困っていても助けを求められない

 

困っていても助けを求められない

発達に遅れのある子どもは、自分が困っていても誰かに助けを求めるということが難しいことがあります。

明らかに困っているであろう状況でも、自分ひとりで何とかしようとしたり、不安そうな表情でぼーっとたたずんでいたり。場合によっては困りごとを何とかしようとして、パニックや自傷行為になったりする事もあります。

こんな状態の際に周囲の人に「助けて」と言えたり、ヘルプサインを出すことが出来れば本人もそこまで追い込まれなくてすんだのにと思う事も有ります。

ではこのような子供たちが助けを求めることが出来ない理由や、逆にどのようにすれば助けを求めることが出来るように繋がるのかを調べてみました。

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困っていても助けを求めることが出来ない理由

発達に遅れを持つ子供が困っていても助けを求めることが難しい理由には、コミュニケーションの問題、助けの求め方を知らない、困難を相手に伝えることが出来ないなど様々な理由が考えられます。

助けを求める状況が理解できない

発達に遅れている子供は自分の置かれている状況を判断したり、自分の能力を客観的に見ることが難しい事があります。そのため、周囲から見たらこの子は困っているのだろうというような状況でも、本人としては困っている状況だと理解できないので助けを求めることはありません。

これはその子の特性により、自分の状況を客観的に見ることが難しい、場の状況や自分が置かれている環境に気が付くことができない、他人と自分の状況を比較する事ができないなどの理由があります。

自分が困っている事に気が付かないと、物事が取り返しの付かないことになっていたり、気が付いた際にはどうにもならない状態まで追い込まれてしまい、パニックなどに繋がったり精神的に参ってしまう事もあります。

相談や助けの求め方がわからない

発達に遅れのある子どもはコミュニケーション能力が弱いことがあります。自閉症の子供では「コミュニケーション能力」の困難という特徴を持っているため、特にこの部分が大きな要因となります。

相談や助けの求め方がわからない場合には、助けを求めるという行動自体が難しい、助けを求めたくてもどのように相手に伝えればよいのかがわからないということがあります。

助けを求めるタイミングを掴めない

助けを求める方法を理解していてもそれを実行するタイミングを掴めないこともあります。

通常の人でしたら困った際には自分で判断しすぐに助けを求める行動に移ると思いますが、発達に遅れのある子供の場合は、感覚の問題や物事の理解力などからその判断が難しい事があります。

また、行動を移すにも様々な事を頭で考えたり、シュミレーションを行う事も多く、助けを求めようと思っても実行に移すまでに時間がかかってしまうこともあります。

困っている事を伝えられない

助けることを求めることが出来ても、自分の困っている事を相手に伝えることが出来ないこともあります。

基本的に子供本人が困っている場合は、落ち着いているように見えても頭の中は混乱していたり、パニック状態になっている事が多いです。そのために意味のわからない事を口走ってしまったり、何とか助けて欲しいということを伝えることができても、自分の気持ちや意思、どのように対応して欲しいのかなどまで整理できずにいることがあります。

求めても相手が理解してくれない

発達に遅れのある子どもはコミュニケーション能力の問題から、相手に自分の意思を伝えることが難しい事があります。

困っている際に相手に一生懸命に伝えても、相手が聞き取ることが出来なかったり、相手が理解できずにいると、助けを求めても伝わらないと思い、助けを求めること自体を止めてしまうことがあります。

助けを求めることが難しい場合の対処方法

子供が助けを求めることが出来ない場合には、助けの求め方やタイミングを教えたり、周囲の人が子供の様子を見て対応するなどの方法があります。

困っていそうなら声をかける

子供が困っている様子が見られたら、声をかけてあげることも重要です。その際にすぐに助けるのではなく「どうしたの?」「困っているの?」と聴き、子供本人から困っている事を相手に伝える事が出来るように促しましょう。

助けの求め方を教える

助けの求め方が分からない場合には、助けを求める方法を教えてあげましょう。助けを求める方法は、その子供の使いやすい言葉やサインなどのコミュニケーションや、相手の手を引いたり方などを叩いて知らせるといった方法を取りましょう。

助けを求めるタイミングについても教えることが必要な場合があります。発達に遅れのある子どもの場合、困っていてもどのタイミングで声をかけてよいのか分からず、どんどんと事が大きくなってしまう場合もあります。

まずは自分が「こまった」「わからない」「助けて欲しい」と感たらすぐに周囲の人に助けを求めるように教えましょう。

また、助けてもらった際にはお礼を言うことも重要なコミュニケーションなので、しっかりとお礼を伝えることも理解してもらいましょう。

適切な助けの求め方を決める

子供本人が助けを求める方法を決めてしまうのも一つの解決策です。

言葉が話せる子供の場合には「助けてください」「困っています」「教えてください」などその場面に合わせた言葉を決めて教えると良いでしょう。助けを求める言葉が使えるようになったら具体的に「○○を助けてください」「□□の方法を教えてください」など理由や目的を伝えられるようにレベルアップをはかりましょう。

言葉で助けを求めるのが難しい場合には挙手や、手話、マカトンサインなど子供が行いやすいサインなど決めたり、助けを求める相手の肩を叩く、手を引くなどの行動を教えましょう。また、ヘルプカードなどを作りそれを提示してもらうといった方法も良いでしょう。

助けを求めても良い事を教える

子供の中には自分一人の力でやりきらなくてはいけないと思い、助けを求めることを嫌がる場合もあります。このような場合には他人に助けを求めても良い事を教えてあげましょう。

助けを求めることは悪いことではありません。時と場合によっては助けを求める事は必要である事も伝え、他人と力を合わせて行わなければできない事もある事を教えましょう。

また、一人では出来なくても他人に助けてもらうと、乗り越えることが出来るということを事を理解してもらうことも重要になります。

困った際のルールを作る

特定の出来事で困りごとが発生する場合には、困った際のルールを作るのも良いです。
例えば『作業を5回行い達成できなかった場合』『10分挑戦して出来なかった場合』『言葉や文字が理解出来なかった場合』『街中で迷ってしまった際には気が付いた時点で道を聞く』などです。

ルールの内容はその子供の能力や事柄により、子供本人が行いやすいようにしましょう。また、ルールなどは紙などに書いて見える場所に掲示したり持たせるなどして、困ったと感じた際には見てルールを確認するようにすると行動しやすいでしょう。

助ける経験をする

助けてもらうだけでなく、困っている人を助ける経験をするもの重要です。助ける経験をすることで、助ける側の気持ちなどを理解するだけでなく、自分が困った際にも助けてもらえることを学ぶことができます。

助けることで感謝されることの嬉しさだけでなく、助けてあげたという経験を自分の自信に繋げることにも繋がります。

お友達などが助けを求めていたり困っている様子を見たら手助けをしてあげたり、周囲の大人が「○○君が困っているから、□□をして助けてあげて」など声をかけ助けを促しましょう。

自分自身の能力を理解する

子供本人に自分自身の能力を理解してもらうことも重要です。能力や理解力や出来る事だけでなく、わからない事やできない事なども把握できると良いでしょう。

子供本人が自分自身の能力を客観的に見るのはとても難しいと思いますが、ある程度理解がないと何でも一人で行おうとして抱え込んでしまい、場合によっては体力的・精神的にストレスを感じてしまいます。

また、周囲の大人が子供本人の能力を理解し、状況を見てフォローしてあげることも重要になります。

何でも相談できる環境を作る

子供が何でも相談できる環境を作ることも重要です。相談されても「自分でやりなさい」など逆に注意をされてしまうと、子供も相談するのが嫌になってしまいます。

子供が困っていたらしっかりと話を聞いてあげて相談に乗り、一緒に問題の解決を行ってあげることが重要です。また、相談だけでなく普段の日常的な会話も重要になるので、普段から子供に優しく接してあげる必要があります。

相談する相手を作っておくのも重要な事項になります。相談相手には親や先生だけでなく場合によってはお友達や周囲の第三者など、子供本人が気軽に話を出来る相手を作っておくのも必要になります。

相談も人によって話にくいこともあると思うので、相談を受ける人も役割分担を作っておくと良い場合もあります。

まとめ

発達に遅れのある子どもは様々な理由から、助けを求めることが難しい特徴を持っています。

他人に助けを求めることは私たち大人でも難しいですし、勇気が必要な行動でもあります。

まずは周囲の大人が子供の様子を見て、困っていないかを確認してあげ、その状況を見て適切な声かけをして助けを求める行動への促しを行っていく必要があります。

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