自閉症の子供が道順やルートにこだわる理由

   2017/09/30

自閉症の子供が道順やルートにこだわる理由

自閉症や発達障害の子供に見られる特徴のひとつに、道順にこだわるというものがあります。

これは、どこかへ行くときは必ず同じルートではないと気がすまないというものです。たとえ近道でも、普段と違う道を行こうものなら不安そうになったり、場合によってはパニックになって泣き叫ぶようなこともあります。

特に普段使っている道が工事や渋滞で通れない際に迂回をしたり、急用で別の場所へと行かなければならないときに、パニックになって大変だった、などという話も耳にする事が多いです。

こだわる道順には自宅からスーパーへのお買い物や学校に行くルートだけでなく、学校内での移動方法や、自宅に帰ってから自分の部屋に入るまでなど、人により様々です。

こだわりは、道順だけでなく、移動途中で『何かを探す』『電車を眺める』『電信柱に触る』『決まった言葉を話す』など行動も含まれることもあります。

また、たまたま買い物によってお菓子やジュースなどを買ったことが、道順のこだわりになってしまうと、毎回同じ店で同じ商品を買わなければ納得しなくなってしまったということもあります。

では実際に自閉症や発達障害の子供が道順やルートにこだわる理由とはどのようなものがあるのでしょうか?

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自閉症や発達障害の子供が道順にこだわる理由

自閉症や発達障害の子供が道順にこだわる理由には、その障害の特性や、道順への思い入れ、空間認識能力の問題など様々なものが関連しています。


変化に弱く対応が出来ないため

自閉症や発達障害の子供は、環境の変化への対応が苦手で嫌う傾向にあります。

自閉症の大きな特徴として「想像力が弱く興味の範囲が狭い」と言うものがあります。想像力が弱いことで、普段と違うことが発生すると、今後の予測や変化に対応することが難しく、不安や緊張を感じ、場合によってはパニックなどに陥ってしまいます。特に見通しが付かない物事に関しては非常に不安やストレスを抱きます。

また、常同行動や同一性の保持を好むという特徴があり、何度も同じ事を繰り返して気持ちを落ち着かせたり、変化が無いことを確認して安心を得ています。このような行動に移動の際の道順が含まれると、移動時のルートへの安心感を求めてこだわりになる事があります。

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道順が1つしか無いと思っているから

自閉症や発達障害の子供は知能の問題や想像力の欠如などの特徴から、別の考え方を持つということが出来ないことがあります。

道順に対しても「○○に行く道はこのルートだけだ」と思い込んでしまい、別の道順が有るとは考えもしないことがあります。

そのために、普段の道順と別のルートを通ってしまうと『この道は目的地にたどり着けない』と思って反応したり不安になります。

こだわる道順に思い入れがあるから

こだわっている道順で、以前に良いことが有ったという記憶や、良い思い入れがあるため、特定の道にこだわるということがあります。良いことには『知り合いに出会えた』『話しかけてもらえた』『好きな車が見えた』『お菓子を買ってもらえた』など子供により様々です。

逆に違う道を行くのを嫌がる場合には『うるさい音が聞こえた』『苦手なものが有った』『(見た目が)怖い人が居た』『犬に吼えられた』『威圧感のある建物がある』など、苦手な記憶や思い出が出来てしまったという事もあります。

自閉症や発達障害の子供は時間の概念の理解が難しい事もあり、これらの良い思いでや嫌な記憶は何年も昔の話であったり、お母さんも覚えていないようなとても小さい年齢の時の話である事も多いです。

こだわる道順に興味を示すものがあるから

こだわる道順に子供の興味を示すものが有るため、そのルートを通りたがるという事があります。

興味を示すものには『電車が見える』『公園に寄れる』『道路沿いで車が見える』『お店が見える』『お友達の家の前を通る』『信号や線路を通る』『企業の看板やロゴが見える』などがあります。

子供が好きな物には上記のような分かりやすいものから、『人のうちの室外機や換気扇が見える』『ドアの閉まる様子が見える』『お店ののぼり旗』『ビルや電信柱の汚れ』『道路標識』など、ちょっとした物事である場合もあります。

このように好きな物があったりすることで、特定の道を好むということもあります。

空間認知能力が低いから

空間認識能力(空間認知能力)とは、その空間においての人や物との位置関係を把握する能力です。位置関係には「方向」「距離」「高さ」「大きさ」「広さ」「移動速度」など様々な感覚が関連してきます。

自閉症や発達障害の子供は、程度にもよりますが様々な理由から空間認知能力が弱いことがあります。

空間認知能力が低いと、自分の位置や向かう先が分からなくなる『方向音痴』となったり、地図の見方が分からないといったことにも繋がります。

また、自閉症や発達障害の特徴として、空間認知能力が鈍いことで『人や物とぶつかりやすい』『転びやすい』『運動が苦手』『文字や絵を上手に書けない』と行った事が見られます。

健常者であれば道を一本手前に曲がっても位置関係が把握できるので、普段のルートの隣の道を歩いていると理解し、この先の交差点を曲がれば合流できると判断することができます。しかし、空間認知能力がないと一本手前の道を曲がっただけでも、自分がどこに居るのかが分からなくなってしまいます。

さらに、自閉症や発達障害児のように予想や見通しをつけるのが苦手であると、自分がどこに居るのかが分からなくなり、不安でストレスを抱えたり、どうすればよいのか分からずにパニックに繋がります。

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刺激や感覚を得ている

車や電車や自転車などの乗り物に乗った際に特化した内容にはなりますが、自閉症の子供は乗り物が好きな子が多いです。乗り物が好きな理由には『車や電車自体が好き』『動く景色を眺めるのが好き』『揺れや振動が好き』など様々な理由があります。

自閉症や発達障害の子供は『感覚鈍磨』で感覚の感度が乏しかったり、こだわりや好き嫌いなどから行動の幅が狭まり、日常生活を送る中で受ける刺激が少ないことがあります。

日常生活で受ける刺激が少ないと、自分で刺激を求めて自傷行為を行ったり、クルクル回ったり手を叩いたりと常同行動を取って外部刺激を得ることがあります。

乗り物に乗ることも、次々と流れていく景色や動きを視覚として楽しんだり、揺れや振動を感覚として取り入れています。そのため、特定の道順であると「次に○○が見える」「ここのカーブでゆれる」などがを理解しているので、安心して刺激を得るためのルートとしてこだわっている事もあります。

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道順へのこだわりの対応方法

道順へ強いこだわりを持ってしまった場合、急用や事情により変更するのが困難になってしまう事があります。そのような場合に対処できるよう、基本的な道順へのこだわりへの対応方法をまとめてみました。

説明をして見通しを付ける

道順にこだわる大きな理由は、今まで経験したこと無いルートを通るのが不安だということになります。普段と違う道順で目的地に行く場合には、予め説明をして見通しを付けて不安を取り除いてあげることが重要になります。

見通しを付けるために説明する項目には「どのような理由で普段とは違う道順で行くのか」「経由地はどこなのか」「どこを通るのか」「所要時間はどのぐらいなのか」などのルートの説明のほか、普段と違う道を通ってもちゃんと目的地にたどり着くことと、不安や心配をする必要が無いことを教えてあげましょう。

見通しを付ける方法にはスケジュール表を用いたり、地図が分かる子の場合には地図を使って通るルートなどを見せてあげる方法があります。パソコンやタブレットやスマートフォンが有る場合にはGoogleマップやストリートビューで実際に移動するルートの画像を見せながら説明するのも良いでしょう。

また、別のルートを使うときには「大好きな電車が見れるよ」「学校の前を通るよ」などと子供の興味を引きそうな事を教えてあげるのも効果的です。

安心グッズを持たせる

不安なことに対して落ち着ける安心グッズが有る場合には、移動中にそれを持たせて気を紛らわせるという方法もあります。

車であれば好きな曲を流したり、DVDなどでアニメを見せるのも良いでしょう。徒歩で移動する場合には興味を引きそうな話題を話しかけたり、しりとりなどの言葉遊びをしながら楽しむのも効果があります。

道順へのこだわりを崩す

道順にこだわってしまった場合には、そのこだわりを無理やり崩すという方法もあります。

こだわりは子供の経験不足と、変化による未知なことへの不安が原因の場合があります。このような場合には事前に説明をし、道順を変えてみるのも方法のひとつになります。

道順が変更すると最初は不安でパニックになったりもしますが、何度も経験することで自分の中で対応方法や気持ちの折り合いを学ぶことに繋がります。また、目的地への道順も一つではないことも理解することが出来ます。

実際に車での道順に強いこだわりを持っていた子の保護者から対応方法相談された際に、道順を定期的に変更する方法を取り入れてもらった事があります。その子の場合も、最初はもの凄いパニックで泣き叫んでいましたが、徐々に道の変更にもなれ、半年ぐらい経つと事前に説明をすれば一度通ったことのある道ならば、落ち着いていられるようになった事例もあります。

なお、自閉症や発達障害のこだわりは、成長するにつれていつの間にか無くなったり、別のこだわりへと移り変わります。道順にこだわるという特徴も年齢の小さい子供に多く見られ、年齢が上がるにつれて見られなくなる傾向にあります。

こだわりを崩すのが難しい場合や無理に崩して本人に負担がかかってしまう際には、長い目で見守ることも必要になります。

まとめ

自閉症や発達障害の子供が道順にこだわるのは、空間認識への理解や、見通しが出来ないことへの不安、など障害の特徴が大きな理由になっています。

道順にこだわりを持ってしまうと、道路工事や事故などの物理的な事態や、不意な予定変更に対応が出来なくなる事があります。

自閉症や発達障害を持つ子供が道順にこだわる理由には、子供の経験や道順への理解、気持ちへの折り合いをつける事が難しいということが多いです。そのため、経験を重ね学習をすることで、少しずつではありますが本人の中でも「別の道でも行ける事」「毎回同じ道でなくても良いこと」を学んで理解が出来るようになるはずです。

道順にこだわってしまうお子さんへの対応方法として、この記事が何かの参考になれば幸いです。

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