自閉症の性別による発生の違いと男性に多い理由

 

自閉症の性別による発生の違いと男性に多い理由

一般的に自閉症の人は女性よりも男性の方が数倍多いといわれています。
実際に私が関わったことのある自閉症の性別の割合を考えても、男の子数十人に対して女の子は8人程度しかいませんでした。

では、なぜこれほどまでに自閉症の発生には男女差が見られるのでしょうか?
実際の自閉症の男女差や男性に多く自閉症が見られる理由などを、様々な資料を調べて考えてみました。

自閉症の性別による割合

まず、自閉症の性別による割合の数です。
アメリカのアメリカ疾病予防管理センターが好評した数字と、日本の値として神奈川県と沖縄県の特別支援学校に通う子供の男女差を参考にしてみました。


アメリカにおける自閉症の男女差

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が2012年に発表した報告書によると、アメリカ国内では女児の自閉症の人数は189人に1人の割合に対し、男児は42人に1人の割合なっており、女児よりも男児の方が約4倍ほど人数が多いとしています。

詳細:「Prevalence and Characteristics of Autism Spectrum Disorder Among Children Aged 8 Years — Autism and Developmental Disabilities Monitoring Network, 11 Sites, United States, 2012

日本における障害児の男女差

日本全体の自閉症の男女差を記した資料を見つけることが出来ませんでしたが、いくつかの都道府県では特別支援学校在籍者の性別総数を公表していたので記載してみます。なお、これは自閉症などの発達障害だけではなく、知的障害、身体障害、精神障害、その他の病気や障害により支援が必要な子供を含めた数になります。

平成27年度の神奈川県全域の特別支援学校の生徒数は。公立高校で7,917名、うち男性が5,254名、女性が2,663名とおおよそ2対1の割合となっています。
詳細:神奈川県平成27年度 学校統計要覧

平成27年度沖縄県全域の特別支援学校の生徒数は2,183名、うち男性が1,385名、女性が793名とおおよそ2対1の割合となっています。
詳細:沖縄県平成27年度学校基本統計

このようにアメリカではおおよそ4対1の割合で、女児よりも男児の自閉症の人数のほうが多くなっています。日本においても障害児全体の数として、2対1で男性の方が多い割合となっている事がわかります。

自閉症が女性よりも男性に多い理由

ではどのような理由から自閉症は女性よりも男性の方が多く発生するのでしょうか。男女の人数の違い、脳の作りの違い、性染色体など、原因として考えられることを調べてみました。

男性と女性の人数の違い

一般的に女性よりも男性のほうが人数が多いと聞くことが有ります。女性よりも男性のほうが圧倒的に多い場合には自閉症の男女比も大きく変わってくるかもしれません。実際に男性と女性の人数はどれほどの違いがあるのでしょうか?

厚生労働省が発表した平成27年の出生性比を見ると、出生総数が1,005,677人。そのうち男児が515,452人、女児が490,225人となっております。割合で見ると5.1%ほど男児の出生数が多くなっています。
詳細:2015年人口動態調査

しかし、5%程度の差では男女差が4倍となる性別による自閉症の発生数とは、とてもではないですが結びつきません。

なお、総務省統計局が発表した平成27年度国勢調査によると、日本全国の男性の人口は約6182万9千人に対し、女性は6528万1千人となっており、女性のほうが350万人ほど多くなっています。これは、出生数は男性のほうが多いですが、女性のほうが平均寿命が長い為、全体的に見ると男性よりも女性の総数の方が多くなるようです。
詳細:平成27年国勢調査(PDFファイル)

男性と女性の脳の違い

自閉症の原因は先天的な脳機能の障害であると言われています。そのため男性と女性の脳の違いが原因と考えられる場合も有ります。

男性と女性の脳の大きさの違い

男性と女性の脳は大きさが違います。一般的な成人男性で1350グラムから1500グラム、成人女性で1200グラムから1250グラムあり、男性に比べて女性のほうが少なくなっています。これは、基本的に脳は体重の2%ぐらいの大きさであるため、女性よりも男性の方が体が大きいので自然と脳の大きさにも差が出るようです。

なお、脳の大きさと知能指数は多少の相関関係が有るようですが、性別による脳の大きさの違いで男性の方が女性よりも知能が特別に高いという事は無いようです。

男性と女性の脳の作りの違い

女性は、右脳と左脳を繋ぐ神経の束であるの脳梁という部分が大きく、多くの情報をやり取りできるので、周囲の状況や相手の表情などを感じ取ることが上手く、複数の物事を同時に行えます。逆に、男性は空間の認識能力が優れているという話を聞いたことが有ります。

占いや恋愛などの心理学では、「男性脳」「女性脳」などのように、男性特有の考えかた女性特有の考えかたなども数多く紹介されています。

実際に国立特別支援教育総合研究所のコラムでも、男性と女性の脳機能の違いから「自閉症の脳は男性型ではないか」というのが紹介されています。
参考:自閉症が男子に多いのは?  

この様に男性と女性の脳機能や、思考の考え方などからも自閉症が発生する男女差との関連が指摘されています。

レット症候群と自閉症の関係

レット症候群とは自閉症やアスペルガー症候群などと同じく「広汎性発達障害」に含まれる障害です。

特長には知能・言語・運動能力の遅れ、小さい手足、常に手を揉むように動かしたり、手を叩いたりする行動が見られます。最大の特徴としてはレット症候群が見られるのはほぼ女性のみであるという事です。

レット症候群は性染色体であるX染色体に位置するMECP2遺伝子の突然変異により発生ます。
女性の場合は性染色体がXXであるため、一方のX染色体のMECP2遺伝子に異常が見られても、正常なX染色体のMECP2遺伝子が使用されます。(両方のX染色体のMECP2遺伝子に異常が見られる場合は死産となったり出生後直ぐに亡くなるようです。

性染色体がXXである女性に対し男性は性染色体がXYであるため、X染色体のMECP2遺伝子に異常が有る場合は致死となります。なお、男性でもクラインフェルター症候群のようにXXYやXXXYのようにX染色体が複数ある場合はレット症候群としても生存することができますが、この場合はクラインフェルター症候群となります。

このような性染色体とレット症候群の関係のように、性染色体に位置する遺伝子が自閉症の何らかの原因と関係している場合には、性別の違いにより自閉症の発生率が異なるという事が考えられます。

関連ページ
レット症候群とは | 発達障害-自閉症.net

性染色体の差による自閉症の関係

レット症候群の項目のも記載しましたが、医学的に性別とはX染色体とY染色体の性染色体の組み合わせにより決まります。

Y染色体とは

人間のY染色体は人間の染色体の中で最も小さく、約80前後の遺伝子が含まれると考えられています。Y染色体の遺伝子の数は少なく、染色体上に遺伝子が存在しない部分も有ります。

人間はY染色体を持つことで性染色体がXYとなり医学的に男性となります。さらに、Y染色体上にあるSRYと呼ばれる性決定遺伝子が働くことで、生殖腺が精巣となり精巣から発生する男性ホルモンにより肉体的にも男性となります。

人間におけるY染色体は精巣の発達や精子の生成といった、「性別を男性にする」という機能のためだけにある染色体といった働きをするようです。

X染色体とは

人間はY染色体を持たず性染色体がXXとなることで医学的に女性となります。
X染色体は7番染色体と同程度の大きさで、約1100前後の遺伝子が含まれていると考えられています。この中の遺伝子には人間に重要な遺伝子が数多く含まれており、X染色体は人間に必須の染色体でも有ります。

X染色体は片方に異常が有っても片方が補うことができます。そのため、女性はX染色体の片方に異常が出ても、障害や病気として発現しなかったり軽度である事があります。しかし、男性はX染色体を1本しか持っていないため、X染色体に以上が発生すると致命的となったり重度の障害として発生することになります。

X染色体の異常により発生する病気

X染色体の異常により発生する病気には次の種類が有ります。これらの病気はX染色体の保持数の関係から男性に見られる事が多く、女性の患者はかなり少ないものと成っています。

  • 赤緑色覚異常
    X染色体の連鎖劣性遺伝により発生。
  • 血友病
    血液凝固因子の不足により筋肉内や関節内での出血が起こりやすくなる病気で、X染色体上にある、血液凝固因子の異常が原因。
  • 性染色体劣性遺伝型筋ジストロフィー
    筋力の低下が進行していく病気で、X染色体のジストロフィン遺伝子の異常により発生。デュシェンヌ型やベッカー型がある。
  • 伴性高IgM血症
    Igm(免疫グロブリンM)が大量に生成される病気で、X染色体のCD40リガンド遺伝子が原因。
  • レット症候群
    X染色体のMECP2遺伝子の異常により発生。
  • アルポート症候群
    難聴、水晶体の異常や白内障、腎不全などを伴う病気で、X染色体のCOL4A5遺伝子の異常が原因。
  • ターナー症候群
    正常な女性の性染色体がXXに対しX染色体が1つしか存在しない状態で、低身長や第二次性徴の欠如などが見られる。

自閉症とX染色体との関連

自閉症もX染色体の遺伝子が関連しているとすると、女性よりも男性のほうが多いという理由も説明がつきます。ただし、X染色体の影響のみでは自閉症そのものの原因となるのは考えにくいため、X染色体と他の1つまたは複数の染色体の遺伝子に影響が見られると自閉症となる確率が高まると考えるのが自然です。

女性の自閉症の原因

女性の自閉症は男性に比べて約4分の1程度の発生しか見られないことを前にも説明しましたが、逆に女性の自閉症は少ないため、女性の自閉症の状況の調査や研究があまり行われていないという実態もあるようです

数少ない女性の自閉症の研究としては、2015年に発表された論文「Loss of delta catenin function in severe autism」と言うものがあります。
この研究によると女性の自閉症はCTNND2という遺伝子の異常により発生する率が非常に高いとしています。

関連ページ
自閉症の原因とされる遺伝子の種類 | 発達障害-自閉症.net

CTNND2は5番染色体に位置しているので、通常は男女共に存在する遺伝子となり、女性だけでなく男性の自閉症の原因としても影響しているはずです。

なお、5番染色体の欠損により発生する「猫鳴き症候群」はCTNND2が位置する部分の染色体も欠損している事から自閉症のと関連も考えられます。

関連ページ
猫鳴き症候群(5pモノソミー、5p-症候群)とは | 発達障害-自閉症.net
猫鳴き症候群 …

まとめ

自閉症の人は男性の方が女性に比べ圧倒的に多くなっています。人口比率や出生率の差はそれほど違いが見られないため、女性よりも男性の方が自閉症となる確率は高いと言えるでしょう。

男性が自閉症になりやすいという明確な理由や原因はまだ解明されていませんが、男性と女性の大きな違いである、性染色体のX染色体が関わっている可能性は高いといえます。

今後の研究が進むことで、自閉症の発生理由や性別の差などが解明される日が来ると思います。原因が解明されれば自閉症への効果的な治療方法や療育方法なども確立することでしょう。

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