予定や未来の事を想像するのが難しいので、早めの判断などが困難となります。

不調を感じても伝えるまでに時間がかかる

発達に遅れのある子どもでも自分が調子が悪いときには、しっかり理解できていることも多いです。しかし、自分の不調を感じてから自分の頭を整理し、相手に伝える行動を取るまでに長い時間を要する場合もあります。

通常の場合には「頭が痛いし体がだるい」と感じれば、周囲の人に「熱があるかも」と伝えることが出来ます。発達に遅れのある子どもの場合には、体調の不良を感じてもその状態を過去のパターンや経験などから自分に何が起こっているのか必死に考えていることがあります。

そして、自分の状態を理解し終わった後に、「誰に伝えるか」「何をどのように伝えるか」で再び、頭の中を整理したり相手に伝えるシュミレーションなどを行っている場合があるで、人に不調を伝えるまでに非常に時間がかかります。

病院や薬が嫌いなため

基本的に体調不良を伝えると病院に連れて行く、薬を飲ませる、傷を消毒するなどの行動を取ることになります。

しかし、これらは子供が嫌いな行為でもあるので、病院に連れて行かれたり苦手な薬を飲むぐらいなら体調不良を伝えるのを止そうと思う事もあります。

誰に伝えればよいのかわからない

体の不調を感じても誰に伝えればよいのかわからないという事もあります。家庭ではお母さんやお父さんなど親になると思いますが、学校では担任の先生や保健の先生、補助員さん、ボランティアさん、お友達、など様々な人が居るので混乱する事があります。

コミュニケーション能力の問題

発達に遅れのある子ども場合、コミュニケーション力が弱いことがあります。これは言葉を発することが出来ないという理由だけでなく、言葉を発することが出来ても、適切な言葉を選んで伝えることが難しい場合があります。

また、言葉を発することが出来ない子供の場合などは、体の不調を伝えたくても相手に対してどのように伝えればよのか分からないということもあります。

伝えなくても相手が分かっていると思っている

自閉症などの発達障害の子供は、自分の気持ちや体調の状況は、相手も分かっていると思い込んでいる場合があります。これは発達に遅れのある子どもは自分と他人との心理の違いを理解するのが難しいので、自分の気持ちや思いが相手とは違うということが理解でずにいる事が理由となります。

このような際には体調以外の面でも自分の要求などを具体的に相手に伝えることが無かったり、逆に相手が理解してくれないと怒ってしまったりする事があります。

体の不調を教えることが出来ない場合の対処方法

体の不調を教えることが出来ない場合には、その子の特徴や理解の程度などから、本人が理解しやすい「体調不良の伝え方」を教えてあげると良いでしょう。

体調不良の伝え方を教える

体調不良の伝え方が分からない場合には、基本的ではありますが相手に対し体調が良くないことを伝える方法を教えてあげましょう。

言葉が話せる子供の場合には「痛い」「調子悪い」などの体調が悪いことを伝える言葉を教えてあげましょう。また、体の部分の理解や言葉の能力が高い子供の場合には、「頭が痛い」「お腹が痛い」など具体的な体調不良の表現方法を伝えましょう。

言葉で伝えるのが難しい場合には、絵カードや意思表示カードを用意してそれを提示することで伝えたり、ひらがなボードやタブレットなどを使って伝える方法を教えてあげましょう。

上記の様な様々なコミュニケーションツールを使うのも難しい場合には、体調不良のサインなどを決めて使ってもらうようにしましょう。サインにはマカトンサインや手話を利用したり、その子独自の表現し易い方法を使うと良いでしょう。

また、相手の手を引いて自分の調子悪い場所を触ったり指差すといった単純なものでも使えると、本人が自分の体調不良を表現しやすくなります。

体調不良を伝える人を教える

自分の体の調子が良くないことが分かっても、誰に伝えればよいのか分からないということがあります。このような場合には場面に応じて、どの人物の伝えれば良いのかを決めてあげましょう。

例えば自宅ならお母さんやお父さんなどの家族、学校では担任の先生や保健の先生などです。学校では本人が先生に伝え難い場合には、仲の良いお友達などでもよいでしょう。また、伝える対象の人には、子供本人がどの様な方法や言葉で体調不良を伝えるかを教えておくとお互いにやり取りがスムーズに行きます。

なお、体調不良を伝える人を厳密に決めてしまうと、体調が悪くても決められた対象者を探しまわってしまったり、対象者が居ないときには体調不良を誰にも伝えることが出来ないという場合もあるので、対象者が居ないときの方法なども決めておくと良いでしょう。

目安を決める

自分で体調の不良が分からない場合には、具体的な目安や決まりごとを作り、それを材料に自分が体調不良であると判断してもらいしょう。

例えば体温なら「37度を超えた」、怪我などなら「出血がある」「腫れている」「あざが出来た」「痛みを感じる」、病気なら「鼻水が出た」「咳がでた」「便がゆるい」などです。

目安は具体的に数値や動作や視覚などから、はっきりと区別がついて分かるものが本人にとっても理解がしやすくなります。「からだがだるい」「ぼーっとする」など体調不良の判断の境目が難しくなるものは、本人が感じたら伝えてもらうという別のルールを作り、判断の目安という決まりごとには使用しないほうが良いでしょう。

周囲が確認をする

様々な対処方法やルールなどを決めても、なかなか子供本人がそれに則って体調不良の判断と報告をするのは難しいと思います。

子供本人の様子を良く観察し、表情や行動、普段の様子との違い、ここ数日の活動内容での疲労などを周囲の人が見て体調の状態を判断してあげることも重要です。

体調不良を伝えることが出来ずに、病気や怪我などをしやすい子供の場合には、毎日検温をしたり体に傷などが無いかを見てあげるましょう。

周囲の人が体調不良を気付いた場合には、本人伝え自分で体調が良くない場合の状態を感じ取ってもらう理解を深めると良いです。

まとめ

発達に遅れのある子どもは、その特徴や特性などから自分の体調不良を相手に伝えることが難しい場合があります。

体調は生活していく面で重要な部分になります。まずは本人が自分の体調を感じ取ることを意識できるよう、周囲の人がそれをフォローしてあげるようにしましょう。

相手に伝えるコミュニケーションに関しては体調不良を伝えるということだけでなく、日常生活や学習を通して様々なコミュニケーションの習得が行えるよう支援していくことが重要です。

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