自閉症が不器用であったり体を動かす運動が苦手な理由

 

自閉症が不器用であったり体を動かす運動が苦手な理由

自閉症や発達障害の子供には、不器用であったり、体を動かすのが苦手で運動オンチだという場合があります。

全体的に体を動かすのが苦手な子供もいますし、細かい作業だけが苦手、運動が苦手といった子供もいます。ではなぜ、自閉症や発達障害の子供は不器用であったり体をスムーズに動かすのが苦手なのでしょうか。様々な理由について調べてまとめてみました。

なお、不器用であったり運動神経が鈍いからといって、自閉症や発達障害であるわけではなく、逆に自閉症や発達障害でも器用であったり、運動神経がよい子も見られます。

自閉症や発達障害の子が不器用や運動神経が悪い理由

自閉症や発達障害の子供が、不器用で細かいことが苦手であったり、運動神経が悪く運動が苦手な理由には様々なものが有り、大きく分けると「感覚の問題」「身体機能の問題」「自分の体のイメージが持てない」「運動自体の意味がわからない」といったものになります。

ここで、それぞれの理由について細かく調べてまとめてみました。


感覚過敏から

自閉症の人に多く見られる特徴として、様々な感覚が過剰に敏感となる『感覚過敏』と言うものがあります。代表的な感覚過敏には「音や声が大きく聞こえる」「日光や蛍光灯の光がまぶしく感じる」「触られるのが苦手」などが有ります。

この感覚過敏により手や指先の感覚が敏感になってしまうと、物を持ったり掴んだりする際に痛みなどの強い刺激を感じてしまいます。そのため、持ったり掴んだりすることを嫌がり、結果として不器用になったり、不器用と見られてしまうことが有ります。

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自閉症や発達障害の感覚過敏とは| 発達障害-自閉症.net

感覚鈍麻から

自閉症の人に見られる感覚の障害として、感覚が鈍感になってしまう『感覚鈍麻』と言うものもあります。これは、感覚過敏と逆で、様々な感覚が感じ取りにくくなってしまうものです。代表的な感覚鈍麻には「痛みに強い」「暑さや寒さを感じにくい」などが見られます。

感覚が鈍感に成ってしまうと、力の加減、体の動きの速さや位置、対象物との距離感などがわかりにくくなってしまい、不器用となったり運動オンチの原因にもなります。

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自閉症や発達障害の感覚鈍麻とは| 発達障害-自閉症.net

固有感覚の理由から

固有感覚とは体の動きや位置に関係する感覚で、「体の位置」「体の運動の状態」「体の動く速度」「体にかかる抵抗」「重さや重力」などに関連します。

固有感覚の感じ方に問題があると「手や足などからだの部位を動かす位置」「体を動かす速度」「体の動かし方」「物を持ったり支えたりする感覚」などの動作や判断に影響が出てしまい、自分の動作の正しい理解ができなくなってしまい不器用と見られる症状となってしまいます。

前庭感覚の理由から

前庭感覚とは位置や動きに関係する感覚で『バランス感覚』『平衡感覚』などとも呼ばれることがあります。前庭感覚は体の「傾き」「回転」「高い・低い」などを感じる感覚で、前庭感覚が敏感であると激しい動作を怖いと感じて嫌がり、逆に前庭感覚が鈍感であるとバランス感覚が悪くなったり、自閉症によく見られる「高さを怖がらない」「目が回りにくい」などの行動の理由繋がります。

自閉症の子供は前庭感覚が鈍感である事が多く、前庭感覚で感じるや刺激を求めるために「高いところに登る」「その場でクルクル回る」な自閉症の特徴として挙げられる行動をとる事があります。

前庭感覚が優れているとバランス感覚は良くなりますが、極度に過敏の場合は体の回転や揺れなどを必要以上に感じてしまうため、動きの激しい遊びや動作が苦手であったり嫌がったりしてしまいます。

力の入れ具合がわからない

感覚鈍麻や固有感覚に問題があると、自分の体を動かすときの力の入れ具合がわからないという事も有ります。

感覚が鈍麻であると自分がどのくらいの力を出しているのかがわからなくなり、必要以上の力で動作をしてしまうことがあります。文字を書く際に鉛筆の芯を直ぐに折ってしまったり、ペン先を潰してしまう場合などは力の入れ具合や加減の理解が難しいということが考えられます。

人を強く叩いたり引っ張ったりしてしまうのにも、自分の力の入れ具合がわからないだけでなく、自分自身の触覚や痛覚が鈍いため痛みがわからないという理由があります。

体のイメージが浮かばない

感覚の鈍麻、固有感覚、前庭感覚に問題があると、自分の体の部位がどのようについているのか、どのような動きをしているのかをイメージするのが難しくなります。

また、自閉症の大きな特徴の一つとして『想像力(イマジネーション)の欠如』と言うものがあります。この特徴が強いと物事を想像したりするのが難しく、自分の体の位置や状態や動きなどを理解するのにも影響が出ていると考えられます。

自閉症者で多くの本を出版している東田直樹さんは著書『自閉症の僕が跳びはねる理由』の中で、「手や足の動きがぎこちないのはどうしてですか?」という問いに対して「手足がどうなっているのかわからない。どうやったら自分の思い通りに動くのかもわからない」という旨を記しており、自閉症の人は自分の体のイメージが難しい事を示しています。

発達が遅い

精神や身体の発達が遅れていると、それに伴い体の動きや感覚、動作への理解力なども遅れてしまい結果として体の動きが鈍くなってしまいます。

特に指先などは発達の様子がわかりやすく、スプーンや鉛筆の握り持ちなどで発達の段階を見ることが出来ます。発達段階が初期の頃は上からの握り持ち(握った手の甲が上向き)から始まり、次に下からの握り持ち(握った手の甲が下向き)、そして最後に親指・人差し指・中指の3本で持つ所謂『鉛筆』持ちとなります。

物を握ったり摘むのが苦手な場合や、細かい動きが難しい場合には体の部位、動きのコントロール、感覚などの発達が遅れている事もあります。

作業や運動に集中が出来ない

自閉症や発達障害の人には周囲のことが気になってしまい、集中するのが難しい事があります。特にADHD(注意欠陥・多動性障害)などでは、不注意や集中力の欠如などの特徴が見られる事があります。

集中が出来ない理由には感覚的に苦手な音や物が目に入ってしまう、興味を示すものに注意が向いてしまう、視界に入る動くものを気にしてしまう、考えが別のこと(今日の晩御飯や、遊びたいことなど)に向かってしまうなどがあります。

作業や運動の理由や目的がわからない

体や感覚の機能としては問題が無くても「何をすればいいのか」「何の目的で行っているのか」が理解できず適切な行動が行えないため、結果として周囲から不器用だと見られてしまう事もあります。

例えばキャッチボールが苦手な場合、キャッチボールの意味とそれを行うという事が明確にわかっていれば、相手が投げたボールを受け止めて相手に投げ返すという動作が取れます。

しかし、キャッチボールの意味や目的が分からないと、ボールが飛んできてもキャッチする意味がわからずキャッチしなかったり、飛んできたボールを怖がり避けようとしてしまいます。

発達性協調運動障害である

発達性協調運動障害とは、複数の動作を同時に行う『協調運動』がぎこちなかったり、全身を使った粗大運動や、手先などの細かい動作の微細運動が不器用で、日常生活に支障を来たしている状態の障害です。なお、身体の病気や障害、脳性麻痺や筋ジストロフィーなど神経疾患などによる動作の障害は発達性協調運動障害には含まれません。

LD(学習障害)や、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の人の3割から半数近くが、発達性協調運動障害の障害を同時に持っているとされており、各種発達障害と関連していると考えられています。

重度の発達性協調運動障害となると、動作がぎこちないだけでなく、「ボタンをかけることが出来ない」「物を落とすことが多い」「人や物にぶつかる」「物を上手に掴めない」「文字が汚い」「紐が結べない」などの症状が見られる事があります。

発達性協調運動障害であると、体の複数の部位を同時に扱うことが難しくなり、作業などを行うのが難しく不器用と見られたり、運動やスポーツなどでは運動オンチと捉えられてしまいます。

その他の理由

机上で作業などを行う際に、姿勢が正しくなかったり、テーブルや椅子が体に合っていないと、集中できずに細かい作業などが出来なくなる事があります。

姿勢が正しくない場合は体の筋力が少ない事や、体幹の機能が弱いことなどがあり姿勢の保持が難しくなってしまいます。

テーブルや椅子が体に合っていない場合や、すわり心地や肌に触れる感触などが苦手で集中できない事もあります。また、足が床に正しく接することが出来ず、体のバランスや姿勢の保持が出来ない場合もあります。

場合によっては椅子やテーブルの種類や高さを変えてみたり、足置き台を置く、姿勢保持をサポートするクッションなどを使用する方法も効果が見られる事があります。

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自閉症や発達障害の姿勢保持と姿勢の悪さ| 発達障害-自閉症.net

まとめ

自閉症や発達障害の人が不器用であったり運動オンチであったりするのには、感覚の過敏や鈍麻などの問題や、自分の体のイメージや心身の発達具合など様々な理由があります。また、身体や感覚に問題は無くても、運動自体の動作や目的の理解が難しいという事も考えられます。

不器用さや運動オンチなどを改善するには、どの理由から体の動きがぎこちなくなっているのかを見極めてそれに伴った対応を行う必要が有ります。

体の動きは遊びや運動を行い経験を重ねることで、少しずつではありますが本人も動かし方や感覚の感じ方を学習し改善されていきます。専門医、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)などからアドバイスを受け、運動や遊びの中に取り入れる機会があればよりよい効果が望めます。

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