自閉症は状況の変化や変更が苦手で嫌う

   2018/05/13

自閉症は状況の変化や変更が苦手で嫌う

自閉症の子供は変化や変更が苦手で、新しい物事や予期しない変化があると対応が出来ずパニックになったり固まって動けなくなってしまうことが有ります。

変化が苦手と言うのは自閉症の大きな特徴でもあり、場合によっては「こだわり」としてもとらえる事が出来ます。

では、なぜ自閉症の子供は変化や変更が苦手で嫌ってしまうのでしょうか?
様々な理由からまとめてみました。

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変化は変更が苦手な理由

自閉症の大きな特徴の一つに「想像力が弱く興味の範囲が狭い」と言うものが有ります。
想像力が弱いことから、今後の予測や状態の変化を考えることが難しく、不安と緊張を感じ変化を嫌がってしまいます。

自閉症児には常同行動や同一性保持という特徴があり、同じ行動を何度も繰り返す事が有ります。これはやりなれた行動なので本人が行いやすい事と、同じ行動をとることで安心を得ていると考えられています。
自閉症の子供によく見られる常同行動には、「手をひらひらさせる」「体を前後に動かす」「ぐるぐると回る」等が有ります。

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自閉症の常同行動とは | 発達障害-自閉症.net

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もう一つの特徴に「コミュニケーション能力の困難」と言うものが有ります。
これは自閉症の人は言葉が無かったり、言葉が出ても正しい意味の会話が難しいためで、物事の変化が発生しても、他人に状況を確認したり不安であることを伝えるのが出来ません。
そのため、新しいことへの挑戦や変化の発生する物事が怖くて不安であるために、変化や変更を望まないという理由も有ります。

変化を嫌がる物事

自閉症の子供が嫌がる代表的な変化には「物の位置」「物の順番」「道順」「衣服」「食べ物」「自分の位置」「時間割や学校行事」「環境の変化」などが有ります。また、変化を嫌がる物事には目に見える変化と、予定や行動や時間の流れなど目に見えないものの両方があります。

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自閉症のこだわり| 発達障害-自閉症.net

物の位置

物の位置では、室内や教室で物の位置が変わっていると心配になったり、物を以前の位置にもどしたり、物が無くなっている場合にはそのものを探そうとすることが有ります。

物の順番

物の順番には目に見える本屋おもちゃの並び順、自分の行動する順番などが有ります。
自閉症の子供はミニカーなどのおもちゃを並べて楽しむという特徴があり、その並び順も一見ばらばらのようで本人の中には正しい順番が有ります。本の並び順でも巻数順ではなく、色や絵柄などで並べることが有ります。

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物を規則的に並べる – 自閉症と発達障害の特徴・特性 | 発達障害-自閉症.net

行動の順番

自分が行動するスケジュールにも順番があり、この順番が崩れたり変化してしまうと何を行ったらよいのかわからなくなりパニックになってしまいます。
行動スケジュールには朝起きて学校へ行くまでに自分が行うことだったり、物を食べる順番、車に乗り込む手順など人により様々です。

道順

学校や祖父母の家に行く道順など何度も行きなれた道では道のりが定まっており、工事などの通行止めで迂回や道順を変更をすると、何処へ行くのか不安になりパニックになってしまういます。

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自閉症の子供が道順やルートにこだわる理由| 発達障害-自閉症.net

衣服

衣服など身につけるものや、自分が使用するものも変化するのを嫌がります。
特に新しい服を着る際や、暖かくなって冬服から夏服へ衣替えなどをするときに今までと違う服を着るのを嫌がり、いつまでも古い服や気温が暑くても長袖を着続けてしまうことが有ります。

なお、衣服については感覚の過敏などから、着心地や肌触りが嫌いで着るのを嫌がる事も有ります。

食べ物

食べ物でも変化を嫌がる様子が見られ、同じ食べ物しか口にしない、暖かい食べ物が冷めてしまうと食べなくなってしまう、日曜日には何々を必ず食べる、レストランではこのメニューだけを食べる、などを決めてしまう場合が有ります。

市販されている同じ食品でも決まったメーカーや決まったお店の物しか食べないことがあり、パッケージが変わっただけでも嫌がってしまう事も有ります。

自分の位置

自分の居る位置にも変化を拒む事が有ります。
車の乗る位置、電車やバスの座席、学校の席、教室や室内で自分が遊ぶ位置などが良く聞かれます。電車やバスの座席では他の人が座っていても、自分が決めた位置に座りたがる事も有ったりします。

自分の位置も特定の時間だけにこだわる場合もあり、運動時のラジオ体操の時だけ必ず体育館の隅で行う子供も見たことが有ります。

時間割や学校の行事

予め定まっているはずの学校の時間割が変更になる事で、普段と違う教室に移動したり違う内容の授業を行うなどの場合パニックになってしまうことが有ります。

「遠足」「校外学習」「運動会」「授業参観」などの学校行事も、授業とは全く違うので何をするのか予測が出来なくなってしまいます。

学校行事で子供が一番パニックになるのは、なんと行っても避難訓練です。通常の避難訓練は抜き打ちで行われ、非常ベルを鳴らすことも有ります。急に校内放送や非常ベルが鳴り、響き緊迫した状況の中で「机の下に潜れ」「校庭に避難」といわれても何がなんだか分からなくなってしまいます。
中には避難訓練の後に非常ベル自体が怖くなってしまう子供もいます。

環境の変化

環境の変化といっても様々ですが、引越しで家が変わる、進級や進学で学校や教室が変わるなどが有ります。進級や進学は学齢期になると毎年発生し、その都度「教室の位置や室内」「クラスメート」「先生」などがガラッと変化します。そのため進級などで不安定になってしまった子供は1ヶ月程度日常生活においても落ち着けない事が有ります。

東日本大震災の際にも避難所での避難生活が出来ず、津波で壊れた家に戻ったり、車の中で長期間生活せざるを得なかった自閉症の子供と家族の話なども新聞に掲載されていた事もありました。

変化のない物を好む

自閉症の子供は物事の変化を嫌いますが、逆に変化しない物事に興味を持ったり好きになったりすることが有ります。
自閉症の子供が好む代表的な変化の無い物事には「記号」「時刻表」「国旗」「ロゴマーク」「企業名」「数字」「アルファベット」などがあります。

自閉症の子供は時間や日時に強い子も多くおり、日時や時間などは概念を理解をしていなくても、記号での興味としてとても強く覚えていたり、未来の日付などを記憶する事もあります。

また、発達障害や知的障害の人が電車を好むというのも良く聞かれます。電車は時刻表が定まっており、決まったレールの上を連なった車両が規則的に走っています。これも規則正しいルールがあり、電車もそれに則った動きをするので安心して見る事が出来るためだとも言われています。

変化への対応方法

物事の変化への対応方法は様々な方法が有りますが、効果的なものには「予定を伝えて見通しをつける」「状況の変化で困っていることを相手に伝える」「物事の変化に慣れさせる」方法が有ります。

変更や予定を伝え見通しをつける

物事の変更が発生したり普段と違う行動をする場合には、予め状況を伝えて説明し納得してもらうのが一番効果的な方法です。

今後「何が起こるか」「何を行えばいいか」を伝えて納得させれば、これからの見通しを立てることができ、子供も落ち着いて行動をとりやすくなります。

何日も先に決まっている予定などの場合は、カレンダーやスケジュールなどで日にちを確認させるとよいです。1日の流れの中で予定が変わる場合には、朝もしくは予定が変わった時点で説明をし、タイミングを見計らってその都度何度か伝えると状況の変化を理解しやすくなります。
なお、時間の感覚やスケジュールの管理方法などはその子供によってそれぞれ違うため、その子供が一番理解しやすい方法をとってあげる必要が有ります。

状況の変化で困ったことを相手に伝える

物事の変化で困ってしまった場合にどうすれば良いかを、教えてあげる必要も有ります。
一番良いのは困っていることを自分から他人に教える事です。これはコミュニケーションの分野なので子供一人一人対応方法が違うと思いますが、何か困ったときに出せるサインや言葉などを覚えるだけでも効果が有ります。
困った際に状況を聞ける人や守ってもらえる存在を作るだけでも、子供は落ち着けるはずです。

物事の変化に慣れさせる

物事の変化が苦手な子供でも、生活していく中や社会に出た際に様々な変化にぶつかるります。そのときに困ったりパニックにならないように、物事の変化に慣れて耐性をつける必要が有ります。

物事の変化に慣れさせるのは様々な経験を何度も繰り返すことです。最初は小さな物事の変化でもパニックになってしまいますが、何度も行っていくうちに「これぐらいなら大丈夫」と耐性がつき、その後には「この場合はこの後にこうすればよい」と学習することが出来ます。

小さな子供のうちは物の順番やこだわりなどが酷い事もありますが、成長するにしたがって学校や生活の中で様々なことを学び、こだわりも徐々に薄れていったり別のこだわりなどに変化します。

まとめ

自閉症の子供は物事が変化した場合に、今後の対応を想像することが出来ず何をしていいのか分からずパニックになってしまいます。また、他人へ助けを求めることや、これから何が起こるのか聞く事も出来ません。

何か変更が有った場合には、速やかに子供に知らせて今後の対応方法を教えてあげるのが効果的です。

なお、社会に出ると様々な物事が刻一刻と変化する事にぶつかると思います。そのために変化に対応する方法や、困ったときにどうすればいいかを教えていく必要も有ります。

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