自閉症や発達障害の子供が太ったり肥満になる理由

   2018/03/25

自閉症や発達障害の子供が太ったり肥満になる理由

近年子供の肥満が増加しており、障害を持つ子供にも肥満や肥満傾向の子供が見られます。特に自閉症の子供の肥満率は高く、1991年の論文では調査を行った240名の自閉症児童のうち23%にあたる55名が肥満傾向にあり、対象年齢を10歳以上で絞り込むと約30%が肥満であると報告しています。

これは健常児の肥満傾向が5~10%とされる値に対し、非常に高いものとなっています。勿論全ての自閉症や発達障害の子供が肥満であったり太りやすいということではありません。

では、なぜ自閉症や発達障害の子供は肥満になりやすいのでしょうか?
考えられる原因を調べて纏めてみました。

肥満とは

まず、肥満とは一般的な同年代の人に比べ、体重や体脂肪が多い状態を指します。
肥満の基準にはBMI(ボディマス指数)と体脂肪率が有ります。

BIM

BIMとは体重と身長の関係から算出され、体重(kg)/身長(m)の二乗で計算されます。

体重50kg、身長160cmの人の場合は 50/1.6^2 ≒ 19.5でBMIは19.5となります。
世界保健機構(WHO)などではBMIが25以上を過体重、30以上を肥満としています。

日本肥満学界ではBMI22を標準体重、25以上を肥満、18.5以下を低体重としています。

体脂肪率

体脂肪率とは体内に含まれる脂肪の割合で、30歳未満の男性では体脂肪率25%以上を肥満、同じく女性では30%以上を肥満としています。
体脂肪率は体脂肪計機能の付いている体重計や、専用の体脂肪計を用いて計る事が出来ます。

肥満になると

肥満になると体重が重くなる事での足腰への負担の増加や、「糖尿病」「高血圧」「睡眠時無呼吸症候群」「心筋梗塞・脳梗塞」など様々な生活習慣病の原因になります。

障害を持った子供の場合は肥満になってしまうと、介助や移動が大変になります。
パニックで暴れたり他害行為を行う場合には、親や周囲の大人で止めることが困難になってしまいます。

太ったり肥満となる原因

体重が増えたり肥満となる原因は大きく分けて、「外部環境の要因」「生活習慣の要因」「遺伝や疾病の要因」が有ります。また、自閉症や発達障害の子供は特有の特性やこだわりなども原因になる事が有ります。

遺伝要因

遺伝の要因によるものには肥満遺伝子(倹約遺伝子)などが有ります。
肥満遺伝子(倹約遺伝子)は現在までに50種類以上のものが見つかっており、主な肥満遺伝子には「β3AR(β3アドレナリン受容体)」「UCPI(脱共役たんぱく質1)」「β2AR (β2アドレナリン受容体)」などが有ります。
これらの肥満遺伝子を持っている場合だと、体質的に太りやすくなってしまいます。

満腹中枢の異常

満腹中枢とは脳内にある満腹感を処理している部分を指す言葉です。
満腹中枢に何らかの異常が発生すると満腹感を得る事が出来ず、どんどんと物を食べてしまうことが有ります。

自閉症は脳機能に何らかの障害が原因で発生すると考えられているため、脳機能の障害が満腹中枢に関連する場合も考えられます。

満腹中枢に異常を来たす障害にはプラダー・ウィリー症候群と言うものもあります。

関連ページ
プラダー・ウィリー症候群とは | 発達障害-自閉症.net

偏食や摂食障害

自閉症の子供は様々な特性から摂食障害となる場合も有ります。
主な特性には、「こだわりから同じ食品しか食べない」「口の中の感覚過敏から舌触りや口ざわりの良いものしか食べない」「冷たいものや温かいものは食べない」などがあります。

特定のものだけを食べてしまったり、野菜や汁物などを全く食べないなどの偏りがあると、バランスよく栄養を摂取できないため、肥満に繋がってしまいます。

また、味付けが濃いことからハンバーガー、ジュース、アイス、スナック菓子、インスタント食品など様々なジャンクフードを好んでしまう子供もいます。
一般的なジャンクフードは、調味料、塩分、糖分、脂肪分が多く、食べ過ぎると肥満はもちろんのこと、様々な生活習慣病に結びつく原因となるので注意が必要です。

関連ページ
偏食(食べ物の好き嫌い)が多い – 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net

睡眠障害

発達障害の子供は特性やストレスなどから規則正しい時間に寝ることが出来なかったり、長時間寝ることが出来ない場合が有ります。
睡眠障害になると規則正しい生活をおくるのが難しくなるばかりか、まとまった睡眠時間が取れないことで肥満につながる事も有ります。

富山大学の調査では3歳の段階で睡眠時間が9時間未満の子供は、11時間以上寝た子供の約1.6倍の肥満リスクが高まると報告されています。

食事が楽しみ

自閉症の子供は外部からの刺激を受けることや、自ら楽しみを見出すのが難しいことが有ります。

中には唯一の楽しみが食事という子供もおり、楽しみを得るために沢山の食べ物を食べてしまう場合も有ります。ストレスが溜まっている場合には、ストレス解消の意味で沢山食べてしまう事もあります。

好きなだけ食べてしまう

食べ物を好きなだけ食べてしまうことで、肥満に繋がる場合も有ります。
単純に食べ物が好きだから食べてしまうだけでなく、発達障害の特性で「数回に分けて食べる」「人と分けて食べる」「分量を考えて食べる」などを考慮するのが難しい場合があります。

お菓子などを与えてご機嫌をとってしまう

外に出かけた際に不機嫌やパニックになってしまった際に、お菓子や食べ物で釣ってしまう事も有ると思います。

これも場合によっては悪くない方法ではありますが、この行為が習慣になってしまうと子供も「騒げば食べ物がもらえる」と思い込んでしまう事もあります。ご機嫌を取る際には食べ物以外の方法も用意しておくと、肥満だけでなく様々な場面で使えるようになるのでよいと思います。

食べきらないといけないと思っている

自閉症の子供は物事を最後まで行わないと納得できない場合が有ります。
食べ物に関しても、あまり食べたくない場合や、既にお腹がいっぱいの場合でも、無理やり口に押し込んでお皿を空にしようとすることが有ります。

関連ページ
自閉症は物事を終わりまで行わないと納得しない | 発達障害-自閉症.net

運動不足

食べる量は適正でも、運動不足であったり運動が嫌いであると太ってしまいます。

発達障害の子供は体を動かすのが苦手であったり、運動自体が嫌いなことがあります。未熟児や脳性麻痺やダウン症に代表される遺伝子疾患の場合は、身体や臓器にも障害を持っている事が多く、体を動かすこと自体が難しい場合があります。

障害があると健常児のようにお友達と外に遊びに行ったりするのが難しくなってしまい、家に居ることが多く日常生活の中でも体を動かす機会が少なくなってしまいます。さらに、太って体重が増えてしまうと、どんどん体を動かすのが面倒になってしまいます。

学校などに通っている場合は体育の授業で体を動かしたり、お友達との遊びなどの中で体を動かすことが出来ると思います。自宅でもバランスボールやトランポリン、お散歩など無理の無い範囲で定期的に体を動かすことが肥満予防に繋がります。

食べるペースが速い

自閉症の子供の食事を見ていると、ほとんど噛むことなく飲み込むように食べてしまう子供も見られます。噛まずに食べることは肥満の原因になるばかりでなく、胃腸など内臓への負担も大きくなります。

食事をする際には「良く噛む」ように意識させるばかりでなく、口に入れる食べ物の量やペースを調整する必要が有ります。場合によっては飲み込みにくい食べ物や硬い食べ物を用意し、1回の食事時間を長くとるのも効果的です。

太ってる感覚がない

発達障害の子供は自分を客観的に見たり、自分の様子や行動を考えるのが苦手です。そのために、体重が増えて太っていたり、自分が肥満で有るということを認識できない事があります。

体重計などで具体的に何キロと教えても、その体重が多いのか少ないのかという事を理解するのも難しいと思います。体重の管理などを行う場合には、家族や保護者などが指導をする必要があります。

薬の副作用

障害を持っている場合には様々な薬を服用していると思いますが、薬の副作用で食欲が増したり喉が渇いたりする事があります。

薬の副作用で食べる量が増えて肥満になっている場合には、服薬を指示したお医者さんに相談することが必要になります。

肥満の対処法

肥満の対処法には様々ありますが、一番はなんといっても適度な食事と適度な運動です。単純ですがこれを実行するのは難しいと思います。

肥満を対処するには一般的なダイエット方法を試すのも良いでしょう。今は食事制限だけでなく、ちょっとした運動などでも効果のあるダイエット方法が多数紹介されています。その子供の特性や興味にあったダイエット方法を取り入れるのも良いでしょう。

学校などに通っている場合には肥満気味になると「摂食指導」や「栄養指導」などを行うところも有ります。
これは給食の量の調整や運動の時間を増やすなど学校内での指導から、家庭での食事の量や時間などの指導や相談にも乗ってくれます。学校で給食を作っている場合には低カロリーメニューのレシピなどを配布してくれる事も有ります。

2005年には食育基本法が成立し、学校においても食に関する知識と食生活の実践を行うことが増えています。食育基本法設立には、近年の肥満や生活習慣病の増加、栄養バランスの偏った食事や不規則な食事が増えたことが背景の一つとなっています。そのため、今後は国を挙げての肥満対策や生活習慣病予防が今まで以上に推進されることになります。

まとめ

自閉症や発達障害の子供が肥満になってしまうのには「生活習慣」「病気や遺伝」「障害ならではのこだわりや特性」など様々な理由が有ります。

肥満を防ぐには規則正しい生活と、適度な食事量、定期的な運動が必要となります。これは本人だけで行うことは非常に難しいので、親や学校または通っている施設などと連携し、本人の気持ちや体調に無理の無いように対応を行うのが重要になります。

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